水害対策の補助金というと止水板や住宅の嵩上げを思い浮かべますが、給湯器やエアコン室外機など、屋外設備を高い位置へ移す工事まで補助する自治体があります。
実際に、茂原市は給湯器・エアコン・温水器等、西尾市は屋外給湯器、武雄市はエアコン室外機・給湯器、宗像市は室外機等の家屋付帯設備の嵩上げを補助対象にしています。
ただし、ここで見るべきなのは「給湯器が対象か」「エアコンが対象か」だけではありません。
特に重要なのが、機器本体の購入・交換費と、浸水対策として設置位置を高くする工事費を分けることです。
給湯器や室外機だけを高くする工事にも補助制度はある
住宅そのものを何十cmも嵩上げするのは大掛かりです。
床上浸水までは想定していなくても、地面近くにある給湯器やエアコン室外機が先に水につかることを避けたい場合があります。
こうした対策だけを補助対象にしている自治体があります。
千葉県茂原市では、「設備機器かさ上げ工事」として、給湯器、エアコン、温水器などを既存の高さより高くする工事を対象としています。
設備嵩上げ工事については、対象経費の2分の1、上限10万円です。
我孫子市も、給湯器、エアコン、温水器などの設備機器の嵩上げを浸水防止工事として認めています。
家そのものを嵩上げしなくても、「設備だけ水につかりにくくする」という対策で使える補助金は実際にあります。
本体を新品に交換する費用まで出るとは限らない
ここが、この補助金を探すときに最も間違えやすいところです。
茂原市と我孫子市は、設備機器の嵩上げを対象にしていますが、「機器本体の交換」は対象から除いています。
例えば古い給湯器を新品へ交換するタイミングで、従来より50cm高い位置へ取り付ける場合を考えます。
給湯器本体20万円
取付台・架台3万円
配管延長4万円
嵩上げ・移設工事5万円
という見積だったとして、32万円全部が浸水対策補助の対象になるとは限りません。
本体交換を対象外としている制度なら、どこまでが「嵩上げするための工事費」なのかを分けて確認する必要があります。
そのため、交換と嵩上げを同時に行う場合は、施工業者に本体代と高所移設に必要な工事費を分けた見積を出せるか相談しておくと、自治体にも確認しやすくなります。
「給湯器の補助金」で検索すると別制度が出てくる
給湯器の補助金を検索すると、国の「給湯省エネ2026事業」なども見つかります。
こちらはエコキュート、ハイブリッド給湯機、エネファームなど、一定の省エネ性能を満たす設備を導入するための制度です。
また、「みらいエコ住宅2026事業」では、一定の高効率給湯器や高効率エアコンも補助対象になっています。
これらは、浸水を防ぐために設備を高くする制度ではありません。
つまり、
省エネ性能の高い給湯器へ交換したい
→省エネ系の設備補助
今ある給湯器を水につからない位置へ上げたい
→自治体の浸水対策補助
というように、補助金を探す入口が違います。
設備を交換しながら浸水対策も行うなら、どの費用がどの制度の対象になるのか、重複利用できるのかを両方の制度で確認する必要があります。
自治体サイトでは「嵩上げ」だけで検索しない
この種の補助制度は、自治体によって工事名が違います。
茂原市は「設備機器かさ上げ工事」。
西尾市は「屋外給湯器のかさ上げ」。
日立市は「屋外設備機器かさ上げ」。
武雄市は「エアコン室外機・給湯器の高所移設」。
宗像市は「室外機等の家屋付帯設備のかさ上げ工事」です。
したがって、
「○○市 給湯器 嵩上げ 補助金」
だけで見つからなければ、
「○○市 設備機器 浸水対策」
「○○市 屋外設備 かさ上げ」
「○○市 室外機 高所移設」
「○○市 住宅浸水対策 補助金」
まで検索語を変えます。
設備対策が「その他市長が認める浸水対策工事」のような区分に入っている自治体もあるため、制度名だけで見落とさないことが重要です。
何cm上げれば補助対象になるかは自治体ごとに確認する
住宅全体の嵩上げ制度では「30cm以上」のような明確な数値条件を見ることがあります。
一方、今回確認した給湯器・室外機の制度には、全国共通の嵩上げ高さはありません。
茂原市は「既存の高さよりも高くする工事」としています。
武雄市は「高所移設」、宗像市は「かさ上げ工事」という表現です。
西尾市の浸水対策解説では、屋外給湯器や室外機などについて「基礎の天端と同程度の高さを確保することが望ましい」としています。
ここで注意したいのは、補助金の最低条件と、自宅で必要な水害対策高さを同じにしないことです。
10cm上げれば補助制度上は認められるとしても、想定浸水深が50cmなら設備を守れない可能性があります。
逆に、ハザードマップの最大想定水位まで必ず上げなければ補助されないとも限りません。
工事前に自治体へ予定高さを示し、その工事が補助対象になるかを確認するのが確実です。
補助を使える住宅・敷地にも条件がある
設備嵩上げ制度がある自治体でも、市内のすべての住宅が対象とは限りません。
西尾市では、洪水・内水ハザードマップで浸水が予測されている敷地や、過去に浸水被害が確認された住宅敷地などが対象です。
茂原市も、過去に浸水被害があった区域や、洪水・内水ハザードマップで浸水が想定される区域を対象としています。
我孫子市では、過去の浸水被害や市が把握している浸水実績、道路冠水実績などが条件です。
一方、制度によって条件の置き方は違います。
そのため最初に「給湯器が対象ですか」と聞くより、
「この住所の住宅は浸水対策補助の対象ですか」
から確認する方が早い場合があります。
住所が制度対象であることを確認してから、給湯器・室外機の工事内容へ進みます。
既存住宅の移設と新築時の高い設置は同じではない
これから住宅を建てるので、最初から室外機や給湯器を高い位置に付けたいというケースもあります。
この場合も既存住宅の改修と同じとは限りません。
武雄市の制度では、既存住宅の敷地内での建替えに伴う対象工事は補助対象となる一方、新たに建設される住宅への工事は対象外としています。
西尾市も既存住宅がある敷地で行う浸水対策工事を制度対象としています。
浸水対策として高い位置に設備を置くこと自体は有効でも、その費用に既存住宅改修用の補助金を使えるかは別の問題です。
土地購入や新築前なら、「新築でも使える補助制度か」を先に確認します。
豪雨後に新しい補助制度が設けられる場合もある
恒久的な補助金が見つからなくても、それで終わりとは限りません。
宗像市では2025年8月の大雨を受け、2026年度の浸水対策補助金として、室外機等の家屋付帯設備の嵩上げ工事を対象にしています。
対象は、その豪雨で浸水被害を受けた人、または洪水・内水の浸水想定区域内の居住者・事業者です。
対象経費の2分の1、上限50万円で、2025年8月1日以降に実施した対策も対象期間に含まれています。
通常の補助制度では工事前申請が必要なことが多い一方、災害後に設けられる時限的な制度では、既に行った対策を対象にする例もあります。
大きな豪雨の後は、普段の住宅補助制度だけでなく「豪雨」「水害」「復旧」「浸水対策」といった自治体のお知らせも確認した方がよいでしょう。
戸建住宅以外では「電気設備の移設」まで対象になることもある
設備の浸水対策補助は、給湯器や室外機だけではありません。
対象をマンションや事業施設まで広げると、受電設備や非常用電源などを浸水から守るための支援制度があります。
宇都宮市の都市機能誘導施設向け制度では、一定の病院、診療所、店舗などを対象に、電気設備の移設・嵩上げを補助対象としています。
東京都にも、「東京とどまるマンション」に登録した既存マンションについて、非常用電源を浸水から守る設備改修を支援する制度があります。
ただし、これらを戸建住宅の給湯器や室外機へそのまま使えるわけではありません。
「設備浸水対策」という同じ言葉でも、一般住宅向け、マンション向け、事業施設向けで制度が分かれています。
見積を取るなら「交換」と「嵩上げ」を分けておく
給湯器や室外機の対策を予定しているなら、施工業者へ最初から「浸水対策補助金を利用できるか確認したい」と伝えておくと進めやすくなります。
特に確認したいのは、
機器本体の購入・交換費
架台や基礎など高くするための部材費
配管・配線等を延長する費用
設備を高い位置へ移設する工事費
を分けられるかどうかです。
本体交換を対象外とする自治体では、全部を「給湯器交換工事一式」とした見積では、浸水対策部分を確認しにくくなります。
自治体には、設備名だけではなく、
「既存の給湯器を残したまま高さを上げる」
「古い給湯器を交換すると同時に従来より高い位置へ設置する」
「室外機を壁面架台へ移す」
など、実際の工事内容を伝えて補助対象経費を確認します。
設備の水害対策は「交換補助」と「浸水対策補助」を分けて探す
給湯器や室外機にも浸水対策の自治体支援はあります。
ただし、探し方を「給湯器 補助金」だけにすると、省エネ設備の交換補助ばかりが見つかり、浸水対策制度を見落とすことがあります。
反対に、浸水対策補助だけを見て、本体交換費まで出ると思い込むのも違います。
まず、
既存機器をそのまま高くするのか
本体も交換するのか
既存住宅なのか新築なのか
敷地が補助対象区域なのか
を整理します。
そのうえで「住宅浸水対策」「設備機器かさ上げ」「屋外設備」「高所移設」と検索すれば、給湯器や室外機まで対象とする制度を見つけやすくなります。