住宅の浸水対策として、建物や敷地を高くする工事に補助金を出している自治体があります。
対象になる可能性があるのは、家そのものを持ち上げる工事だけではありません。敷地への盛土や基礎を高くする工事、高床化などまで対象にする制度があります。
ただし、「盛土をするから補助対象」「高基礎にするから補助対象」とは判断できません。
先に確認するべきなのは、工法よりも「その住宅と敷地が制度の対象か」「既存住宅・建替え・新築のどれか」「どれだけ高さを上げる計画か」です。
盛土も高基礎も補助対象になる自治体はある
例えば愛知県東海市では、既存住宅の基礎を30cm以上嵩上げする工事と、30cm以上の盛土工事を補助対象としています。
西尾市も、既設住宅の床・基礎・玄関などを30cm以上上げる工事と、既存住宅の敷地を30cm以上盛土する工事を対象にしています。(東海市公式サイト)
新潟市では、既存住宅を持ち上げる揚家、改築時の床上げ、従前の地盤から30cm以上の盛土が助成対象です。(新潟市)
したがって、浸水対策として「敷地全体を高くしたい」「床を高くしたい」「基礎を高くしたい」という場合にも、止水板とは別系統の補助制度を探す価値があります。
検索するときも「止水板 補助金」だけでなく、「住宅かさ上げ」「住宅浸水対策改修」「高床化」「盛土」といった名称まで確認した方が見つけやすくなります。
ただし最初に確認するのは工法ではなく「対象区域」
盛土や高基礎が対象工事として書かれていても、どこにある住宅でも利用できるとは限りません。
東海市では、過去に浸水被害の事実があることが補助を受ける条件の一つです。
新潟市では、平成10年8月4日以降に床上浸水被害が発生した区域にある住宅が対象です。(東海市公式サイト)
一方、西尾市は、市の洪水・内水ハザードマップで浸水が予測されている敷地、または過去に浸水被害が確認できる住宅の敷地などを対象としています。(西尾市公式サイト)
さらに佐倉市のように、条例で指定された一部の重点整備地区だけを対象にしている制度もあります。(さくら市公式サイト)
そのため最初に施工会社へ「盛土はいくらですか」と聞くより、自治体に自宅の住所を伝えて補助対象区域に入っているかを確認する方が先です。
対象区域外なら、その制度について盛土と高基礎のどちらが有利かを比較しても補助金は利用できません。
盛土は「どこを上げるか」で扱いが変わる
敷地に土を入れればすべて同じ「盛土工事」になるわけでもありません。
西尾市の制度解説では、住宅周辺の地盤を30cm以上嵩上げする盛土を主要な「浸水対策改修等工事」としています。
しかし、駐車場だけを盛土する場合は同じ区分ではなく、「市長が認める浸水対策工事」として扱われます。
また、盛土に伴って法面を保護する擁壁は対象例ですが、盛土を伴わない既存擁壁のやり替えは対象に含まれないとされています。
ここが工事見積を見るときの重要な境界です。
「盛土○○万円」とだけ見るのではなく、住宅の浸水対策に直接必要な盛土なのか、駐車場や外構だけの工事なのか、擁壁工事が盛土に伴うものなのかを分けて確認する必要があります。
高基礎も「基礎工事全部」が補助されるとは限らない
高基礎も同じです。
西尾市の制度解説では、30cm以上高基礎にすることを補助対象となる浸水対策として示しています。
一方で、「一般的に必要な基礎費用分」は補助対象経費に含まれないとされています。
例えば通常の住宅でも必要になる基礎工事100万円に、浸水対策として基礎を高くする追加費用50万円が発生したとしても、単純に150万円全部が浸水対策費になるとは限らない、ということです。
どこまでが通常工事で、どこからが浸水対策の追加工事なのかを分けられる見積が必要になる可能性があります。
これが「高基礎が補助対象か」より一段重要な確認点です。
施工業者には、通常仕様との差額や浸水対策として追加した部分を分けて見積できるか相談しておくと、自治体にも確認しやすくなります。
自治体によって必要な嵩上げ高さも違う
補助対象にする最低高さも全国共通ではありません。
東海市と西尾市では、主要な嵩上げ・盛土工事について30cm以上という基準があります。
新潟市では、揚家は従前より15cm以上、改築時の床上げは従前より15cm以上かつ床上面が地盤面より60cm以上、盛土は30cm以上です。(東海市公式サイト)
杉並区の高床化助成では、敷地面から床面まで0.75m以上、床下空間0.5m以上など独自の基準を設けています。(杉並区公式サイト)
したがって「30cm上げれば嵩上げ補助金が出る」と全国共通の数字として考えることはできません。
自分の自治体が「従前から何cm上げること」を条件にしているのか、それとも「想定浸水水位より高くすること」を条件にしているのかまで確認します。
土地を買って新築するときは特に注意する
水害が心配な土地なので、新築時に最初から盛土や高基礎にしたいというケースもあります。
ここは制度の差が大きいところです。
東海市、新潟市、美濃加茂市の制度では新築を補助対象外としています。(東海市公式サイト)
その一方、杉並区の高床化工事助成では、新築の場合も条件を満たせば助成対象になります。(杉並区公式サイト)
さらに佐倉市では、現在住んでいる住宅を解体し、敷地に盛土をした上で同じ敷地に新築・増改築する工事を、制度上の「盛土工事」として扱っています。(さくら市公式サイト)
つまり、「新しい家を建てる」という言葉だけでも、
今ある家を改修する
今ある家を解体して建て替える
更地を買って初めて家を建てる
では答えが変わります。
特に土地購入前の人は、「水害対策のために高基礎にすれば補助が出るだろう」と予算を組まず、新規建築まで対象になる制度かを先に確認する必要があります。
「高基礎」という名前が書いていなくても対象候補になる
自治体によって工事名の表現も違います。
西尾市の解説では「高基礎」と明記されていますが、東海市では「住宅の基礎を30cm以上かさ上げする工事」、茂原市では「建物等の基礎及び床面を既存の高さより高くする工事」という表現です。
杉並区では「高床化」です。
したがって自治体サイトで「高基礎 補助金」と検索して何も出なかったからといって、制度がないとは限りません。
「住宅かさ上げ」「基礎かさ上げ」「高床化」「住宅浸水対策」「盛土」まで検索語を変えて確認します。
盛土か高基礎かは補助額だけで決めない
盛土と高基礎は、どちらも床を水から遠ざける方法ですが、同じ工事ではありません。
盛土は敷地側の高さを変えるため、隣地への雨水や土砂の流出、擁壁なども含めて計画する必要があります。東海市でも補助条件として、隣地へ水や土砂が流出しないことを求めています。(東海市公式サイト)
高基礎では、建物側の高さや構造を変更します。
西尾市の浸水対策解説では、高基礎の場合、浮力によって住宅が流出しないための措置も必要になると説明しています。
そのため、「補助率が高い方」「工事費が安い方」だけで決めるのではなく、想定浸水深、周囲との高低差、建物の構造、敷地面積などを踏まえて設計する必要があります。
補助対象でも、そのまま盛土できるとは限らない
もう一つ分けて考えたいのが、「補助金の対象になること」と「その工事を法的に実施できること」です。
国土交通省によると、盛土規制法の規制区域内で一定規模以上の盛土等を行う場合、都道府県知事等の許可が必要になります。(国土交通省)
また、新潟市の制度でも、建築基準法に基づく高さ・斜線制限を超えないことを助成条件としています。(新潟市)
補助制度の担当課から「盛土は対象です」と言われたことだけで工事可能と判断せず、建築・造成関係の手続きが別に必要かも確認します。
特に大きく敷地を嵩上げする計画では、設計段階で確認しておく方が安全です。
嵩上げ補助金を探すなら「住所・建物・工事」の順で確認する
自分が補助を受けられるか確認するときは、最初から「高基礎はいくら補助されますか」と聞く必要はありません。
まず住所を伝え、その敷地が制度の対象区域なのかを確認します。
次に、既存住宅の改修、建替え、新築のどれに該当するのかを伝えます。
そこまで対象になることが確認できたら、予定している盛土高や基礎の嵩上げ高さ、擁壁などの関連工事を示して、どこまでが補助対象経費になるかを確認します。
この順番なら、「高基礎は対象と書いてあったのに通常の基礎工事分は出なかった」「新築なので制度自体が使えなかった」「駐車場だけの盛土なので別扱いだった」といった行き違いを減らせます。
住宅・敷地の嵩上げ補助金で見るべきなのは、工法名だけではありません。
対象区域 → 既存・建替え・新築 → 必要な高さ → 補助対象となる追加工事の範囲まで確認して初めて、自分の盛土・高基礎が補助対象になるか判断できます。