水没車は修理か買い替えか?車両保険・修理費・査定額で判断する

大雨で車が水没し、販売店から修理見積が出た。

直そうと思えば直せる。しかし、かなりの金額がかかる。

そんなときに迷うのが、

「修理して乗り続けるのか、それとも買い替えるのか」

です。

水没車は、修理できるかどうかだけで判断しない方がよいでしょう。

見るのは、

修理見積額、車両保険から受け取れる金額、水没した状態での査定額、修理後に残る車の価値

です。

この4つを並べてから判断します。

水没しただけでは「全損」とは限らない

車内まで水が入ったからといって、保険上すべての水没車が自動的に全損になるわけではありません。

SBI損保では、水没車について、修理が不可能な場合、または修理費が車両保険金額以上となる場合に全損としています。

損保ジャパンでも、修理できない場合または修理費が車両保険金額以上の場合を全損としています。 (SBI損保)

例えば、

車両保険金額100万円。

修理見積70万円。

なら、保険上は全損ではなく分損となる可能性があります。

しかし、

分損だから修理するべき、という意味ではありません。

ここからが修理か買い替えかの判断です。

最初に「修理見積」と「車両保険金額」を並べる

まず、販売店や整備工場から修理見積を取ります。

次に保険証券や保険会社で車両保険金額を確認します。

例えば、

修理見積60万円。

車両保険金額150万円。

なら、金額だけを見れば修理の余地があります。

一方、

修理見積140万円。

車両保険金額120万円。

なら、一般的な車両保険では全損になる可能性が高くなります。

全損の場合、通常は自己負担額を差し引かず車両保険金額が支払われる商品があります。分損の場合は、設定している自己負担額が修理費から差し引かれることがあります。 (損保ジャパン)

したがって比較するのは単なる「修理費」ではなく、

修理した場合に自分が実際にいくら負担するのか

です。

保険上は修理できても、買い替えた方がよい場合がある

例えば、

車両保険金額150万円。

修理見積100万円。

なら、修理費は保険金額以内です。

保険上は全損ではない可能性があります。

それでも買い替えを比較した方がよいケースがあります。

理由の一つが、水没後の車の価値です。

日本自動車査定協会の車両状態評価では、冠水車・冠水歴車は低い評価区分の対象として扱われています。また自動車公正取引協議会も、冠水車についてトラブル防止のため中古車流通時の状態確認を求めています。 (日本人工知能学会)

つまり、100万円かけて直したとしても、

「水没する前と同じ価値の車に100万円で戻る」

とは限りません。

今後数年乗り続けるなら影響は小さく考えられるかもしれません。

一方、1~2年後に売却する予定なら、修理後の査定価値まで考えた方がよいでしょう。

水没したままの査定額も取ってから修理を決める

修理するか迷った段階で、修理見積だけを取って判断する必要はありません。

可能なら、

現状の水没車をそのまま売却した場合の査定額

も確認します。

例えば、

修理費80万円。

保険を使った場合の自己負担5万円。

現状の水没車査定20万円。

とします。

「5万円で直せるなら修理」と考えたくなります。

しかし、次に買いたい車が決まっている場合には、

修理して乗り続ける場合。

現状のまま手放して買い替える場合。

の両方を金額にします。

ここで初めて修理と買い替えを比較できます。

「修理費」と「水没車の査定額」を直接比べない

例えば、

修理費100万円。

水没車査定20万円。

だから、

「100万円かけて20万円の車を直すのは損」

とは単純には言えません。

20万円は今の水没状態で売った場合の価格です。

修理しなければ、代わりの車を買う費用が発生します。

比較したいのは、

修理して今の車を維持するために、これから払う金額

と、

今の車を手放し、別の車を手に入れるために、これから払う金額

です。

ここを分けないと、査定額が低いだけで買い替えた方が得だと誤解してしまいます。

買い替え側は「次の車にいくら足りないか」で見る

例えば次に購入する車が200万円だとします。

水没車を手放して20万円になる。

保険から120万円受け取れる。

単純計算なら、

200万円-120万円-20万円=60万円

が買い替え側の追加負担になります。

一方、修理側の自己負担が10万円なら、金額だけなら修理が有利です。

しかし、ここには重要な注意があります。

車両保険金と水没車の査定額を必ず両方受け取れるとは限りません。

保険商品・特約によっては、全損保険金を支払う条件として車両の所有権を保険会社が取得するものがあります。

例えば三井住友海上の「車両全損(70%)特約」では、保険会社が車の所有権を取得することへの同意が支払条件になっています。 (MS Ins)

その場合、

「保険金120万円+自分で水没車を20万円で売る」

という計算はできません。

全損と言われたら、水没車を売却する前に、

「車は自分に残りますか」

「売却代金を自分で受け取れますか」

を保険会社へ確認します。

修理後の査定額も比較すると判断が変わる

将来売却する予定があるなら、もう一つ数字を取ります。

修理した水没歴車を数年後に売却した場合、どの程度評価へ影響しそうか

です。

正確な将来価格は分かりません。

しかし、販売店や買取店に、

「この水没状態を修理した場合、今後の下取りではどのような扱いになりますか」

と確認することはできます。

水没歴が査定上の評価対象になる以上、修理後の売却価値を無視して、

「保険で直せるから実質無料」

とは考えない方がよいでしょう。 (日本人工知能学会)

特に比較したいのは、

修理して長く乗り潰すつもりなのか。

数年以内に売るつもりなのか。

です。

長期間乗るなら、将来の査定低下の重要度は下がります。

近いうちに売却予定なら重要度は上がります。

新車特約が付いているなら通常の車両保険金額だけで決めない

比較する前に、特約も確認してください。

例えば損保ジャパンの車両新価特約では、全損または一定以上の大きな損害となった場合、条件を満たせば新車価格相当額を限度に再取得費用などを補償します。 (損保ジャパン)

東京海上日動にも、一定条件の大きな損害について新車購入費用等を協定新価保険金額まで補償する車両新価保険特約があります。 (東京海上日動)

さらに三井住友海上には、経年車向けに車両全損時復旧費用特約などがあります。 (MSインシュアランスFAQ)

つまり、

通常の車両保険金額120万円。

修理費110万円。

だから修理。

と即決する前に、

買い替え時に使える特約が付いていないか

を確認します。

特約によっては、買い替え側の自己負担が大きく変わるからです。

「保険を使わない修理」も比較から外さない

軽い水没で修理額が比較的小さい場合には、

車両保険を使う。

自費で直す。

という比較も必要です。

洪水などによる車両保険の利用は、契約によって翌年以降の等級・保険料に影響します。

そのため修理額が小さい場合は、

保険を使用した場合の今後の保険料。

自己負担額。

自費修理額。

を保険会社へ確認します。

「保険に入っているから必ず使う」とは限りません。

一方、修理額が大きい水没では、保険金との差が大きくなるため、保険利用を含めて比較する意味が大きくなります。

修理見積は「どこまで交換する見積か」を確認する

同じ80万円の見積でも、中身によって意味が違います。

内装を乾燥・洗浄するだけなのか。

水に浸かった配線やコネクターまで点検するのか。

電装部品まで交換するのか。

ブレーキや油脂類まで確認するのか。

水没車は見えている内装だけの問題ではありません。

損保ジャパンも、水没後はブレーキや電気系統などに潜在的な損傷が残る可能性があるため、専門業者による点検を勧めています。 (損保ジャパン 共通IDサイト)

したがって、

「A店は60万円、B店は100万円だったからA店」

ではなく、

何を確認し、何を交換し、その修理にどこまで保証が付くのか

を比べます。

修理か買い替えかは「3枚の数字」をそろえてから決める

水没車で迷ったら、まず3つの数字をそろえます。

1つ目は、販売店・整備工場の修理見積。

2つ目は、保険会社から実際に受け取れる金額。

3つ目は、修理する前の水没状態での査定額です。

そして、

修理した場合に自分はいくら払うのか。

買い替えた場合に次の車を手に入れるため、いくら追加で払うのか。

を比較します。

そのうえで、

修理後も長く乗るのか。

近いうちに売却するのか。

水没歴による査定低下をどこまで重く見るのか。

を加えます。

「保険上は分損だから修理」で決めない

水没車の判断で最も避けたいのは、

「保険会社から全損ではないと言われたから修理するしかない」

という考え方です。

全損・分損は、保険金を計算するための区分です。

それだけで、所有者にとって修理が最良かどうかまでは決まりません。

反対に、

「水没したから怖い。全部買い替え」

とも限りません。

修理額が小さく、保険や自己資金で十分対応でき、今後長く乗る予定なら修理が合理的な場合もあります。

最後に見るのは、

修理見積。

受け取れる保険金。

今の水没車の査定額。

そして、

修理後もこの車を何年使うのか。

です。

この4つを並べて初めて、「直せるか」ではなく、

「自分の場合、直す価値があるか」

を判断できます。

出典

損保ジャパン|THE クルマの保険「車両保険」
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SBI損保|大雨などで自動車が水没した場合は全損になるのですか?
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損保ジャパン|車両新価特約
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東京海上日動|車両新価保険特約
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三井住友海上|車両全損(70%)特約
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三井住友海上|お車の補償に関する特約
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一般財団法人日本自動車査定協会|車両状態証明
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自動車公正取引協議会|「冠水車」に関するトラブルが増加しています
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