水没で車が全損したらいくら出る?車両保険金額・新車特約まで確認する

豪雨や洪水で車が水没し、修理できないほどの被害になった。

このとき車両保険に入っていれば、買ったときの車の価格がそのまま戻ってくるのでしょうか。

通常の車両保険では、そうとは限りません。

全損時の基本になるのは、現在の契約で設定している「車両保険金額」です。

新車を300万円で購入していても、数年後の更新で車両保険金額が180万円になっていれば、通常の車両保険で全損になったときの基本的な支払上限は180万円です。

一方、新車特約や車両全損時復旧費用特約などを付けていれば、通常の車両保険金額を超えて買替費用を補える場合があります。

水没全損でいくら出るかは、「何年前にいくらで買ったか」ではなく、現在の車両保険金額と付帯特約から確認します。

水没しただけでは全損とは限らない

まず、「水没」と「全損」は同じ意味ではありません。

大雨で車内に水が入っても、修理可能で修理費が車両保険金額より低ければ分損になる場合があります。

SBI損保では、水没車を全損と判断する条件として、

修理が不可能な場合

または、

修理費用が車両保険金額以上となる場合

を挙げています。

例えば車両保険金額200万円の車で、

水没後の修理費120万円

なら、修理可能であれば通常は全損ではありません。

一方、

エンジンや電装系まで大きく水没して修理不能

または、

修理費220万円

なら、全損と判断される可能性があります。

そのため「水没したから満額もらえる」と事故直後に決めることはできません。

通常の全損なら「車両保険金額」が基本

全損時に最も重要なのが、保険証券や契約画面に記載されている車両保険金額です。

これは、その車を新車で買ったときの価格を永久に補償する金額ではありません。

車両保険金額は、車種、型式、年式、仕様などが同程度の車の市場販売価格相当額などをもとに設定されます。

例えば、

新車購入価格 300万円
現在の車両保険金額 180万円

という車が水没して全損になった場合、通常の車両保険で基本になるのは180万円です。

「300万円で買ったのだから300万円出る」という計算にはなりません。

車両保険金額は更新するたび下がることがある

この点は古い車ほど重要です。

一般に車は年数が経つほど市場価値が下がるため、更新時に設定できる車両保険金額も下がっていきます。

例えば、

1年目 300万円
3年目 240万円
5年目 180万円

のように下がることがあります。

具体的な設定可能額は車種・年式などによって異なります。

そのため水害が心配な地域で車両保険を見直すなら、保険料だけでなく、

「今この車が全損になったら最大いくら出る契約なのか」

を毎年確認した方がよいでしょう。

全損なら免責金額を引かないのが一般的

車両保険には「免責5万円」「免責10万円」など、自己負担額を設定することがあります。

分損なら、

修理費50万円
免責10万円

なら、原則として40万円が車両保険金となります。

しかし全損の場合は、一般的な車両保険では免責金額を差し引かずに保険金を支払う扱いがあります。

そのため、

車両保険金額180万円
免責10万円
全損

だから170万円、とは限りません。

全損なら180万円を基本に確認します。

全損でも「次の車の購入費全部」が出るとは限らない

ここが特に重要です。

現在の車両保険金額が180万円で、同程度の新しい車を買うのに300万円必要だったとします。

通常の車両保険だけなら、全損しても基本的には車両保険金額180万円までです。

残りの120万円は自己資金などで用意する必要があります。

つまり、

全損
=
同じクラスの新車へ自己負担なしで買い替えられる

ではありません。

この差を補うためにあるのが、新車特約や全損時の買替費用を補う特約です。

新車特約があれば新車価格まで補償できる場合がある

新車特約は、新しい車が事故で大きな損害を受けたとき、通常の車両保険金額ではなく「新車保険金額」「新車価格相当額」などを限度に買替費用等を補償する特約です。

例えば、

購入時の新車価格 300万円
現在の車両保険金額 240万円
新車保険金額 300万円

という契約なら、通常の全損補償だけでは240万円が基本です。

一方、新車特約が適用できれば、新車保険金額300万円を上限として買替費用を補償できる商品があります。

特に新車購入直後は、市場価値が下がった通常の車両保険金額と、もう一度同等の新車を買う金額との差を埋める役割があります。

洪水による水没でも新車特約の対象になり得る

新車特約は、車同士の衝突事故だけを対象とするものとは限りません。

複数の保険会社では、「車両保険で補償対象となる事故」によって所定の大きな損害を受けた場合を新車特約の対象としています。

洪水・高潮による水没がその車両保険の補償対象であり、さらに新車特約の全損・損害条件を満たせば、新車特約の対象になり得ます。

ただし、地震やそれによる津波は通常の車両保険自体が対象外の商品があるため、同じ「水没」でも別です。

台風・洪水による水没と、地震による津波水没を分けて確認します。

新車特約は「全損だけ」が条件とは限らない

新車特約は、完全な全損になるまで使えない商品ばかりではありません。

例えば複数の現行商品では、

車両が修理不能

または、

修理費が車両保険金額以上

に加えて、

修理費が新車保険金額・新車価格相当額の50%以上

となった場合も、新車特約の対象条件としています。

つまり、

車両保険上は分損

でも、

新車価格300万円に対して修理費170万円

というような大きな損害なら、新車特約の発動条件を満たす可能性があります。

ただし、外装だけの損傷では対象外とするなど、細かな条件があります。

水没ではエンジンや電装系まで被害が及ぶことがあるため、損傷範囲も保険会社が確認します。

「新車特約あり=300万円を現金でもらえる」ではない

新車特約でも、設定した新車保険金額が無条件に全額現金で支払われるとは限りません。

多くの商品では、

実際に新しい車へ買い替える

または、

契約車を修理する

ことが条件になります。

そして実際にかかった再取得費用や修理費について、新車保険金額を上限として補償します。

例えば新車保険金額300万円でも、250万円の車へ買い替えた場合に「残り50万円も自由に使える」とは限りません。

特約は「300万円をもらえる権利」というより、「買替・修理費を300万円まで補償する仕組み」と考えた方が近くなります。

買替えまでの期限も保険会社で違う

新車特約は、事故後いつでも使えるとは限りません。

現行商品を確認すると、事故の翌日から一定期間内に車を買い替える、または修理することを条件にしています。

例えばソニー損保では6か月以内。

SBI損保、東京海上ダイレクト、損保ジャパンでは、商品説明上1年以内という条件が確認できます。

つまり、

「新車特約が付いている」

だけでは不十分です。

事故後、

全損・大損害の条件
買替または修理の条件
期限

を確認します。

新車特約を使わず買替えもしない場合は通常補償に戻ることがある

例えば新車特約が付いていても、

もう車はいらない
しばらく買い替えない

ということもあります。

この場合、新車保険金額300万円がそのまま受け取れるとは限りません。

SBI損保や東京海上ダイレクトでは、一定期間内に再取得・修理をしない場合、通常の車両保険金額を限度とする扱いが確認できます。

例えば、

車両保険金額220万円
新車保険金額300万円

でも、新車特約の買替条件を満たさなければ、300万円ではなく通常の220万円側での支払いになる可能性があります。

契約前にこの違いを知っておくと、「新車特約に入っているから何があっても300万円」という誤解を防げます。

経年車には「全損時復旧費用特約」という選択肢もある

新車特約は主に新しい車を対象にした補償です。

しかし数年乗った車でも、

現在の車両保険金額では次の車を買えない

という問題があります。

そこで保険会社によっては、「車両全損時復旧費用特約」などの名称で、通常の車両保険金額を超える買替・修理費を補う商品があります。

三井住友海上では、車両保険金額100万円の経年車について、

車両保険金額の2倍

または、

車両保険金額+100万円

のうち低い額までを限度とする復旧費用特約があります。

同社は、ゲリラ豪雨でエンジンが水没し、新しい車へ買い替えたケースも支払例として示しています。

水害リスクのある地域で長く同じ車に乗るなら、「新車特約が付けられるか」だけでなく、経年車向けの全損補償があるかも確認する価値があります。

全損時諸費用が追加される商品もある

全損すると、車本体の買替代だけでなく、

廃車
登録
納車
代替車購入

などの周辺費用も発生します。

保険会社によっては、通常の車両保険金とは別に「全損時諸費用保険金」を支払う商品があります。

例えば三井住友海上の現行商品では、車両保険の対象事故で全損となった場合、一定条件のもと車両保険金額の10%、上限20万円などを全損時諸費用として支払う仕組みがあります。

損保ジャパンにも全損時諸費用の仕組みがあります。

ただし金額や自動付帯・任意付帯は商品ごとに違うため、「車両保険金額+必ず○万円」と全国共通ではありません。

水没全損したら最初に4つの数字を見る

実際に水没で全損になったら、保険証券や契約画面で確認したいのは次の4つです。

車両保険金額

新車保険金額・新車価格相当額

全損時諸費用の有無

車両全損時復旧費用特約などの限度額

例えば、

購入時価格 350万円
現在の車両保険金額 220万円
新車保険金額 350万円
新車特約あり

なら、通常全損の220万円だけを見るのではなく、新車特約が今回の水没事故に適用できるか確認します。

逆に、

購入時価格 350万円
現在の車両保険金額 120万円
新車特約なし
復旧費用特約なし

なら、水没全損しても350万円へ戻る契約ではありません。

ここが、事故後に「思ったより保険金が少ない」と感じやすい境界です。

水没全損でいくら出るかは購入価格ではなく契約を見る

水没で車が全損した場合、通常の車両保険では現在設定している車両保険金額が基本になります。

買ったとき300万円だったから、全損時にも300万円出るとは限りません。

年数が経ち、車両保険金額が180万円なら、通常補償では180万円が基準です。

そこから答えが変わるのが、

新車特約
全損時諸費用
車両全損時復旧費用特約

などです。

新車特約が適用できれば新車保険金額まで補償できる場合がありますが、一定以上の損害、買替・修理、期限などの条件があります。

したがって、水没全損に備えるなら契約前に、

「この車が今日全損したら通常はいくら出るか」

「新車特約を使えば最大いくらまで買い替えられるか」

「数年後に車両保険金額が下がったとき、買替資金との差をどう埋めるか」

まで確認しておく。

それが、車両保険の金額を「付いている・付いていない」だけで判断しないためのポイントです。

出典

損保ジャパン|車両保険金額の目安はどれくらい?設定金額の相場と保険料を抑えるポイント

SBI損保|大雨などで自動車が水没した場合は全損になるのですか?

日本損害保険協会|免責金額を設定した場合の保険金

損保ジャパン|車両新価特約

三井住友海上|お車の補償、その他の特約

SBI損保|新車特約

東京海上ダイレクト|新車買替特約

ソニー損保|新車買替特約

三井住友海上|車両全損時復旧費用特約