火災保険を見積もると、水災補償を外すことで保険料を抑えられる商品があります。
では、ハザードマップを見て自宅に色が付いていなければ、水災補償は外してよいのでしょうか。
結論からいうと、洪水ハザードマップだけを見て外す判断をするのは早すぎます。
確認したいのは、洪水だけでなく、内水氾濫、高潮、土砂災害まで含めた土地のリスクです。
さらに、想定浸水深と自宅の床の高さ、建物・家財の金額、契約する火災保険の水災支払条件まで見て、最後に「補償を外した場合の損失を自分で負担できるか」で判断します。
水災補償は「川が近い家だけ」の補償ではない
火災保険の水災補償で対象になる水害は、一般に川の氾濫だけではありません。
台風や豪雨による洪水、内水氾濫、高潮、土砂崩れなどが対象になる商品があります。
そのため、
「川から1km以上離れている」
「高台にある」
「洪水ハザードマップで色が付いていない」
という一つの条件だけでは、水災補償が不要とは判断できません。
例えば周辺より低い道路や土地では、大雨時に下水や側溝で処理できなくなった雨水による内水氾濫が問題になることがあります。
山や崖に近ければ、床上浸水の心配が小さくても土砂災害のリスクが残ります。
海岸や河口に近い土地なら高潮も別に確認する必要があります。
水災補償を外す前に、「洪水」という一つのリスクを見るのではなく、水災に含まれる原因を分けて確認することが第一段階です。
最初に「重ねるハザードマップ」で4種類を見る
土地の水害リスクを調べるなら、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で住所を検索できます。
契約前に最低限確認したいのは、
洪水
内水
高潮
土砂災害
です。
洪水の色が付いていなくても、内水や土砂災害に該当するなら、「水災リスクなし」にはなりません。
自治体独自のハザードマップも確認します。
特に内水については、市区町村が作成する内水ハザードマップや浸水実績図などに、国の地図だけでは分からない情報が載っている場合があります。
ハザードマップが白くても「浸水しない」とは限らない
ここは水災補償を外す判断で特に重要です。
洪水浸水想定区域図は、一定の条件を設定したシミュレーションです。
国土交通省も、支川の氾濫、想定を超える降雨、高潮、内水など、図の前提に含まれていない要因によって、浸水想定区域外でも浸水が発生する場合があると説明しています。
つまり、
ハザードマップに色がある
→リスクがあることを示す重要な情報
色がない
→絶対に浸水しないことの証明
ではありません。
水災補償を外す判断では、地図の色だけで終わらず、自宅周辺の高低差や過去の冠水履歴も確認した方がよいでしょう。
土地の「高さ」は標高だけでは判断しない
「うちは高い場所だから大丈夫」と考えるときにも注意が必要です。
見るべきなのは、海抜何mかだけではありません。
自宅敷地が前面道路より低い、周囲よりくぼんでいる、道路から駐車場や玄関へ下り勾配になっている、といった局所的な高低差でも水が集まりやすくなります。
反対に、同じ浸水想定区域内でも、住宅を盛土していたり基礎が高かったりすれば、床まで水が届く可能性は周囲と同じとは限りません。
そこで次に確認するのが、
想定浸水深
敷地面の高さ
1階床面の高さ
の関係です。
「浸水想定0.5m未満」という数字だけではなく、その水位が自宅のどこまで来るのかを考えます。
水害リスクがあることと保険金が出ることは別
土地のリスクを確認したら、次は契約する火災保険の支払条件を確認します。
現在販売されている火災保険には、水災について、
建物・家財に再調達価額の30%以上の損害が発生した場合
または、
床上浸水や地盤面より45cmを超える浸水によって損害が発生した場合
などを支払条件としている商品があります。
ここで重要なのは、
「10cm浸水する可能性がある=水災補償を付ければ必ず保険金が出る」
とは限らないことです。
例えば三井住友海上の現行商品では、床上浸水せず室外機だけが浸水したケースについて、通常の水災認定条件を満たさなければ補償対象外と説明しています。
一方、商品によっては特定の機械設備について浸水条件を緩和した特約を用意している場合もあります。
契約前には「水災あり・なし」だけでなく、どの深さ・損害状態から支払対象になる契約なのかまで確認します。
「水災等地」はハザードマップとは別の参考情報
火災保険の見積もりでは、「水災等地」という言葉を見ることがあります。
損害保険料率算出機構では、住宅物件の所在地について、水災リスクが相対的に低い1等地から高い5等地までの5区分を設定しています。
この水災等地は洪水だけを見た区分ではありません。
外水氾濫に加え、内水氾濫や土砂災害なども含めて評価しているため、洪水ハザードマップの色とは一致しない場合があります。
例えば、
洪水ハザードマップではほとんど色がない
にもかかわらず、水災等地では最も低い区分ではないことも考えられます。
どちらか一方が間違っているわけではなく、見ているリスクと評価方法が違います。
水災等地は「補償を外してよい証明」ではありませんが、土地の水害リスクを考える追加材料にはなります。
低リスクでも水災補償を残す判断はある
洪水、内水、高潮、土砂災害のいずれも低リスクなら、水災補償を外す検討に進みやすくなります。
それでも最後に確認したいのが、「万一の損害を自分で払えるか」です。
例えば水災補償を外した結果、5年間で数万円保険料を節約できたとしても、一度床上浸水すれば床・壁・設備だけでなく、家具や家電まで被害を受ける可能性があります。
重要なのは、
「水害が起こる確率が低いから外す」
だけではなく、
「発生確率は低いと判断したうえで、それでも起きた場合の損失を自分で負担できる」
ところまで確認することです。
住宅ローンが残っている、自宅を修復するための十分な現金を確保していない、1階に高額な家財が多いといった場合には、低リスク地域でも水災補償を残す判断があります。
水災補償を外す候補になりやすいのはどんなケースか
全国一律に「この条件なら外してよい」と言える基準はありません。
ただ、判断の順序は作れます。
洪水浸水想定を確認する。
内水浸水想定を確認する。
高潮を確認する。
土砂災害を確認する。
自治体の過去の浸水・道路冠水情報も確認する。
自宅の敷地と道路の高低差を見る。
想定浸水深と1階床面の高さを比べる。
契約予定商品の水災支払条件を確認する。
最後に、水災を外した場合の最大損失を自己資金で負担できるか考える。
この確認をして、複数の水害リスクが低く、建物にも浸水しにくい条件があり、万一の場合の損失も自己資金で吸収できるなら、水災補償を外すことを比較検討する余地があります。
逆に、途中で一つでも無視しにくいリスクが見つかったなら、「保険料を下げられるから」という理由だけで外さない方が判断しやすくなります。
1階だけでなく家財と設備の位置も見る
同じ土地でも、被害額は住宅によって変わります。
例えば1階に、
冷蔵庫
洗濯機
エアコン設備
給湯設備
蓄電池
分電盤
高額な家具
などが集中している住宅では、同じ浸水深でも損失が大きくなる可能性があります。
逆に高床化している住宅や、主要設備を高い位置へ移している住宅では、浅い浸水への耐性が異なります。
水災補償を判断するときは、土地だけでなく「その家で何が水につかるか」まで見る必要があります。
マンションなら階数だけで判断しない
マンションの高層階では、戸室そのものが洪水で直接浸水する可能性は戸建て1階より低くなることがあります。
実際に、水災なしプランをマンション向けに用意している保険商品もあります。
ただし、「10階だから水害は関係ない」と一律には判断できません。
地下や1階に電気設備、給水設備、機械式駐車場などがあり、建物全体が水害による影響を受けることがあります。
区分所有者の火災保険でどこまでが自分の補償対象なのか、管理組合側の保険で共用部分をどこまで補償しているのかは分けて確認します。
見積もりでは「水災あり・なし」を同条件で比較する
土地のリスクを調べる前に、
「水災を外すと年間○万円安くなる」
という金額だけで決めない方がよいでしょう。
まず同じ保険会社・同じ建物保険金額・同じ家財補償・同じ免責金額で、
水災あり
水災なし
の2つを見積もります。
そこで初めて、水災を外すことで実際にいくら保険料が変わるのかが分かります。
その差額と、床・壁・設備・家財を自費で直すことになった場合の負担を比べます。
保険は、起きやすい小さな損害だけでなく、起きる確率は低くても自力では負担しにくい損害へ備えるという考え方もあります。
保険料差だけではなく「外したときに自分が引き受ける金額」で判断する方が、水災補償の意味を比較しやすくなります。
土地を買う前なら火災保険より先に水害リスクを見る
これから土地や住宅を購入する段階なら、火災保険の見積もりを取るときに初めて水害リスクを調べるのでは遅い場合があります。
購入候補地が、
洪水
内水
高潮
土砂災害
のどれに該当するのかを土地購入前に確認します。
さらに周辺との高低差、過去の浸水履歴、想定浸水深まで確認すれば、
土地を変える
盛土する
高基礎にする
設備を高い場所へ設置する
止水板を設ける
といった選択もできます。
その対策をした後に残るリスクに対して火災保険を使う、と考えれば、水災補償の判断もしやすくなります。
火災保険だけで水害対策を考えるのではなく、
土地を選ぶ
建物で対策する
残ったリスクを保険で移す
という順番で考える方法です。
水災補償を外す判断は「白い地図」ではなく残ったリスクでする
水災補償を外せる火災保険はあります。
しかし、洪水ハザードマップに色がないという一つの理由だけで外すのは判断材料が不足しています。
洪水、内水、高潮、土砂災害を確認し、土地の高低差や過去の浸水も調べる。
さらに、想定される水位が自宅の床や設備の高さに達するのか、契約予定の保険ではどの状態から水災として保険金が支払われるのかを確認します。
そこでリスクが十分低く、万一の損失も自分で負担できると判断できた場合に、水災補償を外すことを比較候補にする。
「ハザードマップが白いから外す」ではなく、確認しても残る水害リスクをどこまで自分で引き受けられるか。
そこが、契約前に決める境界です。