家が浸水した後は、すぐに泥や濡れた家具を片付けたくなります。
しかし、最初に全部捨てたり洗い流したりすると、罹災証明書や保険請求に必要な被害状況を残せなくなることがあります。
また、浸水したコンセントや家電に電気を戻すと、漏電や火災の危険があります。
基本的な順番は、
安全を確認する
↓
被害を写真・動画で残す
↓
浸水した電気設備・家電へ通電しない
↓
保険会社や自治体へ必要な連絡をする
↓
泥・濡れた家財を片付ける
↓
洗浄・清掃する
↓
十分に乾燥させる
↓
必要に応じて消毒・修理する
です。
保険会社が来るまで片付けを一切してはいけないわけではありません。
重要なのは、捨てたり洗ったりする前に「どこまで水が来て、何が、どの程度壊れたのか」を後から説明できる状態にしておくことです。
水が引いてもすぐ家へ入らない
浸水した家へ戻るときは、片付けより先に安全を確認します。
水がまだ残っている、建物が傾いている、壁や天井が崩れそう、切れた電線がある、ガスのにおいがするといった場合は、無理に入らないようにします。
特に、水に浸かったコンセントや配線がある状態では電気にも注意が必要です。
家の中へ入れる状態になったとしても、
「まず冷蔵庫が動くか確認する」
「ブレーカーを入れて照明を付ける」
といった行動から始めないようにします。
水害後は、目に見えない部分まで水や泥が入っている可能性があります。
片付ける前に家の外と中を写真に残す
安全に撮影できる状態なら、片付けの前に被害を記録します。
政府広報でも、住まいが被害を受けたときに最初に行うこととして、被害状況の写真撮影を案内しています。
写真は、罹災証明書の申請や損害保険の請求で被害状況を説明するときに役立ちます。
家の外は、可能なら建物全体が分かるよう複数方向から撮ります。
室内は、
- 各部屋の全景
- 浸水した高さ
- 壁や床の被害
- キッチン・洗面台などの住宅設備
- 家具
- 家電
を残します。
泥を洗い流す前、水に濡れた家具を運び出す前に撮影するのがポイントです。
浸水した高さは必ず別に撮っておく
水害では「どこまで水が来たか」が重要な記録になります。
壁、柱、ドア、家具などに浸水痕が残っている場合は、清掃する前に撮影します。
できれば、
部屋全体と水位が分かる写真
と
メジャーなどを当てて高さが分かる写真
の両方を残します。
床から何センチだったかを後から思い出して書くだけではなく、実際の跡を記録しておく方が被害状況を説明しやすくなります。
外壁にも水位の跡があれば残しておきます。
家財も捨てる前に撮影する
泥水に浸かった布団、家具、家電などは、衛生面から早く処分したくなることがあります。
処分する必要がある場合でも、先に写真を残します。
家電なら、
- 製品全体
- 浸水した部分
- メーカー名
- 型番
まで分かるようにしておくと整理しやすくなります。
家具や衣類なども、何が何個被害を受けたのか分かる状態にします。
大量にある場合は一点ずつ撮るだけでなく、部屋全体やまとまりでも撮影します。
写真と一緒に、スマートフォンのメモなどへ被害品一覧を作っておくと、処分後の保険請求で思い出しやすくなります。
次に電気を確認する|浸水した家は自分で通電しない
水害後に特に注意したいのが電気です。
水に浸かった家電だけでなく、コンセントや屋内配線まで浸水している可能性があります。
東北電力ネットワークも、水に浸かった電化製品や屋内配線は漏電・火災の原因になるとして、電気工事店などの点検を受け、安全を確認してから使用するよう案内しています。
したがって、床上浸水してコンセント付近まで水が来た家などでは、
「水が引いたからブレーカーを戻す」
とは考えません。
浸水した配線や設備がある場合は、電気工事店などへ点検を依頼します。
浸水した家電は乾いてもコンセントへ差さない
冷蔵庫や洗濯機、テレビなどが乾いて見えても、浸水した家電を自分で試運転しないようにします。
内部には水分や泥、塩分などが残っている場合があります。
その状態で通電すると、ショート、漏電、発煙、発火につながる可能性があります。
浸水した製品はメーカーや販売店へ相談し、点検や修理が可能か確認します。
「3日乾かしたから大丈夫」
「電源が入れば使える」
とは判断しません。
ブレーカーそのものが浸水しているなら触らない
分電盤が高い場所にあり浸水していない家と、分電盤まで水が来た家では対応が違います。
ブレーカーや分電盤自体が濡れている、周囲にまだ水があるといった状態なら、自分で操作しないようにします。
また、水に浸かっていなくても、漏電遮断器を入れると再び切れる場合は漏電の可能性があります。
何度もブレーカーを上げ直すのではなく、電気工事店などへ確認を依頼します。
浸水を免れた住宅・回路について電気を復旧させる場合でも、家電を一斉に接続するのではなく、安全を確認しながら復旧させます。
ガスのにおいがするなら電気スイッチも触らない
水害ではガス設備も影響を受けることがあります。
家の中でガスのにおいがする場合は、火を使わないだけでなく、換気扇や照明などの電気スイッチも操作しません。
スイッチを操作したときの火花で引火する可能性があるためです。
窓や戸を開けられる状況なら換気し、契約しているガス会社へ連絡します。
プロパンガスのボンベが倒れたり移動したりしている場合も、自分で元に戻して使用を再開せず点検を依頼します。
写真を撮ったら保険会社と自治体へ連絡する
緊急の安全確保と記録ができたら、加入している火災保険の保険会社や代理店へ連絡します。
水災が補償対象になるか、どの書類が必要か、修理や処分前に確認しておくことがあるかを聞きます。
ただし、保険会社の担当者が来るまで浸水した家をそのまま放置しなければならないわけではありません。
生活再開や安全・衛生上の理由から片付けが必要なら、損傷箇所や浸水高さを十分に撮影してから片付けを進められる場合があります。
可能なら、
写真
↓
保険会社へ事故連絡
↓
片付け
の順に進めると確実です。
罹災証明書の申請も忘れない
住宅が浸水した場合は、市区町村へ罹災証明書の申請が必要になることがあります。
罹災証明書は、住宅の被害程度を自治体が証明するもので、公的支援などの手続きに利用されます。
自治体職員による被害認定調査が行われるため、片付け前の写真は重要な資料になります。
ただし、民間の損害保険を請求するときに罹災証明書が必ず必要という意味ではありません。
日本損害保険協会は、保険金等の請求について自治体の罹災証明書は原則不要と案内しています。
保険請求をするために、罹災証明書の発行まで待つ必要はありません。
自治体への申請と保険会社への連絡は、それぞれ進めます。
記録が終わったら濡れた家財と泥を外へ出す
写真・動画などで被害を記録したら、片付けを始めます。
浸水した家では泥や汚水に、
- ガラス片
- 釘
- 木片
- 金属片
などが混じっている可能性があります。
素手やサンダルで作業せず、手袋、底の厚い靴や長靴、マスクなどを使用します。
乾燥した泥やほこりが舞う場合もあるため、吸い込まないよう注意します。
作業中は換気を行い、暑い時期は熱中症にも注意して休憩と水分補給をしながら進めます。
「消毒」より先に泥と汚れを落とす
浸水すると、家全体をすぐ消毒した方がよいと考えるかもしれません。
しかし、厚生労働省は、まず土砂の撤去、十分な清掃、乾燥を行うことが重要としています。
泥や汚れが大量に残った状態で消毒薬を散布しても、十分な効果を得にくくなります。
したがって、
泥を取り除く
↓
洗浄・清掃する
↓
十分に乾燥させる
↓
必要な場所を消毒する
という順番で考えます。
床下や庭については、屋外への消毒は原則不要とされています。
大量の消毒剤を家中へまくことを水害後の最初の作業にする必要はありません。
濡れた床・壁は「表面が乾いた」だけでは終わらない
家具や泥を取り除いた後は、建物を乾燥させます。
ここで注意したいのは、床や壁の表面だけ乾けばよいわけではないことです。
床下、壁の内部、断熱材などへ水が入っていると、表面から見えなくても湿気が残る場合があります。
濡れた状態のまま仕上げ材を戻したり、修理で塞いだりすると、内部に湿気を残す原因になります。
まず窓やドアを開け、可能な範囲で換気し、汚泥や濡れた物を取り除いて乾燥しやすい状態を作ります。
建物内部まで浸水している場合は、どこまで床や壁を開ける必要があるか、住宅会社や工務店などへ確認します。
早く乾かしたいからと家電を無理に使わない
乾燥のために扇風機、除湿機、エアコンなどを使いたくなることがあります。
しかし、住宅側の電気設備や使用する機器自体が浸水している場合には、先に安全確認が必要です。
安全が確認できた電源と機器を使うことが前提になります。
浸水した延長コードや電源タップを乾かして再利用するなど、電気設備の安全性を自己判断しないようにします。
カビを防ぐには消毒剤より乾燥を優先する
水害後はカビが気になりますが、厚生労働省は感染症対策として清掃と乾燥を特に重視しています。
汚泥を十分に取り除き、しっかり乾燥させることで、細菌やカビが繁殖しにくい状態にします。
数日後に戻った家では、すでにカビが発生していることもあります。
窓やドアを開けて換気し、マスクなどを着用して作業します。
消毒が必要な場合も、先に汚れを除去してから使用します。
濡れた断熱材や石こうボードは専門業者へ確認する
床上まで浸水した住宅では、目に見える床材だけでなく壁内部まで水が入っていることがあります。
特に壁の内部に断熱材などが入っている場合、表面だけを拭いて乾かしても内部の状態は確認できません。
どこまで撤去・交換が必要かは建物の構造、浸水時間、水の汚れ方などによって変わります。
「床上30cmだったからここまで全部交換」
と一般的な数字だけで判断せず、住宅会社や施工業者に内部の状態を確認してもらいます。
修理業者へ依頼する前に写真と見積書を残す
建物を修理する場合も、工事前の被害写真を残しておきます。
見積書、請求書、領収書も保管します。
すぐに修理しないと雨が入る、扉が閉まらないなど、緊急対応が必要な場合もあります。
その場合でも、可能なら修理前の状態を撮影してから応急処置を行います。
災害後には「保険を使えば無料で修理できる」などと勧誘する業者とのトラブルもあるため、その場ですぐ高額な契約を結ばず、契約している保険会社へ自分で確認します。
浸水後の作業はこの順番で考える
家が浸水した直後は、目の前に泥や壊れた家具があるため、片付けを最優先したくなります。
しかし、後からやり直せない作業があります。
特に写真は、片付けてしまえば撮れません。
実際には次の順番で進めます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 家へ入って安全か確認する |
| 2 | 建物全体・各部屋・浸水高さ・家財を撮影する |
| 3 | 浸水した電気設備・家電へ通電しない |
| 4 | 保険会社・自治体へ必要な連絡をする |
| 5 | 濡れた家財・泥・ごみを撤去する |
| 6 | 床・壁・住宅設備を洗浄・清掃する |
| 7 | 換気して建物を十分に乾燥させる |
| 8 | 必要な場所を消毒する |
| 9 | 電気・住宅設備の点検後に復旧・修理する |
すべてを一日で終わらせる必要はありません。
まず「安全」と「後から取り戻せない記録」を優先し、その後に片付けと乾燥へ進みます。
水害後の復旧で特に避けたいのは、
片付けてから写真を撮ろうとする
浸水した家電を試しに動かす
泥を残したまま消毒剤をまく
十分に乾いていない床や壁をすぐ塞ぐ
ことです。
家を早く元に戻すことより、必要な記録を残し、安全を確認しながら確実に乾燥させることが、その後の生活再建につながります。
出典
政府広報オンライン|住まいが被害を受けたとき 最初にすること
内閣府|災害に係る住家の被害認定
厚生労働省|一般家屋や食品営業施設における浸水後の消毒の相談について
厚生労働省|被災した家屋での感染症対策
独立行政法人製品評価技術基盤機構|製品安全情報マガジン Vol.508 9月8日号「地震発生時や復旧時の製品事故」
東北電力ネットワーク|台風のときの対処法
一般社団法人日本損害保険協会|令和8年台風第18号に伴う災害により被害を受けられた皆様へ
東京海上日動火災保険|台風や集中豪雨等による洪水や土砂崩れにより、建物が被害を受けました。片付けや修理をすすめてよいでしょうか?