大雨で車内まで水が入り、
「ここまで水没したら全損では?」
と思うことがあります。
しかし、水没しただけで必ず全損になるわけではありません。
通常の車両保険で全損になる基本的な境目は、
修理そのものができないか。
修理費が車両保険金額以上になるか。
です。
つまり、「どこまで水につかったか」だけで決まるのではありません。
販売店・整備工場が出した修理見積と、自分の保険証券に記載されている車両保険金額を並べると、自分のケースが見えてきます。
水没車でも修理できれば必ず全損ではない
水没車という言葉から、
「一度車内まで水が入ったら全損」
というイメージを持つかもしれません。
しかし、保険上はそう単純ではありません。
水につかった車でも修理可能で、修理費が車両保険金額より低ければ、通常は全損ではなく「分損」として扱われます。
反対に、外観は大きく壊れていなくても、
エンジン。
電装部品。
配線。
コンピューター。
内装。
など広い範囲に水の影響が出て修理費が高額になれば、全損になることがあります。
水没の深さそのものではなく、その結果としてどこまで修理が必要になったかを見るということです。
全損の境目は「修理費=車両保険金額」
最も分かりやすいのは、修理見積と車両保険金額を並べることです。
例えば車両保険金額が100万円だとします。
修理費が80万円なら、通常は分損です。
修理費が99万円でも、通常は分損です。
では修理費が100万円ならどうでしょうか。
主要保険会社の車両保険では、
「修理費が車両保険金額以上」
の場合を全損としています。
つまり、
車両保険金額100万円に対し、修理費100万円なら全損です。
「100万円を超えたら」ではなく、「100万円以上」が境目です。
ここは、自分で計算するときに間違えやすいところです。
免責5万円でも全損ラインが95万円になるわけではない
もう一つ迷いやすいのが、免責金額です。
例えば、
車両保険金額100万円。
自己負担額5万円。
という契約だったとします。
この場合、
「保険会社から最大95万円しか出ないから、修理費95万円で全損では?」
と思うかもしれません。
しかし、通常はそうではありません。
全損か分損かを判断するときは、修理費と車両保険金額を比較します。
このケースなら境目は100万円です。
例えば修理費98万円なら分損で、そこから契約上の自己負担額が差し引かれることがあります。
一方、修理費が100万円になり全損となれば、通常は免責金額を差し引かず、車両保険金額が支払われます。
つまり、
免責金額は分損時に受け取る保険金には影響しますが、通常の全損ラインを95万円へ下げるものではありません。
修理できなければ修理費を比べる前に全損になる
全損には、もう一つのパターンがあります。
修理自体ができない場合です。
水没によってエンジンや電装系などへ大きな損傷があり、修理不能と判断された場合には、修理費と車両保険金額を比較する以前に全損になります。
SBI損保などは「エンジンまで水没するなど」を修理不能となる例として挙げています。
ただし、
「エンジンまで水が来たら全国一律で必ず全損」
という水位基準ではありません。
実際に修理できるかどうかは、車種、浸水状態、部品の損傷などを確認したうえで判断されます。
自分で「この高さまで水が来たから全損」と決めるのではなく、販売店や整備工場の確認を待ちます。
シートまで浸水したかどうかだけでは決められない
水没車では、
「フロアまで」
「シートまで」
「ダッシュボードまで」
といった浸水高さがよく話題になります。
確かに、水位が高くなるほど内装や電子部品など水の影響を受ける範囲が広がり、修理費が高額になる可能性があります。
しかし、保険上の通常の全損ラインは、
「シートまで来たら全損」
といった形では決められていません。
例えば同じシート付近まで浸水していても、
車両保険金額300万円の比較的新しい車。
車両保険金額60万円の年式が古い車。
では、同じ修理見積でも結果が変わります。
修理費80万円なら、前者では分損となる可能性がありますが、後者なら車両保険金額以上となり全損です。
水没車では「水の高さ」と同時に、現在の車両保険金額を見る必要があります。
古い車ほど修理可能でも全損になりやすい
車両保険金額は、ずっと新車価格のままではありません。
型式や年式などを考慮した車の価値をもとに設定され、一般に年数がたつにつれて下がっていきます。
そのため、同じ80万円の修理でも、
車両保険金額150万円なら分損。
車両保険金額70万円なら全損。
となることがあります。
つまり年式が古くなった車は、
「修理できないから全損」
というより、
「修理はできるが、その車の車両保険金額より修理費が高くなるため全損」
になりやすくなります。
車が物理的に直せるかと、保険上全損になるかは別の話です。
「全損=車を絶対に修理できない」という意味ではない
ここは言葉の意味に注意が必要です。
水没車が「全損」と言われても、必ず車が完全に壊れて修理不能という意味ではありません。
修理できる状態でも、
修理費120万円。
車両保険金額100万円。
なら、通常は保険上の全損です。
技術的には直せる。
しかし保険契約上は、修理費が保険金額以上。
この状態も全損です。
そのため保険会社から「全損です」と言われたら、
「修理そのものが不可能なのか」
それとも、
「修理は可能だが、修理費が車両保険金額以上なので全損なのか」
を確認すると状況を理解しやすくなります。
全損になったら修理費全額が出るとは限らない
例えば、
車両保険金額100万円。
修理費130万円。
の場合を考えます。
通常の車両保険では全損です。
しかし、
「全損だから130万円の修理費がすべて保険から出る」
という意味ではありません。
基本となる車両保険では、車両保険金額100万円が支払限度となります。
したがって、そのまま130万円かけて修理するなら、通常の車両保険だけでは不足する可能性があります。
全損という判定と、
「修理費の全額が出るか」
は別に確認する必要があります。
車両全損修理時特約があれば全損でも修理できる場合がある
ただし、自動車保険には通常の車両保険に上乗せする特約があります。
例えば、車両全損修理時特約です。
商品によって条件や金額は違いますが、車両保険金額を超えた修理費について一定額まで上乗せして補償する仕組みがあります。
つまり、
車両保険金額100万円。
修理費130万円。
通常の判定では全損。
であっても、特約があれば修理費の不足部分を補える場合があります。
「全損と言われた=必ず買い替える」
とは限りません。
修理して乗り続けたい場合は、
車両全損修理時特約や車両全損時復旧費用特約が付いていないか
を確認します。
契約によっては70%で全損扱いになる特約もある
通常の基本線は、
修理費が車両保険金額以上。
です。
しかし、すべての契約が100%を境目にするとは限りません。
例えば三井住友海上には、損害が車両保険金額の70%以上になった場合に全損とみなし、車両保険金を満額支払う特約があります。
そのため、
「修理費÷車両保険金額」
を自分で計算しただけでは最終判断できない契約もあります。
まず通常の全損ラインを理解したうえで、自分の保険証券に、
「車両全損」
「新価」
「復旧費用」
「全損修理」
などの特約が付いていないか確認します。
全損になった場合は免責金額を引かれないのが通常
例えば、
車両保険金額100万円。
免責5万円。
修理費110万円。
で全損になった場合、
「100万円-5万円=95万円」
とはならない商品が一般的です。
確認した主要保険会社では、全損時には免責金額を差し引かず、車両保険金額を支払う仕組みになっています。
反対に、
修理費80万円。
免責5万円。
のような分損では、基本的に修理費から免責金額を差し引いて保険金を計算します。
このため、全損の前後では保険金の計算方法も変わります。
まず確認するのは「水位」ではなく2つの数字
水没後に全損かどうかを知りたいなら、
「水はどこまで来たか」
だけを検索しても答えは出ません。
必要なのは、
修理見積額。
車両保険金額。
です。
例えば、
車両保険金額120万円。
修理見積90万円。
なら、通常は分損。
車両保険金額120万円。
修理見積120万円。
なら、通常は全損。
車両保険金額120万円。
修理見積150万円。
なら、通常は全損。
修理不能なら、金額比較をする前に全損。
という形で整理できます。
そこから自分の契約に特別な特約がないかを確認します。
水没車の全損は「どこまで浸かったか」だけで決めない
水没車では、見た目のインパクトが大きいため、
「車内まで水が入ったから全損」
「エンジンまで来なかったから分損」
と判断したくなります。
しかし、通常の車両保険で見る境目はもっと明確です。
修理不能なら全損。
修理可能でも、修理費が車両保険金額以上なら全損。
修理費が車両保険金額より低ければ、通常は分損。
さらに覚えておきたいのは、
同額でも「以上」なので全損になること。
免責金額は通常、この全損ラインを下げないこと。
です。
水没後は、浸水した高さだけで結論を出さず、販売店・整備工場から修理見積を取り、保険証券の車両保険金額と並べてください。
そこで初めて、自分の車が保険上の全損になる境目を判断できます。
出典
SBI損保|大雨などで自動車が水没した場合は全損になるのですか?
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損保ジャパン|THE クルマの保険「車両保険」
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東京海上日動|トータルアシスト自動車保険「車両保険」
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三井ダイレクト損保|車両保険の保険金額について
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アクサ損害保険|全損とはどのような状態をいいますか?
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三井住友海上|車両全損(70%)特約
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SOMPOダイレクト|車両全損修理時特約
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