車を運転している途中で、急に雨が強くなることがあります。
まだ車は動く。前の車も走っている。家まであと20分だから、このまま行けるのではないか。
しかし、大雨時に見るべきなのは「車がまだ走れるか」ではありません。
目的地まで向かい続けてよい状況なのか、それとも安全な場所へ退避する段階に変わったのかです。
視界が保てない、前方の道路に冠水が見える、これから通る場所の危険度が高まっている。
こうした変化が出たら、「家まで行く」「会社まで行く」という当初の目的はいったん外し、安全な場所で運転をやめることを優先します。
大雨でも「走れる」と「走り続けてよい」は違う
雨が強くなっても、車はすぐには動かなくなりません。
そのため、「まだ普通に走れるから大丈夫」と考えやすくなります。
しかし、気象庁の「雨の強さと降り方」では、1時間に20mm以上30mm未満の雨でも、ワイパーを速くして前が見づらくなるとされています。
50mm以上80mm未満の非常に激しい雨になると、車の運転は危険とされています。
ただし、運転中に自分がいる地点の正確な時間雨量が分かるとは限りません。
「50mmになるまでは走ってよい」という線引きには使わず、実際の視界や道路状態が悪くなった時点で判断を変える必要があります。
ワイパーを速くしても前が見づらいなら退避を考える
まだ道路に水がたまっていなくても、視界が維持できなければ走行を続ける危険は高まります。
前の車、歩行者、自転車、信号、車線が十分に見えない状態で「もう少しだけ」と走り続ける必要はありません。
気象庁も、強い雨ではワイパーを速くしても前が見づらくなり、さらに雨が強くなれば水しぶきで周囲が白っぽくなって視界が悪化するとしています。
この段階では、その場で急停止するのではありません。
速度を落とし、周囲の車との距離を確保しながら、道路外の安全に駐車できる場所などへ退避して雨をやり過ごします。
高速道路なら、NEXCO中日本も無理に走行を続けず、早めにSA・PAへ避難するよう案内しています。
前方に道路冠水が見えたら、その先へ進まない
視界不良とは別に、明確な停止ラインになるのが道路冠水です。
前方の道路に水が広がっている場合、
「浅そうだから行ける」
「前の車が通ったから自分も行ける」
とは判断しません。
岩手県警は、大雨で進行しようとする道路が冠水している場合には「進まず引き返す」と案内しています。
JAFも、冠水路は見た目だけでは水深や水中の状態が分からず、危険を感じるころには車が動けなくなる場合があるとしています。
つまり、道路冠水を見つけた時点で、
「何cmくらいあるか」
「この車高なら通れるか」
を考えるのではありません。
その道路を通って目的地へ向かう計画そのものを中止します。
安全に迂回できるならルートを変え、安全に戻れるなら冠水していない方向へ戻ります。
「あと少しだから」は判断基準にしない
大雨時に判断を遅らせやすいのが、目的地までの残り時間です。
「自宅まであと10分」
「もうすぐ会社」
「ここまで来たから最後まで行きたい」
という気持ちは、道路の安全とは関係ありません。
むしろ、その10分の間に雨がさらに強まり、今通れた道路が帰宅時や数分後には冠水する可能性があります。
気象庁の浸水キキクルは、短時間の大雨による浸水害の危険度を1km四方ごとに表示し、10分ごとに更新しています。
安全な場所に停車できたら、目的地までの距離より、
「この先で浸水危険度が高まっていないか」
を確認します。
通行止め情報がないから安全とも限らない
安全に停車した後は、気象情報と合わせて道路規制も確認できます。
ただし、「通行止めと表示されていないから走れる」とまでは判断できません。
国土交通省の道路情報提供システムも、情報は5~10分間隔で更新され、現地到着までの間に道路状況が一変することがあると明記しています。
大雨では、画面上の情報より現地の状況が先に変わることがあります。
目の前に冠水があれば、通行止め表示がなくても進まない。
ここは情報より現地を優先する場面です。
運転をやめる場所まで危険にしない
「危ないから停まる」といっても、場所を選ばず停車すればよいわけではありません。
アンダーパス、川沿い、海岸沿いなど、浸水や増水の危険がある場所にとどまるのは避けます。
JAFは、大雨時にはアンダーパスや川沿いなど危険な場所には近づかず、冠水した道路には進入しないよう呼びかけています。
一般道なら、道路上で停止し続けるのではなく、安全に入れる駐車場所などへ移ります。
高速道路なら、無理に本線を走り続けず、走行可能な間にSA・PAへ退避します。
大雨時の「運転をやめる」は、
危険を感じた瞬間に車線上で急停止することではなく、安全に退避できるうちに走行目的を切り替えること
と考えると分かりやすくなります。
冠水する前でも退避した方がよい場合がある
「道路が冠水したら止める」では、判断が遅い場合があります。
例えば、まだ道路に水は見えなくても、
ワイパーを速くしても視界が保てない。
これから進む方向がアンダーパスや低地になっている。
浸水キキクルで進行方向の危険度が高まっている。
このような状況なら、実際に冠水道路が現れるまで走り続ける必要はありません。
気象庁は、道路のアンダーパスなどでは浸水・冠水の深さが短時間で急激に上昇する傾向があるとしています。
「まだ水がないから行く」ではなく、
安全に止められる場所があるうちに退避する
という判断が必要です。
雨が弱くなっただけで、すぐ走り出さない
激しい雨が通り過ぎると、
「もう大丈夫だろう」
と思って再び走り始めたくなります。
しかし、雨が弱まった後でも道路の冠水や河川の増水が残っている場合があります。
安全に停車した状態で、キキクル、道路規制、これから通るルートを確認します。
国土交通省の道路情報も、情報掲載後に状況が変化する場合があるため、最終的には現地の状態に注意するよう求めています。
「雨が弱くなった」ではなく、
「安全なルートを確認できた」
ところを再出発の基準にします。
すでに冠水路へ入って車内まで水が来たら走り切ろうとしない
判断が遅れ、すでに冠水した場所へ入ってしまうこともあります。
車内まで水が入ってきた場合は、「あと少しだから抜ける」と走り切ろうとする段階ではありません。
JAFは、走行中の車内へ浸水してきた場合には車を止め、エンジンを停止して避難するよう案内しています。
国土交通省も、水深が車両の床面を超えると電気装置やエンジンなどに不具合が起き、移動できなくなるおそれがあるとしています。
ここまで来たら、車を守ることより人が脱出できるうちに安全を確保することが優先です。

大雨では「目的地まで行けるか」から「どこで走るのをやめるか」へ切り替える
大雨の運転中は、最初からすべての危険を予測できるとは限りません。
だからこそ、途中で判断を変えて構いません。
前が見えにくくなったら、安全な退避場所を探す。
前方が冠水していたら、その道路へは進まない。
この先の危険度が高まり、安全な退避場所があるなら、冠水するまで走り続けない。
大雨になったときは、
「まだ走れる」
ではなく、
「今ならまだ安全に運転をやめられるか」
を見ることが重要です。
目的地へ到着することより、安全な場所でいったん運転を終えられる段階を逃さないことが、道路冠水に巻き込まれないための判断になります。
出典
気象庁|雨の強さと降り方
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気象庁|浸水キキクル
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JAF|台風・大雨時のクルマに関する注意点
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JAF|自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?
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国土交通省|水深が床面を超えたら、もう危険!
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国土交通省|道路情報提供システム
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NEXCO中日本|局地的大雨時の走行にご注意ください!
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岩手県警察|水害から身を守るために「車運転の注意点」「とるべき行動」
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