大雨で車が水没したとき、
「フロアまでならいくら?」
「シートまで水が来たら、もう数万円?」
と相場を知りたくなるでしょう。
しかし、水没車には「フロアまでなら30万円」のような全国共通の買取相場はありません。
同じ高さまで水につかっても、もともと200万円の査定価値があった車と、30万円だった車では買取額がまったく違うからです。
水没車の相場を考えるときは、
まず水没しなかった場合の価値を出し、そこから浸水の高さによる大きな減価を考える
という順番にすると分かりやすくなります。
まず「水没していなければいくらだったか」を出す
水没車の査定は、いきなり、
「水没したから20万円」
と決まるわけではありません。
例えば同じシートまでの浸水でも、
新しい人気車。
10年以上前の軽自動車。
では、残っている価値が違います。
最初に知りたいのは、
今回水没していなかったとしたら、今いくら程度で売れた車なのか
です。
同じ車種、年式、グレード、走行距離に近い車の買取相場を確認すると、水没前の基準額を考えやすくなります。
その基準が100万円の車なのか、300万円の車なのかで、水没後の金額も大きく変わります。
査定基準ではフロアまでで50%の特別減点が目安
日本自動車査定協会の中古自動車査定基準には、冠水車に対する特別な減点率があります。
冠水がフロアまでの場合は50%。
クッション上部以上の場合は70%。
という目安です。
ここで注意したいのは、
「買取価格が必ず50%、30%になる」という意味ではない
ことです。
査定制度上、基本価格から商品価値を減らす際の目安として設定された数字です。
例えば、水没前の査定上の基本価格を仮に150万円とすると、50%相当の特別減点なら75万円分、70%なら105万円分の減点を考えることになります。
これだけでも、フロア付近とシート上部以上では査定評価に大きな差が出ることが分かります。
実際の買取価格は、その後さらに車の状態や買取業者の販路を含めて決まります。
「シートまで」は査定上かなり大きな境目になる
フロアまでの浸水と、シートのクッション上部以上までの浸水では、評価が変わります。
理由は単に内装が濡れる範囲が広くなるからではありません。
水が高くなるほど、
シート。
カーペット。
配線。
コネクター。
各種電子機器。
など、水に弱い部品へ影響する可能性が広がります。
さらにカビ、異臭、腐食といった問題も出やすくなります。
そのため日本自動車査定協会の基準でも、クッション上部以上では70%という大きな特別減点が設定されています。
売却先も、一般の中古車として再販する査定から、部品・輸出・資源価値を評価する水没車・事故車専門の査定へ移りやすくなる境目です。
ダッシュボードまで水が来ても公式の「80%減」などはない
ネット上では、
「フロアまで○%」
「シートまで○%」
「ダッシュボードなら○%」
と細かく水位別の表を掲載している記事があります。
しかし、日本自動車査定協会の現在確認できる特別減点基準は、
フロアまで50%。
クッション上部以上70%。
です。
ダッシュボードまで浸かった車について、さらに「80%」「90%」とする全国共通の公式査定率は確認できません。
もちろん実際には、ダッシュボードまで水が達した車は電装品などへの影響範囲も大きくなりやすいため、買取価格が部品・資源価値中心まで落ちることがあります。
しかし、
浸水が深い=公式の減点率が10%ずつ増える
という仕組みではありません。
専門業者の実績では数万円から100万円超まである
では、実際の水没車はいくらで売れているのでしょうか。
現在公開されている買取事例を見ると、かなり幅があります。
年式の古い軽自動車などでは1万円台。
10年以上前の普通車では数万円から十数万円。
一方、高年式の水没車では100万円を超える事例もあります。
また、水没車を専門的に扱う事業者が公開している平均では、フロア付近までの浸水で約90万円、シート上部までで約28万円という例もあります。
ただし、この数字だけを見て、
「フロアまでなら90万円で売れる」
とは考えないでください。
90万円の中には、もともとの価値が高いミニバンや高年式車なども含まれます。
自分の車が古い軽自動車なら同じ水位でも数万円になることがありますし、新しい人気車ならもっと高くなる可能性があります。
絶対額の平均より、「水没前の価値からどれだけ下がるか」で見る方が自分の車に近い判断になります。
同じフロアまででも査定額が違う理由
浸水高さが同じなら査定額も似るように思えます。
実際にはそうなりません。
例えば同じフロア付近までの浸水でも、
水没前の中古車価値。
年式。
走行距離。
車種の人気。
エンジンや電装品が実際に水の影響を受けたか。
水没後にエンジンを始動したか。
淡水なのか海水なのか。
浸水から何日経過しているか。
などで結果が変わります。
特に水没車・事故車専門の業者では、その車をそのまま国内中古車として売るだけではありません。
海外へ輸出できる。
利用可能な部品を販売できる。
金属などを資源として利用できる。
といった出口を持っているため、同じ水没車でも業者によって査定額が変わります。
海水につかった車は高さだけで比較できない
浸水高さが同じでも、
川の氾濫などによる水。
高潮などによる海水。
では同じ条件とは限りません。
海水は塩分を含むため、金属部分の腐食が進みやすくなります。
また、泥や汚水を多く含んだ水でも、清掃や再利用の条件が変わります。
そのため査定を依頼するときは、
「シートまで水没しました」
だけではなく、
「河川の氾濫です」
「高潮で海水につかりました」
「泥水が車内まで入りました」
と水の種類も伝えます。
高さだけで相場表へ当てはめるより、査定業者が実際に使える部品まで確認できる情報を伝えた方が正確です。
水没後にエンジンをかけたかでも査定は変わり得る
査定額を確認するために、
「エンジンだけでもかけてみよう」
とする必要はありません。
水没した車を始動すると、エンジンや電装系に残っていた水によって損傷を広げるおそれがあります。
仮に浸水した時点では再利用できた部品が、その後の始動によって壊れれば、買取側から見た残存価値も下がります。
水没車の査定では、
「エンジンは始動させていません」
という状態のまま出張査定や写真査定を依頼できます。
査定を高くするために自走できる状態を証明する必要はありません。
「通常なら100万円の車」を基準にすると分かりやすい
自分の車の相場を考えるときは、絶対額の一覧より次のように考える方が現実的です。
例えば、水没していなければ100万円程度の査定が期待できた車とします。
フロア付近までの冠水なら、査定制度上は50%という大きな特別減点の目安があります。
シートのクッション上部以上なら70%です。
つまり査定上は、
フロア付近までなら50万円規模。
クッション上部以上なら30万円規模。
まで評価が落ちるイメージになります。
ただし、これは実際の買取額を保証する計算ではありません。
人気車で輸出需要が強ければ高くなることもあります。
反対に、年式が古く、水没によって再利用できる部品も少なければ数万円になることもあります。
この計算は、
「水没による減価がどれほど大きいのか」を把握する目安
として使います。
元値300万円の車と30万円の車を同じ「水没相場」で比べない
例えば、同じクッション上部まで浸水した2台があったとします。
1台は水没前の価値300万円。
もう1台は30万円。
同じ70%の特別減点を単純に当てはめたとしても、残る評価は大きく違います。
このため、
「シートまで水没した車の平均買取額は28万円」
という情報を、自分の車へ直接当てはめることはできません。
水没車の相場を知りたいなら、
自分の車種・年式・走行距離で正常車の相場を先に調べる
必要があります。
ここを飛ばすと、「平均より高かった」「平均より安かった」という比較自体に意味がなくなります。
1社の査定額だけでは相場は分からない
水没車は、通常の中古車より業者ごとの差が出やすい車です。
一般の中古車買取店では、
「再販できないので0円」
と言われることがあります。
一方、水没車・事故車を扱う業者なら、
部品。
海外需要。
金属資源。
として金額を付けられる場合があります。
そのため、水没車の相場を実際に確認するには、少なくとも売却先の異なる複数社から査定を取ります。
その際は全社に、
浸水した高さ。
淡水か海水か。
水没した日時。
始動したか。
現在自走できるか。
を同じ条件で伝えます。
条件をそろえて初めて、各社の査定額を比較できます。
比べるのは表示された査定額ではなく最終受取額
水没車は自走できないことが多いため、査定額だけで決めると逆転することがあります。
例えば、
A社15万円。
B社12万円。
でも、A社では引取費3万円、B社は無料なら、手元に残る金額は同じです。
確認するのは、
買取価格。
車の引取費。
レッカー費。
名義変更や抹消の手数料。
その他の費用。
です。
最後に、
「全部差し引いて、私にいくら振り込まれますか」
と確認すると比較しやすくなります。
水没車の相場は「何万円」より「元値から何割落ちるか」で見る
水没車の買取相場には、1万円台から100万円を超える実例まであります。
これほど差がある以上、
「水没車の相場は30万円」
のような数字だけでは、自分の車を判断できません。
まず、水没していなければいくらの車だったかを確認する。
次に浸水高さを見る。
査定制度上は、
フロアまでなら50%の特別減点。
クッション上部以上なら70%の特別減点。
という大きな差があります。
そのうえで、車種・年式・走行距離・水の種類・部品価値などを反映した実際の査定を取ります。
水没車の相場を知りたいときは、
「シートまで来たからいくら?」
ではなく、
「水没前ならいくらだった車が、この浸水状態でいくら残るのか」
という順番で考えるのが最も分かりやすい方法です。
出典
日本自動車査定協会|中古自動車査定基準及び細則
日本自動車査定協会「中古自動車査定基準及び細則」
自動車公正取引協議会|「冠水車」に関するトラブルが増加しています
自動車公正取引協議会「冠水車」に関する資料
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