注文住宅の土地探しで「できるだけ水害リスクの低い土地がいい」と考えたとき、不動産会社へ頼むべきか、住宅会社へ頼むべきか迷うことがあります。
どちらか一方に決める必要はありません。
不動産会社には、水害条件に合う候補地を広く探してもらう。
住宅会社には、その候補地へ実際に希望する家を建てたとき、水害リスクをどこまで避けられるか、対策費を含めて判断してもらう。
この役割分担の方が、「ハザードマップでは良さそうだったのに、家を建てようとすると条件が悪かった」という失敗を避けやすくなります。
「水害リスクが低い土地」を最初に具体化する
最初にやることは会社選びではありません。
「水害リスクの低い土地」という希望を、土地を探せる条件まで具体化します。
たとえば、
洪水の浸水想定ができるだけ小さい場所。
内水の浸水想定も確認する。
沿岸部なら高潮も確認する。
家屋倒壊等氾濫想定区域は候補から外したい。
周囲より低い土地を避けたい。
道路より敷地が低い土地は慎重に見る。
過去の浸水履歴も確認したい。
といった条件です。
これらは「ここまでなら安全」という全国共通の線引きではありません。
自分が土地選びで何を優先するかを、不動産会社と住宅会社の両方へ同じ言葉で伝えるための希望条件です。
「ハザードマップで白い土地だけ」は条件として足りない
土地探しでは、
「ハザードマップで色のない土地を探してください」
と伝えたくなります。
しかし、それだけでは条件として粗すぎます。
不動産取引では洪水・雨水出水・高潮ハザードマップ上の所在地を説明する制度がありますが、国土交通省自身も、浸水想定区域に該当しないことをもって水害リスクがないと誤認しないよう求めています。
確認する災害も洪水だけではありません。
河川から離れていても、短時間豪雨で下水道や側溝の排水能力を超える内水氾濫があります。
沿岸部なら高潮もあります。
そのため土地検索の条件は、
「洪水マップで白い」
ではなく、
「洪水・内水・高潮など、この地域で関係する水害情報を重ねて候補を比較する」
とした方が実用的です。
地形まで見ると「地図が白い土地」の中でも差が出る
水害リスクを下げて土地を探すなら、国土地理院の地形分類も使えます。
土地がどのようにできたかを見る資料です。
たとえば国土地理院は、後背低地・湿地について、周囲より低く、河川氾濫時に長期間浸水しやすく水はけも悪い土地と説明しています。
氾濫平野・海岸平野も河川氾濫への注意が必要です。
凹地・浅い谷は、周囲よりわずかに低く、大雨時に水が集まりやすい土地です。
反対に台地・段丘は、河川との高さの差が十分ある場所なら洪水リスクは比較的小さいとされています。ただし崖際では土砂災害など別のリスクを見る必要があります。
つまり「水害だけ低ければ何でもよい」わけではありません。
不動産会社へは、ハザードマップだけではなく「低地や周囲より低い地形もなるべく避けたい」と伝えておくと、候補の選び方が変わります。
不動産会社には「候補を広く拾う」役割を頼む
不動産会社の強みは土地情報です。
売り出されている更地。
古家付き土地。
建築条件付き土地。
地域の売却情報。
エリアを広げた候補。
こうした土地を条件に合わせて探してもらえます。
特に地域を限定して探す場合は、地域密着型の不動産会社が周辺環境や地元の情報を持っていることもあります。
ここで重要なのは、
「水害がない土地をお願いします」
だけで終わらせないことです。
希望エリア、土地予算、最低面積など通常の条件に加えて、水害条件も最初から検索条件として渡します。
不動産会社へ渡す条件は「除外」と「優先」に分ける
すべての条件を「絶対」にすると、土地がほとんど出てこなくなる場合があります。
そこで条件を二つに分けます。
まず、どうしても避けたい条件。
たとえば自分の判断として、
家屋倒壊等氾濫想定区域は避けたい。
深い浸水想定の土地は避けたい。
道路より大幅に低い土地は避けたい。
と決めます。
次に、できれば満たしたい条件です。
内水リスクが小さい。
台地など周囲より高い。
過去浸水が確認されていない。
道路から住宅へ水が流れ込みにくい。
このように分ければ、不動産会社も候補を探しやすくなります。
「完全に安全な土地を探して」ではなく、「ここは除外、ここは優先」と伝えるのがポイントです。
不動産会社には候補地ごとに同じ情報を出してもらう
候補地が出たら、感覚で比較しない方が分かりやすくなります。
各土地について、
住所・地番。
土地価格。
面積。
前面道路。
道路と敷地の高低差。
洪水。
内水。
高潮。
家屋倒壊等氾濫想定区域。
過去の浸水について確認できる情報。
を同じ形式でもらいます。
特に道路と土地の高さは重要です。
ハザードマップ上では同程度でも、道路より敷地が高い土地と、道路から敷地へ下がっている土地では、大雨時の水の入り方が違います。
不動産会社の資料だけで分からなければ、現地でも確認します。
重要事項説明まで待って水害を知るのでは遅い
宅地建物取引業者は、水防法に基づく洪水・雨水出水・高潮ハザードマップ上で物件のおおむねの位置を示すことが重要事項説明で求められています。
しかし、水害リスクを土地選びの重要条件にしているなら、契約直前の重要事項説明で初めて確認するのでは遅いでしょう。
候補地として紹介された時点で確認します。
不動産会社にも、
「この条件は土地選びの優先条件なので、候補を出す段階でハザードを確認したい」
と伝えておきます。
重要事項説明は最後の答え合わせに近い位置付けにします。
候補が出たら住宅会社へ渡す
不動産会社から「条件に近い土地が出ました」と連絡が来た段階で、次は住宅会社です。
住宅会社へ土地資料を渡して、
「この土地で希望している家が建つか」
を確認します。
ここで初めて、土地だけの評価から「家を建てた状態」の評価へ変わります。
土地単体では条件が良く見えても、
建物を置く位置。
駐車場の位置。
玄関の高さ。
雨水排水先。
道路との高低差。
などによって、水害リスクの扱いが変わるためです。
住宅会社には「建つか」だけでなく「水害対策なしで建てられるか」を聞く
住宅会社に候補地を見せると、
「この間取りなら入ります」
という回答で終わることがあります。
水害を優先して土地を探しているなら、もう一段聞きます。
この土地で通常仕様のまま建ててよいか。
床を上げる必要があるか。
盛土が必要か。
高基礎にした方がよいか。
道路から敷地へ水が入りそうか。
駐車場の排水は成立するか。
屋外設備を高くする必要があるか。
ここまで確認して初めて、その土地が本当に「水害リスクを抑えて建てられる土地」なのか分かります。
土地価格が安くても水害対策費を加えると逆転することがある
土地Aが2,000万円。
土地Bが2,200万円。
これだけならAが安く見えます。
しかしAでは、
盛土。
高基礎。
擁壁。
雨水排水。
設備高所化。
などの追加工事が必要で、Bでは通常仕様で建てられるかもしれません。
この場合、土地価格だけを比較しても意味がありません。
住宅会社には候補地ごとに、
土地価格。
建物価格。
造成費。
外構費。
水害対策追加費。
を合計してもらいます。
「安い土地」ではなく、「希望する水害条件を満たした家が完成するまでの総額」で比較します。
水害対策費が大きければ不動産会社へ戻す
ここが住宅会社と不動産会社を使い分ける重要な部分です。
候補地を住宅会社に確認して、
「希望する水害対策をすると追加300万円必要」
となったとします。
そこで無理にその土地へ決める必要はありません。
不動産会社へ、
「この土地は水害対策費が大きいため見送ります。同じエリアで、土地価格が300万円高くても、道路より高く、水害対策を抑えられる候補を探してください」
と戻します。
土地探しは、
不動産会社 → 候補地
住宅会社 → 建築・水害判定
条件不成立 → 不動産会社へ戻す
という往復で進めます。
一回の紹介で決める必要はありません。
住宅会社へ土地探しを頼む場合も同じ条件を渡す
住宅会社自体が土地探しをしてくれる場合もあります。
これはかなり便利です。
最初から、
希望する建物。
土地+建物の総予算。
法規制。
造成。
水害対策。
まで考えて土地を探してもらえるからです。
ただし、住宅会社によって土地情報の集め方は違います。
自社分譲地が中心の会社もあれば、不動産部門や提携会社を持つところもあります。
そのため住宅会社だけに頼む場合でも、
「水害条件を満たす土地を広く探してほしい」
という条件は明確にします。
建築会社が決まっているなら住宅会社を司令塔にしやすい
すでに「この住宅会社で建てたい」と決めている場合は、その会社を土地探しの司令塔にしやすくなります。
土地情報が出たらすぐに、
建物が入るか。
総予算に収まるか。
水害対策が必要か。
を判断できるからです。
それでも、不動産会社を使わない理由にはなりません。
住宅会社に土地探しを依頼しながら、希望地域に強い不動産会社にも同じ条件を渡しておけば、候補の入口を広げられます。
どちらが見つけた土地でも、最終判定を住宅会社へ戻せばよいわけです。
住宅会社がまだ決まっていないなら先に数社まで絞る
逆に、建築会社がまったく決まっていない状態で不動産会社から土地だけを大量に紹介されると、気に入った土地が出るたび「本当に家が建つのか」を判断できません。
この場合は、不動産会社で相場を見ながら、並行して住宅会社も絞っておきます。
土地が出たらすぐ確認を頼める住宅会社を用意しておくためです。
住宅会社を完全に契約まで決める必要はありません。
少なくとも、
この会社なら候補地を見て建築可否と概算を出してくれる。
という相談先を確保しておきます。
「低リスクの土地」でも希望住宅を載せると問題が出ることがある
台地にある。
洪水ハザードが小さい。
道路より高い。
条件だけ見ると良さそうな土地でも、家を建てる段階で別の問題が出ることがあります。
段差が大きく擁壁が必要。
崖や斜面が近い。
雨水の排水先が取りにくい。
希望する駐車場配置では家側へ水が流れる。
水害を避けて高い場所へ移った結果、土砂災害のリスクが出る。
そのため「水害だけで100点の土地」を探すのではありません。
水害リスクを低くしたうえで、住宅会社がその他の建築条件も確認します。
最終候補ではハザードマップ以外も住宅会社と一緒に見る
最終候補まで絞ったら、国土地理院の資料も使えます。
洪水・内水・高潮。
家屋倒壊等氾濫想定区域。
浸水継続時間。
地形分類。
周囲の標高。
これらを重ねます。
特に地形分類は、
旧河道。
後背低地。
氾濫平野。
凹地・浅い谷。
など、現在の住宅地図だけでは分かりにくい土地の成り立ちを確認できます。
不動産会社から「ハザードマップでは問題ありません」と言われても、最終候補なら一段深く確認する価値があります。
不動産会社には「売れる土地」ではなく「条件を満たす土地」を探してもらう
不動産会社は土地売買のプロですが、自分の希望条件を知らなければ、それに合わせた検索はできません。
駅距離。
学校区。
面積。
価格。
日当たり。
だけ伝えれば、それを優先して土地が出てきます。
水害を重視するなら、
「洪水だけでなく内水も見ます」
「道路より低い土地は避けたいです」
「住宅会社の水害判定を通してから契約します」
と最初から伝えます。
そうすると、土地の選び方そのものが変わります。
住宅会社には「土地を売るため」ではなく建てた後を判定してもらう
住宅会社側にも同じことが言えます。
「土地を紹介してください」
だけではなく、
「水害対策費が小さく済む土地を探したい」
と伝えます。
住宅会社の役割は、ハザードマップをもう一度見るだけではありません。
その土地へ自社の住宅を載せたとき、
床はどの高さになるか。
道路から水が入らないか。
駐車場はどこに置くか。
雨水はどこへ流すか。
設備は浸水ラインより上へ置けるか。
追加工事はいくらか。
まで判断することです。
ここまで答えてもらって、初めて住宅会社を使う意味があります。
一番効率がよいのは「同じ条件表」を両方へ渡す方法
土地探しを始める前に、1枚の条件表を作っておくと進めやすくなります。
たとえば、
希望エリア。
土地+建物の総予算。
必要な土地面積。
駐車台数。
洪水リスクの希望条件。
内水リスクの希望条件。
高潮の確認要否。
家屋倒壊等氾濫想定区域の扱い。
道路との高低差。
過去浸水の確認希望。
水害対策追加費の許容範囲。
をまとめます。
この同じ条件表を不動産会社と住宅会社へ渡します。
不動産会社はこの条件で候補を探す。
住宅会社はこの条件で候補を落とす。
同じ基準を使えば、両社から違うことを言われても比較できます。
土地の売買契約前に住宅会社の判定を一度入れる
水害リスクを重視する土地探しで、最も避けたいのは、
土地を契約する。
その後で住宅会社へ持っていく。
水害対策に大きな費用が必要だと分かる。
という順番です。
候補地が見つかったら、少なくとも売買契約を結ぶ前に住宅会社へ確認してもらいます。
可能なら購入申込みをする前の段階で、
希望建物。
床高さ。
道路との関係。
排水。
必要な水害対策。
概算総額。
まで確認します。
土地探しと家づくりを別々の作業にしないことが重要です。
使い分けの結論は「不動産会社で探し、住宅会社で落とす」
水害リスクの低い土地を探すとき、不動産会社か住宅会社か、どちらか一方を選ぶ必要はありません。
役割を分けます。
不動産会社には、地域と土地情報の広さを使って、水害条件に合いそうな候補を集めてもらう。
住宅会社には、その候補地へ希望する家を置き、道路・床高・排水・駐車場・設備・必要な水害対策費まで確認してもらう。
条件を満たさなければ、不動産会社へ戻して次の土地を探す。
この往復です。
「ハザードマップで白い土地を探してください」で土地選びを終わらせるのではありません。
不動産会社が土地を探す条件と、住宅会社が土地を落とす条件を同じにする。
そして、建物まで含めても水害リスクを受け入れられる土地だけを残す。
これが、水害リスクの低い土地を条件に土地探しを依頼するときの、住宅会社と不動産会社の使い分けです。
出典
そういう意味ですね。資料名だけをリンクにします。
出典
国土交通省
「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」 (国土交通省)
国土交通省・国土地理院
「ハザードマップポータルサイト」 (ハザードマップポータル)
国土地理院
「ベクトルタイル『地形分類』―身の回りの土地の成り立ちと自然災害リスクがワンクリックで分かります―」 (国土地理院)
SUUMO
「土地探しの相談先の選び方。ハウスメーカー・工務店・不動産会社の特徴」 (SUUMO)
LIFULL HOME’S
「ハウスメーカーと不動産会社との違いは? 注文住宅で土地探しを依頼するときのポイント」 (ライフルホームズ)