旧河道の土地を買って大丈夫?昔の川筋を購入前に確認する

土地を探していて、地理院地図の地形分類を見たら「旧河道」と表示された。

昔、川が流れていた場所らしい。

そう分かると、

「この土地は買わない方がいい?」

と不安になります。

確かに旧河道は、土地購入前に注意したい地形です。

国土地理院は旧河道を「昔に川が流れていた跡」とし、明瞭な旧河道については周囲の氾濫平野より1~2m程度低いことがあり、地表水が集まりやすく、浸水深・浸水時間が大きくなるほか、軟弱地盤や液状化にも注意が必要としています。

ただし、

地図に「旧河道」と出た=その土地は買ってはいけない

とまでは言えません。

反対に、

地盤改良をすれば旧河道でも問題ない

とも言い切れません。

購入前に確認したいのは、

その土地が旧河道に該当するかどうかだけではなく、

「昔の川だった影響が、現在の敷地にどこまで残っているか」

です。

ここまで確認してから判断します。

旧河道は「昔ここに川があった」という土地の履歴

旧河道とは、昔の河川流路が残した地形です。

川の流れが自然に変わった。

河川改修で新しい流路へ付け替えられた。

その後、元の河道が埋められたり、農地や宅地として使われたりした。

現在は普通の住宅地に見えていても、土地の成り立ちとしては昔の川筋が残っている場合があります。

国土地理院の治水地形分類図では、旧河道を空中写真などから判読し、

「旧河道(明瞭)」

「旧河道(不明瞭)」

に分けています。

現在の道路や住宅だけを見ても分からないため、土地購入前に地形分類を見る意味があります。

旧河道で最初に見るのは「地盤」だけではない

旧河道というと、

「軟弱地盤だから地盤改良が必要」

という話になりがちです。

しかし、それだけではありません。

旧河道には大きく、

水の問題

と、

地盤の問題

があります。

水の問題は、

周囲より低い。

雨水が集まりやすい。

排水に時間がかかる。

洪水時の水の通り道になりやすい。

といったものです。

地盤の問題は、

軟弱な地層。

地下水位。

不同沈下。

液状化。

などです。

国土地理院も、明瞭な旧河道について浸水と軟弱地盤・液状化の両方を防災上の留意点として挙げています。

つまり、

地盤改良で建物を支えられるようにしたから、水害リスクまで消えるわけではありません。

ここを分けて考えます。

「旧河道」と表示された場所が、そのまま敷地境界ではない

土地を購入するときに、特に注意したいところです。

地理院地図で候補地を拡大すると、

自分が買おうとしている土地に旧河道の色が掛かっているように見えることがあります。

しかし、治水地形分類図は個々の宅地を調査して、

「この筆のここからここまでが軟弱地盤」

と判定したものではありません。

国土地理院の資料では、治水地形分類図の縮尺レベルは25000とされています。また、地形分類と構造物の基礎地盤評価では求められる精度が違うことにも注意を促しています。

したがって、

旧河道の色が少し掛かっている。

境界付近にある。

というだけで、その土地を即座に落とす必要はありません。

反対に、

色から数十m離れているように見えるから絶対大丈夫

とも言えません。

地形分類図は「追加確認が必要な土地を見つけるための入口」と考える方が使いやすいでしょう。

「旧河道」と「旧流路」は同じものではない

昔の川筋を調べていると、

「旧河道」

とは別に、

「旧流路」

という表示を見ることがあります。

ここも混同しやすいところです。

国土地理院の治水地形分類図では、

旧河道=空中写真等から読み取った川跡の地形

として取得しています。

一方の旧流路は、

明治末~大正初期。

大正末~昭和初期。

昭和20年代。

昭和30年代後半~40年代前半。

などの旧版地形図に実際に描かれていた河川水面を年代別に抽出したものです。

つまり、

地形として残る昔の川跡を見るもの。

実際に特定年代に川だった場所を見るもの。

という違いがあります。

両方重なるなら、昔の川筋だったことをより具体的に確認できます。

旧流路は位置をピンポイントで信用しすぎない

旧流路を見ると、

昔の川が候補地の真下を通っているように見えることがあります。

ただし、ここにも注意があります。

国土地理院は、古い時代の地形図の一部は現在の写真測量より位置精度が低く、旧流路がずれて取得されている場合があると説明しています。

ですから、

地図上で1m、2mずれている。

敷地境界ぎりぎりを通っている。

といった読み方はしません。

むしろ、

この一帯に昔の流路が存在していた

という履歴を把握する資料として使います。

旧河道を見つけたら、古い空中写真まで戻る

候補地が旧河道周辺なら、現在の地図だけで終わらせません。

国土地理院は、人工改変が進む前の古い空中写真ほど、旧河道などの低地の微地形が分かりやすいと説明しています。

見るのは、

昔、本当に水面だったのか。

水田だったのか。

細い水路が残っていたのか。

いつ頃から宅地になったのか。

周囲より低い形が残っていたのか。

です。

現在はきれいな造成地になっていても、

1960年代の写真を見ると蛇行した川跡がはっきり残っている、

ということがあります。

逆に、

旧河道と分類されていても、現在までどのような改変を受けたかは別途確認が必要です。

次に「今の高さ」を見る

昔川だったことが分かった。

次に見るのが現在の高さです。

旧河道は本来、周囲より低いことがあります。

ただし現在は、

盛土。

道路造成。

宅地造成。

河川改修。

によって地表面が変わっている可能性があります。

地理院地図では標高や色別標高図、陰影起伏図などから周囲との高低差を確認できます。国土地理院も、地形分類に加えて地域の起伏を確認する方法を案内しています。

現地でも、

道路より敷地が低くないか。

隣地より低くないか。

道路側溝へ自然に排水できるか。

周囲から水が入ってきそうな形になっていないか。

を見ます。

昔の川筋+現在も低い

なら、水のリスクを一段重く見ます。

洪水ハザードマップが白くても、旧河道の情報は消えない

候補地を調べると、

旧河道には掛かっている。

でも洪水ハザードマップは白い。

ということがあります。

この2つは矛盾しているわけではありません。

地形分類図は、

土地がどのようにできたか

を見る資料です。

洪水浸水想定区域は、

一定の前提条件で河川が氾濫した場合に、現在どのような浸水が想定されるか

をシミュレーションしたものです。

実際、国土交通省の洪水浸水想定区域図にも、シミュレーションで考慮していない支川・内水・想定を超える降雨などによって、区域外でも浸水する場合があると明記されています。

だから、

ハザードマップが白い
→ 昔の川筋は気にしなくてよい

にはなりません。

逆に、

旧河道だから必ず洪水で浸かる

でもありません。

現在の洪水リスクと、土地そのものの履歴を別々に確認します。

内水も一緒に確認する

旧河道は周囲より低い場合があるため、

河川が破堤する洪水だけでなく、

排水が追いつかず道路や宅地に雨水がたまる内水にも目を向けます。

国のハザードマップポータルでは洪水と内水を確認できますが、内水浸水想定区域については自治体によって掲載範囲が「全域」「一部地域」など異なり、現在も整備途中の情報があります。

したがって、

国の重ねるハザードマップだけではなく、

市区町村が公開している洪水・内水ハザードマップも確認

します。

旧河道。

現在も周囲より低い。

内水浸水想定も重なる。

となれば、土地選びではかなり重要な材料になります。

液状化は「旧河道だから必ず起きる」とは決められない

旧河道で、もう一つ気になるのが液状化です。

国土地理院は旧河道を軟弱地盤として液状化への注意を挙げています。

また国土交通省の「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」でも、旧河道・旧池沼などは液状化発生傾向を見るうえで重要な地形区分になっています。

ただし、この図も敷地ごとの確定判定ではありません。

国土交通省自身も、地形区分に基づく図は液状化の発生傾向の強弱を相対的に示すものとしています。

実際の液状化は、

地層。

砂の締まり具合。

地下水位。

地震動。

などによって変わります。

旧河道を見つけたら、

液状化を否定するのではなく、調べる優先順位を上げる

と考えます。

ここから先は地図では分からない

地形分類。

古地図。

空中写真。

洪水ハザード。

内水ハザード。

液状化傾向。

ここまで見ても、まだ分からないことがあります。

たとえば、

敷地直下の地層。

支持層の深さ。

地下水位。

盛土の厚さ。

地盤の強さ。

です。

これは地図を見るだけでは確定できません。

国土交通省の宅地液状化に関する技術指針も、ボーリング調査結果など地盤情報を利用して判定する考え方を示しています。また、液状化は局所的な地層変化なども影響するため、個々の宅地の被害を保証するものではないとしています。

土地購入なら、

過去の地盤調査報告書がないか。

近隣ボーリングデータがないか。

造成時の資料がないか。

既存建物なら地盤改良・杭施工の記録がないか。

を確認する価値があります。

「地盤改良すれば大丈夫?」は、まだ半分しか答えていない

旧河道の土地でも、

地盤調査をして、

必要な地盤改良をして、

建物を適切な基礎で支える。

という対策は考えられます。

大阪府も住宅・土地購入前の液状化対策として、液状化マップや土地の履歴を確認し、地盤調査や液状化判定を行うことを挙げています。

しかし、

地盤改良で対応するのは主に建物と地盤の問題です。

敷地そのものが低い。

道路から水が入る。

周辺排水が悪い。

内水がたまりやすい。

という問題は別です。

したがって、

旧河道
→ 地盤改良費を見込めば買える

とはまだ言えません。

建物の下と、

敷地全体の水の動き。

両方を確認します。

旧河道でも購入候補に残せる土地

旧河道と分かっただけで外す必要はありません。

たとえば、

現在の敷地高さが周囲と比べて低くない。

洪水・内水を確認しても大きなリスクが重なっていない。

液状化について追加確認ができる。

地盤調査・造成資料などが確認できる。

必要な地盤対策費まで含めて予算内。

という状態なら、

旧河道という履歴を理解したうえで購入候補として比較する

ことはできます。

重要なのは、

「旧河道だけどきっと大丈夫」

と判断することではありません。

不確定だったものを、購入前に一つずつ確定させること

です。

反対に、一度止めた方がいい土地

旧河道が見つかったうえに、

現在も周囲より低い。

洪水または内水想定も重なる。

液状化発生傾向も高い。

昔の空中写真でも川・湿地だったことが明確。

造成・盛土の履歴が分からない。

地盤資料もない。

となれば、

購入契約を急ぐより追加確認を優先した方がよいでしょう。

特に、

「人気の土地だから今日決めないと売れる」

と言われても、

地盤・浸水の不確定要素は購入後も残ります。

同じ価格帯で別候補があるなら、

旧河道の土地を買えるか

だけではなく、

わざわざこの不確定要素を引き受ける理由があるか

まで比較します。

旧河道の土地は「買う・買わない」ではなく3段階で判断する

地理院地図で旧河道を見つけた段階では、

まだ「買う」「買わない」を決めません。

まず、

確認を続ける土地

です。

そこから、

現在の標高。

洪水。

内水。

液状化。

造成履歴。

地盤情報。

を重ねる。

問題が限定され、対策費も読めるなら、

購入候補に残す土地

になります。

反対に、

複数のリスクが重なり、敷地単位の確認もできないなら、

他の土地と比較し直す土地

になります。

旧河道という文字だけで結論を出すのではなく、

旧河道を見つけた瞬間から、確認の深さを一段上げる。

これが土地購入前の使い方です。

まとめ|旧河道は「買うな」の印ではなく、敷地単位の確認へ進む印

旧河道は、昔川が流れていた土地です。

周囲より低く、

水が集まりやすい。

軟弱地盤。

液状化。

といった注意点があります。

だから購入前に見つけたなら、無視する情報ではありません。

ただし、治水地形分類図は敷地ごとの地盤調査ではありません。

旧河道。

旧流路。

古い空中写真。

現在の高さ。

洪水。

内水。

液状化。

造成履歴。

地盤情報。

まで順番に確認します。

その結果、

リスクの内容が分かり、対策も予算も見通せるなら購入候補に残す。

不明点が重なるなら、契約前に一度止める。

旧河道かどうかは購入判断の答えではありません。

「この土地は、普通の土地より一段深く調べてから買う土地かもしれない」と気づくための情報です。

そこまで調べて初めて、

価格や立地条件と一緒に、

「それでもこの土地を選ぶか」

を判断できます。

関連記事

ハザードマップが白い土地|水害は大丈夫?洪水・内水まで確認する

出典

国土地理院|治水地形分類図の内容

国土地理院|治水地形分類図について

国土地理院|土地の成り立ち・土地利用|地理院地図の使い方

国土地理院|土地の成り立ちから災害リスクを知る

国土地理院|治水地形分類図 利用の手引

国土交通省・国土地理院|ハザードマップポータルサイト

国土交通省|地形区分に基づく液状化の発生傾向図等

国土交通省|宅地の液状化被害可能性判定に係る技術指針について

大阪府|建築物に関する液状化対策