隣地より低い土地|大雨の水が集まらないか購入前に確認する

土地を見に行ったら、隣の家の敷地より自分の候補地が低い。

すると、

「大雨が降ったら隣から全部水が流れてくるのでは」

と心配になります。

確かに、水は高い場所から低い場所へ動くため、周囲より低い土地では雨水が集まりやすくなる場合があります。

ただし、

隣地より30cm低い。

隣地より50cm低い。

という高低差だけでは、実際に水が集まる土地かどうかまでは判断できません。

確認したいのは、

隣地から候補地へ水が向かう勾配なのか。

その水は候補地を通過して道路や側溝へ抜けるのか。

それとも候補地が一番低く、水の終点になっているのか。

です。

土地購入前には「隣より低い」という一点ではなく、水の入口と出口を確認します。

隣地より低くても、水の出口があれば条件は変わる

例えば南側の隣地が候補地より50cm高いとします。

しかし候補地から北側の道路へ向かって緩やかに低くなっており、道路側に雨水を排出できる側溝がある。

この場合、南側から自然に流れてきた水が候補地内で止まるとは限りません。

反対に、

南側の隣地が高い。

東側も高い。

西側も高い。

道路まで候補地より高い。

という土地なら状況は大きく変わります。

候補地が周囲の底になっているためです。

同じ「隣地より50cm低い」でも、

水が通過する土地

と

水がたまる土地

では意味が違います。

候補地だけでなく、四方の高さを確認します。

一方向だけ高いのか、周囲全部が高いのかを見る

「隣地より低い」という言葉だけでは、土地の形が分かりません。

購入前なら、少なくとも次のような違いを見ます。

土地の形大雨時に確認したいこと
片側の隣地だけ高い反対側へ水を逃がせるか
左右の隣地が高い前面道路側へ排水できるか
三方向の隣地が高い道路が最も低い出口になっているか
隣地も道路も高い候補地が窪地になっていないか
高い隣地との間に擁壁がある水抜き・湧水と排水先を確認
周辺一帯より低い敷地だけでなく地域全体の内水を確認

問題になりやすいのは「隣が高い土地」ではなく、水の逃げ場がない土地です。

自然に流れてくる雨水と、隣家が流している雨水は分ける

隣地から候補地へ水が来ている場合には、その水がどのように来ているのかも確認します。

土地の自然な傾斜によって、高い土地から低い土地へ雨水が流れることがあります。

一方、

隣家の雨どいの出口がこちらを向いている。

排水管が境界付近でこちらへ放流している。

屋根から落ちた雨水をこちらへ集中させる構造になっている。

というケースは同じではありません。

民法では、土地所有者は隣地から水が自然に流れてくることを妨げてはならない一方、屋根その他の工作物を、雨水が直接隣地へ注ぐ構造にしてはならないとされています。

したがって土地購入前に水の跡を見つけたら、

「隣が高いから仕方ない」

だけで終わらせず、水が自然な地形から来ているのか、排水設備等によって集中しているのかを確認します。

擁壁があるから雨水が来ない、とは限らない

高い隣地と候補地の間に擁壁がある場合、

「壁があるから水も止まる」

と思うかもしれません。

しかし、擁壁には背面へたまる地下浸透水を抜くための水抜き孔などが設けられることがあります。

愛知県の擁壁構造基準でも、水抜き孔は擁壁背面に集まる地下浸透水を速やかに排水し、水圧が擁壁へ作用することを防ぐ目的で設けるものとされています。

候補地が擁壁の低い側にあるなら、

水抜き穴から水が出ていないか。

擁壁下部だけ地面が常に湿っていないか。

コケや変色が集中していないか。

排出された水をどこへ流しているか。

を確認します。

水抜き穴があること自体が問題なのではありません。

出てきた水を候補地内でどう処理できるかが重要です。

大雨のあとだけ擁壁の下が濡れている土地は理由を確認する

晴れの日には乾いている土地でも、大雨後に状況が変わることがあります。

例えば高い隣地から地下へ浸透した雨水が、時間をかけて擁壁下部や地表へ出てくることがあります。

その場合、

雨がやんだ直後は問題ない。

翌日になっても擁壁沿いだけ湿っている。

数日後まで地面が乾かない。

ということがあります。

表面を流れる雨水だけでなく、地中から出てくる水もあるためです。

購入候補地は晴天時だけでなく、可能であれば雨の日や雨上がりにも確認します。

「ブロックを積めば隣から水は来ない」と単純には考えない

隣地から雨水が流れてくるなら、

境界にブロックを積めば止められる

と考えるかもしれません。

しかし、自然に流れてくる水については、低地側が自由に遮断してよいとは限りません。

民法214条は、土地所有者が隣地から自然に流れてくる水を妨げてはならないと定めています。

また、水を止めたことで別の場所へ流れたり、境界部分へ水がたまったりすれば、新たな問題になる可能性もあります。

土地購入後に境界壁だけで解決する前提ではなく、購入前に敷地内の排水計画まで確認します。

隣地から来る水より、自分の土地に降る雨の方が多いこともある

隣地より低い土地を見ると、どうしても「隣から来る水」へ目が向きます。

しかし住宅を建てれば、自分の敷地にも雨が降ります。

屋根。

駐車場。

アプローチ。

庭。

などから雨水が発生します。

建築基準法19条では、建築物の敷地について雨水・汚水を排出または処理するための適切な施設を設けることを求めています。さらに敷地は道路境や周囲の土地より高くすることを原則としつつ、排水に支障がない場合などには例外があります。

つまり、「隣地より低いから建築できない」という単純な制度ではありません。

最終的に敷地内の水を処理できる計画になるかが重要です。

隣地より低くても道路へ自然排水できるなら考え方は変わる

例えば候補地が南側隣地より40cm低い一方で、候補地から前面道路側溝へ自然勾配を確保できるとします。

この場合は、

隣地との高低差40cm

だけを見て土地を除外するのではなく、

敷地内へ入った水を道路側へ処理できるか

を確認します。

反対に道路側溝が候補地より高いなど、自然勾配で排水できない場合は、土地を高くする、排水方法を変えるなど別の対応が必要になります。

水害対策として大きいのは「隣地との差」より「最終排水先との差」です。

周囲より低い土地では内水ハザードまで見る

敷地が一軒の隣家より低いだけなら、敷地設計で対応できる場合があります。

しかし、住宅地全体の中で候補地周辺が低い場合は別です。

気象庁は、下水道等で排水しきれないほどの大雨が短時間に降ると、河川が氾濫していなくても、周囲より低い窪地などへ雨水が集まり浸水害が発生するとしています。

この場合、

隣地から来る数cmの雨水

より、

住宅地全体から低い場所へ集まる雨水

の方が問題になります。

隣との境界だけを見ず、周辺数百m程度の地形も確認します。

高台の住宅地でも候補地だけ低いことがある

「この地域は高台だから洪水は大丈夫」

という土地でも、内水については別に確認します。

国土地理院には「台地上の浅い谷」という地形分類があります。

台地・段丘の中でも周囲よりわずかに低い場所で、大雨の際には周囲から雨水が集まりやすく、浸水に注意が必要とされています。

つまり、

地域全体は標高30m。

候補地は道路より高い。

でも左右・背後の住宅地から見れば低い。

という土地もあります。

「高台か低地か」という地域分類と、一筆の土地が周囲より低いかは別に見ます。

ハザードマップが白くても現地の高低差は残す

候補地が洪水ハザードマップで無着色なら、それは重要な材料です。

ただし、無着色だから大雨で水がたまらないとは限りません。

国土交通省も、水害ハザードマップで浸水想定区域の外にあることをもって、水害リスクがないと誤認しないよう求めています。

特に、

周囲より低い。

道路や隣地から候補地へ勾配が向いている。

側溝まで水が自然に抜けない。

過去の大雨で周辺道路が冠水した。

といった土地なら、洪水だけでなく自治体の内水情報や過去の浸水記録を追加で確認します。

既存の擁壁があるなら水だけでなく擁壁そのものも確認する

隣地との高低差が大きい土地では、擁壁が設置されていることがあります。

その場合は雨水だけでなく、擁壁自体の状態も購入条件になります。

国土交通省は、擁壁について老朽化、ひび割れ、傾きなどにより機能が低下した場合、宅地や建物に被害を与える可能性があるとして、健全度確認のためのマニュアル等を公開しています。

購入前には、

誰の所有物なのか。

どのような構造か。

確認済みの擁壁なのか。

ひび・膨らみ・傾きがないか。

水抜きや排水はどうなっているか。

を確認します。

低い側の土地では、高い側の土と水の両方を意識します。

自分の土地を盛土すると、今度は自分が高い側になる

候補地が低いからといって、

「購入後に50cm盛土すれば解決」

とも限りません。

敷地を上げれば、隣地との高さ関係が変わります。

今までは雨水を受ける側だった土地が、場所によっては隣地へ水を流す側になることもあります。

また、

境界で土を保持する方法。

擁壁・土留めの必要性。

隣地への雨水流出。

敷地内排水。

道路への乗入口。

まで再設計する必要があります。

盛土を計画するときは、単に高さをそろえるのではなく、完成後の水の流れまで決めます。

一番低い角を探すと土地の性格が分かりやすい

現地を見るときに役立つのが、

「この土地で一番低いところはどこか」

を見ることです。

例えば敷地内の最低点が道路側溝の近くにあり、そこへ自然に雨水が流れる形なら、水の出口を想像しやすくなります。

一方、

敷地奥の隣地境界。

擁壁の足元。

建物予定地の中央。

などが一番低ければ、そこへ水がたまった場合にどう排水するのかを確認します。

水は最終的に低いところへ向かいます。

「隣より低いか」から、「この土地の最低点はどこか」へ視点を移すと、排水計画が見えやすくなります。

雨の日に見るなら「水たまり」だけを見ない

大雨後に候補地へ行けるなら、単に水たまりがあるかだけではなく、水の跡を見ます。

道路から泥や葉が流れ込んだ跡。

隣地境界から筋状に水が流れた跡。

擁壁下の湿り。

側溝の水位。

土地の最低部に残る水。

周辺住宅の止水板や土のう。

などです。

雨がやんで数時間後、翌日にも見られると、水が抜ける土地なのか残る土地なのかも分かりやすくなります。

晴れた日の土地だけでは見えない情報です。

売主や住宅会社には「大丈夫ですか」ではなく排水先を聞く

候補地について住宅会社へ、

「隣より低いですが大丈夫ですか」

と聞けば、

「排水計画をするので大丈夫です」

という回答になるかもしれません。

購入前なら、もう一段具体的に確認します。

この土地に降った雨は最終的にどこへ流すのか。

自然勾配だけで流せるのか。

隣地から自然に来る水はどこで受けるのか。

擁壁からの排水はどこへ流れているのか。

建物・駐車場を作ったあと、一番低くなる場所はどこか。

この答えが簡単な断面図や排水計画として見えるなら、その土地で対応できる問題なのか判断しやすくなります。

隣地より低い土地を買いやすいケース・慎重に見るケース

隣地より低いだけで、土地を候補から外す必要はありません。

例えば一方向の隣地だけが高く、候補地から道路側へ自然排水でき、周辺全体では窪地ではなく、ハザード情報にも大きな懸念がない場合は、高低差への対策費を含めて購入を検討できます。

一方、

三方向・四方向が高い。

候補地が周辺の最低点。

擁壁から常時水が出ている。

排水先が候補地より高い。

内水・過去浸水の情報が重なる。

既存擁壁の状態にも不安がある。

という場合は、単なる外構調整では終わらない可能性があります。

安い土地かどうかではなく、排水・造成・擁壁まで含めた総額と、残る水害リスクで比較します。

購入前に確認するのは「隣との差」より水のルート

隣地との高低差が気になったら、最後は次のように水のルートへ置き換えます。

高い隣地
↓
境界
↓
候補地
↓
敷地内の最低点
↓
排水ます・側溝
↓
最終的な排水先

この線がつながっている土地なら、低さの問題を設計で対応できる可能性があります。

反対に、

高い隣地
↓
候補地
↓
出口がない

となるなら、土地を高くする、排水設備を設けるなど追加対策が必要です。

土地購入で重要なのは、「隣より何cm低いか」という数字そのものではありません。

大雨のとき、この土地が水の通り道になるのか、それとも水の終点になるのかを購入前に確認することです。

まとめ

隣地より低い土地だからといって、それだけで水害に弱い、買ってはいけないとは判断できません。

重要なのは、高い隣地から来た水が候補地で止まるのか、そのまま道路や側溝へ抜けるのかです。

また、自然な地形によって流れてくる雨水と、屋根や排水設備によって人為的に隣地へ流される雨水は分けて考える必要があります。

擁壁がある場合には、地表を流れる雨水だけでなく、水抜き孔や地下浸透水、その排水先も確認します。

土地購入前には、

「隣地より低いか」

で終わらず、

「どこから水が入り、敷地のどこへ集まり、最終的にどこへ抜けるのか」

まで確認します。

隣地との差よりも、水の入口・最低点・出口の3つが分かるかどうかが、購入判断のポイントです。

出典

e-Gov法令検索|民法(自然水流・雨水を隣地に注ぐ工作物)

e-Gov法令検索|建築基準法 第19条「敷地の衛生及び安全」

国土地理院|治水地形分類図の内容

国土地理院|地形分類と自然災害リスク

気象庁|浸水キキクル

国土交通省|宅地擁壁について

国土交通省|我が家の擁壁チェックシート(案)

国土交通省|水害ハザードマップの重要事項説明について

愛知県|擁壁工の構造細目・水抜き孔