道路より50cm高い土地|水害対策としてどこまで意味がある?

土地を見に行ったら、前面道路より敷地が50cmほど高い。

水害を気にして土地を探しているなら、

「道路より50cm高ければ、かなり安心なのでは」

と思うかもしれません。

道路と同じ高さの土地より、道路から50cm高い土地の方が、道路にたまった雨水が敷地へ直接入りにくいという意味では有利です。

ただし、この50cmをそのまま、

「50cmまでの浸水なら大丈夫」

「ハザードマップが0.5m未満なら安全」

と読み替えることはできません。

見るべきなのは、

道路面から敷地まで50cm。

敷地から1階床まで何cm。

駐車場は何cm。

そして水害時の水面がどこまで上がる想定なのか。

という、それぞれの高さです。

道路より50cm高いことは水害対策として意味があります。

ただし、何の水に対して、どこまで余裕がある50cmなのかを確認して使います。

道路より50cm高いことが効きやすいのは道路冠水

最も分かりやすく効果が出るのは、道路に雨水がたまったケースです。

短時間の豪雨で側溝や下水道が処理しきれなくなると、道路が一時的に冠水することがあります。

道路とほぼ同じ高さに敷地があれば、その水が乗入口や門から敷地へ入りやすくなります。

一方、道路から敷地が50cm上がっていれば、道路上に浅く水がたまっただけでは敷地まで届きにくくなります。

その意味で、

道路より0cm

と

道路より50cm

は同じではありません。

50cmは、道路からの雨水流入に対する一つの高さの余裕になります。

ただし「道路が50cm冠水するまで大丈夫」とは限らない

ここで注意したいのが、道路と敷地のつながり方です。

敷地全体が道路より50cm高くても、

車の乗入口だけ道路とほぼ同じ高さ。

階段脇に低い通路がある。

敷地へ下がる部分がある。

地下・半地下への入口がある。

という場合があります。

水は敷地の平均的な高さを見て入ってくるわけではありません。

一番低い入口から入ります。

したがって土地を見るときは、

「宅盤が道路+50cm」

という数字だけでなく、実際に道路と敷地がつながっている最も低い場所を確認します。

駐車場を道路高さまで下げると50cmの効果は車には使えない

道路より高い土地では、駐車しやすくするために道路側を掘り下げて駐車場を作ることがあります。

例えば、

建物部分 道路+50cm

庭 道路+50cm

駐車場 道路±0cm

という配置です。

この場合、住宅部分には50cmの高さがありますが、車にはありません。

道路冠水が20cmなら、

建物側にはまだ高さの余裕がある。

一方、駐車場には20cmの水が入る可能性がある。

という違いが出ます。

土地購入時に「道路より50cm高い」と聞いたら、宅地全体を見るだけでなく、実際に車を置く高さまで確認します。

50cmの嵩上げで内水被害を減らせるケースは実際にある

道路より50cm高くする対策に意味がないわけではありません。

国土技術政策総合研究所が住宅の水害対策を検討した事例では、道路から敷地を50cm高くする案によって、一定規模までの内水氾濫による浸水を防止できると試算されたケースがあります。

つまり50cm程度の浅い内水に対しては、敷地を高くすることが被害軽減策として機能する場合があります。

国土交通省も、宅地を盛土して地盤高を上げる「宅地のかさ上げ」を浸水被害を軽減する方法の一つとしています。

問題は、

「50cm高くすることに意味があるか」

ではありません。

「その土地で想定する水位に対して50cmで足りるか」

です。

洪水が1mなら50cm高くても残り50cmが消えるわけではない

例えば、道路と同程度の地盤を基準とした周辺で、洪水時に1m程度の水位になる状況を考えます。

道路から敷地が50cm高ければ、同じ高さの土地より浸水深を小さくできる方向には働きます。

しかし、水面が敷地面を50cm上回る高さまで達すれば、敷地には水が入ります。

したがって、

道路+50cm
+
想定浸水深50cm

を単純に引き算して、

「ハザードマップ0.5mだから浸水ゼロ」

と判断しない方がよいでしょう。

ハザードマップの浸水深がどの地盤面を基準として計算・表示されているか、候補地の実際の地盤高が周辺メッシュの中でどうなっているかまで考える必要があります。

50cm高いことは有利な材料ですが、ハザード情報を消す数字ではありません。

「敷地50cm+床50cm=1mまで安全」とも単純計算しない

木造住宅では、地盤面から1階床まで高さがあります。

建築基準法施行令では、一定の場合を除き、最下階の木造居室について直下の地面から床上面まで45cm以上とする規定があります。

そのため、

道路
↓
50cm
敷地
↓
さらに約45~50cm
1階床

という家なら、道路面から1階床まで1m近い高さになることがあります。

これは床上浸水を避けるうえで重要な高さです。

ただし、

道路から50cm
+
床まで50cm
=
1m浸水しても絶対大丈夫

という安全保証にはなりません。

換気口。

玄関。

配管貫通部。

掃き出し窓。

エアコン室外機。

給湯器。

電気設備。

など、床面より低い場所にも水害で影響を受ける部分があります。

住宅の浸水対策は、床高だけではなく水の侵入口と設備高さも一緒に考えます。

「0.5m未満=床下程度」は50cm盛土の安全基準ではない

洪水ハザードマップでは、0.5mという数字がよく出てきます。

一般住宅では、浸水深0.5m未満が床下程度、0.5m以上になると床上浸水のおそれがあるという目安があります。

しかし、これは、

「土地を道路より50cm上げれば安全」

という基準ではありません。

一般的な住宅の床高さを前提に、地盤面からどこまで水が上がると床上へ達しやすいかを表した目安です。

道路と敷地の高低差50cmとは意味が違います。

同じ「50cm」でも、

道路→敷地の50cm

地盤→床の約50cm

浸水深の50cm

は別々の数字です。

ここを混ぜないことが重要です。

内水には強くなっても大規模な外水氾濫には足りない場合がある

道路より高い土地の評価が大きく変わるのが、想定する災害の規模です。

国総研の住宅事例では、道路から敷地を50cm高くすることで一定規模の内水氾濫を防げる試算がある一方、その地点では外水氾濫による最大浸水深が3mを超える条件も想定されていました。

この違いは重要です。

短時間豪雨による浅い道路冠水
→50cmの高さが効く可能性が高い。

河川氾濫による数m規模の浸水
→50cmだけでは住宅浸水を防げない。

ということがあります。

「水害に強い土地か」を一つで判断せず、洪水と内水を分けます。

高潮・津波にも同じ50cmをそのまま当てはめない

沿岸部では、洪水・内水だけでなく高潮・津波もあります。

高潮や津波で想定される水位が大きければ、道路より50cm高いという土地条件だけでは十分ではありません。

逆に内水浸水が数十cm程度想定される地域なら、50cmの高低差が大きな意味を持つ場合があります。

つまり50cmの価値は土地だけで決まりません。

何の水害を相手にしているかで変わります。

土地購入前には、

洪水。

内水。

高潮。

津波。

を必要に応じて別々に確認します。

道路より50cm高くても周囲全体では低いことがある

道路との高低差だけでも水害リスクは決まりません。

例えば、

候補地 道路+50cm

前面道路 標高5m

周囲の住宅地 標高8m

という場所なら、道路に対しては高くても、地域全体では低い場所に位置している可能性があります。

反対に、

候補地 道路+50cm

周辺一帯もほぼ同じ微高地

であれば意味が変わります。

前記事で確認したように、土地の水害リスクを見るときは絶対的な標高だけでなく周囲との比高も重要です。

道路+50cmは、周辺地形を見る一つの比較にすぎません。

50cmの高さより「水の出口」がない方が問題になることもある

敷地が道路より高ければ、道路から水が入りにくくなる一方、敷地内に降った雨水を排水する必要があります。

通常は高い場所から低い場所へ排水しやすいため、道路より高い土地は自然勾配を取りやすい方向にあります。

しかし、

周囲を擁壁で囲われている。

排水先が限られている。

側溝へ接続できない。

雨水浸透に向かない地盤。

といった条件なら、別途排水計画を確認します。

水害対策では、

外から水を入れない

ことと、

自分の敷地に降った水を外へ出す

ことの両方が必要です。

道路より高いことだけで、排水計画が不要になるわけではありません。

高さ50cmは外構では無視できない

道路より50cm高い土地は、水害面だけを見るとメリットがあります。

一方、家づくりではその50cmを処理する必要があります。

玄関まで階段を設ける。

駐車場からスロープを設ける。

道路側の一部を切り下げる。

土留めを設ける。

といった外構計画が必要になる場合があります。

特に車の出入りのために敷地を掘り下げると、水害面で持っていた50cmの高さをその部分だけ失うことになります。

そのため、

「水害に強いよう50cmの高さは残したい」

と

「駐車しやすいよう道路高さまで下げたい」

が競合する場合があります。

土地購入前から住宅会社・外構業者に、水害対策として残したい高さも伝えて計画する意味があります。

50cmを削る前に「なぜこの土地が高いのか」も見る

造成地では、道路より敷地を高く設定していることがあります。

購入後に、

「階段が面倒だから道路と同じ高さまで削りたい」

と考える場合もあります。

しかし、その50cmが周辺から雨水が入りにくくする役割を持っている可能性があります。

もちろん、高く造成された理由が水害対策とは限りません。

地形、造成計画、道路勾配、排水計画などによって高さは決まります。

それでも、現状の高低差を消す前には、

どこまで削るのか。

水の入口が低くならないか。

駐車場だけ下げるのか。

建物部分の高さは残すのか。

を確認します。

高い土地を買ったのに、外構で水の入口だけ道路と同じ高さにすることがないようにします。

水害対策として見るなら「50cm」より設計水位を決める

最終的には、

「道路より何cm高いか」

から、

「どの高さの水まで住宅への侵入を防ぎたいか」

へ考え方を変えます。

例えば購入候補地について、

過去の道路冠水 20cm程度。

内水想定 0.5m未満。

洪水想定 0.5~3m。

という情報があれば、同じ50cmでも意味が違います。

道路+50cmの土地は浅い道路冠水への余裕としては大きい。

しかし洪水想定最大3mに対する対策としては50cmだけでは足りない。

という判断ができます。

そのうえで、

敷地高。

床高。

止水ライン。

設備の設置高。

2階への避難。

火災保険の水災補償。

などを組み合わせます。

購入前は建物より先に車の高さまで確認する

住宅の浸水対策を考えると、1階床の高さへ目が向きます。

しかし土地購入段階なら車も確認しておきたいところです。

道路より50cm高い土地でも、

駐車場を道路面まで掘り下げる。

カーポート部分だけ低い。

駐車場へ向かって下り勾配。

なら、車は住宅より先に水害を受ける可能性があります。

住宅を水から守れても、車両が浸水すれば生活への影響は大きくなります。

「敷地が50cm高い」を住宅だけに使うのか、駐車場を含む土地全体に残すのか。

外構計画まで含めて判断します。

まとめ

道路より50cm高い土地は、水害対策として意味があります。

特に短時間豪雨などで道路が浅く冠水した場合には、道路と同じ高さの土地より雨水が敷地へ入りにくくなる方向に働きます。

ただし、50cmは安全を保証する高さではありません。

洪水・高潮などで水位がそれ以上になれば浸水する可能性があり、駐車場や乗入口を道路高さまで下げれば、その部分では50cmの余裕を失います。

土地購入前には、

道路から敷地までの高さ。

敷地から1階床までの高さ。

駐車場・乗入口の高さ。

洪水・内水などの想定浸水深。

を別々に確認します。

「道路より50cm高いから安心」ではなく、「この50cmは想定する水害に対して、どこまで被害を減らせる高さなのか」と考えることがポイントです。

出典

国土技術政策総合研究所|建築物の浸水対策案の試設計に基づくその費用対効果に関する研究

国土交通省|宅地のかさ上げ、ピロティ建築等

国土交通省|宅地嵩上げについて

葛飾区|住宅浸水対策ガイドライン

住宅生産団体連合会|住宅における浸水対策の設計の手引き

国土交通省|川の防災情報「浸水深と避難行動について」

e-Gov法令検索|建築基準法施行令 第22条