道路より30cm低い土地|家を建てても大丈夫?

土地を見に行ったら、前面道路より敷地が30cmほど低い。

価格や立地は気に入っていても、

大雨で道路から水が入ってこないか。

家を建てるときに盛土が必要ではないか。

排水できるのか。

と気になります。

結論からいうと、道路より30cm低いという理由だけで「買ってはいけない土地」とは決まりません。

ただし、「30cmくらいなら問題ない」と考えるのも早いです。

確認したいのは30cmという数字ではなく、

道路にたまった水が敷地へ入る形になっているか。

敷地内に降った雨を外へ排水できるか。

建物・駐車場をどの高さに計画するか。

です。

土地を買ってから盛土を考えるのではなく、この3点を契約前に確認します。

まず「30cm低い」が本当に30cmなのか確認する

最初に確認したいのが、高低差の測り方です。

現地を見た印象で、

「道路より30cmくらい低そう」

という場合と、測量した結果30cm低い場合では意味が違います。

地理院地図などの標高データから、

道路 10.5m

候補地 10.2m

だから30cm低い、と判断した場合も注意が必要です。

地理院地図は地域全体の高低差を見るには便利ですが、住宅の敷地と道路との数十cm単位の差を確定するための測量図ではありません。

国土地理院の数値標高モデルはデータによって精度が異なり、航空レーザー測量によるDEM1A・DEM5Aでも高さ精度はRMS0.3m以内とされています。

30cmという差そのものが、標高データの平均的な誤差と同程度になる場合があります。

購入判断では地図で大まかな地形を確認し、実際の道路境界付近・敷地・建築予定位置の高さは測量資料や現地測量で確認します。

30cmは「建てられる・建てられない」の基準ではない

道路より30cm低いと、

「建築基準法で家を建てられないのでは」

と心配になるかもしれません。

建築基準法19条では、建築物の敷地は接する道路の境より高くし、建築物の地盤面も周囲の土地より高くすることを原則としています。

ただし、敷地内の排水に支障がない場合などには例外があります。

また、湿潤な土地や出水のおそれが多い土地では、盛土・地盤改良など衛生・安全上必要な措置を講じることも求めています。

つまり法律にも、

「道路より30cm低ければ不可」

という全国共通の数字はありません。

問題になるのは、その高低差の状態で雨水・汚水を適切に処理でき、建築物の安全・衛生を確保できるかです。

30cmを境界線にせず、実際の排水計画から判断します。

一番先に見るのは「道路の水が敷地へ入るか」

道路より土地が低い場合、土地側だけを見るのではなく前面道路を見ます。

短時間に強い雨が降り、側溝や下水道で処理しきれなくなると、道路が一時的に冠水することがあります。

このとき道路より敷地が低く、乗入口から敷地へ向かって下り勾配になっていれば、道路上の水が敷地へ流れ込む経路になります。

西宮市も、道路より低い敷地では、道路冠水時に道路や満水になった下水管から敷地へ雨水が流入し、車両水没や宅内への逆流につながる事例があるとして、かさ上げ・止水板・逆流防止弁・排水ポンプなどの検討を呼びかけています。

したがって見るべきなのは、

「道路より30cm低い」

という高さだけではありません。

道路に水がたまったとき、その水がどこから敷地へ入ってくるのかです。

道路より低くても、水が入らない形なら条件は変わる

同じ30cmでも土地の形によって状況は違います。

例えば道路との境界部分だけが30cm低く、敷地奥へ向かって高くなっている土地があります。

反対に、

道路より30cm低い。

左右の隣地も高い。

敷地奥も高い。

候補地だけが皿の底のように低い。

という土地もあります。

後者は敷地へ入った水が逃げにくいため、同じ30cmでも意味が大きく変わります。

国土地理院も、洪水時の水の動きを考える際には絶対的な標高だけでなく、周囲との「比高(相対的な高さ)」を見ることが有効としています。

道路との1か所の高さだけでなく、土地全体が周囲に対してどの位置にあるかを確認します。

次に見るのは「敷地の水をどこへ出すか」

道路から水が入る問題とは別に、

敷地内へ降った雨をどう出すか

を確認します。

住宅を建てれば、

屋根。

駐車場。

アプローチ。

庭。

などへ雨が降ります。

その雨水を、

道路側溝へ流すのか。

公共の雨水施設へ接続するのか。

敷地内へ浸透させるのか。

貯留するのか。

は地域・土地によって変わります。

道路より敷地が低い場合、自然勾配だけでは予定している排水先へ流せない場合があります。

その場合には、敷地の高さを上げる、排水方法を変える、必要に応じてポンプを使うなどの検討が必要です。

「道路から水が入らない」だけでは足りません。

敷地に降った水を外へ出せることまで確認して、初めて排水計画になります。

雨水が出せないことと、汚水が出せないことも別

道路より低い土地では、雨水と生活排水も分けて確認した方がよいでしょう。

トイレ・浴室・キッチンなどから出る汚水を公共下水道へ流す場合、通常は高い場所から低い場所へ自然流下させます。

ただし、

土地が道路より30cm低い
=
必ず汚水ポンプが必要

というわけではありません。

道路の下にある下水道本管や公共ますが十分深ければ、敷地が道路より低くても自然勾配を確保できる場合があります。

一方、本管・公共ますとの高さ関係によって自然流下できなければ、ポンプによる排水が必要になることがあります。

実際、自治体には「道路より宅地が低く自然流下できない住宅」を対象とした汚水ポンプ制度があります。

土地購入前には道路面の高さだけでなく、公共ますの位置・深さや下水道への接続方法も確認します。

30cm盛土すれば解決、でもない

敷地が道路より30cm低いなら、

「30cm土を入れて道路と同じ高さにすればいい」

と考えたくなります。

盛土は対策の一つです。

しかし、道路と同じ高さにすれば水害リスクがなくなるわけではありません。

道路自体が大雨で30cm以上冠水すれば、道路面まで土地を上げただけでは足りません。

洪水ハザードマップで1m以上の浸水が想定されている場所なら、30cmの盛土だけを見て安全とは判断できません。

逆に、水害想定が小さく、問題が道路から敷地へ流れ込む雨水だけなら、敷地・建物の高さや排水を調整することで対応できる可能性があります。

「現在30cm低いから30cm上げる」ではなく、

何に対して、どこまで高くする必要があるのか

を設計から決めます。

家だけ高くすると駐車場に水が集まることがある

建物への浸水を避けるため、

建物部分だけ盛土する。

基礎を高くする。

床の高さを上げる。

という方法もあります。

ただし、その場合には駐車場や庭を別に考えます。

建物は道路より高いのに、

駐車場は道路より30cm低い。

道路から駐車場へ下り勾配。

駐車場の奥に建物の盛土がある。

という形なら、駐車場が水のたまり場になる可能性があります。

家は床上浸水しなくても、先に車が水没することがあります。

土地購入前には「家を建てられる高さ」だけでなく、

建物。

玄関。

駐車場。

道路。

排水口。

の高さを一つの敷地計画として確認します。

盛土すると隣地との関係も変わる

敷地全体を30cm以上高くする場合には、別の確認も出てきます。

土地を高くすると、以前は自分の敷地へ流れていた雨水が隣地側へ向かう可能性があります。

敷地境界に土を保持する工作物が必要になる場合もあります。

さらに盛土量が増えれば、

地盤の締固め。

沈下。

土留め・擁壁。

敷地内排水。

道路への乗入れ勾配。

なども建築・外構計画へ影響します。

一定規模以上の盛土等については、規制区域内で盛土規制法による許可等が必要になる場合もあります。

「土地代+住宅価格」だけでなく、土地を希望する高さまで使える状態にする造成費まで含めて比較します。

ハザードマップが白でも「30cm低い」は現地情報として残す

候補地が洪水ハザードマップで無着色の場合、

「ここは水害の想定がないから、道路より低くても問題ないのでは」

と思うかもしれません。

無着色であることは重要な情報です。

ただし、国土交通省は不動産取引時の説明でも、浸水想定区域に該当しないことをもって水害リスクがないと誤認しないよう求めています。

特に確認したいのが内水です。

大きな河川が氾濫しなくても、集中豪雨で下水道や側溝の排水能力を超えれば道路が冠水することがあります。

道路より低い土地なら、その水が敷地へ入る形になっていないか確認する理由になります。

洪水ハザードだけでなく、自治体の内水情報や過去の浸水履歴があれば重ねて確認します。

「道路より30cm低い土地」を買いやすいケース・慎重に見るケース

30cm低い土地を一律に避ける必要はありません。

例えば、測量で高低差が確認され、必要な盛土・建物高さを具体的に設計でき、雨水の自然排水が確保でき、道路冠水・内水の懸念も小さいのであれば、追加造成費を含めて購入を検討できます。

一方、

土地全体が周囲より低い。

道路から敷地へ水が流れ込む。

自然排水できる出口がない。

下水接続にもポンプ等が必要。

過去に周辺道路が浸水している。

大きな盛土・土留め工事が必要。

という条件が重なるなら、30cmという数字以上に慎重な判断が必要です。

購入価格が安くても、造成・排水・外構・維持管理まで含めると、別の平坦な土地との差が小さくなる場合があります。

土地を契約する前に「30cm」を図面にしてもらう

道路より低い土地を検討するとき、購入後に住宅会社へ、

「ここ、30cm低いので何とかしてください」

と持ち込むより、契約前に建築会社・設計者へ土地資料を見せる方が判断しやすくなります。

確認したいのは、

道路と敷地の実際の高さ。

どの高さに建物を置くのか。

駐車場はどの高さになるのか。

雨水をどこへ排水するのか。

汚水は自然流下できるのか。

盛土・土留め・排水設備に何が必要になるのか。

です。

これを簡単な断面図にすると、

道路
↓30cm
現在の敷地
↑盛土
建物の地盤面
↑基礎
1階床

という高さの関係が見えます。

「道路より30cm低い」という土地情報を、実際に住む家の高さへ置き換えてから購入を判断します。

まとめ

道路より30cm低い土地でも、家を建てられるケースはあります。

建築基準法にも「30cm低ければ建築不可」という数値基準はなく、重要なのは敷地内の排水や安全性を確保できるかです。

一方で、「たった30cm」と軽く考えるのも適切ではありません。

まず30cmという高低差を実測で確認し、道路から雨水が入る経路と、敷地から雨水・汚水を出す経路を分けて確認します。

そのうえで、建物・駐車場をどこまで上げるのか、盛土・排水・土留めにどの程度の工事が必要なのかを土地購入前に具体化します。

判断基準は「道路より30cm低いか」ではありません。

その30cmの高低差を、無理のない造成・排水・建築計画で解消できる土地なのかです。

出典

e-Gov法令検索|建築基準法 第19条「敷地の衛生及び安全」

国土地理院|治水地形分類図 解説書

国土地理院|地理院地図で表示される標高値について

国土地理院|基盤地図情報FAQ(数値標高モデルの精度)

西宮市|建築における浸水対策のお願い

土岐市|道路より低い家の場合の下水道の接続について

国土交通省|水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明義務化

国土交通省|盛土規制法の概要