マンション浸水で断水する?受水槽・給水ポンプが止まったときの違い

マンションが浸水しても、必ず水道が止まるわけではありません。

反対に、自分の部屋が上階にあって全く浸水していなくても、地下や1階にある給水ポンプや電気設備が被害を受ければ、水道本管には水が来ているのに自宅の蛇口から水が出ないことがあります。

判断するときに見るのは、「受水槽があるか」だけではありません。

水道本管から自宅の蛇口まで、水がどの設備を通って届いているのか。その途中のどこが止まったのかを見る必要があります。

マンションの断水は給水方式によって変わる

マンションへの水の送り方は建物によって違います。

大きく分けると、次のように考えると分かりやすくなります。

給水の仕組み停電・浸水時に起こること
水道管の圧力だけで直接送る地域の水道が生きていれば、建物の停電だけでは水が止まらない場合がある
増圧ポンプで直接送るポンプが停止すると中高層階は断水しやすい。ただし低層階や共用水栓では水が出る場合がある
受水槽からポンプで各戸へ直接送る受水槽に水が残っていてもポンプが止まれば各戸へ送れない
受水槽から屋上などの高置水槽へ送る高置水槽に残っている水は重力で使える場合があるが、なくなれば断水する

ここで注意したいのが、「受水槽に水がある=自宅の蛇口から水が出る」ではないことです。

受水槽は水をためる場所であり、そこから自宅まで水を押し上げるために電動ポンプを使っているマンションがあります。

そのポンプが止まれば、下に大量の水が残っていても上の住戸へ届けられません。

受水槽に水が残っているのに断水することがある

例えば地下に受水槽があり、そこからポンプで10階の住戸まで水を送っているマンションを考えてみます。

道路の水道管は正常で、受水槽にも水が入っています。それでも地下の給水ポンプが浸水して停止すれば、各住戸まで水を押し上げられません。

つまり、「地域は断水していない」「受水槽にも水がある」「それなのに自宅では水が出ない」という状態が起こります。

2026年8月の千葉豪雨でも、千葉県は受水槽ポンプが故障したマンションに対して給水車による応急給水を行っています。

水道局側の水が正常でも、マンション側の設備が被災すれば、その建物だけ断水することが実際にあります。

停電だけなのか、給水ポンプが浸水したのかで復旧が変わる

同じ「ポンプが止まった」状態でも、原因によって復旧までの考え方が違います。

停電によって電源だけが失われているなら、建物への電力が復旧し、ポンプが正常に作動すれば再び給水できる可能性があります。

ただし、停電復旧後にポンプの再起動や確認が必要になる場合もあるため、「電気が戻ったのに水だけ出ない」というときは管理会社や管理組合への確認が必要です。

一方、給水ポンプやその制御装置自体が水につかって故障していれば、電気が戻っただけでは直りません。

点検、修理、部品交換などが終わるまで、建物だけ断水が続く可能性があります。

したがって管理会社へ確認するときは、単に「いつ水が出ますか」と聞くより、

「停電でポンプが止まっているだけですか。それとも給水ポンプ自体が浸水していますか」

と聞いた方が状況を判断しやすくなります。

高置水槽があれば停電直後も水が出る場合がある

受水槽方式でも、すべての建物が停電と同時に断水するわけではありません。

地下などの受水槽から一度屋上の高置水槽へ水を送り、そこから重力で各住戸へ給水する方式があります。

この場合、ポンプが止まっても高置水槽に残っている水がある間は蛇口から水が出ることがあります。

ただし、新たな水を高置水槽へくみ上げられなければ、残量を使い切った時点で断水します。

停電後も水が出ているからといって、「うちのマンションは断水しない」とは判断できません。

管理会社に高置水槽の有無を確認すると、なぜ停電後も水が出ているのかが分かります。

1階の共用水栓だけ水が出る場合もある

各住戸では断水しているのに、マンションの1階や敷地内の蛇口からは水が出るケースがあります。

これは、給水ポンプより手前で水道本管とつながっている水栓や、水道管そのものの圧力が届く場所があるためです。

大阪市では、直結増圧方式でも配水管が正常なら、ポンプ停止時に2・3階程度まで水が届く場合があるとしています。

福岡市も、地域によっては3階程度まで停電中でも給水できる場合があると案内しています。

また、受水槽方式でも受水槽付近に非常用給水栓が設置されているマンションがあります。

つまり、自宅の蛇口から水が出ないことと、マンション敷地内で一滴も水を取れないことは同じではありません。

断水したら、管理会社へ「非常用給水栓や停電時でも使える共用水栓はありますか」と確認する価値があります。

給水方式の条件は地域によって違う

「何階までならポンプなしで水が届く」と全国一律には決められません。

水道管の圧力、建物の高さ、配管条件、その地域の水道事業者の基準によって違うためです。

例えば大阪市では直結直圧方式を3階建てまでとしている一方、名古屋市では条件によって5階まで直圧方式を利用できます。

非常用給水栓の設置方法や直結給水の条件にも地域差があります。

そのため、「3階だから大丈夫」「5階だから必ずポンプが必要」と階数だけで判断せず、自分の建物の給水方式を管理会社と地域の水道事業者で確認する必要があります。

受水槽そのものが浸水した場合は別に考える

給水ポンプが止まっただけなのか、受水槽そのものまで浸水の影響を受けたのかも重要です。

受水槽の外側が水につかったからといって、必ず槽内の水が汚染されたと決めつけることはできません。

しかし、マンホールや通気部分などから外の水が入り込んだ可能性や、水槽自体が損傷した可能性がある場合は、ポンプが動くようになったからといって自己判断で飲用するべきではありません。

貯水槽の衛生管理では、必要な清掃や消毒を行い、その後に水質を確認する手順があります。

浸水後は管理会社や管理組合から「飲用可能」と案内されるまでは、その指示に従います。

ここは「水が出るか」と「その水を飲めるか」を分けて考える必要があります。

自分のマンションでは設備の場所まで確認する

水害時の断水リスクを調べるなら、ハザードマップの浸水深を見るだけでは十分ではありません。

同じ1メートルの浸水想定でも、給水ポンプが地下にあるマンションと、浸水しにくい高い場所にあるマンションでは条件が違います。

確認したいのは、給水方式だけではなく、受水槽、給水ポンプ、ポンプの制御盤、建物の電気設備がどこにあるかです。

国土交通省も、建物の浸水対策を考える際には、想定浸水深や過去の浸水実績を調べたうえで、浸水リスクの低い場所への電気設備の設置や、止水対策などを検討する考え方を示しています。

自分の部屋が10階にあるから安全なのではなく、10階まで水を届けるための設備が水害から守られているかを見る必要があります。

非常用発電機があっても給水できるとは限らない

マンションに非常用発電機がある場合も、「発電機があるから断水しない」とは限りません。

非常用電源がどの設備に供給される設計になっているかは建物ごとに違います。

給水ポンプへ電気を送れるマンションもあれば、非常照明や消防設備など別の設備を優先している建物もあります。

確認すべきなのは非常用発電機の有無ではなく、給水ポンプがその非常用電源の対象になっているかです。

さらに、給水ポンプそのものが水没して故障していれば、電源だけ確保しても動かせません。

「地域断水」か「マンションだけの断水」かを最初に分ける

実際に水が出なくなったら、最初に周囲の状況を確認します。

近隣の戸建てや別の建物も水が出ないのであれば、水道本管や水道施設側の断水が考えられます。この場合は地域の水道事業者の断水情報を確認します。

反対に、周囲では水が出ているのに自分のマンションだけ断水しているなら、受水槽、給水ポンプ、電気設備など建物側の問題を疑います。

その場合の問い合わせ先は、まず管理会社や管理組合です。

特に水害後は、

「水道本管は正常か」

「給水ポンプは停電停止なのか浸水故障なのか」

「受水槽内の水は使用できる状態か」

「高置水槽に残水はあるか」

「非常用給水栓は使えるか」

まで分かると、待てば復旧する状況なのか、長期断水を想定する必要があるのかを判断しやすくなります。

水が止まる前に確認しておきたいこと

大雨が近づいてから給水方式を調べるより、平常時に管理会社へ一度確認しておく方が確実です。

特に重要なのは、「受水槽がありますか」だけで終わらせないことです。

「各戸へは何で水を送っていますか」「給水ポンプはどこにありますか」「停電したら自宅の水は止まりますか」「非常用給水栓はありますか」「非常用発電機で給水ポンプを動かせますか」まで確認しておけば、水害時の状況をかなり具体的に想像できます。

飲料水については、国の防災情報では1人1日3リットルを目安に、最低3日分、できれば1週間程度の備蓄が案内されています。

特に高層階では停電によってエレベーターまで停止すると、水が手に入っても部屋まで運ぶこと自体が大きな負担になります。

マンション水害で見るべきなのは、自分の部屋の高さだけではありません。

水道本管から自宅までの途中にある設備が、どこにあり、浸水したときどこまで機能を残せるか。

ここまで確認して初めて、「このマンションでは浸水時に断水する可能性が高いのか」を判断できます。

出典

国土交通省・経済産業省|建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン

大阪市水道局|停電によるビル・マンション等の断水に備えましょう

大阪市水道局|本市における給水方式について

福岡市水道局|マンションなどの中高層建物の方向け 停電時の給水方法について

名古屋市上下水道局|給水設備について

清須市|給水方式 直結給水方式と貯水槽水道方式(受水槽方式)

厚生労働省|建築物における衛生的環境の維持管理について

千葉県|令和8年8月千葉豪雨に対する取組について

政府広報オンライン|災害時に命を守る一人ひとりの防災対策