中古住宅の浸水歴を購入前に調べる|売主・自治体・過去資料の確認方法

中古住宅を購入するとき、

「この家は過去に浸水したことがありますか」

と聞いておきたい人は多いと思います。

洪水ハザードマップを確認していても、実際にその家へ過去に水が入ったことがあるかは別の情報です。

特に中古住宅では、

道路だけ冠水した。

敷地まで水が来た。

床下まで入った。

床上まで浸水した。

という違いがあります。

さらに、建物内部まで浸水していた場合には、

どこから水が入ったのか。

床・壁・断熱材・設備をどこまで交換したのか。

その後に不具合が出ていないか。

まで確認したいところです。

土地購入で見る「地域の浸水実績」からもう一段下げて、中古住宅では「この建物そのものがどうだったか」まで調べます。

重要事項説明のハザードマップと「この家の浸水歴」は別

不動産取引では、水防法に基づく水害ハザードマップがある場合、洪水・内水・高潮について、取引対象物件のおおむねの位置を示して説明することになっています。

これは土地・建物の水害リスクを知る重要な情報です。

ただし、ここで確認しているのはハザードマップ上の位置です。

例えば、

洪水浸水想定0.5~3m

という情報が分かっても、

この住宅が過去に床上浸水したことがあるか

までは分かりません。

反対に現在の洪水ハザードマップでは色が付いていなくても、過去に内水や小さな水路の氾濫などで浸水している可能性があります。

したがって中古住宅では、

現在のハザードマップ

と

その家の過去の浸水履歴

を別々に確認します。

売主には「浸水歴がありますか」だけで終わらせない

中古住宅で建物固有の過去を最も知っている可能性が高いのは売主です。

国土交通省も、宅地・建物の過去の履歴や性状など、売主・所有者しか分からない事項については、告知書を活用して買主へ情報提供することを推奨しています。

そこで、

「過去に浸水したことはありますか」

と聞きます。

ただし「ありません」「あります」の二択だけでは、購入判断には情報が足りません。

浸水歴があるなら、

何年何月か。

原因は何だったか。

道路冠水だったのか。

敷地まで入ったのか。

床下までか。

床上までか。

建物内のどの部屋まで影響したか。

水はどこから入ったのか。

を確認します。

「浸水あり」という一言を、建物のどこまで被害が及んだのかに分解します。

「敷地浸水」と「建物浸水」は分ける

例えば売主から、

「東海豪雨のときに浸水しました」

と聞いたとします。

これだけでは被害内容が分かりません。

前面道路が冠水しただけ。

庭・駐車場まで水が入った。

床下まで水が入った。

1階床上まで浸水した。

では、建物への影響が大きく違います。

中古住宅を買う側が特に確認したいのは、

水が建物内部まで入ったか

です。

そのため、

「浸水したことがありますか」

より、

「敷地内まで水が入ったことがありますか」

「床下へ水が入ったことがありますか」

「1階の床より上まで水が来たことがありますか」

と分けて聞く方が具体的です。

床上浸水したなら「何cm」より「何が水につかったか」を確認する

床上浸水があった場合、何cmまで水が来たのかも確認したい情報です。

ただし、中古住宅では水深だけで終わらせません。

例えば床上20cmだったとしても、

床材。

床下地。

壁下地。

断熱材。

コンセント。

給湯設備。

エアコン設備。

キッチン等。

のどこまで影響したのかによって修繕内容が変わります。

購入判断では、

水が何cmだったか

から、

水に触れた部材をその後どう処理したか

へ進みます。

浸水した後の「修繕履歴」が中古住宅では重要

浸水歴が分かった場合、次に確認したいのが修繕です。

例えば、

床を交換した。

畳だけ交換した。

壁紙だけ張り替えた。

石膏ボードまで交換した。

断熱材まで取り替えた。

床下を乾燥・消毒した。

電気設備を交換した。

給湯器を交換した。

といった違いがあります。

国土交通省の現在の宅建業法の解釈・運用でも、売主の告知書で確認する建物関係の事項として、増改築・修繕の履歴や腐食等の有無などが挙げられています。

浸水したという過去そのものより、その後どのような修繕をして現在の状態になったのかを確認します。

修繕済みなら工事資料が残っていないか聞く

売主が、

「全部直しました」

と説明した場合も、もう一段確認します。

残っていれば、

修繕工事の見積書。

請求書・領収書。

工事写真。

リフォーム会社の施工記録。

保険請求時の資料。

罹災証明書等。

当時撮影した被害写真。

などを見せてもらえるか確認します。

すべての中古住宅で資料が残っているわけではありません。

古い浸水なら何も残っていない場合もあります。

重要なのは、

資料がない
=
修繕していない

と決めることではありません。

売主の説明を裏付ける資料がどの程度残っているのかを見ることです。

「浸水歴なし」と言われても自治体の実績を確認する

売主から、

「私が住んでから浸水したことはありません」

と言われても、そこで調査を終えません。

その売主が所有する以前の水害は知らない可能性があるからです。

相続で取得した住宅。

中古で購入した住宅。

長期間空き家だった住宅。

などでは、現在の売主が建築当初から住んでいるとは限りません。

そこで自治体や都道府県の過去浸水資料を確認します。

愛知県では「マップあいち」の水害情報マップで、伊勢湾台風、東海豪雨、平成20年8月豪雨、令和5年6月豪雨など複数の浸水実績を確認できます。

候補住宅の住所周辺に過去の浸水区域がないかを確認します。

自治体の浸水実績図は「この家が浸水した証明」ではない

自治体の浸水実績図を見ると、購入予定の中古住宅付近が着色されていることがあります。

そこで、

「この家は過去に床上浸水していますね」

と確定することはできません。

浸水実績図は、多くの場合、被害報告や調査結果などから大まかな浸水範囲を示した資料です。

例えば岡崎市は、各豪雨時の宅地被害報告などから周辺道路の高さを考慮して大まかな範囲を着色しており、個々の土地について浸水の有無や浸水深を示すものではないと説明しています。

愛知県の浸水実績図も、把握できた情報から「概ねの浸水範囲」を示すもので、すべての浸水実績を反映したものではありません。

自治体資料は、

「この家が確実に浸水した証拠」

ではなく、

「この地域では当時、実際に水が来ていたので建物履歴をもう一度確認する理由」

として使います。

売主は「なし」・自治体は浸水区域なら理由を聞く

中古住宅で特に確認したいのが、情報が食い違った場合です。

例えば、

売主
「浸水したことはありません」

自治体の浸水実績図
「物件周辺は浸水範囲」

だったとします。

この場合、どちらかが間違っているとは限りません。

候補住宅だけ宅盤が高かった。

道路だけ浸水した。

隣家まで水が来たが候補住宅には入らなかった。

現在の売主が取得する以前の水害だった。

自治体の実績図が大まかな範囲表示だった。

といった可能性があります。

そこで、

当時この家は建っていたのか。

現在の売主は当時住んでいたのか。

周囲の道路は浸水したのか。

建物の床高は周囲より高いのか。

まで確認します。

資料が食い違ったときこそ、その中古住宅固有の情報が見つかることがあります。

売主は「浸水あり」・自治体資料には色なしでも否定しない

反対に、

売主
「昔、床下まで水が来ました」

自治体資料
「浸水実績の色なし」

という場合もあります。

このとき自治体の地図を根拠に、

「記録にないから浸水していないはず」

とは判断しません。

自治体の浸水実績図は、すべての被害を記録しているとは限らないからです。

局所的な道路冠水。

小さな水路からの溢水。

排水不良による内水。

個別住宅だけの浸水。

などが、広域の実績図に反映されていない場合も考えられます。

中古住宅では、売主の具体的な証言も一つの重要な資料として残します。

不動産情報ライブラリでも災害履歴を確認する

2025年12月から国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、水害・土砂災害・地震災害の「災害履歴」を地図上で表示できるようになりました。

現在の洪水浸水想定区域などと過去の災害履歴を同じ地図上で確認できます。

中古住宅を探す場合、

現在のハザード
+
過去の水害履歴

を比較する入口として便利です。

ただし、不動産情報ライブラリの災害履歴も、収集できた資料に基づく情報で、過去のすべての災害が掲載されているわけではありません。

国の資料を見て終わらず、都道府県・市町村の浸水資料へ進みます。

愛知県の中古住宅なら「マップあいち」も見る

愛知県内の物件なら、「マップあいち」の水害情報マップも確認します。

複数の過去水害を切り替えられるため、

一度だけ周辺が浸水している。

東海豪雨と平成20年8月豪雨の両方で浸水している。

令和5年6月にも浸水している。

といった違いが見えてきます。

ただし「色の回数=水害危険度」と点数化するものではありません。

それぞれ雨量・浸水原因・当時の土地条件が違うためです。

同じ地域で複数回確認できた場合には、自治体資料や現在の排水対策をさらに調べる理由にします。

西三河では市町村独自の資料も確認する

愛知県の広域資料だけでなく、市町村独自の情報もあります。

例えば岡崎市では、東海豪雨や平成20年8月末豪雨について浸水実績図を公開し、60分最大雨量図や時間雨量図なども確認できます。

西尾市では洪水・内水ハザードマップに過去の浸水実績を掲載しています。

安城市では、市の土木課で平成9年、平成11年、平成12年の浸水実績をまとめた「安城市浸水マップ」を確認できるほか、マップあいちも案内しています。

中古住宅の住所が決まったら、

市町村名+浸水実績

市町村名+浸水履歴

でも検索します。

県と市町村では持っている資料の範囲が違う場合があります。

築年数と浸水年を比べる

自治体資料で平成12年の東海豪雨時に周辺が浸水していたとします。

そこで中古住宅の建築年を確認します。

例えば、

住宅完成 2010年
東海豪雨 2000年

なら、その建物自体は東海豪雨を経験していません。

土地・周辺地域の浸水履歴ではありますが、建物の浸水歴ではありません。

反対に、

住宅完成 1995年
東海豪雨 2000年

なら、その住宅は当時すでに存在していた可能性があります。

そこで売主へ、

「2000年の東海豪雨時に、この建物への浸水はありませんでしたか」

と具体的に聞けます。

築年数と災害発生日を重ねることで、質問の精度が上がります。

所有者が変わっている中古住宅は「知らない」を分ける

売主の回答が、

「浸水歴は分かりません」

という場合があります。

これも意味を分けます。

建築当初から住んでいるが記憶にない。

中古で購入したため、それ以前は分からない。

相続しただけで住んでいなかった。

賃貸物件だったため詳細が分からない。

では情報の重みが違います。

「分からない」を「浸水歴なし」に置き換えないことが重要です。

不明なら、

いつから所有しているのか。

前所有者から資料を引き継いでいるか。

過去の修繕資料はあるか。

を確認します。

リフォーム済み中古住宅ほど「何を直したか」を聞く

内見すると、1階だけ非常にきれいにリフォームされている中古住宅があります。

もちろん通常の改装かもしれません。

それだけで浸水を疑う必要はありません。

ただし過去浸水が確認された住宅なら、

いつリフォームしたか。

何のために行ったか。

どこまで撤去・交換したか。

を確認する意味があります。

例えば、

床だけ張り替えたのか。

床下まで確認したのか。

壁下地まで交換したのか。

断熱材も交換したのか。

設備も交換したのか。

を聞きます。

「リフォーム済み」という言葉より、施工範囲を確認します。

インスペクションで分かること・分からないことを分ける

中古住宅では、購入前に建物状況調査(インスペクション)を利用する方法があります。

国土交通省の制度では、講習を修了した建築士が、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分などについて、目視・計測等を中心に劣化事象等を確認します。

これは建物の現在の状態を確認するために役立ちます。

ただし、インスペクションは、

この住宅が20年前に床上浸水したか

を判定するための履歴調査ではありません。

また目視等で確認できない壁内部など、すべてを調査するものでもありません。

そこで、

売主・過去資料
→過去に何が起きたか

インスペクション
→現在どんな劣化事象が見えるか

と役割を分けます。

浸水歴があるなら調査者にも先に伝える

過去に床下・床上浸水していたことが分かった住宅でインスペクションを依頼するなら、その情報を調査前に伝えておく意味があります。

例えば、

何年に浸水した。

床上○cm程度だったと聞いている。

1階をリフォームしている。

床下を交換したか不明。

といった情報です。

浸水歴を知らずに通常の中古住宅として見る場合と、

過去に水が入った建物だと分かったうえで現在の状態を見る場合

では、買主が専門家へ相談したい内容も変わります。

必要に応じて、通常の建物状況調査の範囲を超える追加調査が必要かも建築士等へ相談します。

内見では「浸水跡探し」だけをしない

中古住宅の浸水歴を調べる記事では、

壁のシミ。

カビ。

木部の変色。

を探す方法が紹介されることがあります。

参考にはなります。

ただし、

シミがない
=
過去浸水なし

とは判断できません。

内装を交換していれば見えなくなります。

反対にカビ・変色があっても、結露・雨漏り・配管漏水など別原因かもしれません。

現地では、

床下の湿気。

木部の腐食。

壁・床の不自然な改修範囲。

設備交換時期。

外壁・基礎周辺の高さ。

敷地と道路の高低差。

などを確認します。

そして気になるものがあれば、見た目だけで浸水と断定せず専門家へ確認します。

「浸水歴あり」でも購入を即中止する必要はない

過去に浸水した中古住宅だからといって、それだけで購入してはいけないとは言えません。

例えば、

過去に一度、道路・敷地が冠水しただけ。

その後に大規模な排水施設が整備された。

住宅の宅盤が嵩上げされた。

必要な建物修繕が実施され記録も残っている。

現在の建物状態にも大きな問題が確認されない。

というケースもあります。

一方、

複数回床上浸水している。

原因が現在も残っている。

修繕内容が不明。

現在も床下などに劣化の懸念がある。

現在の内水・洪水想定も大きい。

という条件が重なるなら慎重に判断します。

購入判断に使うのは「浸水歴あり・なし」ではなく、

過去の被害
+
その後の対策
+
現在の建物状態
+
これからの水害想定

です。

売買契約前には口頭回答をそのままにしない

売主から重要な説明を聞いたら、

「そうなんですね」

で終わらせない方がよいでしょう。

購入判断に影響する浸水履歴や修繕履歴については、売主の告知書・物件状況報告書など、書面の記載内容も確認します。

例えば、

○年○月の豪雨で床下浸水。

床上浸水なし。

○年○月に床下清掃・乾燥実施。

その後浸水なし。

といった内容です。

国土交通省も、売主しか分からない物件の履歴・性状について、告知書による情報提供を将来の紛争防止に役立つものとして位置付けています。

中古住宅では、売主が知っている過去と、買主が購入する現在の建物状態をつなぐ資料として確認します。

売主・自治体・建物を3方向から確認する

中古住宅の浸水歴は、一つの情報源だけで確認するより3つに分けると整理しやすくなります。

売主側では、

実際に経験した浸水。

過去の所有者から聞いたこと。

修繕履歴。

残っている写真・工事資料。

を確認します。

自治体・公的資料では、

地域の過去浸水。

洪水・内水ハザード。

災害履歴。

当時の雨量。

その後の治水・排水対策。

を確認します。

建物側では、

現在の劣化。

修繕箇所。

床下・壁等の状態。

道路・敷地・床の高さ。

を確認します。

3つの情報が一致すれば状況を理解しやすくなります。

食い違った場合は、その理由が購入前の追加調査ポイントです。

まとめ

中古住宅の浸水歴を調べる場合、ハザードマップだけではその建物固有の過去までは分かりません。

まず売主へ浸水経験を確認し、

道路冠水。

敷地浸水。

床下浸水。

床上浸水。

を分けます。

浸水歴があれば、発生年月、原因、水位、浸水した部位、その後の修繕内容と資料の有無まで確認します。

次に愛知県や市町村の浸水実績図、不動産情報ライブラリなどで地域側の記録と照合します。

さらに、建物状況調査などを利用して現在の建物状態を確認します。

重要なのは、

「浸水歴がありますか」

という一問で終わらせないことです。

中古住宅では、

何が起きた
↓
どこまで水が入った
↓
何を直した
↓
今どうなっている
↓
今後も同じ原因が残っているか

までつなげてから購入を判断します。

出典

国土交通省|宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版)

国土交通省|宅地建物取引業法施行規則の改正について(水害ハザードマップ)

国土交通省|既存住宅流通について(建物状況調査・インスペクション)

国土交通省|既存住宅インスペクション・ガイドライン

国土交通省|不動産情報ライブラリ「災害履歴」データ追加

愛知県|浸水実績図

岡崎市|浸水実績図を作成しました

西尾市|内水ハザードマップ

安城市|安城市水害ハザードマップ

不動産適正取引推進機構|浸水に関する不動産取引紛争事例