避難所までの道路が冠水している、川沿いを通らなければならない、崖沿いで土砂崩れのおそれがある――このような場合は、指定された避難所へ行くこと自体を優先しません。
避難の目的は「避難所に到着すること」ではなく、災害から命を守ることだからです。
まだ安全に移動できるなら、危険な経路を避けて別の安全な避難先へ移ります。
一方、すでに道路冠水や激しい雨、土砂災害などで外への移動そのものが危険になっている場合は、遠くの避難所へ無理に向かわず、近くの頑丈な建物の上階や、自宅内で少しでも安全な場所へ移るなど、その時点でできる安全確保へ切り替えます。
判断を分けるポイントは、「予定していた避難所へ行けるか」ではなく、「今から外を移動する方が安全か」です。
道が危なくなりそうなら「危なくなる前」に避難先を変える
道路がまだ通れる段階で、
- 避難所までに低い道路がある
- アンダーパスを通る
- 川沿い・橋を通る
- 崖や急斜面の下を通る
- 過去に冠水した道路を通る
と分かっているなら、その経路が危険になるまで待たないことが重要です。
安全な別ルートがあるなら、そのルートを使います。
別の指定緊急避難場所、安全な親戚・知人宅などへ避難できるなら、そちらへ変更する方法もあります。
避難先を決めるときは「一番近い場所」だけでなく、「そこまで安全に行けるか」まで含めて判断します。
すでに冠水している道路を無理に進まない
道路が冠水すると、水の下に何があるのか見えなくなります。
側溝、ふたが外れたマンホール、道路と水路の境界などが見えなくなるため、徒歩でも危険です。
水の流れがある場所では転倒する危険もあります。
車なら安全というわけでもありません。
冠水した道路へ車で入ると、車が停止したり、水圧でドアを開けにくくなったりする危険があります。
「避難所まであと少しだから」と冠水した道路やアンダーパスへ進むのは避けます。
遠くの避難所を目指すために危険な場所を通過するより、その時点で安全を確保できる場所を探します。
土砂崩れが心配な道も無理に通らない
土砂災害は、崩れてから迂回すればよいとは限りません。
大雨が続いていると、斜面が突然崩れる場合があります。
避難経路に土砂災害警戒区域や崖、沢沿いの道路などが含まれているなら、雨が強くなる前の立退き避難が基本です。
すでに大雨や暴風などで屋外を移動する方が危険になっている場合は、無理に崖沿いの道路を通って避難所を目指しません。
近くの頑丈な建物へ安全に移動できるなら、崖や沢から離れた場所を選びます。
それもできない切迫した状況では、自宅などの上階で、できるだけ崖や沢から離れた部屋へ移ることが次善の行動になります。
ただし、土砂災害では建物そのものが被害を受ける可能性があります。
洪水時のように「自宅の2階なら基本的に大丈夫」とは考えず、外を安全に移動できる段階で危険区域から離れることが原則です。
別の避難所へ行ってもよい?
予定していた避難先への経路が危険でも、別の安全な避難先まで安全に移動できるなら、そちらを選ぶことができます。
候補になるのは、
- 災害の種類に対応した別の指定緊急避難場所
- 安全な場所にある親戚・知人宅
- 安全な場所にある宿泊施設
- 地域で避難先として指定・協定されている民間施設
などです。
ここで注意したいのが、「指定避難所」と「指定緊急避難場所」は同じ意味ではないことです。
指定緊急避難場所は、洪水や崖崩れなどの災害から命を守るために緊急的に避難する場所で、災害の種類ごとに指定されます。
指定避難所は、被災した人などが一定期間生活するための施設です。
同じ学校や公民館が両方を兼ねる場合もありますが、近所の施設が「避難所」になっているからといって、すべての災害で同じように安全とは限りません。
自治体のハザードマップや避難所情報で、洪水・土砂災害など今回想定される災害に対応している場所か確認します。
もう外へ出る方が危険なら近くで安全を確保する
避難が遅れ、道路が冠水している、激しい雨で周囲が見えない、土砂崩れのおそれが迫っているなど、屋外へ移動すること自体が危険になった場合は判断が変わります。
この段階で遠い指定避難場所へ向かうことにこだわりません。
その時点でいる場所から、少しでも安全な場所へ移る「緊急安全確保」を考えます。
例えば、
| 状況 | 考える行動 |
|---|---|
| 道路が冠水し、外を歩く方が危険 | 安全を確保できる建物の上階へ移る |
| 近くに頑丈で高い建物がある | 安全に移れる範囲なら上層階へ避難する |
| 洪水で自宅の上階なら安全を確保できる | 条件を確認したうえで上階へ移る |
| 土砂災害が切迫して外へ出られない | 上階かつ崖・沢からできるだけ離れた部屋へ移る |
これは、本来予定していた立退き避難ができなくなった場合の安全確保です。
「雨が強くなるまで自宅にいて、危なくなったら2階へ行けばよい」という意味ではありません。
洪水なら自宅の2階にいればよいとは限らない
洪水の場合、自宅の上階で安全を確保できる住宅もあります。
ただし、ハザードマップなどで少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
- 想定される浸水深より居室が高い
- 水が引くまで生活できる水・食料などを確保できる
川の流れによって住宅が倒壊するおそれがある場所や、最上階まで浸水する想定の住宅では、上階への移動だけでは安全を確保できません。
このような家は、道路が冠水する前に立退き避難する必要があります。
つまり、「避難所への道が危険だから自宅に残る」という判断をする前に、「そもそも自宅に残って安全なのか」を確認する必要があります。
避難先より先に「避難経路」を見る
ハザードマップを見るとき、避難場所の位置だけを確認して終わらせないことが大切です。
自宅から避難先までの間に、
- 河川や用水路
- アンダーパス
- 低い道路
- 崖や急斜面
- 土砂災害警戒区域
- 冠水しやすい場所
がないか確認します。
一つの経路しか考えていないと、その道路が通れなくなったときに避難先を失います。
できれば平常時に、別方向へ逃げる経路と別の避難先も決めておきます。
大雨当日になって初めて安全な道を探すより、雨が降る前に「第一避難先」「別ルート」「第二候補」を決めておく方が確実です。
「避難所が開いているか」も確認する
近くに避難所があっても、災害時にすべての避難所が一斉に開設されるとは限りません。
避難する前に、市町村の防災サイト、防災メール、防災アプリなどで現在開設している避難先を確認します。
ただし、すでに災害が切迫しているときに、開設状況を調べるため自宅に長くとどまるのは本末転倒です。
危険が迫っている場合は、指定された場所へ行くことより、その時点で最も安全性の高い行動を優先します。
判断は「行く・行かない」ではなく3段階で考える
避難所までの道が心配なときは、次の3段階で考えると整理できます。
まず、まだ道路が安全なら、危険になる前に安全な経路で立退き避難します。
予定していた経路だけが危険なら、安全な別ルートや別の安全な避難先へ変更します。
すでに外への移動そのものが危険なら、遠くの避難所へ無理に向かわず、近くの頑丈な建物の上階や、自宅内のより安全な場所など、その時点でできる緊急安全確保へ切り替えます。
最も避けたいのは、
「避難指示が出たから、どんな状態でも指定された避難所へ行かなければならない」
と考えて、冠水した道路や崩れそうな崖沿いを通ることです。
避難所は目的地の候補です。
最終的な目的は、自分と家族が災害の危険から離れて命を守ることです。
出典
内閣府|避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)
内閣府|避難場所に関すること
気象庁|新たな防災気象情報について(令和8年~)
気象庁|土砂キキクル
気象庁|防災気象情報と警戒レベルとの対応について
政府広報オンライン|「警戒レベル4」までに危険な場所から全員避難!5段階の「警戒レベル」を確認しましょう
西尾市|避難する際や避難所での留意事項