残価設定型クレジット、いわゆる残クレで買った車が大雨で水没した。
そこで気になるのが、
「残価保証があるから、車を返せば残りの支払いはなくなる?」
「車両保険が出れば、そのまま次の車へ乗り換えられる?」
という点です。
残クレの車が水没して全損になっても、残っている支払いが自動的になくなるわけではありません。
特に間違えやすいのが、
契約満了時の「車を返せば最終回の支払い不要」という仕組みを、水没全損でもそのまま使えると考えること
です。
水没したらまず、
残価を含めた現在の一括精算額。
車両保険から実際に支払われる金額。
全損した車を誰が引き取るのか。
この3つを確定します。
残クレでは「残価」もまだ支払いが終わっていない金額
残クレは、車の数年後の価値を「残価」として最終回へ据え置き、その残りを毎月支払う仕組みです。
例えば400万円の車で、3年後の残価を180万円に設定したとします。
月々の支払いは、主に残価180万円を除いた部分を分割するため、通常のローンより低くできます。
しかし、
残価180万円を最初から支払わなくてよいわけではありません。
契約満了時に、
所定の条件を満たす車を返却する。
新しい車へ乗り換える。
残価を払って乗り続ける。
などの方法で最終回を処理します。
その途中で車が水没全損した場合には、この通常の満了処理とは別の精算が必要になります。
水没全損でも「残価保証でチャラ」にはならない
残価保証とは、
数年後に中古車相場が下がっていても、所定の条件を満たす車なら契約時に設定した残価で引き取る
という仕組みです。
何が起きても残価を免除する保険ではありません。
例えばトヨタの残価設定型プランでは、残価保証条件として、
損傷や事故修復歴がないこと。
所定の走行距離以内であること。
違法改造などがないこと。
などを設けています。
Hondaや日産にも、返却時の車両状態や損傷、走行距離などの条件があります。
つまり、水没で大きく損傷した車について、
「設定残価180万円の車だから、壊れた車を返せば180万円分が消える」
とは考えません。
水没した時点でのクレジット精算方法を販売店・信販会社へ確認します。
全損になったら「残価込みの一括精算額」を聞く
残クレの水没で最初に確認したい数字は、残高明細に載っている毎月分だけではありません。
販売店や信販会社へ、
「今日の時点で全額精算すると、いくら必要ですか」
と確認します。
この一括精算額には、基本的にまだ払っていない月々のクレジット部分だけではなく、据え置かれた残価も関係します。
例えば、
今後の月々の支払い部分120万円。
据置残価180万円。
という契約でも、単純に「残債120万円」と考えないことが重要です。
正確な一括精算額は利息や精算時期などによって変わるため、自分で計算せず契約会社から金額を出してもらいます。
車両保険金と一括精算額を並べる
次に保険会社から、
「今回の水没でいくら支払われるのか」
を確認します。
豪雨や洪水による水没は、車両保険の補償対象になる商品があります。
ただし、水没した車が必ず全損になるわけではありません。
修理不能。
または修理費が車両保険金額以上。
などで全損となります。
全損になった場合、通常の車両保険では契約している車両保険金額が基本となります。
ここで、
一括精算額-受取保険金
を計算します。
保険金が一括精算額以上なら残クレを精算しやすい
例えば、
残クレの一括精算額280万円。
支払われる保険金320万円。
なら、金額だけを見れば残クレを精算できる範囲です。
ただし、
320万円がそのまま自分の銀行口座へ入り、自由に使える
とは限りません。
残クレでは販売店や信販会社が車検証上の所有者になっていることが多く、保険金請求や車両処分に所有者側の手続きが必要になる場合があります。
全損した車について保険会社が所有権を取得して引き取る契約もあります。
そのため、
残クレをどう精算するか。
保険金がどこへ支払われるか。
残った金額を誰が受け取るか。
を保険会社と信販会社の双方へ確認します。
保険金が一括精算額より少なければ差額が残る
問題になるのはこちらです。
例えば、
一括精算額350万円。
車両保険金280万円。
なら、
70万円不足します。
車は全損でも、この70万円まで自動的に消えるわけではありません。
残クレは車を借りるリースではなく、車を購入するためのクレジット契約です。
水没して車が使えなくなったことと、クレジット債務がなくなることは別です。
不足する70万円をどう精算するか、販売店・信販会社へ確認します。
なぜ残クレでは保険金不足が起こり得るのか
残クレでは、最後に大きな残価を据え置くため、途中時点の一括精算額が大きく残りやすくなります。
一方、通常の車両保険金額は、
ローンがあといくら残っているか
ではなく、車の市場価値などを基準に設定されます。
つまり、
残クレ残債は大きく残っている。
車の保険価額は年数とともに下がっている。
という状態になる可能性があります。
この2つの差が、水没全損時の自己負担になります。
だから残クレ車では、
「車両保険に入っている」
だけでなく、
現在の一括精算額に対して、車両保険金額がどのくらいあるか
を見ることが重要です。
新車特約が付いていないかも確認する
比較的新しい残クレ車なら、新車特約が付いていないか確認します。
通常の車両保険では、全損になっても契約した車両保険金額が基本です。
一方、新車特約では条件を満たして新しい車へ買い替える場合などに、新車価格相当額を限度に補償を受けられる商品があります。
そのため、
通常車両保険では280万円。
新車特約を使った買い替えなら、より大きな金額まで対象。
となる可能性があります。
ただし、新車特約は、
「残クレ残債を払うための特約」
ではありません。
買い替えなど所定の条件を満たして使う補償です。
そのため、
「新車特約を使った場合、残クレの精算と新しい車の購入をどう処理しますか」
と保険会社・販売店の両方へ確認します。
水没した車を勝手に廃車・売却しない
残クレでは、契約中の車について販売店や信販会社が所有権を留保しているケースが多くあります。
この場合、自分は車検証上の「使用者」であって「所有者」ではありません。
そのため、
水没車買取業者へ売る。
解体業者へ渡す。
永久抹消する。
といった処分を自分だけで進めることはできません。
日本自動車購入協会も、所有権解除には原則として残価を含めたクレジットの一括返済が必要になると説明しています。
まず、
保険会社。
残クレを契約した販売店。
信販会社。
へ連絡します。
買取査定を取るとしても、売買契約や車両引渡しは処分方法が確定してからにします。
全損保険金と水没車の売却代金を両方もらえるとは限らない
例えば、
車両保険金300万円。
水没車買取30万円。
だから合計330万円を残クレ返済へ使える。
とは限りません。
全損保険金の支払いと引き換えに、保険会社が残った車を引き取る場合があります。
その場合、水没車は自分で買取業者へ売却できません。
反対に、自分側へ残存車両が残る扱いなら売却できる可能性があります。
全損と言われたら、
「保険金支払い後、水没車の所有権は誰にありますか」
と保険会社へ確認します。
修理可能なら残クレを継続できる場合がある
水没したからといって必ず全損になるわけではありません。
修理可能で、修理費も車両保険金額を下回るなら分損となる場合があります。
この場合は、
保険などで修理する。
残クレ契約をそのまま続ける。
という選択もあります。
Hondaファイナンスでは、残クレ車を事故修理すること自体について、契約者とファイナンス会社との特別な手続きは不要と案内しています。
ただし、契約満了時に返却する場合は車両状態によって精算金が発生する場合があります。
水没修理した車でも、
「直ったから残価保証には一切影響しない」
とは考えず、返却時の査定条件を販売店へ確認した方がよいでしょう。
修理して乗り続けるなら「返却時の精算」も先に聞く
修理できる水没車では、
「保険で直せるならこのまま残クレを続けよう」
という判断もあります。
この場合は修理費だけではなく、
契約満了時にその車を返却したとき、どのように評価されるか
まで確認します。
例えばHondaでは、返却時の内外装減点などが基準を超えれば精算金が発生し、その精算金を新しい車のクレジットへ組み込むことはできないと案内しています。
トヨタや日産でも、残価保証には車両状態について条件があります。
そのため修理する前に販売店へ、
「今回の水没修理をした場合、満了時の残価保証・返却条件にどう影響しますか」
と確認しておくと、修理後に想定外の精算が発生するリスクを把握できます。
買い替えは「残クレを精算してから次の契約」と考える
水没全損したら、
「今の車を返して、そのまま新しい残クレへ差し替える」
ようなイメージを持つかもしれません。
しかし、まず処理するのは現在の契約です。
現在の一括精算額。
保険金。
不足額。
所有権。
を整理します。
そのうえで新しい車を購入する場合は、販売店と新しい支払い契約について相談します。
新しい残クレやローンには、新たな審査が必要になる場合があります。
今の残クレで不足額が出たからといって、
「不足分を必ず次の残クレへ上乗せできる」
とは考えない方がよいでしょう。
例えばHondaでは、車両返却時に発生した精算金について、新しい車のクレジット契約へ組み込むことはできないと明記しています。
残クレだから特別に「車を返せば終わる」のは満了条件を満たしたとき
残クレ最大のメリットとして、
「最後に車を返せば残価を払わなくてよい」
と説明されます。
これは間違いではありません。
ただし、
契約満了時に、所定の返却条件を満たした車を返す
という前提があります。
水没全損は、この通常の返却場面とは違います。
だから、
「残クレ=事故でも車を返せば借金ゼロ」
ではありません。
むしろ水没全損では、
残価も含めた一括精算額を先に確認する
のが重要です。
水没したら3社へ同時に確認する
残クレ車が水没したら、連絡先を一つに絞らない方が早く整理できます。
保険会社には、
今回の水没は補償対象か。
全損か分損か。
実際の保険金はいくらか。
新車特約などが使えるか。
全損車は誰が取得するか。
を確認します。
販売店・信販会社には、
現在の一括精算額はいくらか。
残価はいくら含まれているか。
全損時はどう精算するか。
所有権解除・廃車はどう進めるか。
を確認します。
買い替えを考えるなら販売店に、
現在の残クレ精算後に新しい車をどう契約するか。
新しいクレジットの審査。
不足金が出る場合の処理。
を相談します。
最後は「残価」ではなく差額を見る
残クレの車が水没したとき、
契約時の残価が200万円だった。
という数字だけを見ても、自己負担は分かりません。
見るべきなのは、
現在の残価を含む一括精算額
と、
実際の保険金
です。
例えば、
一括精算額360万円。
保険金400万円。
なら、金額上は残クレを精算できる可能性があります。
一括精算額360万円。
保険金280万円。
なら、80万円の不足をどう精算するか確認が必要です。
修理可能なら、
修理後も残クレを続けられるか。
満了時の返却条件へどの程度影響するか。
まで確認します。
残クレの車が水没したときに最も重要なのは、
「残価保証があるから大丈夫」と考えるのではなく、水没した時点の一括精算額と保険金の差額を確定すること
です。
その差額が分かってから、修理して乗り続けるのか、現在の残クレを精算して買い替えるのかを決めます。
出典
トヨタファイナンス|事故全損・盗難時の支払い
トヨタ自動車|残価設定型プラン
Honda|残価設定型クレジット
Hondaファイナンス|残クレ車を事故修理する場合
Hondaファイナンス|残クレ精算金の支払い
日産フィナンシャルサービス|残価設定型クレジット
日本自動車購入協会|残価設定型クレジット返済中の事故車について
ソニー損保|洪水で車が水没した場合
損保ジャパン|全損時の車両保険金