自宅の浸水対策をしたいと思っても、困るのが「どの業者へ頼めばよいのか」です。
工務店。
外構業者。
水道業者。
止水板などの浸水対策専門業者。
どこでも一部の工事はできそうに見えます。
しかし、最初の相談先は工事名ではなく「水がどこから入るか」で決めた方が分かりやすくなります。
玄関・窓・外壁など建物から入るなら工務店やリフォーム会社。
道路や駐車場を流れる水なら外構業者。
トイレ・排水口・雨水管などから逆流するなら排水設備業者。
複数の経路がある、または原因そのものが分からないなら、工務店や浸水対策専門業者など、家全体を見て各工事を振り分けられるところへ最初に相談します。
最初に「水がどこから入る家なのか」を分ける
浸水対策リフォームで最初に決めたいのは、業者ではありません。
浸水経路です。
大きく分けると、
玄関・窓・ガレージ・換気口など建物の開口部。
道路・駐車場・庭を流れてくる地表水。
トイレ・排水口・雨水桝など排水設備からの逆流。
があります。
実際には、このうち二つ以上が同時に起きる家もあります。
たとえば道路から駐車場へ水が流れ込み、玄関前にたまり、最後は玄関から家の中へ入る。
この家で玄関止水板だけを付けても、玄関前へ大量の水を集める外構の問題は残ります。
「何を付けたいか」ではなく、「水がどこから来て、どこを通って家へ入るか」を先に確認します。
玄関・窓・外壁から入るなら工務店・リフォーム会社
建物そのものを改修するなら、工務店や住宅リフォーム会社が相談先になります。
たとえば、
玄関ドアを水密性の高いものへ替える。
掃き出し窓まわりを改修する。
床下換気口へ止水対策をする。
外壁の開口部を塞ぐ。
床を上げる。
設備を高所へ移動する。
といった工事です。
国の長期優良住宅化リフォーム推進事業でも、水害への備えとして、床下換気口への止水板、玄関ドア・サッシ交換、建物開口部への止水設備、電気設備の浸水対策などを改修工事として整理しています。
こうした工事は建物本体へ影響するため、「止水板を取り付けられる会社か」だけではなく、建物構造や防水、既存住宅の納まりまで見られる会社へ相談する方がよいでしょう。
道路・駐車場から水が流れ込むなら外構業者
大雨のたびに、
駐車場から玄関へ水が流れる。
庭へ大きな水たまりができる。
道路から敷地へ水が入る。
建物基礎の周囲に水が集まる。
という家は、外構側から見てもらいます。
外構工事では、
駐車場やアプローチの勾配。
集水桝。
雨水桝。
U字溝。
グレーチング。
透水性舗装。
敷地のかさ上げ。
などを使って、地表を流れる水の方向を変えます。
ここで重要なのは「側溝を付ければよい」と決めないことです。
敷地の高低差を測り、
どこから水が来るのか。
どこへ集めるのか。
集めた後どこへ排水するのか。
までつながって初めて排水計画になります。
駐車場や庭が原因なら、止水板を先に買うより外構の高低差を見てもらう方が先になる場合があります。
排水口・トイレから上がるなら「水道屋」より排水設備業者
大雨時に、
トイレがゴボゴボする。
排水口から水が上がる。
雨水桝が逆流する。
地下や半地下の排水が流れなくなる。
という場合は、排水設備側を確認します。
対策には、
逆流防止弁。
止水弁。
排水管の変更。
貯留槽。
排水ポンプ。
などがあります。
国土交通省・経済産業省の浸水対策ガイドラインも、下水道から排水設備を通じて逆流する可能性がある場合、バルブによる逆流防止やポンプ排水などを示しています。
この場合の相談先を単に「水道業者」と考えない方がよいでしょう。
給水設備を主に扱う業者と、下水・宅内排水設備を扱う業者は同じとは限りません。
自治体の排水設備指定工事店か、対象工事を扱える排水設備業者かを確認します。
自治体の「排水設備指定工事店」が必要な工事もある
宅内の排水管や桝を変更する工事には、自治体独自のルールがあります。
自治体によっては、排水設備の新設・改修工事を指定工事店しか施工できません。
国土交通省が示す標準下水道条例にも排水設備指定工事店制度があり、各自治体が条例で制度を設けています。
たとえば横浜市では、宅地内の排水管、汚水桝、雨水桝などを排水設備とし、設置等の工事には事前の計画確認と指定工事店による施工を求めています。
そのため、
「近所の水道修理屋さんなら誰でも逆止弁を付けられるだろう」
とは考えません。
所在地の自治体サイトで「排水設備 指定工事店」と検索するか、施工会社へ指定の有無を確認します。
止水板だけなら専門施工店という選択肢もある
水の入口が玄関、ガレージ、勝手口など明確で、止水板の設置が中心なら、止水板メーカーの施工店や浸水対策専門業者へ直接相談する方法もあります。
専門業者の中には、
止水板。
逆止弁。
排水ポンプ。
外壁防水。
など複数の浸水対策をまとめて扱うところもあります。
このタイプの会社なら、玄関だけ見て終わらず、別の浸水経路が残っていないかを確認してもらえる可能性があります。
特に、
どこから水が入るのか自分では分からない。
止水板と排水ポンプの両方が必要そう。
玄関・ガレージ・排水設備をまとめて対策したい。
という場合は、単一工事の専門店より「浸水対策全体を調査できるか」を確認して選びます。
複数の問題がある家は工務店か専門業者を窓口にする
浸水対策では、一つの業者だけで完結しないことがあります。
たとえば、
駐車場の勾配を直す。
玄関へ止水板を付ける。
排水管へ逆流防止弁を付ける。
室外機を高くする。
という家です。
外構業者だけでは建物開口部まで施工できない場合があります。
排水設備業者だけでは駐車場の勾配全体を設計しない場合があります。
工務店でも、特殊な止水板や排水設備は専門会社へ外注するでしょう。
この場合、大切なのは全部の工事を一社が自社施工することではありません。
「家全体の浸水経路を見て、どの会社が何を担当するか整理してくれる窓口」がいることです。
既存住宅を広く扱う工務店、リフォーム会社、または建物・止水・排水まで診断する浸水対策専門業者を主担当にします。
工務店だから必ず全体を見られるとは限らない
工務店を窓口にすれば必ず解決する、という意味ではありません。
普段は内装や増改築が中心で、水害対策の経験が少ない会社もあります。
相談するときは、
浸水対策の施工経験がありますか。
止水板だけでなく敷地排水も確認できますか。
排水管からの逆流まで調べられますか。
必要なら外構業者や排水設備指定工事店と連携できますか。
と確認します。
「止水板なら付けられます」という回答だけでは、全体診断ができるか分かりません。
依頼したいのは製品施工ではなく、最初は浸水経路の特定です。
外構業者へ頼む境界は「地表水を動かせば解決するか」
外構業者へ単独で依頼しやすいのは、地表水の問題が中心の場合です。
駐車場の水たまり。
庭から住宅へ流れる雨水。
道路から敷地へ入る表面水。
雨水桝の位置。
駐車場やアプローチの逆勾配。
こうした問題なら、外構の高さや勾配を変えることで改善できる可能性があります。
逆に、駐車場の水を排水溝へ集めても、その先の排水管が満水になって逆流するなら、外構だけでは解決しません。
その地点から排水設備業者との連携が必要になります。
「地表を流れるところまで」が外構、「配管へ入った後」が排水設備、と分けて考えると相談先を判断しやすくなります。
水道・排水設備業者へ頼む境界は「配管内の水を制御するか」
排水設備業者が中心になるのは、配管の中を流れる水が問題の場合です。
排水管から逆流する。
雨水桝があふれる。
地下の排水を自然流下できない。
ポンプアップが必要。
既存の汚水・雨水配管を変更する。
この場合は排水設備の専門性が必要です。
特に逆止弁には、異物が詰まると正常に逆流を防止できなくなる可能性があります。
国のガイドラインでも、逆止弁を設置する場合は詰まりへの注意と平時のメンテナンスの重要性が示されています。
つまり「付けてもらえば終了」ではありません。
点検できる位置へ設置することや、誰が維持管理するかまで施工時に確認します。
止水板と排水ポンプを別々の会社へ直接頼む前に全体を見る
浸水対策で避けたいのが、
玄関へ止水板を付ける。
別の会社へ排水ポンプを頼む。
さらに外構会社へ排水溝を頼む。
というように、それぞれを個別発注して全体を誰も見ていない状態です。
止水板で道路からの水を止めると、敷地内に降った雨は外へ出にくくなる場合があります。
排水ポンプを付けても、吐出先の水位が高ければ思うように排水できないことがあります。
逆流防止弁を閉じると、その間は住宅側からの排水も流せない構成があります。
一つの設備を追加すると、水の流れの別の場所に影響が出ることがあります。
複数設備を入れる家では、一度すべてを同じ排水・止水計画上に載せてから発注します。
「どこから入ったか分からない」が一番、単独発注に向かない
過去に浸水したものの、
玄関から入ったのか。
床下から来たのか。
外壁の開口からなのか。
排水口から逆流したのか。
分からないケースもあります。
この状態で、
「とりあえず止水板を付けよう」
と製品を先に決めるのは避けた方がよいでしょう。
浸水した高さ。
泥や水跡が残っていた場所。
道路・敷地の水位。
排水口の状況。
当時の写真や動画。
などを施工会社へ見せます。
原因が複数考えられるなら、建物と外構、排水設備をまたいで調査できる会社から始めます。
業者を呼ぶ前に写真を用意しておく
現地調査を依頼するときは、普段の晴れた日の写真だけでは判断しにくい場合があります。
過去に大雨があったなら、
道路の冠水状況。
駐車場の水の流れ。
玄関前の水位。
雨水桝。
側溝。
トイレや排水口の状態。
家の周囲。
を撮った写真や動画が役立ちます。
可能なら、どの場所から最初に水が来たかも記録します。
「豪雨になると玄関が浸水します」より、
「道路が冠水すると駐車場入口から流れ込み、玄関前へ集まり、約30分後に玄関から入ります」
と伝えた方が、必要な業種を判断しやすくなります。
見積もりの前に「原因と担当範囲」を書いてもらう
複数業者が関係する工事では、金額だけ比較しない方がよいでしょう。
見積もり時には、
想定する浸水経路。
今回止める水。
今回の工事では止められない水。
工務店の施工範囲。
外構業者の施工範囲。
排水設備業者の施工範囲。
完成後の維持管理。
を確認します。
特に重要なのは「今回の工事では残る弱点」です。
玄関止水板を付けても勝手口は残る。
駐車場排水を改善しても下水逆流は残る。
逆流防止弁を付けても道路からの表面水は止まらない。
こうした条件まで説明できる業者の方が、単に設備を販売する会社より判断材料を出してくれます。
結局どこへ最初に頼むか
自宅の症状から、最初の相談先は次のように分けられます。
| 起きていること | 最初の相談先 |
|---|---|
| 玄関・窓・外壁・床下から入る | 工務店・住宅リフォーム会社 |
| 駐車場・庭・道路から水が流れ込む | 外構・造成業者 |
| トイレ・排水口・雨水桝から逆流する | 排水設備業者・自治体の指定工事店 |
| 止水板を特定の開口へ設置したい | 止水板施工店・浸水対策専門業者 |
| 原因が複数ある | 工務店・浸水対策専門業者を窓口にする |
| 原因そのものが分からない | 建物・外構・排水を横断して調査できる業者 |
これは業者の肩書だけで決める表ではありません。
同じ「工務店」でも対応範囲は違います。
問い合わせ時に、自宅で起きている浸水経路を説明し、その範囲を診断・施工できるか確認してください。
浸水対策リフォームは「工事を頼む会社」より「原因を切り分ける会社」を先に決める
浸水対策リフォームでは、工務店・外構・水道業者の中から一社を選べば終わりではありません。
水が建物から入るなら建築。
地面を流れてくるなら外構。
排水管から戻るなら排水設備。
というように、原因によって専門分野が変わります。
そして複数の経路が重なっている家では、一社ずつ別々に工事を頼む前に、家全体の水の流れを見てもらいます。
最初に依頼するべきなのは、
「この製品を付けてください」
という工事ではありません。
「この家はどこから水が入り、どこを直せば浸水を減らせるのかを調べてください」
という診断です。
その診断結果から工務店、外構、排水設備業者へ仕事を分ける。
これが、浸水対策リフォームで相談先を選ぶときの判断線です。
出典
国土交通省・経済産業省|建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン 解説編「排水・貯留設備における逆流・溢水対策」