大雨前に車をいつ移動する?水が来てからでは遅い避難判断

自宅の駐車場が低い場所にあると、大雨の予報を見るたびに「車を高い場所へ移した方がいいのか」と迷います。

結論からいえば、車を移す判断を「駐車場に水が出てきたら」にしてはいけません。

水が見えるころには、自宅の駐車場だけでなく、移動先までの道路やアンダーパスが先に冠水している可能性があるからです。

車を守るための移動は、雨が本格化する前に終わらせるものです。水が来てからは、車より人の安全を優先します。

車を移す基準を「水深○cm」にしない

JAFは、台風や大雨の際には水位が上がり始める前に避難することが重要で、水位上昇後の自動車避難は危険だとしています。

冠水路の走行実験では、水深30cmを走れたケースもありますが、水深60cmではセダンが途中で停止しました。

ただし、この数字を「30cmまでなら車を移動できる」という基準には使えません。

実際の冠水道路は水深が分からず、マンホールのふたが外れていたり、道路と水路の境が見えなくなったりします。同じ30cmでも車種・速度・流れ・路面状況で結果は変わります。

したがって、

「駐車場が10cm浸かったら移動」

「タイヤの半分までなら大丈夫」

という判断では遅すぎます。

車両移動を終える基準は水深ではなく、「まだ道路が冠水していないこと」です。

全国共通の「何時間前に移動」という基準はない

大雨の種類によって、時間の余裕は大きく違います。

数日前から進路が分かる台風なら、前日までに車を移せることがあります。

一方、局地的な短時間豪雨では、晴れていた場所の道路が短時間で冠水することもあります。

そのため、「大雨の6時間前」「台風接近の24時間前」と全国一律に決めることはできません。

実際、自治体が設ける車両退避場所も、災害の見込みに応じて開放される方式です。

西尾市では、台風などの接近に伴い浸水被害が予想される際、自家用車を事前に安全な場所へ移すため緊急避難待避場所を開放しています。

重要なのは「あと何時間か」ではなく、

自宅駐車場に浸水リスクがあり、

大雨が予想され、

まだ退避ルートが安全で、

退避先も利用できる。

この条件がそろっている間に移動することです。

車を動かす判断は「注意」の段階までに済ませる

2026年5月29日から、気象庁の大雨に関する防災気象情報は警戒レベルとの対応が分かりやすい名称へ変わりました。

レベル2大雨注意報などの段階では、自分の避難行動や避難経路を確認します。

レベル3大雨警報になると、高齢者等の避難が必要になる段階です。

レベル4大雨危険警報では、危険な場所から全員避難する段階になります。

これは人の避難に関する区分で、「レベル2なら車を移動」という公式ルールではありません。

ただ、車を守るためだけに道路へ出るのであれば、実務上はレベル2相当の段階までに「今回は車を移すか」を決めておく方が安全です。

レベル3相当まで危険度が高まってから、

「やっぱり車が心配だから高台へ行こう」

と初めて動き出すのでは、途中の道路が先に危険になっている可能性があります。

レベル4相当や避難指示の段階では、車を守るための新たな移動ではなく、人の避難を優先します。

キキクルが赤くなってから車を救いに行かない

大雨時には、気象庁のキキクルで自宅周辺の危険度を見ることができます。

洪水キキクルでは、黄色の「注意」は警戒レベル2相当で、ハザードマップ、避難先、避難経路などを確認する段階です。

赤の「警戒」になると、まもなく重大な洪水災害が発生する可能性があります。

紫の「危険」では、その可能性がさらに高くなっています。

車の移動については、これを逆算して考えます。

黄色の段階なら、まだ安全な退避先・ルートを確認し、移動するかどうかを判断できる余地があります。

赤や紫を見てから低地の駐車場へ車を取りに戻る運用にはしない方がよいでしょう。

「危険度が上がったら車を動かす」のではなく、「危険度が上がる前に車の対応を終える」と考えます。

線状降水帯直前予測が出てからでは遅いこともある

2026年から、気象庁は線状降水帯が発生する可能性が高まった場合に「線状降水帯直前予測」を発表しています。

名称からすると、「これが出たら車を移せばいい」と考えたくなります。

しかし、そう単純ではありません。

気象庁によると、直前予測は今後3時間以内に線状降水帯による大雨のおそれがある区域を知らせる情報ですが、発表から実際の発生情報までの時間は平均すると約60分程度で、場合によっては間を置かず危険度が急上昇することもあります。

つまり、

直前予測を見る。

駐車場を探す。

空きを確認する。

車に乗る。

渋滞した道路を走る。

という行動をそこから始めるには、時間が足りない可能性があります。

浸水リスクの高い駐車場なら、線状降水帯の半日前予測や通常の大雨予報の段階で退避先を決めておき、直前予測を「行動開始」ではなく「もう計画を変更しない段階」と考える方が安全側です。

地下・機械式ピット・低地なら判断を一段早くする

すべての駐車場で同じタイミングに車を動かす必要はありません。

道路より高い平地の駐車場と、地下駐車場、機械式駐車場の地下ピット、川沿いやくぼ地の駐車場では、水没までの余裕が違います。

特に地下やピットは、水が入れば低い場所へ集まります。

低地の月極駐車場も、一度周辺道路が冠水すれば、車を外へ出すこと自体が難しくなります。

こうした場所では、

「本当に雨が強くなってから考える」

のではなく、

「大雨になる可能性がある時点で移すか決める」

側へ判断を前倒しします。

普段停めている場所のリスクが高いほど、判断開始を早くするという考え方です。

退避先は大雨の日に探さない

車を動かすタイミングで迷う大きな理由は、移動先が決まっていないことです。

「高台へ逃がす」といっても、大雨当日に高い場所を探し始めれば、時間がかかります。

平時に、

近くの立体駐車場。

高い場所にあるコインパーキング。

親族宅や勤務先の駐車場。

自治体が用意する車両退避場所。

などを確認しておきます。

自治体によっては、風水害時に車両用の一時退避場所を開放しています。

安城市や西尾市でもこうした制度があります。

ただし、安城市では開放のお知らせが出ていない駐車場は車両退避場所として利用できず、台数にも限りがあります。

「大雨になったら市の駐車場へ行けばいい」ではなく、どこが、どの情報で、いつ開くのかまで平時に確認しておく必要があります。

高い駐車場でも「そこまで行く道路」が危険なら使わない

退避先だけ安全でも十分ではありません。

そこへ行く道路が危険なら、車を移すことでかえって危険になります。

特に避けたいのは、

アンダーパス。

川沿い。

用水路沿い。

周囲より低い道路。

過去に冠水した交差点。

です。

JAFや警察も、冠水したアンダーパスなどへ進入せず迂回するよう注意しています。

宇都宮市の車両退避場所でも、同じ施設へ向かう入口の一部が洪水浸水想定区域内にあるため、別の入口を利用するよう指定している例があります。

「高台の駐車場へ行く」ではなく、

「安全な道路だけを通って高い駐車場へ行けるか」

までが車の退避計画です。

目的地まで行った後、自分がどう帰るかも決める

車を高い場所へ移動させれば、車両の水没対策は終わります。

しかし人の避難は別です。

宇都宮市の車両退避場所も、車を水没被害から守るための場所であり、車中泊避難のための場所ではないと明記しています。

車を置いたあと、

家族の車で戻るのか。

徒歩で安全に帰れるのか。

そのまま避難場所へ移るのか。

公共交通機関を使えるのか。

まで決めておく必要があります。

大雨が強くなった後に、車を安全な場所へ置いたものの、徒歩で冠水道路を帰るのでは本末転倒です。

道路に水が見え始めたら「最後のチャンス」ではなく中止のサイン

駐車場の入口に水がたまってきた。

側溝から水があふれている。

アンダーパスに水が見える。

こうなると、「今ならまだ間に合う」と感じるかもしれません。

しかし、その状態は車を動かす最後のチャンスとは考えない方が安全です。

JAFは、水位が上がってからの自動車避難は危険なので控えるよう案内しています。

冠水路は水深が見た目では判断できず、車内へ水が入って危険を感じた時点では、すでに車が動けなくなっていることもあります。

車を救うために危険な道路へ出ることは避けます。

すでに周辺道路が冠水し始めているなら、車を残して人の安全確保へ判断を切り替える地点です。

警戒レベル4・5で車を取りに戻らない

2026年現在、レベル4相当の情報は危険な場所から全員が避難する段階、レベル5は命が危険な状況です。

警察や自治体も、レベル5大雨特別警報が発表された状況では、浸水した場所を車で移動せず、安全な場所で身を守るよう呼び掛けています。

レベル4や5の情報を見て、

「車だけ高台へ持っていこう」

と低地や地下駐車場へ戻る行動はしません。

車は買い替えられても、人命は取り戻せません。

車両移動は、この段階に入る前に完了させておく対策です。

自宅では「いつ動かすか」を平時に決めておく

大雨のたびに天気予報を見ながらゼロから考えると、判断は遅れます。

浸水する可能性がある駐車場なら、自分なりの移動条件を先に決めておく方が使いやすくなります。

たとえば、

自宅駐車場が洪水・内水の浸水想定区域にある。

台風や大雨でその地域に強い雨が予想される。

安全な退避先が確保できている。

道路がまだ冠水していない。

この条件がそろった段階で車を動かす、という考え方です。

気象情報がさらに悪化してから動くのではありません。

特に気象庁の危険度が赤や紫へ上がる前に、車についての判断を終えておくことが重要です。

大雨前の車移動は「水が来る前」ではなく「道路が安全なうち」に終える

「大雨前に車をいつ移動するか」に、全国共通の○時間前という答えはありません。

ただし、「いつまでに終えるか」は明確です。

駐車場や道路が冠水する前。

危険な道路を通らず移動できるうち。

人の避難を優先しなければならない段階へ入る前です。

そのためには、平時に浸水リスクと退避先を確認し、大雨が予想された時点で移動するか判断します。

注意段階のうちに車の対応を終え、危険度が上がった後は車を救うために外へ出ない。

「水が来たら逃がす」から、「水が来る前に車のことを考えなくて済む状態にしておく」へ変える。

これが、大雨時に車と人の両方を守るための判断線です。

出典

出典リンク:
JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
気象庁「洪水キキクル」
気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」
気象庁「線状降水帯に関する情報」
国土交通省「水深が床面を超えたら、もう危険!」
安城市「自動車の一時退避場所」
西尾市「自家用車等緊急避難待避場所」
宇都宮市「車両退避場所」