脱出ハンマーは車のどこに置く?水没時に手が届く設置場所と割れないガラス

大雨による道路冠水に備えて、車に脱出ハンマーを積んでいる。

それでも、

「グローブボックスに入れておけばいい?」

「ドアポケットでも大丈夫?」

「運転席の下に置けば取りやすい?」

と、置き場所に迷うことがあります。

脱出ハンマーは、車に積んであるだけでは十分ではありません。

設置場所の基準は、

シートベルトで身体を固定された状態でも、運転席から片手で取れること。

さらに、

走行中や衝突時に飛んだり転がったりしないよう固定されていること。

です。

そしてもう一つ、置き場所と同じくらい重要なのが、

自分の車で、どのガラスを脱出ハンマーで割れるのか事前に知っておくこと

です。

フロントガラスは割れません。

車種によっては横のドアガラスも割れないため、「ハンマーを置いたから安心」ではありません。

脱出ハンマーは「運転席から手が届く場所」に固定する

水没時には、普段と同じように車内を自由に動けるとは限りません。

事故の衝撃や車体の傾きによってシートベルトがロックしたり、体重がベルトに掛かって身体を動かしにくくなったりすることがあります。

その状態で、

後席。

荷室。

トランク。

へハンマーを取りに行くことはできません。

設置場所を決めるときは、車を安全な場所へ停めた状態で運転席に座り、シートベルトを締めてください。

普段の運転姿勢のまま、

身体を大きく前へ倒さない。

助手席側まで乗り出さない。

シートベルトを外さない。

という状態でハンマーに手を伸ばします。

そのまま取れる場所が候補です。

センターコンソール周辺は候補になるが、車によって違う

具体的な候補として考えやすいのが、センターコンソール周辺です。

例えば、

シフトレバーの横。

センターコンソールの側面。

運転席シートの側面。

などです。

運転席から近く、片手を伸ばしやすい場所だからです。

ただし、すべての車でここが正解というわけではありません。

シフト操作を邪魔する。

パーキングブレーキ操作を邪魔する。

シートを前後させると干渉する。

運転席・助手席のエアバッグ展開範囲へ入る。

といった場所には取り付けられません。

純正アクセサリーとして脱出用具が用意されている車なら、メーカーが指定する取付位置を利用する方法もあります。

センターコンソールボックスの中でも「取れるか」を確認する

センターコンソールボックス内へ入れる方法もあります。

ただし、

「運転席の近くにある収納だから大丈夫」

とは限りません。

シートベルトを締めた状態で、

ふたを開ける。

中からハンマーを探す。

取り出す。

までを片手でできるか確認してください。

身体を大きくひねらなければ取れないなら、緊急時の設置場所としては適しません。

また、収納内へ置くだけでは衝撃で奥へ入り込むことがあります。

可能なら専用ホルダーなどで位置を固定します。

グローブボックスは運転席から取れるかで判断する

助手席前のグローブボックスへ脱出ハンマーを入れている人もいます。

しかし運転席から見ると距離があります。

シートベルトに拘束された状態で、

助手席側へ手を伸ばす。

グローブボックスを開ける。

中からハンマーを取り出す。

という動作ができないなら、置き場所を変えた方がよいでしょう。

つまり、

グローブボックスだからダメなのではなく、拘束された運転姿勢から取れないならダメ

と考えます。

車体サイズや運転席位置によって結果は変わります。

ドアポケットへ入れるだけでは「固定」にならない

運転席ドアポケットなら、手は届きやすいでしょう。

ただし、ポケットへ置いているだけでは、事故の衝撃や車体の転倒でハンマーが飛び出す可能性があります。

緊急時に、

「いつものドアポケットに手を入れたけれど、ハンマーがない」

では意味がありません。

脱出ハンマーは、

置くのではなく固定する

ことが重要です。

製品付属のホルダーなどを使い、通常走行や衝撃で簡単に外れない場所へ取り付けます。

運転席の床へ転がしておくのは避ける

運転席の足元は近く見えますが、脱出ハンマーを置くだけの場所としては適しません。

走行中に転がれば、

アクセル。

ブレーキ。

クラッチ。

などのペダル操作を妨げる危険があります。

事故時にはシート下へ入り込むことも考えられます。

同じ「運転席の近く」でも、

固定されたシート側面

と、

床に置かれただけ

では大きな違いがあります。

足元周辺へ設置するなら、その車と製品に適した固定方法で、ペダル操作へ絶対に干渉しない位置でなければなりません。

トランクに置いた脱出ハンマーは水没時には使えない

防災用品をまとめてトランクへ入れている人もいるでしょう。

保存水。

非常食。

毛布。

携帯トイレ。

などなら、それでも役立ちます。

しかし脱出ハンマーは別です。

水没して車内に閉じ込められたとき、トランクまで取りに行くことはできません。

国民生活センターの調査でも、脱出ハンマーを積んでいる人の中にトランクへ置いている人が確認されています。

脱出ハンマーは防災用品の収納場所ではなく、

運転中に閉じ込められた、その瞬間に取れる場所

へ置きます。

「シートベルトを外せば取れる場所」では遅い場合がある

脱出ハンマーにはシートベルトカッターが付いているものがあります。

これは、衝撃などでシートベルトが外せなくなった場合にも使うためです。

つまり、

「ベルトを外して身体を動かせば取れる」

場所では矛盾します。

必要なのは、

ベルトが外れない状態でもハンマーを取れること

です。

運転席へ座ったまま、ベルトを締めて確認してみてください。

この確認だけで、今置いている場所が本当に使えるのかかなり分かります。

ハンマーを取れてもガラスが割れなければ脱出できない

設置場所を決めたら、次に自分の車のガラスを確認します。

脱出ハンマーで割れるのは、基本的に強化ガラスです。

一方、

合わせガラスは脱出ハンマーでは脱出口を作れません。

合わせガラスとは、複数のガラスの間に樹脂製の膜を挟んだ構造です。

割れても膜がガラスをつなぎ止めるため、ハンマーで叩いても容易に穴が開きません。

フロントガラスは狙わない

フロントガラスは合わせガラスです。

ハンマーで叩けばひびが入ることはあっても、脱出できる穴を作ることはできません。

水没して、

前が一番近いから。

フロントガラスが大きいから。

という理由でフロントガラスを何度も叩いていると、その間にも水位が上がります。

脱出ハンマーを備えるなら、

どの横・後ろのガラスを割るか

まで事前に決めておきます。

横のドアガラスでも割れない車がある

以前は、

「フロントは割れない。横の窓を割ればよい」

という覚え方でも対応しやすい車が多くありました。

しかし現在は、一部の車でドアガラスにも合わせガラスが使われています。

目的の一つは車内の静粛性向上です。

そのため、

運転席ドア。

助手席ドア。

後席ドア。

リアガラス。

の全部が必ず強化ガラスとは限りません。

同じ車種でもグレードや仕様によって異なる可能性があります。

車を買い替えたら、脱出ハンマーを載せ替えるだけではなく、ガラスの種類も再確認してください。

強化ガラスと合わせガラスは刻印で分かる場合がある

自動車のガラスには、端の部分に小さな表示があります。

JISマークが表示されているガラスなら、一つの目安として、

「T」「TP」は強化ガラス。

「L」「LP」は合わせガラス。

を示します。

強化ガラスなら脱出ハンマーで破砕できます。

合わせガラスなら脱出ハンマーでは破砕できません。

ただし、車によって表示方法が違ったり、分かりにくかったりすることがあります。

刻印だけで判断できないなら、

取扱説明書を見る。

自動車メーカーの公式情報を確認する。

販売店へ問い合わせる。

方法で確認します。

ガラスの断面でも確認できる車がある

ドアガラスを少し下げると、上端の断面が見える車があります。

1枚のガラスに見える強化ガラスに対し、合わせガラスでは複数枚を貼り合わせた構造が確認できる場合があります。

日産なども、この断面による確認方法を案内しています。

ただし見えにくい場合に無理に判断する必要はありません。

「たぶん強化ガラスだろう」

で済ませず、分からなければメーカー・販売店へ車種と仕様を伝えて確認する方が確実です。

運転席のガラスが合わせガラスなら別の脱出口を決める

運転席の横窓が合わせガラスだったとしても、

「この車では脱出ハンマーが使えない」

とは限りません。

後席ドア。

リアクォーターガラス。

後面ガラス。

などに強化ガラスが使われている可能性があります。

重要なのは、

強化ガラスが車のどこに残っているか

です。

例えば運転席ガラスが割れない車なら、

「後席右側の強化ガラスを狙う」

など、平常時に脱出口を決めておきます。

ただし運転席からハンマーを持った状態でその場所まで届くのかも確認が必要です。

届かなければ、ハンマーがあっても使えません。

強化ガラスは中央ではなく端・隅を狙う

実際にハンマーを使うときも、叩く場所が重要です。

強化ガラスは中央部分では力を受けてたわみやすく、割れにくいことがあります。

脱出ハンマーは、

ガラスの端や隅に近い部分

を狙います。

金槌タイプなら尖った部分を使います。

ポンチタイプなら、製品の説明に従ってガラスの端へ押し当てます。

トヨタも、ドアガラスの隅を叩く方法を案内しています。

ただし製品によって使い方が違うため、購入したら取扱説明書を一度読んでおきます。

水没してから説明書を探す時間はありません。

水が窓より高くなる前に使う

水没時は、最初からハンマーを使うわけではありません。

まず水位が低いうちにドアを開けます。

ドアが開かなければ、パワーウインドウが動くうちに窓を開けます。

それもできなければ、脱出ハンマーで割れるガラスを使います。

可能なら窓が水面より上にある段階で脱出します。

窓が水中へ入った状態でガラスを割ると、水が一気に流れ込むためです。

脱出ハンマーは、

最後まで車内に残るための道具ではなく、ドアや窓から早く出られないときの次の脱出手段

です。

ハンマーで割れないときはフロントガラスを叩き続けない

強化ガラスだと思って叩いたのに割れない。

この場合、

力が足りない。

場所が悪い。

だけとは限りません。

合わせガラスだった可能性があります。

ハンマーで割れないガラスを何度も叩き続けても、脱出口を作れません。

別の強化ガラスを試せるならそちらを使います。

どのガラスも割れず、窓もドアも開かない場合には、車内への浸水が進んで車内外の水位差が小さくなると、ドアを開けられる可能性があります。

だからこそ、その状況になる前に、

自分の車で割れるガラスを平常時に確認しておく

ことが重要です。

フィルムを貼っている車も確認しておく

強化ガラスであっても、後からフィルムを施工している車があります。

国民生活センターは、強化ガラスでもフィルムを貼った場合には緊急脱出ハンマーで破砕できない可能性があると注意しています。

少なくとも、

「強化ガラスと確認したから絶対に簡単に抜けられる」

とは考えない方がよいでしょう。

防犯・断熱などのフィルムを施工している場合は、施工店や自動車メーカーへ緊急時の扱いを確認しておくと安心です。

ハンマー自体も「安ければ何でもよい」ではない

脱出ハンマーは実際にガラスを割って試すことが難しい商品です。

そのため購入するときは、一定の性能を確認できる表示がある製品を選びます。

国内には「自動車用緊急脱出支援用具」のJIS規格があります。

国民生活センターも、JIS規格などのマークが付いた信頼できる商品を選ぶよう勧めています。

また、水没・事故時にはシートベルトが外れない可能性があるため、シートベルトカッター付きのものなら一つの道具で対応できます。

この記事では特定の商品名より、

割れる性能が確認されているか。

シートベルトを切れるか。

車内へ確実に固定できるホルダーがあるか。

を優先します。

Amazon.co.jp: オレンジ色の防災緊急ツール 2個入り シートベルトカッター付き 車脱出用ハンマー ガラス割用ハンマー ケースホルダー付き : 車&バイク
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設置したら一度「脱出演習」をしておく

ガラスを実際に割る必要はありません。

車を止めた状態で、

運転席に座る。

シートベルトを締める。

目を閉じてもハンマーの位置が分かるか確認する。

片手でホルダーから外してみる。

シートベルトカッターの位置を確認する。

どの強化ガラスを割るか指で示す。

ここまでなら車を傷つけずにできます。

そこで、

ベルトを締めると手が届かない。

シートを後ろへ下げると取れない。

ハンマーを外すのに両手が必要。

という問題が分かったら、設置場所を変えます。

置き場所を決める基準は、

「普段邪魔にならない」

だけではありません。

緊急時に身体をほとんど動かせなくても使えるか

です。

脱出ハンマーの場所と「割る窓」をセットで決める

脱出ハンマーを備えるなら、最後にこの2つを確認してください。

一つは、

シートベルトを締めた運転姿勢のまま取れる場所へ、動かないよう固定されているか。

もう一つは、

その位置から届く範囲に、脱出ハンマーで割れる強化ガラスがあるか。

センターコンソールへ置いた。

ドアポケットへ入れた。

という設置場所だけでは十分ではありません。

フロントガラスや合わせガラスしか割れないと思っていたら、緊急時に初めて使えないことに気づきます。

脱出ハンマーは、

「どこに置くか」と「どこを割るか」をセットで決めて初めて使える防災用品

です。

大雨の予報が出てから慌てて車内へ積むのではなく、普段から手の届く位置へ固定し、自分の車で割れるガラスまで確認しておきましょう。

出典

国土交通省|いざというときのために、緊急脱出用ハンマーを備え付けましょう! 資料を開く

国土交通省|水没時における脱出用ハンマー使用方法の注意点について 資料を開く

国民生活センター|自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕 資料を開く

JAF|水没時、何を使えば窓が割れるのか? 資料を開く

JAF|水没テスト 資料を開く

日産自動車|水没時の対処方法・緊急脱出用ハンマーの注意事項 資料を開く

トヨタ自動車|レスキューマンⅢの使用方法 資料を開く

Honda Access|スマートレスキュー 資料を開く