豪雨や洪水で車が水没し、車両保険を使えることが分かった。
そこで次に気になるのが、「保険を使うと等級が下がるなら、自費で直した方がよいのでは」という問題です。
台風・洪水・高潮などによる損害で車両保険を使った場合、一般的なノンフリート契約では1等級ダウン事故となり、事故有係数適用期間は1年です。
ただし、1等級下がるから保険を使わない方がよい、と単純には決められません。
見るべきなのは修理代そのものではなく、
実際に受け取れる車両保険金
と
保険を使った場合に将来増える保険料
の差です。
特に分損では免責金額が差し引かれるため、「修理代30万円だから30万円もらえる」とは限りません。
洪水で車両保険を使うと1等級下がる
日本損害保険協会では、盗難や台風、洪水、高潮などによって車両保険金を受け取った場合は、1事故につき1等級下がる「1等級ダウン事故」としています。
さらに事故有係数適用期間が1年設定され、その間は「事故有」の割増引率が適用されます。
例えば現在15等級で洪水による水没について車両保険を使えば、翌年は14等級になります。
保険を使わず1年間無事故なら、本来は翌年16等級へ上がります。
つまり、「1等級しか下がらない」という数字だけを見るのではなく、保険を使わなかった場合との違いまで見る必要があります。
事故有係数は1年でも「翌年だけ見ればいい」とは限らない
洪水による1等級ダウン事故では、事故有係数適用期間自体は通常1年です。
しかし保険を使わなかった場合には翌年の等級が1つ上がり、使った場合には1つ下がります。
現在20等級未満なら、翌年の時点で両者には等級差が生まれます。
そのため、
「事故有係数は1年だから、翌年1年分の値上がりだけ見ればよい」
と自分で簡単に計算するより、保険会社へ「今回保険を使った場合」と「使わなかった場合」の将来保険料を試算してもらう方が確実です。
あいおいニッセイ同和損保も、保険を使うかは支払保険金と将来的に増える保険料を比較し、事故発生後には将来保険料をシミュレーションできると案内しています。
三井ダイレクト損保でも、翌年度以降の保険料差と修理費を比較する考え方を示しています。
比較するのは「修理代」ではなく実際に受け取る保険金
ここが保険を使うか決めるときの重要な境目です。
例えば水没した車の修理費が30万円だったとします。
車両保険の免責金額が10万円なら、分損の場合、
30万円-10万円=20万円
が基本的な受取保険金になります。
このケースで比較するのは、
30万円の修理代
と
将来増える保険料
ではありません。
自費で直す場合は30万円を負担しますが、保険を使っても10万円は免責として自分で払います。
したがって、保険を使うことによって減らせる自己負担は20万円です。
判断では、
受取保険金20万円
と
車両保険を使ったことで将来増える保険料
を比較します。
将来の保険料増加が8万円なら、金額だけなら保険を使うメリットが残ります。
逆に将来の保険料増加が22万円なら、20万円を受け取るためにそれ以上の保険料増加を負担することになり、自己負担修理を検討する余地が出ます。
実際の保険料差は等級、年齢、車種、補償内容などで変わるため、数字は保険会社に試算してもらいます。
修理費が免責を少し超えるだけなら使わない選択もある
例えば、
修理費7万円
免責5万円
なら、受け取れる車両保険金は2万円です。
2万円を受け取るために1等級ダウンし、将来支払う保険料がそれ以上増えるのであれば、車両保険を使わず7万円を自費で払った方が総支出は少なくなる可能性があります。
日本損害保険協会も、少額の保険金より翌年以降の保険料増加額が高くなる場合があるため、保険会社が保険利用を勧めないことがあると説明しています。
「車両保険に入っているから、使わないともったいない」と考える必要はありません。
保険は、使える事故でも使わない方が有利になる場合があります。
水没=必ず全損ではない
大雨で車内まで水が入ると、「水没だから全損だろう」と思うかもしれません。
しかし、水没車が必ず全損になるわけではありません。
SBI損保では、
エンジンまで水没するなど修理不能
または、
修理費が車両保険金額以上
となった場合を全損としています。
修理可能で、修理費も車両保険金額より低ければ分損となります。
したがって、水没後に保険を使うかどうかは、まず修理工場や保険会社の損害確認を待ってから判断する方がよいでしょう。
全損なら免責が差し引かれない商品がある
分損と全損では、保険を使う判断も大きく変わります。
SBI損保やソニー損保では、車両保険の全損時には免責金額を差し引かない扱いが確認できます。
例えば、
車両保険金額200万円
免責10万円
修理費250万円
で全損となれば、基本的には免責10万円を差し引かず、設定した車両保険金額200万円が支払われる例があります。
一方、
修理費50万円
免責10万円
の分損なら、支払保険金は40万円です。
全損時は受け取る金額が大きくなるため、1等級ダウンによる保険料増加より、車両保険を使うメリットが大きくなるケースが増えます。
ただし、車両保険金額以上に次の車の購入費がかかっても、その差額が通常の車両保険から自動的に支払われるとは限りません。
古い車は「全損だから使う」とも限らない
全損だから必ず車両保険を使うべき、とまでも言えません。
例えば古い車で、現在の車両保険金額が30万円しかない場合です。
車両保険を使って受け取れる金額が30万円なのに対し、使用後の将来保険料差がかなり大きければ、金額を比較する余地は残ります。
一方、
車両保険金額250万円
水没で修理不能
というケースなら、250万円を自己負担するか保険へ移すかという話になるため、保険利用の意味は大きくなります。
水没したかどうかだけではなく、現在設定されている車両保険金額を確認します。
「いくら以上なら使う」という全国共通の金額はない
「修理代が10万円を超えたら使う」
「20万円以下なら使わない」
という固定額では判断できません。
同じ修理費20万円でも、
20等級で保険料の安い人
10等級で保険料が高い人
免責0円の人
免責10万円の人
では、保険を使ったときの損得が違います。
さらに年齢条件、車種の料率クラス、運転者条件、補償内容なども保険料に影響します。
そのため判断ラインは、
修理費○万円
ではなく、
実際に受け取れる保険金 > 保険を使うことで将来増える保険料
になるかどうかです。
事故後なら保険会社に「使った場合・使わない場合」を両方出してもらう
水没事故が起きた後は、まず保険会社へ連絡します。
その時点で「保険を使う」と即決する必要はありません。
修理見積が出たら、
現在の等級
免責金額
今回支払われる予定の車両保険金
保険を使った場合の次回以降の保険料
使わなかった場合の次回以降の保険料
を確認します。
保険会社・代理店によっては、保険を使った場合と使わなかった場合の将来保険料をシミュレーションできます。
これなら、「1等級下がるから怖い」という感覚ではなく、円単位で比較できます。
保険会社を変えれば等級ダウンを消せるわけではない
保険を使った後、
「更新時に別の保険会社へ乗り換えれば、1等級ダウンを避けられるのでは」
と考えるかもしれません。
しかし、等級や事故情報は保険会社間で確認する仕組みがあります。
別会社へ契約を切り替えても、等級や事故有係数適用期間は原則引き継がれます。
保険利用後の影響を避けるためだけに会社を乗り換えてリセットする、という方法ではありません。
そのため保険を使うかどうかは、請求する前に金額を比較して判断する方が重要です。
保険を使わなくても事故の相談はできる
保険を使うか迷っているからといって、保険会社へ連絡しない方がよいわけではありません。
水没したら、事故状況を伝え、補償対象か、修理可能か、全損か、予定保険金はいくらかを確認します。
その後、
受取保険金
免責金額
将来保険料差
が分かってから、「請求する/自己負担する」を決めます。
特に水没車は、見た目だけでは電装系やエンジンへの影響が判断しにくいため、自分で「軽い損害だから保険は使わない」と決める前に損傷範囲を確認した方がよいでしょう。
水没で保険を使うかは3つの数字で決める
洪水で車両保険を使えば、一般的には1等級ダウンし、事故有係数適用期間が1年設定されます。
しかし、その事実だけで「使うと損」とは決まりません。
判断するときは、
今回の修理費
免責を差し引いた実際の受取保険金
保険を使った場合と使わない場合の将来保険料差
の3つを確認します。
分損で受取額が数万円しかなく、将来の保険料増加の方が大きいなら、自費修理が合理的な場合があります。
反対に、水没で修理費が高額になったり、修理不能で全損になったりして、受取保険金が大きいなら、1等級ダウンしても保険を使う意味が大きくなります。
「水没だから保険を使う」「等級が下がるから使わない」の二択ではありません。
実際に保険から取り戻せる金額と、その代わりに将来増える保険料を比べる。
そこが、水没事故で車両保険を使うかどうかの境界です。
出典
日本損害保険協会|自動車保険の「等級」について教えてください。 資料を見る
日本損害保険協会|少額の保険金を請求しようとしたところ、保険は利用しない方がよいといわれましたが、なぜですか。 資料を見る
SBI損保|洪水による損害 資料を見る
SBI損保|大雨などで自動車が水没した場合は全損になるのですか? 資料を見る
SBI損保|お車の補償(車両保険) 資料を見る
あいおいニッセイ同和損保|車両保険を使うと等級が下がるのであれば、保険は使わない方がいいですか? 資料を見る
三井ダイレクト損保|事故を起こしたときの車の修理は自己負担と保険どちらがお得? 資料を見る
ソニー損保|台風・豪雨などの自然災害の場合 資料を見る
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