車を逃がす高台を普段から決める|大雨時の一時駐車先を探しておく

自宅や月極駐車場が浸水しやすい場所にあるなら、大雨になってから「車をどこへ移そう」と探し始めるのでは遅い場合があります。

普段から決めておきたいのは、単に近くの高台ではありません。

実際に水害時に車を置ける場所で、普段の駐車場所より浸水リスクが低く、そこまで安全な道路で移動できる場所です。

さらに一つが満車・未開放だった場合に備え、第2候補まで決めておくと、大雨前の判断がかなり早くなります。

「高台」は丘の上だけではない

車の水害対策というと、「高台へ移す」と言われます。

しかし都市部では、近くに分かりやすい丘があるとは限りません。

そこで候補になるのが、自走式の立体駐車場や屋上駐車場です。

実際、自治体の車両退避制度でも、商業施設やパチンコ店などの立体駐車場上層階を利用する例があります。

施設そのものが浸水想定区域に入っていても、想定浸水深より高い2階・3階・屋上などを退避場所として指定しているケースがあります。

つまり見るべきなのは、

「この土地は高いか」

だけではありません。

「自分の車を置く床面が、想定される水位より高いか」です。

平面駐車場と立体駐車場では、同じ住所でも水害時の条件が大きく違うことがあります。

自治体に「車両退避場所」がないか最初に調べる

最初に調べたいのは、自分の自治体が車両専用の退避場所を用意しているかです。

名称は自治体によって違います。

「自動車の一時退避場所」

「車両用避難場所」

「自家用車等緊急避難待避場所」

「水害時緊急避難協力駐車場」

などです。

市役所サイトで「車両 退避 水害」「車 一時避難 大雨」などと検索すると見つかることがあります。

公共施設だけでなく、自治体と協定を結んだ大型商業施設、立体駐車場、パチンコ店などが含まれるケースもあります。

こうした施設は、水害時に車を逃がす目的があらかじめ想定されている点が大きな利点です。

一覧に載っていても「いつでも使える」とは限らない

自治体の退避場所を見つけたら、施設名だけ保存して終わらせない方がよいでしょう。

利用条件を確認します。

自治体によっては、大雨時に市が「開放します」と発表した後だけ利用できます。

施設一覧には載っていても、安全確認ができないなどの理由で開放されない場合があります。

当然、駐車できる台数にも限りがあります。

つまり、

「市の退避駐車場を知っている」

だけでは不十分です。

開放情報をどこで確認するのか。

ホームページなのか。

防災アプリなのか。

メールやSNSなのか。

ここまで普段から確認しておきます。

大雨当日に現地へ着いてから「今日は開いていません」では、そこから第2候補を探すことになります。

第1候補だけでなく第2候補まで決める

車両退避場所は、避難者全員分の車を収容する駐車場ではありません。

台数制限があります。

しかも、大雨の予報が出れば同じ地域の人が同時に移動します。

そのため、

第1候補は自治体の車両退避場所。

第2候補は別の退避場所。

というように、最低でも二つの候補を用意しておく方が現実的です。

自治体の制度がない地域なら、普段から利用できる立体式の有料駐車場なども候補になります。

ただし、商業施設の駐車場だからといって、災害時に勝手に長時間駐車してよいわけではありません。

通常の有料駐車場として利用できるのか、営業時間、最大利用時間、車高制限などを事前に確認します。

「大雨になったら近所のスーパーへ停めよう」と、許可や利用条件を確認せず予定しておくのは避けます。

立体駐車場なら何階へ置くかまで決める

「近くの立体駐車場」を決めるだけでも、まだ十分ではありません。

どの階へ停めるかまで考えます。

自治体の車両退避場所でも、1階は浸水する可能性があるため2階以上、3階以上、屋上などと指定している例があります。

大雨の日に立体駐車場へ入り、

「1階が空いているからここでいいか」

と停めてしまえば、せっかく移動した意味が弱くなります。

平時にハザードマップで候補施設周辺の想定浸水深を確認し、自治体が利用階を指定している場合はその指定に従います。

指定がない一般の有料立体駐車場を候補にする場合も、低い階へ置くより、施設の利用条件の範囲で浸水想定より高い位置を検討します。

「近い場所」より安全なルートで行ける場所を選ぶ

退避先選びで見落としやすいのが、そこまでの道路です。

自宅から500mの立体駐車場があっても、途中に冠水しやすいアンダーパスがあれば、大雨時の退避先としては使いにくくなります。

川沿いの低い道路。

アンダーパス。

用水路沿い。

周囲より低い交差点。

過去によく冠水する道路。

こうした場所を通らなければ到達できない退避先は、候補順位を下げた方がよいでしょう。

国のハザードマップに加え、自治体や道路管理者が公開する道路冠水想定箇所も確認します。

愛知県も、アンダーパスなどは短時間豪雨で雨水が集中し、排水能力を超えて冠水する可能性があるとしてマップを公開しています。

一時駐車先は、

「水が来ない場所」

だけではなく、

「水が来る前に安全な道で到達できる場所」

である必要があります。

普段から一度実際に走っておく

地図上で決めた退避先は、平常時に一度車で行っておくと安心です。

入口はどこか。

右折で入れるのか。

夜でも入れるのか。

車高制限はないか。

屋上までどのルートで上がるのか。

所要時間はどれくらいか。

こうしたことは、現地へ行くとすぐ分かります。

大雨の夜、視界が悪い中で初めて行く駐車場を探すより、普段から知っている場所へ移動する方が迷いません。

特にミニバン、SUV、ルーフボックス装着車などは、立体駐車場の高さ制限も確認します。

退避先へ着いたのに車高制限で入れない、では使えません。

退避先そのもののハザードマップも確認する

自宅より少し高い場所だからといって、安全とは限りません。

退避先候補の住所もハザードマップへ入力します。

洪水。

内水。

高潮。

土砂災害。

地域によって関係する災害を確認します。

特に立体駐車場なら、「建物の場所自体は浸水区域だが、上層階なら退避可能」というケースがあります。

この場合、「この施設は浸水区域だから使えない」と単純に切るのではなく、自動車を置く床の高さを見ます。

逆に平面駐車場は、周囲より地盤が少し高いように見えても、想定浸水区域の中であれば候補として慎重に考えます。

避難所の駐車場を勝手に車の退避先にしない

近所の学校や公民館が指定避難所だから、

「大雨になったら車もそこへ持っていけばいい」

とは限りません。

自治体によっては、早期なら車による避難を認めても、避難場所そのものへの駐車を認めていない場合があります。

避難所の駐車スペースは、避難所運営、緊急車両、支援物資搬入などに必要になる可能性があります。

車を守るための一時退避場所と、人が命を守るための指定緊急避難場所は別のものとして確認します。

「避難所だから車も置けるだろう」という前提で候補にしないことが大切です。

車を置いた後、自分がどうするかまで決める

車を安全な場所へ置いたら、水害対策が終わるわけではありません。

その場所から家へ帰る必要があるのか。

家族の車で迎えに来てもらうのか。

徒歩で帰れるのか。

公共交通機関を使うのか。

そのまま人の避難場所へ移るのか。

ここまで考えておきます。

大雨が強くなってから高い立体駐車場へ車を移し、そこから低い道路を徒歩で自宅へ戻る計画では、人の安全が逆になります。

車の退避は、まだ道路も徒歩移動も安全な早い段階で終えることが前提です。

自治体の車両退避場所は「車中避難場所」とは限らない

もう一つ確認したいのが、退避場所で車中泊できるかです。

自治体によって扱いは違います。

車両を水没から守るためだけに開放し、人の避難所としては扱わない自治体もあれば、協定内容によって車中避難まで可能としている施設もあります。

トイレも、店舗営業時間外は使えないケースがあります。

そのため、

「車を置く場所」

と

「自分や家族が避難する場所」

は別々に決めておく方が確実です。

退避場所でそのまま一晩過ごすつもりなら、車中泊の可否、施設利用時間、トイレ等の条件まで事前確認します。

「いつでも使える場所」と「開放されたら使える場所」を分けて持つ

平時に候補を作るなら、二種類に分けると使いやすくなります。

一つは、自治体や民間企業との協定で、大雨時に開放される車両退避場所です。

もう一つは、通常営業時に自分で利用できる有料駐車場などです。

前者は水害対策として場所が選ばれている利点がありますが、開放されなかったり満車になったりする可能性があります。

後者は自分の判断で早めに移動しやすい一方、その場所の浸水リスクや利用条件は自分で確認する必要があります。

この二つを用意しておけば、

「市の退避場所が開くまで待つしかない」

という状態を避けられます。

大雨当日に探す必要がない状態まで準備しておく

車の一時退避先を決める目的は、高台を一つ覚えることではありません。

平時のうちに、

第1候補。

第2候補。

利用できる条件。

安全な移動ルート。

立体駐車場なら利用する階。

車高・営業時間などの制限。

車を置いた後の自分の移動。

まで決めておきます。

そしてスマートフォンの地図へ登録しておけば、大雨予報が出たときに必要なのは、

「どこへ行こう」

という場所探しではなく、

「今回はいつ移動するか」

という判断だけになります。

水害時の車両退避で一番避けたいのは、水が迫ってから高台を検索し、そのまま冠水し始めた道路へ出ることです。

退避場所探しは平時に終えておき、大雨の日は道路が安全なうちに移動する。

これが、車を逃がす高台を普段から決めておく一番大きな意味です。

出典

出典リンク:
JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
ハザードマップポータルサイト
安城市「風水害における自動車の一時退避場所」
西尾市「自家用車等緊急避難待避場所」
坂戸市「車両の一時避難場所」
藤枝市「風水害時の車両用避難場所」
静岡市「水害時緊急避難協力駐車場」
愛知県「道路冠水対策」