新しい分譲地を見に行くと、道路も側溝も新しく、土地はきれいに平らになっています。
周囲に古い擁壁もなく、
「新しく造成した土地なら、昔の地形まで調べなくてもよいのでは」
と思うかもしれません。
結論からいうと、土地購入前に造成前の地形まで確認する意味はあります。
ただし、
昔は谷だったから危険。
昔は田んぼだったから買わない。
という判定をするためではありません。
確認したいのは、
今の平らな土地を作るために、どこを削り、どこへ土を盛ったのか。
昔水が集まっていた場所を、現在どのような排水計画で処理しているのか。
自分が買おうとしている区画が、切土・盛土・その境界のどこに位置するのか。
です。
造成前の地形は購入判断の答えではなく、「完成した分譲地のどこを詳しく確認するべきか」を知るために使います。
新しい分譲地ほど昔の地形が見えなくなっている
山林や傾斜地を造成すれば、高い部分を削り、低い部分へ土を盛って平らな宅地を作ることがあります。
谷や低地を盛土して住宅地にすることもあります。
完成後には、
道路。
側溝。
擁壁。
宅地。
公園。
が整備されるため、現地を歩いただけでは以前の谷や斜面が分からなくなることがあります。
そこで役立つのが、造成前の地形図や航空写真です。
国土地理院の地理院地図では、1970年代以降を中心に年代別の空中写真を確認でき、地域によってはさらに古い写真も利用できます。
現在の住宅地と造成前の写真を比較すれば、
以前は山の斜面だった。
谷が通っていた。
水田だった。
池があった。
といった変化が見えることがあります。
重要なのは昔の姿を見つけて不安になることではありません。
そこから「現在はどう変えたのか」へ進むことです。
昔が谷だったら「谷だから危険」ではなく盛土の位置を見る
造成前の地図を見ると、購入候補区画の付近に谷や沢があったことが分かる場合があります。
谷を土で埋めて平坦な宅地にしたものの中には、谷埋め型の盛土があります。
国土交通省は、谷埋め型盛土について、谷や沢を埋めているため盛土内部へ水が入りやすい特徴があると説明しています。
ただし、
旧地形が谷
=
現在危険
という意味ではありません。
新しく造成された分譲地であれば、
谷のどの部分を盛ったのか。
盛土の厚さはどの程度か。
地下水や雨水をどう排水する計画なのか。
擁壁はどこにあるか。
といった造成内容を確認します。
造成前の谷は「買わない理由」ではなく、造成計画を詳しく見る理由です。
大規模盛土造成地マップに入っているか確認する
谷や斜面を造成した分譲地なら、大規模盛土造成地マップも確認できます。
国土交通省では、大規模盛土造成地を主に次の2種類に分類しています。
谷埋め型は、谷などを埋めた盛土の面積が3,000平方メートル以上のもの。
腹付け型は、造成前の地盤の勾配が20度以上で、盛土の高さが5m以上のものです。
「重ねるハザードマップ」などから確認できます。
ただし、大規模盛土造成地マップに色が付いていることは、その土地が直ちに危険という意味ではありません。
国土交通省も、マップは大規模盛土造成地のおおむねの位置・規模を示すもので、掲載箇所すべてが地震時に危険というものではないと明記しています。
ここでもマップは結論ではなく、詳しく確認する入口として使います。
大規模盛土造成地マップが白でも「盛土なし」とは限らない
反対に、大規模盛土造成地マップに色が付いていなければ、盛土が一切ないという意味でもありません。
そもそも大規模盛土造成地という制度上の名称には規模要件があります。
3,000平方メートル未満の谷埋め盛土などは、大規模盛土造成地の定義には入りません。
また国土交通省は、使用した地形データの作成時期や精度によって、すべての盛土を抽出できているわけではないとしています。
特に新しい分譲地では、自治体が大規模盛土造成地マップを作成した時点より後に造成されている場合も考えられます。
そのため、
大規模盛土造成地マップが白
↓
盛土ではない
とは判断しません。
新しい分譲地ほど、売主や開発事業者が持っている造成資料を確認する方が直接的です。
新しい分譲地なら「昔の地図」から「造成図面」へ進む
造成前の地形を確認して、
「この辺りはかなり形が変わっている」
と分かったら、次に造成時の資料を確認します。
開発許可を受けて造成された土地では、造成計画のための図面が作られています。
例えば愛知県の開発許可申請では、造成計画平面図に、
切土する部分。
盛土する部分。
擁壁。
道路。
造成後の宅地地盤高。
などを記載します。
造成計画断面図では、切土・盛土を行う前後の地盤面を表示します。
さらに排水施設計画平面図には、
雨水の流れる方向。
側溝・管渠等の位置。
吐口。
最終的な放流先。
などを記載します。
つまり購入者が本当に知りたい、
「昔の谷をどうやって現在の住宅地へ変えたのか」
に近い情報は、古地図だけではなく造成図面側にあります。
自分の区画が「切土か盛土か」を区画単位で見る
大きな丘陵地を造成した場合、分譲地全体を「盛土の住宅地」「切土の住宅地」と一括りにはできません。
同じ分譲地の中でも、
高い斜面を削った切土部分。
谷側へ土を盛った盛土部分。
切土と盛土の境界付近。
が混在することがあります。
さらに一つの宅地の中を切土・盛土の境界が横切る場合もあります。
国土交通省の盛土安全対策資料でも、切盛り境界は不同沈下等を確認する場所の一つとされ、旧地形図・空中写真・造成時の切盛り図などから確認できるとしています。
したがって、
「この分譲地は山を造成した土地です」
という地域全体の説明だけではなく、
「購入する12号地はどの位置か」
まで落とします。
切土なら全部安心とも限らない
盛土より切土の方が元の地山を残しているため、一般的には安定した地盤であることが多いと説明されます。
しかし、
切土
=
何も確認しなくてよい
ではありません。
切土によって新しく斜面ができている。
斜面上に土地がある。
背後に高い造成地がある。
切土側と盛土側の境界に近い。
といった土地では、別の確認があります。
国土地理院の地形分類でも、切土地については斜面沿いの大雨による落石・崩壊などへの注意が示されています。
「盛土を避けて切土を買う」という単純な選び方ではなく、造成後の区画条件まで確認します。
昔が田んぼだったら地盤と水害をもう一度分ける
新しい分譲地になる前が水田だった場合もあります。
この場合、
元田んぼ
=
買ってはいけない
とは判断しません。
現在までに盛土・造成され、道路や排水施設が整備されている場合があるからです。
ただし確認する方向は増えます。
一つは住宅を支える現在の地盤です。
もう一つは水害です。
昔の水田が、
旧河道。
後背低地。
氾濫平野。
など、どのような地形上にあったのかを確認します。
そのうえで現在の洪水・内水ハザード、造成後の高さ、道路との高低差、排水計画を見ます。
造成によって土地が高くなっていても、地域全体の河川・排水条件まで変わったとは限りません。
「造成前は田んぼ」と「現在の住宅地の安全性」を同じ問いにしないことが重要です。
昔の谷や水田より現在の排水計画を重く見る場面もある
造成前の地形には重要な情報があります。
しかし、現在の水害リスクを旧地形だけで決めることもできません。
新しい分譲地では、
道路勾配。
道路側溝。
雨水管。
調整池。
貯留施設。
造成後の宅盤高。
などによって、水の流れが以前とは変わっている場合があります。
昔は谷底へ雨水が流れていたとしても、現在は道路・側溝によって別方向へ排水する設計になっているかもしれません。
逆に、昔の谷を埋めた場所の近くで、排水計画がどのようになっているのか確認したいケースもあります。
だから、
古地図
→昔は谷だった
→危険
ではなく、
古地図
→昔は谷だった
→どこを盛土した?
→水は現在どこへ流す?
→自分の区画はどこ?
とつなげます。
「開発許可済み」だけでなく完了まで確認する
新しい分譲地では、
「開発許可を取って造成しています」
と説明されることがあります。
開発許可制度では、道路・排水施設など必要な公共施設の整備や、地盤・擁壁など安全上必要な措置について基準があります。
さらに開発許可を受けた工事では、工事完了後に完了届を提出し、許可された開発計画に適合しているか検査を受けます。
適合が確認されれば検査済証が交付され、工事完了が公告されます。
したがって購入前には、
開発許可番号。
工事が完了しているか。
検査済証が交付されているか。
まで確認できると、造成の手続状況を整理できます。
ただし、検査済証があることは「将来どんな災害でも問題が起きない」という保証ではありません。
許可された造成計画どおり工事されたことを確認する資料として使います。
開発登録簿から確認できる情報もある
開発許可を受けた土地には、都市計画法に基づく開発登録簿が作成されます。
開発登録簿には、
開発許可年月日。
予定建築物の用途。
公共施設の種類・位置・区域。
開発許可の内容。
などが登録されます。
土地利用計画図も登録簿の一部です。
自治体の窓口で閲覧できるため、新しい分譲地で開発許可の内容を確認したい場合の資料になります。
ただし、開発登録簿だけですべての造成詳細が分かるとは限りません。
切土・盛土の詳細や造成断面、排水計画については、売主・開発事業者が保有する造成関係図面や、自治体で確認できる資料の範囲を問い合わせます。
大規模盛土造成地マップより造成業者の図面を優先できる新築分譲地もある
古い住宅地では、造成時の詳細図面をすぐ確認できないことがあります。
その場合、大規模盛土造成地マップや旧版地図、航空写真の価値が高くなります。
一方、完成したばかりの新しい分譲地なら、開発事業者が造成計画図や排水計画などを持っている可能性があります。
この場合、
古地図だけから盛土範囲を推測する
より、
造成図面で実際の切土・盛土を確認する
方が直接的です。
新しい分譲地で昔の地形を調べる意味は、昔の写真だけで土地を評価することではありません。
造成事業者へ、
「この谷をどう造成しましたか」
「この区画は盛土部分ですか」
と具体的な質問をする材料にすることです。
造成前と造成後を並べると確認点が見えてくる
例えば現在は平坦な20区画の分譲地でも、造成前の航空写真を見ると中央に谷があったとします。
そこで終わらず、
造成前
谷
↓
造成計画
谷部分を盛土
↓
現在
住宅地中央部
とつなげます。
さらに、
購入候補の区画は谷の中央か、端か。
盛土はどの程度あるか。
切土との境界はどこか。
雨水はどちらへ排出する計画か。
下流側に調整池・水路等があるか。
を確認します。
旧地形が分かることで、「何を聞けばよいか」が具体的になります。
昔が池・水路だった場合も「埋めたから危険」では終わらせない
造成前の航空写真で池や水路が見つかる場合があります。
この場合も、
昔は池だった
→購入しない
と機械的に判断する必要はありません。
確認したいのは、
どの範囲が水部だったのか。
どのように埋め立て・造成したのか。
現在の地盤調査ではどう評価されているのか。
現在の雨水排水はどこへ変更されたのか。
です。
国土地理院では、池・湖・河川などの水部を埋立・盛土等によって陸化した場所を「旧水部」などとして確認できる場合があります。
土地履歴を現在の地盤・水害情報へつなげます。
造成前の地形だけでは分からないこともある
旧版地図や航空写真は非常に便利ですが、万能ではありません。
写真を見ても、
盛土を何m入れたか。
どの土を使ったか。
どのように締め固めたか。
地下排水をどのように施工したか。
現在の地盤強度がどうなっているか。
までは分かりません。
大規模盛土造成地マップも、個々の宅地の安全性そのものを判定する地図ではありません。
そのため旧地形の確認は、
昔を調べる作業
で終わらず、
現在の造成図面。
開発・造成手続。
地盤調査。
擁壁。
排水。
へ戻します。
分譲地の中で区画を選ぶ材料にもなる
同じ分譲地に複数の販売区画が残っているなら、造成前の地形は区画選びにも使えます。
例えば、
A区画は切土部分。
B区画は盛土部分。
C区画は切盛り境界。
という違いが分かる場合があります。
別の分譲地なら、
道路より宅盤が高い区画。
調整池や水路に近い区画。
擁壁上・擁壁下の区画。
などの違いもあります。
分譲地全体を、
「新しい造成地だから同じ条件」
と考えないことが重要です。
同じ販売価格帯でも、区画ごとの地盤・高低差・排水条件が違うことがあります。
土地購入前なら売主へ「造成前は何でしたか」だけで終わらせない
売主や住宅会社へ、
「ここ、以前は何だったんですか」
と聞くことは調査の入口になります。
ただ、もう一段具体的にします。
造成前の地形図・航空写真は確認できますか。
この区画は切土・盛土のどちらですか。
切土と盛土の境界はどこですか。
造成計画平面図・断面図はありますか。
雨水の排水先はどこですか。
擁壁は開発工事で新設したものですか。
開発許可・工事完了検査の状況は確認できますか。
地盤調査は土地購入前に確認できますか。
こう聞けば、
「昔は山でした」
という大きな説明から、購入する一筆の条件へ進めます。
新しい分譲地でも造成前まで見た方がよいケース
特に造成前の確認価値が高いのは、現在の地形から以前の姿を想像しにくい土地です。
例えば、
丘陵地を大きく平らにした分譲地。
周囲に大きな擁壁がある分譲地。
造成地内で高低差が大きい。
昔の地図では谷・池・水田だった。
大規模盛土造成地に該当する。
土地の一部が切土・盛土境界になっている可能性がある。
といった場合です。
反対に、造成前後で地形がほとんど変わっておらず、平坦な土地を区画整理した程度で、造成内容・排水・地盤資料も確認できるのであれば、古地形だけを過度に深掘りする必要性は下がります。
「新しい分譲地だから全部調べる」のではなく、造成による地形改変が大きい土地ほど確認を一段増やします。
造成前の地形は「買う・買わない」ではなく現在の造成を読むために使う
新しい分譲地について造成前の地図を見ると、
谷だった。
斜面だった。
田んぼだった。
池だった。
という情報が見つかることがあります。
しかし、それだけでは現在の土地の安全性は決まりません。
購入前に重要なのは、
造成前の地形
↓
切土・盛土の位置
↓
購入区画との位置関係
↓
擁壁・排水計画
↓
開発工事の完了
↓
現在の地盤・ハザード
までつなげることです。
古い地形を見て終わるのではなく、新しい造成地が「その地形をどう処理して現在の宅地になったのか」を確認します。
まとめ
新しい分譲地でも、土地購入前に造成前の地形を確認する意味はあります。
ただし、昔が谷・水田・池だったことだけで購入可否を決めるためではありません。
造成前の地形を見ることで、
どこが切土か。
どこが盛土か。
切土・盛土の境界はどこか。
昔水が集まっていた場所を現在どう排水しているか。
という確認点が見えてきます。
その後、造成計画図、排水計画、擁壁、開発登録簿、工事完了状況、地盤調査など現在の資料へ戻ります。
新しい分譲地で大切なのは、「昔の土地が安全だったか」を判定することではありません。
現在のきれいな宅地が、元の地形をどう変えて作られた土地なのかを理解したうえで購入することです。