大雨で駐車場が冠水し、車が水につかった。
数時間後に水が引き、外から見ると車はいつもと変わらない。
そんな状態になると、
「エンジンがかかるかだけ確認してみよう」
と思うかもしれません。
しかし、水に浸かった車は、水が引いた後でも自分でエンジンをかけないでください。
国土交通省、JAF、自動車メーカーはいずれも、浸水した車を自己判断で始動しないよう案内しています。外側が乾いていても、内部の電装品やエンジン周辺まで安全になったことを意味しないからです。 (国土交通省)
判断基準は、
「水が引いたか」ではなく「点検で安全が確認されたか」
です。
水が引いてもエンジンをかけてはいけない
車の周囲から水がなくなると、
「もう乾いたから大丈夫」
と思いやすくなります。
しかし、水はボディーの表面だけについているとは限りません。
国土交通省は、水に浸かった車について、外観上問題がなさそうでも感電事故や電気系統のショートによる車両火災が起こるおそれがあるとしています。
そのため、最初の対応として「自分でエンジンをかけない」としています。 (国土交通省)
国民生活センターも、水が引いていても感電やショートによる火災の可能性があるため、エンジンはかけず販売店や整備工場へ相談するよう案内しています。 (消費生活センター FAQ)
つまり、
「外から見て乾いた」
「車内の水がなくなった」
「一晩たった」
といったことは、始動してよい根拠にはなりません。
「動くか確認するために1回だけ」もやらない
水没車で特に避けたいのが、
「壊れているか確認するためにエンジンをかける」
ことです。
確認のための始動そのものが、故障を広げる可能性があるからです。
日産は、車のフロア面を超えて浸水した場合、エンジンの吸気系へ水が入っている可能性があり、その状態で始動すると最悪の場合エンジンを破損するおそれがあるとしています。 (日産 FAQ)
マツダも、冠水路では電気・電子部品のショートだけでなく、水を吸い込むことによるエンジン破損のおそれがあるとしています。 (マツダ)
つまり、
「かかったら使える」
「かからなかったら修理」
という試し方はできません。
使えるかどうかを自分で始動して調べるのではなく、始動する前に専門家へ渡すのが順番です。
エンジンがかかっても、そのまま乗ってはいけない
水没後に誤ってエンジンをかけてしまい、普通に始動する場合もあります。
しかし、
「かかった=異常なし」
ではありません。
JAFは、車内まで冠水した車では、電装系のショート、エンジン破損、ブレーキ機構の異常などが発生している可能性があるため、各部を点検するまでは始動させないよう案内しています。 (JAF(日本自動車連盟))
損保ジャパンも、水没車を再利用する前には、エンジンだけでなくブレーキ、電気系統、配線などを専門業者が確認する必要があるとしています。 (損保ジャパン 共通IDサイト)
したがって、一度始動してしまった場合も、
「普通にアイドリングしているから整備工場まで乗っていこう」
とは判断しません。
それ以上の始動や走行をやめ、販売店、整備工場、ロードサービスへ状況を伝えます。
ハイブリッド車はPOWERスイッチも自分で入れない
ハイブリッド車では、
「エンジンをかけるなと言っても、POWERスイッチならいいのでは?」
と考えるかもしれません。
しかし、トヨタは浸水した車について、エンジンだけでなくハイブリッドシステムの始動もやめるよう案内しています。 (トヨタ自動車WEBサイト)
さらにハイブリッド車や電気自動車、水素自動車には高電圧バッテリーが搭載されているため、むやみに触れないよう注意しています。
国土交通省も同様に、HV・EVについては高電圧バッテリーがあるため、むやみに触らないよう案内しています。 (国土交通省)
つまり、
ガソリン車なら「エンジンをかけない」。
ハイブリッド車なら「ハイブリッドシステムを自分で始動しない」。
EVなら「エンジンがないから試しに動かしてみる」と考えない。
車種にかかわらず、浸水した車を自分で動作確認しないことが基本です。
バッテリーを自分で触る前に車種を確認する
国土交通省は、浸水した車を使用するまでの間にも発火のおそれがあるとして、バッテリーのマイナス側ターミナルを外し、バッテリーへ再接触しないよう処置することを案内しています。 (国土交通省)
トヨタも同様の案内をしています。 (トヨタ自動車WEBサイト)
ただし、ここだけを見て、
「どの車でも自分でバッテリーを探して外せばいい」
とは考えない方がよいでしょう。
特にHV・EVなどは高電圧系統を搭載しており、国土交通省もメーカーもむやみに触れないよう注意しています。
車種が分からない。
どの端子を外すのか分からない。
まだ周囲が濡れている。
車体に異常がある。
このような状態なら、自分で作業せず、販売店やロードサービスへ相談します。
海水につかった車は水が引いた後も注意する
高潮などで海水につかった場合は、さらに注意が必要です。
JAFは、海水に含まれる塩分によって配線などがショートし、高潮後に車両火災が発生した事例を紹介しています。
また、水が引いた後でも塩分によって腐食が進むとしています。 (JAF(日本自動車連盟))
日産も、海水は電気を通しやすく、水が引いた後でも電気系統の腐食やショートから自然発火・車両火災につながるおそれがあると案内しています。 (日産 FAQ)
そのため、
「もう海水はなくなった」
「ボディーを水で流した」
だけで再始動してはいけません。
海水につかったこと自体を販売店やロードサービスへ必ず伝えます。
自分で乾かしてからエンジンをかけるのも避ける
ドアを開けて乾燥させたり、車内の水を取り除いたりすれば、
「十分乾燥したから動かせる」
と思うかもしれません。
しかし、見えている内装が乾いたことと、電気配線、コネクター、制御装置、吸気系、ブレーキなどまで安全になったことは同じではありません。
損保ジャパンも、水没車を再利用する場合は専門業者による点検で走行可能か判断する必要があるとしています。 (損保ジャパン 共通IDサイト)
自分で乾燥させることを「始動してよい条件」にはしません。
専門家の確認が終わるまでは動かさないと考えます。
水が引いた後にやるのは「始動」ではなく「連絡」
水没車を前にすると、
まず車が動くか確認し、その後で修理先を考える。
という順番にしたくなります。
しかし、実際は逆です。
まず自分や周囲の安全を確認します。
そのうえで、車を始動させず、購入した販売店、整備工場、JAFなどのロードサービスへ連絡します。
国土交通省も、水没車を再び使用したい場合は、自分で始動せず販売店または整備工場へ相談するよう案内しています。 (国土交通省)
JAFも、点検が必要な状態として救援要請を案内しています。 (JAF(日本自動車連盟))
ここでは、
「自走できますか」
ではなく、
「大雨でここまで浸水しました。エンジンはかけていません」
と状況を伝えます。
車内まで水が入ったのか。
どの高さまで水が来たのか。
駐車中に水没したのか、走行中に止まったのか。
海水なのか淡水なのか。
すでに一度エンジンやシステムを始動してしまったのか。
分かる範囲で伝えれば、搬送や点検方法を判断してもらえます。
冠水道路を走っただけの車とは対応が違う
ここは前の記事との境界でも重要です。
道路の冠水部分を通ったものの、車内へ水は入らず、そのまま正常に走り切った車。
駐車中や走行中に水位が上がり、車内まで浸水した車。
この2つは同じ状態ではありません。
前者でもメーカーは点検を勧めていますが、後者のように水没・浸水した車では「エンジンをかけず専門家へ」という対応になります。
JAFも、一度車内まで冠水した車については、各部の点検まではエンジンを始動しないよう明示しています。 (JAF(日本自動車連盟))
「冠水した道を走った」という記事と、「水没した車」の記事を分ける理由はここにあります。
水没車は「水が引いたら確認」ではなく「点検が終わったら使用」
水が引いた翌朝。
泥は残っていても、車の形はそのまま。
ドアも開く。
そんな状態なら、ついエンジンをかけてみたくなります。
しかし、水没した車で判断するべきなのは、
「もう水がないか」
ではありません。
販売店や整備工場による確認が終わったかです。
水が引いただけなら、
エンジンをかけない。
ハイブリッドシステムやEVを自分で起動しない。
動いたとしても自走しない。
HV・EVの高電圧部分にはむやみに触れない。
そして販売店、整備工場、ロードサービスへ連絡する。
水没した車は、故障を確認するためにエンジンをかけるのではありません。
エンジンをかける前に、使ってよい状態なのかを確認してもらう。
この順番を守ることが、水が引いた後の二次被害を防ぐポイントです。
出典
国土交通省|浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ
国土交通省の資料を開く
JAF|車内まで冠水した自動車の扱いと対処方法
JAFの資料を開く
国民生活センター|車が水没した。水が引けば通常通り使用できるのか
国民生活センターの資料を開く
トヨタ自動車|クルマが浸水しましたが、エンジンをかけてもいいですか?
トヨタ自動車の資料を開く
日産自動車|クルマが台風や水害などで浸水・冠水してしまった場合の対処方法
日産自動車の資料を開く
マツダ|電子取扱説明書「冠水した道路を走行しない」
マツダの資料を開く