大雨で車内まで水が入り、シートや床もびしょ濡れになった。
この状態になると、
「乾かして部品を交換すれば修理できるのか」
「電装系まで濡れたら、もう買い替えなのか」
が気になります。
結論からいうと、車内まで水没した車でも修理できる場合はあります。
ただし、「シートまで水が来たか」だけでは修理できるか判断できません。
見るべきなのは、
内装だけが浸水したのか。
床付近の配線やコネクターまで水が入ったのか。
制御装置、エンジン、駆動系、高電圧系まで影響したのか。
という損傷範囲です。
水位が高くなるほど修理対象は広がりますが、「この高さなら必ず廃車」という全国共通の線はありません。
車内まで水が入っても修理できる場合はある
フロアやカーペットまで水が入ったからといって、その時点で修理不能とは限りません。
内装を外して洗浄・乾燥し、電装品やブレーキ、油脂類などを点検したうえで再使用できる車もあります。
反対に、外から見るとそれほど深く浸かっていなくても、電気系統やエンジンへ水が入り、大きな修理になることがあります。
そのため修理可能性を見るときは、
「水がどこまで来たか」
だけではなく、
「その高さに何がある車なのか」
まで確認する必要があります。
車種によって部品の配置が違うからです。
最初の境目は「床面より上へ水が入ったか」
国土交通省が一つの大きな境目としているのが床面です。
水位が車両の床面を超えると、車内へ水が入り、電気装置が故障するおそれがあります。
ここからは、
「濡れた内装を乾かせば終わり」
とは考えません。
車内にはカーペットの下や床付近を通る配線・コネクターがあります。
車種によっては床面に近い位置へ各種電装品が配置されています。
そのため、フロアまで水が入った車は、内装の清掃と同時に電気系統の点検が必要です。
シート下まで浸水すると電装系の確認範囲が広がる
水位がさらに上がり、シートレールやシート下まで達した場合は、電装系への影響をより慎重に確認します。
スズキの取扱説明書でも、冠水後の点検項目として「コネクタ、配線の浸水」を挙げています。
ここで問題なのは、
「今、電装品が動いているか」
だけではありません。
コネクターや配線へ水が入れば、その場では正常でも腐食や接触不良につながる可能性があります。
そのため、
パワーウインドウが動く。
メーターに警告がない。
エンジンが動く。
からといって、電装系まで異常なしとは判断できません。
シート下まで水が来た場合は、
どの配線・コネクター・制御装置が水に触れたのか
を整備工場に確認してもらいます。
シートの座面まで来たら「内装修理だけ」では考えない
水がシートの座面付近まで達していれば、浸水範囲はかなり広くなっています。
シート本体。
カーペット。
断熱・吸音材。
配線やコネクター。
車種によっては床面近くの各種制御部品。
などを含めて確認する必要があります。
シートやカーペットは表面だけ乾かしても、内部に水分や泥が残ることがあります。
そのため再使用するのか、洗浄・乾燥するのか、交換するのかを部品ごとに判断します。
この段階になると、
「シートを交換すれば終わり」
ではなく、
室内をどこまで分解し、どの電装品まで点検・交換する必要があるか
が修理費を左右します。
電装品は「乾けば使える」とは限らない
水没車で判断を難しくするのが電装系です。
最近の車は、
エンジン。
変速機。
ブレーキ。
エアバッグなどの安全装置。
ドアや窓。
各種運転支援装置。
など、多くの機能を電子制御しています。
これらを制御するコンピューターは一般に「ECU」と呼ばれます。
ECUとは、車の各機能を電子的に制御する装置です。
ただし、どのECUがどの位置にあるかは車種ごとに異なります。
そのため「シートまで水没したらECUが全部水没する」という意味ではありません。
重要なのは、実車で、
どの制御装置が水に触れたか。
コネクターへ浸水していないか。
配線に異常がないか。
を確認することです。
水が引いた後に正常でも点検が必要
水没した翌日にドアを開け、
メーターも点く。
ライトも点く。
という状態なら、
「電気系統は無事だった」
と思うかもしれません。
しかし、一度浸水した車について国土交通省は、運転可能な状態でも電気装置等が損傷している可能性があるとして、整備工場での点検を求めています。
JAFも同様に、車内まで冠水した車では電装系のショートなどのおそれがあるため、各部点検前の始動を避けるよう案内しています。
つまり、
現在動作するかではなく、浸水した部品が安全に継続使用できる状態か
を見る必要があります。
エンジンまで水が入った場合は判断が一段変わる
車内の浸水だけでなく、エンジンの吸気系へ水が入った可能性がある場合は修理範囲がさらに変わります。
日産は、フロア面を超えて浸水・冠水した場合、エンジンの吸気系へ水が入っている可能性があり、その状態で始動するとエンジンを破損するおそれがあるとしています。
そのため、
「水が引いたのでエンジンがかかるか試す」
のは避けます。
エンジン内部へ水が入っていなければ、電装・内装中心の修理で済む可能性があります。
一方、エンジン内部まで水が入り損傷していれば、修理対象と費用は大きくなります。
車内の浸水高さだけではなく、
エンジンが水を吸った可能性まで確認する
ことが必要です。
ブレーキやオイル類も車内とは別に点検する
車内をきれいに直しても、車として安全に走れなければ修理完了ではありません。
トヨタやマツダは、冠水後の点検対象として、
ブレーキの効き。
エンジンやトランスミッションなどのオイル・フルードの量や状態。
ベアリングやジョイント部の潤滑状態。
などを挙げています。
つまり修理見積を見るときも、
「内装交換○万円」
だけでは不十分です。
走る・止まるための機械部分まで点検に入っているか
を確認します。
ハイブリッド車・EVは高電圧系まで確認する
ハイブリッド車や電気自動車では、もう一つ大きな判断があります。
高電圧バッテリーや、それにつながる部品です。
国土交通省や自動車メーカーは、浸水したHV・EVについて高電圧システムがあるため、むやみに触らないよう注意しています。
EVの取扱説明書では、冠水後に駆動用電池につながる構成部品まで点検対象としているメーカーもあります。
そのため、
「室内を乾かせば乗れる」
と自己判断しません。
HV・EVは、販売店や対応できる整備工場で高電圧系を含めて確認してもらいます。
海水につかった場合は修理判断をさらに慎重にする
同じシート高さまで水没しても、
河川や雨水。
海水。
では条件が違います。
日産は、海水は電気を通しやすく、水が引いた後も電気系統の腐食やショートによって自然発火につながるおそれがあるとしています。
高潮による水没なら、
「シートまでだったから修理可能」
とは水位だけで判断しない方がよいでしょう。
査定や修理見積を取る際にも、
淡水なのか海水なのか
を必ず伝えます。
修理見積では「交換しない部品」を確認する
水没車の見積で重要なのは、総額だけではありません。
例えば、
配線は点検だけなのか。
コネクターは交換するのか。
浸水した電子部品を再使用するのか。
シート内部は乾燥で済ませるのか交換するのか。
エンジン・変速機の油脂類は確認するのか。
まで見ます。
特に、
「今動いているので再使用」
とする部品が多い場合には、
その判断根拠。
修理後の保証。
後から不具合が出た場合の対応。
を確認しておくと、修理するか買い替えるかを比較しやすくなります。
「修理できる」と「修理して乗り続けるべき」は別
整備工場から、
「修理はできます」
と言われても、それだけで修理を選ぶ必要はありません。
例えば、
内装中心の浸水。
電装品の交換範囲が限定的。
エンジン・駆動系への水の侵入なし。
修理後の安全性について整備工場から説明を受けられる。
という状態なら、修理して長く乗る選択は考えやすくなります。
一方、
多数の配線・制御装置まで浸水。
エンジンや駆動系にも損傷。
HV・EVの高電圧系まで影響。
海水による浸水。
修理後の不具合について整備工場でも見通しを立てにくい。
という場合は、修理できるとしても買い替えとの比較が重要になります。
修理か買い替えかは「水位」ではなく修理範囲を聞いて決める
車内まで水没した車では、
フロアまで。
シート下まで。
座面まで。
ダッシュボードまで。
と水位が上がるほど、影響する可能性のある部品は増えていきます。
しかし、
「座面まで来たら必ず廃車」
という共通基準はありません。
最後に知りたいのは水位ではなく、
何を交換すれば安全に使える状態へ戻せるのか
です。
販売店・整備工場には、
「内装だけの修理ですか」
「配線・コネクターはどこまで浸水していますか」
「制御装置に水は入っていますか」
「エンジン・駆動系への浸水はありますか」
「HV・EVなら高電圧系は無事ですか」
「交換せず再使用する部品はどれですか」
まで確認します。
この結果、
損傷範囲が限定されているなら修理を検討する。
電装・エンジン・高電圧系まで広範囲なら、修理見積と買い替え費用を並べる。
という順番になります。
車内まで水没した車は、
「シートまで来たから直せない」のではなく、「安全に戻すために交換・点検する範囲がどこまで広がったか」で修理可否を判断する
のが基本です。
出典
国土交通省|浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ
国土交通省|水深が床面を超えたら、もう危険!
JAF|車内まで冠水した自動車の扱いと対処方法
日産自動車|クルマが台風や水害などで浸水・冠水してしまった場合の対処方法
トヨタ自動車|AQUA取扱説明書・冠水路走行に関する注意
スズキ|取扱説明書・冠水した道は
マツダ|取扱説明書・冠水した道路を走行しない