床下浸水後に復旧しやすい家にする|べた基礎・排水まで建築時に考える

家を建てるときの水害対策というと、敷地を高くする、高基礎にする、止水板を付けるなど、「家の中へ水を入れない方法」が先に考えられます。

もちろん、浸水を防ぐことが第一です。

ただし、想定を超える豪雨まで含めれば、「絶対に水を入れない」だけで計画を終える必要はありません。もう一つ考えておきたいのが、床下まで水が入ったときに、どれだけ早く元に戻せる家になっているかです。

特にべた基礎では、床下全面がコンクリートで覆われているため、入った水が地面へ自然に抜けていくとは限りません。その一方で、泥をコンクリート面から除去しやすいという利点もあります。

つまり、「べた基礎だから水害に強い」「べた基礎だから復旧しにくい」と基礎の種類だけで決めるのではなく、その中に入った水をどう出すのかまで建築前に考える必要があります。

べた基礎の問題は「水が入ること」だけではなく「水が残ること」

日本建築学会が水害を受けた戸建住宅を調査した研究では、べた基礎の住宅で床下に水がたまり、電動ポンプを使ったり、基礎立ち上がり部分に穴を開けて排水した事例が確認されています。

一方、施工時に設けていた水抜き穴が、浸水後の排水に役立った住宅もありました。研究では、べた基礎は布基礎より初期の排水作業が難しかったケースが報告されています。J-STAGE

ただし、ここから「水害リスクがある土地では、べた基礎をやめればいい」と結論づけるのも早計です。

底面が土の床下へ泥水が入れば、水だけが地面へ消えても泥や汚れは残ります。実際の復旧現場では、コンクリート面のほうが泥をすくい、洗浄しやすかったという報告もあります。モリシタ・アット・ホーム

問題なのは、べた基礎そのものというより「水を抜く仕組みを持たないべた基礎」です。

建築時に考えたいのは「水を集めて外へ出せるか」

復旧を難しくするのは、大量の水だけではありません。

ポンプで大部分を排水しても、底盤に数ミリから数センチの水が残ったり、泥が低い場所にたまったりすれば、最後は人が床下へ入り、手作業で除去することになります。

そこで建築時に考えたいのが、水の流れです。

佐賀県の「浸水に備えた住まいづくり」では、床下に入った水を排出しやすくする方法として、水抜き用の穴をあらかじめ設けることに加え、基礎底盤に勾配を付ける方法を示しています。草津市の浸水対策整備指針でも、床下土間に水勾配を付けて排水口を設けることが有効とされています。佐賀県公式サイト

ここで重要なのは、「排水口を付ける」ことより、その排水口へ水が集まるかです。

床下のあちこちに浅い水たまりが残れば、一か所に排水口があっても十分には抜けません。建物の基礎伏図を見ながら、基礎立ち上がりで床下がどのように区切られるのか、どこが低くなるのか、どこから排水できるのかまで考えておく必要があります。

排水口という部品を追加するのではなく、床下全体を一つの「排水できる空間」として考えるのがポイントです。

水抜き穴は「開けておけば安心」ではない

ここは注意が必要です。

べた基礎の工事中には、雨水を排出するため底盤付近に水抜き孔を設けることがあります。しかし、住宅金融支援機構の工事仕様を踏まえた建築士試験の設問でも、べた基礎の水抜き孔は工事完了後に塞ぐ施工が示されています。日本経済研究所

工事中の雨を抜く穴と、水害後の復旧を目的とした排水計画は同じものではありません。

外の水位が高いときに床下と外部がつながっていれば、排水口が逆に水の入口になる可能性があります。そのため、「水害が心配だから施工用の水抜き穴を塞がず残しておく」という単純な考え方にはできません。

復旧用として設けるのであれば、平常時には確実に閉止でき、必要なときに排水できる納まりを建築時から設計者や施工会社と検討する必要があります。佐賀県の資料でも、水抜き穴は普段ゴム栓などで塞ぐ方法が紹介されています。佐賀県公式サイト

つまり確認したいのは「水抜き穴がありますか」ではありません。

「浸水した場合、床下の水は最終的にどこへ集まり、どこから外へ出せますか」です。

この聞き方にすると、かなり話が変わります。

排水できても、床下へ入れなければ復旧は止まる

床下浸水後には、水だけでなく泥やごみが残ります。

さらに排水後は、床下の状態を確認し、必要に応じて清掃して乾燥させなければなりません。厚生労働省も、浸水した家屋について、まず汚泥を除去して十分に清掃・乾燥することが重要だとしています。厚生労働省

ここで問題になるのが床下への入口です。

点検口が一か所あっても、基礎の立ち上がりによって床下が複数の区画に分かれ、その先へ人や機材が入れなければ、奥に残った泥や水を処理するのは難しくなります。

佐賀県も、浸水後の作業をしやすくする対策として床下点検口を設け、複数箇所に設置すると作業しやすくなるとしています。送風機を設置して乾燥させる場合にも、床下へアクセスできることが重要です。佐賀県公式サイト

普段の住宅点検では「床下へ入れる」だけで足りても、水害後には「床下の各場所へ機材を持って行ける」「排水できる」「泥を運び出せる」という別の条件が加わります。

新築時には点検口の位置と人通口の位置を、設備点検だけでなく水害後の作業動線として一度見ておく価値があります。

床そのものも「外して直せるか」で差が出る

復旧しやすさを決めるのは基礎だけではありません。

日本建築学会の調査では、根太を使った床について「床材を撤去しやすい」「部分的に補修しやすい」という意見があった一方、根太レス構法では厚い合板の撤去が難しく、大引まで解体した事例が確認されています。

ただし、根太を残したことで床下の清掃作業がしにくくなった例もあり、「部材を残せること=必ず復旧しやすい」とも限りません。J-STAGE

ここにも条件分岐があります。

水害後に床下へ入る必要がなければ、床を剥がしやすいかどうかは大きな問題になりません。しかし、泥の除去や乾燥のため床を開ける必要が生じた場合は、床材と下地がどのように施工されているかによって解体範囲が変わります。

新築時に「浸水したら床材を交換する」とだけ考えるのではなく、「床下へアクセスするため、どこまで壊す必要がある構造なのか」まで聞いておくと、復旧性を具体的に比較できます。

ハウスメーカーには「浸水対策がありますか」ではなく復旧手順を聞く

住宅会社に「水害対策はしていますか」と聞けば、高基礎、止水、防水、逆流防止などの説明が中心になるでしょう。

そこで一段質問を下げます。

「この家が床下浸水したとして、水はどこにたまりますか。そこからどう排水しますか。床下の全部の区画を確認できますか。泥を除去して乾燥させるには、床をどこまで外す必要がありますか」

この質問に図面を使って答えてもらうと、その住宅が本当に復旧まで考えられているかが見えやすくなります。

排水口、水勾配、床下点検口、人通口、床の構法は、それぞれ別の設備や構造に見えます。

しかし水害後には、すべてが一つの復旧経路になります。

まとめ|復旧しやすい家は「水が抜ける家」だけではない

床下浸水に備えてべた基礎を避ける、あるいは水抜き穴を一つ付けるだけでは、復旧しやすい家になるとは限りません。

建築時に考えておきたいのは、入った水を一か所へ集められること、必要なときに外へ排水できること、床下の各場所を確認できること、泥を除去できること、乾燥のために風を送れること、必要なら床を現実的な範囲で外せることです。

べた基礎には水が残りやすい面がありますが、コンクリート面だからこそ清掃しやすい面もあります。重要なのは基礎の名称ではなく、その住宅が「浸水した後、どう元に戻す設計になっているか」です。

水害リスクのある土地で家を建てるなら、「水を入れない対策」だけで打合せを終えず、床下に水が入った想定を一度図面上で追ってみる。それが、被災後の復旧まで考えた家づくりにつながります。

出典