今の家の水害対策は何から始める?|止水・排水・家財・車・保険を順番に確認

今住んでいる家の水害対策を始めるなら、いきなり止水板や土のうを買うのではなく、まず「自宅ではどこまで水が来る可能性があるか」と「どこから水が入りそうか」を確認します。

そのうえで、

  1. 水の侵入口をふさぐ
  2. 排水と逆流を確認する
  3. 家財を高い場所へ逃がす
  4. 車の浸水対策を決める
  5. 保険で残る損失を確認する

という順番で考えると、今の家に必要な対策を選びやすくなります。

ただし、想定浸水が深い家や家屋倒壊のおそれがある場所では、家への対策だけでは足りません。

水害対策の最終目的は「家の中へ一滴も水を入れないこと」ではなく、命を守り、浸水しても被害をできるだけ小さくすることです。

最初に見るのは止水板ではなく「自宅の浸水リスク」

最初にハザードマップで自宅を確認します。

洪水だけでなく、地域によっては内水氾濫、高潮、土砂災害も対象になります。

確認したいのは、

  • 想定される浸水深
  • 浸水が続く可能性
  • 川や水路との位置関係
  • 周囲より土地が低くないか
  • 過去に自宅周辺で浸水していないか

です。

国土交通省の浸水対策でも、対策を決める前に、浸水想定区域、ハザードマップ、周辺地形、過去の浸水実績などを確認する考え方が示されています。

ここを飛ばすと、「玄関に止水板を付けたのに別の低い場所から入った」「床下換気口から入った」「排水口から逆流した」ということが起こり得ます。

まず「どのくらいの水に、どこを守りたいのか」を決めます。

止水は玄関だけでなく「低い開口部」を探す

次に、水が入りそうな場所を家の外から確認します。

代表的なのは、

  • 玄関
  • 勝手口
  • 掃き出し窓
  • 車庫やシャッターの下
  • 床下換気口
  • 地下・半地下への出入口
  • 低い位置にある通気口

です。

止水板や土のうは、こうした水の入口を一時的にふさぐために使います。

ただし、どこへでも置けばよいわけではありません。

想定される水の流れ、開口部の高さや幅、設置場所、保管場所、設置に必要な時間を考える必要があります。

既存住宅なら、最初から家全体を完全防水しようとするより、

「ここから入ると床上浸水につながりやすい」

という場所から優先して対策する方が現実的です。

土のう・水のうは浅い浸水の初期対策と考える

土のうや水のうを置けば、どんな浸水でも防げるわけではありません。

自治体が紹介している簡易水防工法も、基本的には水深が浅い初期段階で、水の流入を減らすための方法です。

例えば、

  • 土のう
  • 水を入れたごみ袋
  • 水のうを入れた段ボール
  • プランターとシート
  • 板を利用した簡易止水板

などがあります。

平常時に準備しておけば使えますが、道路がすでに冠水している段階で外へ出て並べ始めるものではありません。

止水対策は「危険になる前に設置できること」が条件です。

浸水が深くなる想定の家では、止水だけに頼らず、家財移動や避難も最初から組み合わせます。

止水板を付けるなら高さより先に「設置できるか」を見る

本格的な止水板を検討する場合は、止められる水の高さだけで選ばない方がよいでしょう。

確認したいのは、

  • 開口部の幅に合うか
  • 床や壁へ適切に固定できるか
  • 1人でも取り付けられるか
  • 保管場所からすぐ運べるか
  • 大雨時に何分で設置できるか
  • 定期的な点検が必要か

です。

脱着式の止水板は、使うときに設置作業が必要です。

保管庫の奥に入っていたり、高齢者1人では持てなかったりすると、実際の水害時に使えません。

購入するなら「止水性能」だけでなく、「自宅で本当に運用できるか」まで確認します。

次は外の排水と家の中の逆流を分けて確認する

止水の次は排水です。

ここでは、

「雨水が外へ流れない」

ことと、

「下水から家の中へ戻ってくる」

ことを分けて考えます。

まず家の外では、

  • 側溝
  • 雨水ます
  • ベランダの排水口
  • 雨どい周辺

に落ち葉やごみがたまっていないか確認します。

排水口が詰まっていると、本来流れるはずの雨水が敷地内にたまりやすくなります。

雨が降り始めてから掃除するのではなく、平常時に行います。

トイレ・浴室・洗濯機からの逆流もある

大雨では、道路から水が入るだけではありません。

下水道の水位が上がると、トイレ、浴室、洗濯機などの排水口から水が逆流する場合があります。

自治体では、応急的な対策として、水を入れた袋を便器内や排水口の上へ置く「水のう」を紹介しているところもあります。

過去に逆流したことがある住宅や、低い土地にある住宅では、玄関の止水だけでなく排水側も確認します。

恒久的な対策として逆止弁などを検討する場合は、排水設備の構造によって適否が変わります。

逆止弁は異物が詰まれば正常に機能しない可能性もあるため、設置すれば終わりではありません。

既存住宅への設置は、排水設備を確認できる専門業者へ相談する方が確実です。

「水を出す対策」だけに頼らない

排水ポンプなどで敷地や地下の水を外へ出す方法もありますが、「ポンプさえあれば安心」とは限りません。

大雨時には排水先そのものの水位が高くなっていたり、停電したりする可能性があります。

そのため、

「入ってきた水を出す」

だけで考えるのではなく、

「入る場所を減らす」
「逆流を防ぐ」
「濡らしたくない物を上げる」

を組み合わせる方が現実的です。

水害対策は一つの設備ですべて解決するものではありません。

家財は「高価な物」より「失うと困る物」を上げる

止水や排水対策をしていても、想定を超える雨なら浸水する可能性があります。

そこで次に考えるのが、浸水した場合の被害を小さくする対策です。

1階にある物のうち、

  • 重要書類
  • パソコン
  • 記録媒体
  • 写真・アルバム
  • 小型家電
  • 衣類
  • 寝具
  • 貴重品

などは、上階や高い場所へ移せるようにしておきます。

国土交通省も、水害時には家財を高い場所へ移す対策を挙げています。

重要なのは、冷蔵庫や大型家具まで全部2階へ上げようとしないことです。

「短時間で安全に動かせる物」から優先します。

分電盤やコンセントの高さも確認する

家財だけでなく、電気設備も浸水すると生活への影響が大きくなります。

今の家で確認しておきたいのは、

  • 分電盤の位置
  • 1階の低いコンセント
  • 電源タップ
  • 給湯器などの設備
  • 屋外機器

です。

想定浸水深より低い位置に重要な電気設備がある場合、改修時に高い位置へ移せないか専門業者へ相談する方法があります。

すぐに工事をしなくても、「どの高さまで水が来ると電気設備が被害を受けるか」を把握しておくことには意味があります。

車は「家の次」ではなく移動できる時間で決める

車がある家庭では、駐車場所の浸水リスクも確認します。

特に、

  • 地下・半地下駐車場
  • 周囲より低い駐車場
  • 川や水路の近く
  • 過去に道路冠水した場所

では注意が必要です。

安全な時間帯なら、浸水しにくい駐車場所へ車を移動させる方法があります。

ただし、雨が激しくなった後に車だけを守るため移動してはいけません。

JAFも、水位が上がってからの自動車避難は危険であり、冠水した道路やアンダーパスへ進入しないよう案内しています。

車の水害対策は、

「どこへ動かすか」

だけでなく、

「いつまでなら動かしてよいか」

まで決めておきます。

車両保険も水害補償を確認する

車については、駐車場所だけでなく自動車保険も確認します。

任意保険に車両保険を付けている場合、台風や洪水による損害が補償される契約があります。

ただし、契約タイプによって補償内容は異なります。

また、地震・噴火・津波による損害は通常の車両保険では扱いが異なるため、水害と同じだと思わないことが重要です。

保険証券や契約者ページで「車両保険」と自然災害の扱いを確認します。

火災保険は「入っているか」ではなく水災を見る

住宅についても、「火災保険に入っているから水害も大丈夫」とは限りません。

火災保険の商品によって、水災を補償するものとしないものがあります。

まず契約内容で「水災」の有無を確認します。

さらに、

  • 建物
  • 家財

のどちらが保険対象になっているかも見ます。

火災保険では建物と家財は別々に契約するため、「建物は対象だが家財は対象外」ということもあります。

自宅の1階に家電や家具が多い場合は、家財補償の有無も重要です。

水災補償は「洪水だけ」と思わない

水災補償の対象範囲は契約によって異なりますが、洪水や床上浸水などが対象になる商品があります。

一方で、給排水設備の事故による「水濡れ」と、大雨や洪水による「水災」は保険上の扱いが別になる場合があります。

「水で濡れたから同じ補償」と考えず、契約書や保険会社の説明で確認します。

確認する項目は、

  • 水災補償の有無
  • 建物・家財の対象
  • 免責金額
  • 支払条件
  • 車両保険の有無

です。

ここまで確認すると、「自分で防ぐ範囲」と「保険で備える範囲」が分かってきます。

今の家ならこの順番で1回確認すればよい

水害対策を始めたいものの、何から手を付ければよいか分からない場合は、一度家を次の順番で見て回ります。

まずハザードマップで、自宅の想定浸水深と過去の浸水リスクを確認します。

次に家の外へ出て、玄関、勝手口、掃き出し窓、車庫、床下換気口など低い開口部を探します。

その後、側溝や排水口を確認し、家の中ではトイレ、浴室、洗濯機など逆流しそうな排水口を確認します。

1階の重要書類、家電、思い出の品を見て、「大雨前ならどこへ上げるか」を決めます。

車があるなら、駐車場が浸水した場合の移動先を考えます。

最後に火災保険と自動車保険を開き、水災・家財・車両保険の補償内容を確認します。

これだけでも、自宅に必要な水害対策はかなり具体的になります。

対策の優先順位は家によって変わる

すべての家で止水板が最優先になるわけではありません。

例えば、

玄関から浅い浸水を繰り返している家なら、止水対策の優先度が高くなります。

道路冠水は少ないのにトイレや排水口の逆流歴がある家なら、排水設備の確認が先です。

想定浸水深が1階を大きく超える家なら、止水設備を増やすより、家財の上階移動と早期避難の計画を重視する必要があります。

地下駐車場がある家なら、車の移動判断も早く決めておく必要があります。

つまり、水害対策は「おすすめグッズを順番に買う」ものではありません。

自宅の浸水リスクを確認し、

「水を入れない」
「逆流させない」
「濡れても被害を小さくする」
「逃げ遅れない」
「残った損害を保険で備える」

という順に弱点をつぶしていくものです。

今の家で最初にやることは、止水板を購入することではありません。

ハザードマップを開き、自宅の想定浸水深を確認したうえで、家の外を一周し「水はどこから入りそうか」を見ることです。

そこから始めれば、止水・排水・家財・車・保険のどこへお金と手間をかけるべきかが見えてきます。

出典

国土交通省|水害対策を考える 4-1-3 浸水の予防・人命を守る家づくり
国土交通省|水害対策を考える 4-1-4 財産を守る家づくり
国土交通省・経済産業省|建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン
国土交通省|カワナビ vol.17 すぐにはじめられる水の防災
政府広報オンライン|水害から暮らしを守る水防活動。日頃からの備えで被害を防ぐ
名古屋市|簡易水防工法の例
大阪市|家屋・家財の被害軽減
一般社団法人日本自動車連盟|台風・大雨時のクルマに関する注意点
日本損害保険協会|風水雪災等による損害を補償する損害保険
日本損害保険協会|火災保険