床下浸水というと、玄関や勝手口から水が入る場面を想像しがちです。
しかし既存住宅では、基礎にある換気口や、給排水管・エアコン配管などが基礎を通る部分も水の入口になることがあります。
こうした場所を止水したい場合、最初から「防水業者にコーキングしてもらえばよい」とは考えない方がよいでしょう。
最初の相談先は、既存住宅の基礎と床下構造を見られる工務店、住宅リフォーム会社、または住宅の浸水対策を扱う建築会社です。
そこで基礎全周を確認し、換気口なのか、配管まわりなのか、それ以外にも低い開口があるのかを特定します。
その結果に応じて、防水業者、給排水設備業者、空調業者などを加えるのが基本的な進め方です。
基礎換気口は実際に床下浸水の入口になる
基礎に四角や長方形の換気口が設けられている住宅があります。
床下を換気するための開口ですが、外の水位が換気口まで達すれば、水や泥が床下へ入る経路にもなります。
国の浸水対策資料でも、換気口などの開口部を浸水経路として扱い、想定浸水深より高い位置へ設ける方法や、周囲に止水対策を設ける方法を示しています。
既存住宅では換気口を高い位置へ移設することが難しい場合があるため、蓋や止水部材で対応する方法が候補になります。
基礎換気口をそのまま永久に塞ぐとは考えない
基礎換気口には床下換気という本来の役割があります。
そのため、水が入りそうだからとモルタルやシーリング材で永久に埋めてしまう前に、現在の床下換気方式を確認します。
住宅によっては基礎に開口を設ける方式ではなく、基礎と土台の間から換気する方式もあります。
一方、既存の換気口を利用して床下換気している住宅なら、その開口を閉鎖した後も床下の防湿・換気が成立するのか確認が必要です。
ここが、単なる穴埋め業者ではなく、住宅構造まで見られる工務店やリフォーム会社を最初の窓口にしたい理由です。
「大雨のときだけ閉じる」方法も含めて比較する
床下換気を普段は残したいなら、常時閉鎖だけが選択肢ではありません。
浸水が予想されるときだけ蓋をする。
脱着できる止水部材を取り付ける。
外側に別の止水ラインを設け、換気口まで水を到達させない。
といった方法も考えられます。
実際に換気パイプ内部へ水が入るのを防ぐ専用止水部材も市販されています。 (神栄ホームクリエイト)
ただし製品があることと、自宅の基礎換気口へそのまま使用できることは別です。
換気口の形状、寸法、取付面、想定水位を確認して選定します。
配管貫通部は「管の周囲」が水の道になる
給水管。
排水管。
給湯管。
エアコンの冷媒管やドレン管。
電線・通信線。
こうした設備を屋外から屋内へ通すため、基礎や外壁には貫通部があります。
管とコンクリートの間に隙間が残っていたり、既存のシール材が劣化していたりすると、そこが浸水経路になる場合があります。
既存住宅の浸水対策資料でも、基礎の配管貫通部について、モルタルやシール材等を充填して隙間を処理する方法が示されています。
隙間だけなら防水・シーリング工事で済む場合がある
管そのものに問題がなく、
配管位置を変えない。
スリーブを交換しない。
管まわりの隙間だけを止水する。
という条件なら、防水工事やシーリング工事の範囲で対応できる場合があります。
実際に防水専門業者の業務には、外壁や配管貫通部へのシーリング施工を含む会社があります。 (一工技建)
ただし問い合わせ時には「雨漏りのコーキング」ではなく、
「洪水時の床下浸水対策として、基礎配管貫通部を止水したい」
と目的まで伝えます。
雨が壁面を伝って入る防水と、外部水位が上がって基礎に水圧がかかる条件では、施工条件が同じとは限らないからです。
配管を触るなら設備業者も必要になる
既存の穴へ表面からシール材を足すだけでは対応できないケースもあります。
貫通スリーブそのものを変更する。
給排水管を一度外す。
排水管の位置を変える。
新しい止水部材を管へ組み込む。
といった工事です。
この場合は管を担当する専門業者も必要になります。
給水・排水なら給排水設備業者。
エアコン冷媒管・ドレンなら空調業者。
電気配線を移動するなら電気工事業者。
という分担です。
現在の住宅用部材でも、配管貫通部の水密性はスリーブ、パッキン、コーキングなどを組み合わせてつくるものがあります。 (積水化学工業-エスロンタイムズ)
配管の種類が分からないなら工務店に振り分けてもらう
床下を見ても、
この管は給水なのか。
排水なのか。
エアコンなのか。
何に使われているのか。
分からないことがあります。
その状態で施主が設備業者を一社ずつ呼ぶ必要はありません。
工務店やリフォーム会社へ基礎全周の確認を依頼し、
ここは防水工事。
ここは給排水設備。
ここは空調。
と施工範囲を振り分けてもらいます。
重要なのは、一社がすべて自社施工することではありません。
「基礎全体でどこを塞ぐ必要があるか」を一人が把握していることです。
一か所の隙間だけ塞いでも、別の低い場所から入れば床下は浸水する
既存住宅の止水で最も避けたいのが、一番目立つ穴だけ塞いで終了することです。
たとえば、
換気口を全部塞いだ。
しかし給水管の貫通部がそれより低かった。
あるいは、
配管まわりをすべて処理した。
しかし勝手口や外壁の低い開口から水が入った。
という状態です。
住宅全体への浸水を防ぐことを目標とするなら、低い開口を連続した「水防ライン」として考える必要があります。
国土交通省の住宅耐浸水性能の技術検討でも、住宅内部への浸水を防ぐ方式については、基礎換気口、配管貫通部、外壁、開口部、設備配管を一体で対策する必要があり、部分的な対策では成立しないと整理されています。 (国土交通省)
だから最初の現地調査では基礎を一周してもらう
「この換気口を塞いでください」と一点だけ見積もってもらうより、
「想定する水位までにある基礎の開口を全部確認してください」
と依頼します。
確認したいのは、
基礎換気口。
給排水配管の貫通部。
給湯・エアコン配管。
電線・通信線。
外壁下部の開口。
勝手口や床下点検につながる場所。
基礎の打継部や目立つひび割れ。
などです。
その中から、想定水位より低い場所を図や写真へ落としてもらいます。
「想定水位」を決めずに穴だけ塞がない
止水対策には目標とする高さが必要です。
30cmまで守るのか。
基礎天端まで守るのか。
床上浸水まで想定するのか。
で対象箇所が変わります。
住宅会社の耐水害仕様でも、基礎打継部、給水・給湯管、ドレン管、排水管などをまとめて処理し、一定の想定水位までを一つのシステムとして設計しています。 (「家は、性能。」こだわりの家づくりなら一条工務店|住宅メーカー(ハウスメーカー))
既存住宅でも考え方は同じです。
「目についた穴を塞ぐ」のではなく、「この高さまでなら床下へ入りにくくする」という目標から対象箇所を決めます。
シール材は一度施工すれば永久ではない
配管貫通部へシール材を使用する場合、将来の点検も見積もりに入れておきます。
自治体の住宅浸水対策資料でも、シール材には紫外線等による劣化があるため、定期的なメンテナンスが必要とされています。
また配管は、将来交換する場合があります。
完全に埋め込んでしまうと、配管交換時に基礎や止水部を壊す必要が出ることもあります。
施工業者には、
どの材料を使うか。
点検できるか。
何を目安に補修するか。
配管交換時にどう外すか。
まで聞いておきます。
高い浸水深まで住宅を水密化するなら構造の検討も必要になる
低い換気口や配管隙間を塞ぐ程度の対策と、住宅全体を高い水位まで水密化する計画は同じではありません。
外から水を完全に近い形で遮るほど、基礎や建物には水圧・浮力が作用します。
国土交通省の住宅耐浸水性能に関する技術検討でも、住宅をDRYに保つ方式では浮力、水圧、漏水、施工精度などを検討課題として挙げています。 (国土交通省)
そのため、
「換気口を10か所塞ぎ、配管穴もすべて処理すれば1mの浸水でも大丈夫」
などと、施工箇所数だけで性能を決めないことが重要です。
高い水位まで守る計画なら、建築士や住宅構造まで確認できる建築会社に全体設計を依頼します。
相談先は工事内容でこう分ける
| 自宅の状況 | 最初の相談先 | 必要に応じて加える業者 |
|---|---|---|
| 基礎換気口を止水したい | 工務店・住宅リフォーム会社・浸水対策会社 | 防水・止水施工業者 |
| 配管周囲の隙間だけを処理したい | 工務店・防水業者 | 配管種類に応じた設備業者 |
| 給排水管そのものを変更する | 工務店・給排水設備業者 | 防水業者 |
| エアコン配管を変更する | 工務店・空調業者 | 防水業者 |
| 電線貫通部を変更する | 工務店・電気工事業者 | 防水業者 |
| 換気口・配管穴が多数ある | 工務店・浸水対策リフォーム会社 | 各専門業者 |
| 高い浸水深まで住宅全体を水密化したい | 建築士・住宅会社・工務店 | 防水・設備・構造等の専門業者 |
「防水屋か工務店か」の二択ではありません。
最初の全体確認と、実際に穴を処理する専門施工を分けるのがポイントです。
業者へは「水害対策の経験」を確認する
防水工事を扱っている会社でも、すべてが住宅の浸水対策を経験しているわけではありません。
屋根防水。
ベランダ防水。
雨漏りシーリング。
地下構造物の止水。
洪水対策。
は、同じ「防水」という言葉でも施工条件が違います。
問い合わせるときは、
「既存木造住宅の基礎換気口・配管貫通部について、床下浸水を防ぐ工事をした経験がありますか」
と具体的に聞きます。
さらに、
基礎全周を調査してくれるか。
通常時の床下換気まで確認するか。
想定水位を設定してくれるか。
別業種の工事が必要なら手配できるか。
も確認します。
見積書では「何か所塞ぐか」だけを見ない
たとえば、
基礎換気口10か所。
配管貫通部4か所。
という見積書でも、それだけでは十分ではありません。
確認したいのは、
通常時の換気方法。
止水する想定高さ。
換気口の閉鎖方式。
貫通部に使用する材料・工法。
配管交換時の扱い。
点検方法。
今回施工しない低い開口。
です。
最後の「施工しない場所」が特に重要です。
工事後に一番低い未対策部分がどこなのかを聞きます。
DIYでコーキングする前に一度構造を確認する
配管まわりの小さな隙間を見ると、自分でシーリング材を入れれば済みそうに見えます。
しかし、
何の管か分からない。
管が動く。
既存材が劣化している。
隙間の奥が大きい。
床下換気そのものを閉じる。
という状態なら、先に施工会社へ確認した方がよいでしょう。
特に基礎換気口は、雨水の隙間とは違い、もともと意図して設けられた開口です。
水害対策だけを考えて永久閉鎖しないことが重要です。
結論|最初は「穴を塞ぐ業者」ではなく基礎全体を見られる会社へ
基礎換気口や配管貫通部の止水は、小さな工事に見えます。
しかし住宅全体では、床下への水の入口の一つです。
そのため既存住宅では、最初からシーリング業者へ、
「ここを埋めてください」
と発注するより、
工務店。
住宅リフォーム会社。
住宅の浸水対策を扱う建築会社。
のいずれかへ基礎全体の確認を依頼します。
基礎換気口なら、通常時の床下換気を残したまま止水できる方法を検討する。
配管まわりの隙間だけなら防水施工へ振り分ける。
配管そのものを動かすなら設備業者を加える。
低い箇所が複数あるなら、すべてを同じ想定水位で確認する。
既存住宅で大切なのは、「誰が穴を塞げるか」ではなく、「塞いだ後も住宅全体の換気・設備・止水が成立するかを誰が判断できるか」です。
そこを最初に見られる会社を窓口にするのが、基礎換気口・配管貫通部の止水工事を依頼するときの判断線です。
出典
この記事は2026年9月時点の国・住宅業界団体・自治体・メーカー等の公表情報をもとに作成しています。既存住宅は基礎形式、床下換気方式、配管種類、想定浸水深によって適切な工法が変わるため、施工前に現地調査を受けてください。