土地を買う前に水害リスクを確認するなら、ハザードマップと一緒に見ておきたい情報があります。
「水災等地」です。
住宅向け火災保険の参考純率では、地域の水災リスクを1等地から5等地までの5段階に分けています。1等地が相対的に低く、5等地が高い区分です。
そして現在は、この地域差が実際の火災保険料に反映される商品があります。
ただし、水災等地を「土地の安全ランキング」として使うのは適切ではありません。
土地購入前なら、水災等地は地域を大きく比較するために使い、最後は購入予定地そのもののハザードマップや高低差、浸水実績まで確認する必要があります。
水災等地1〜5等地とは何を表している?
水災等地は、損害保険料率算出機構が住宅向け火災保険の参考純率を算出するために設定した、地域ごとの水災リスク区分です。
1等地から5等地まであり、
1等地 相対的に水災リスクが低い
2等地
3等地
4等地
5等地 相対的に水災リスクが高い
という関係になっています。
ただし、1等地は「浸水しない地域」という意味ではありません。
損害保険料率算出機構も、どの等地でも水害は発生していると説明しています。 (公益社団法人 giroj)
土地購入で使うなら、
「1等地だから安全」
ではなく、
「他の市区町村と比べて、保険上の水災リスク評価は比較的低い」
程度に読むのが適切です。
水災等地は洪水ハザードマップだけで決めているわけではない
水災等地と洪水ハザードマップを比べると、
「ハザードマップではほとんど色が付いていないのに4等地」
「洪水想定区域があるのに2等地」
といった違いが出ることがあります。
これは、見ているものが違うからです。
水災等地では外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害なども含めて水災リスクを評価しています。
損害保険料率算出機構の資料によると、外水氾濫には洪水浸水想定区域図、内水氾濫や土砂災害などには水害統計や地形データなどを利用しています。 (公益社団法人 giroj)
さらに、災害が起こる可能性だけでなく、想定される被害の大きさも評価に含みます。
そのため、水災等地とハザードマップは「どちらが正しいか」を比べる情報ではありません。
目的の違う2種類の情報として使います。
火災保険料にも水害リスクは反映される
以前は住宅向け火災保険の水災料率は、地域によらず全国一律でした。
しかし水災被害の増加や地域によるリスク差などを背景に、損害保険料率算出機構は2023年に参考純率を改定し、水災料率を5区分に細分化しました。
その後、2024年10月以降の契約から水災等地を保険料に反映している保険会社があります。
三井住友海上も、水災リスクが高い地域ほど保険料が高くなる体系を説明しています。SBI損保も2024年10月以降の契約について、建物保険料が水災等地により変わるとしています。 (MS Ins)
したがって、同じような家を建てても、所在地が変われば火災保険料が変わる可能性があります。
土地価格だけではなく、購入後に継続して負担する保険料にも立地条件が影響するようになっています。
「5等地なら火災保険料が1.5倍」は違う
損害保険料率算出機構の現在の水災等地検索では、参考純率上の「水災保険料」について、5等地は1等地のおよそ1.5倍とされています。 (公益社団法人 giroj)
ここだけを見ると、
「5等地の家は火災保険料が1等地の1.5倍になる」
と思うかもしれません。
しかし、火災保険全体には火災、風災、雪災など水災以外の補償も含まれます。
水災料率の細分化を説明した資料では、参考純率による保険料全体の例で、最も高い地域と低い地域の差を約1.2倍としています。
また、1等地は細分化しなかった場合より平均約6%低い水準、5等地は約9%高い水準という試算でした。
さらに、これは損害保険料率算出機構の参考純率での数字です。
実際に支払う保険料差は、保険会社や商品、建物構造、築年数、保険金額、補償内容などによって変わります。
水災等地だけから「年間○円高くなる」と計算することはできません。
土地購入で重要なのは「市区町村単位」という点
土地探しでは、ここが水災等地の最大の注意点です。
損害保険料率算出機構の水災等地は、原則として市区町村単位です。
つまり同じ市内なら、川のすぐ近くにある土地と、数km離れた高台の土地でも同じ水災等地になります。
水災等地が5等地だから、市内すべての土地が同じ危険度という意味ではありません。
逆に1等地の市でも、局地的に低い土地や河川沿い、内水氾濫が起きやすい場所が存在する可能性があります。
したがって、異なる市町村の候補地を大きく比較するときには水災等地が参考になります。
しかし、
「同じ市内のA土地とB土地なら、どちらの方が水害に強いか」
を判断するには、水災等地だけでは足りません。
ここでは住所単位で確認できるハザードマップへ一段下げます。
同じ市内でも保険会社によって保険料が違う場合がある
さらに、水災等地検索で表示される区分が、そのまますべての保険会社の料金区分になるわけでもありません。
損害保険料率算出機構が算出しているのは「参考純率」です。
保険会社には、この参考純率をそのまま使用する義務はありません。
例えばソニー損保では、参考純率が市区町村単位であるのに対し、独自に「丁目単位」で水災リスクを細分化し、保険料へ反映しています。 (ソニー損保)
この違いは土地購入者にとって重要です。
損害保険料率算出機構では同じ3等地になる2つの土地でも、実際に保険会社へ見積もりを取ると、水災リスクの評価や保険料が違う可能性があります。
水災等地検索は「保険料の答え」ではなく、購入前調査の入口と考えた方がよいでしょう。
土地購入前は水災等地の次にハザードマップを見る
土地の候補が決まったら、国土交通省・国土地理院のハザードマップポータルサイトで住所を検索します。
ここでは、
洪水・内水
土砂災害
高潮
土地の地形・成り立ち
などを確認できます。 (ハザードマップポータル)
市区町村が公開している「わがまちハザードマップ」も併せて確認します。
水災等地が市区町村という大きな単位なのに対し、ハザードマップでは購入候補地が浸水想定区域のどこにあるのか、想定浸水深がどの程度なのかを具体的に見られます。
土地を選ぶ目的なら、こちらの方が一筆ごとの差を見るのに向いています。
「1等地+ハザードマップ白」でもそこで調査を終わらせない
最も安心に見えるのが、
水災等地1等地
洪水ハザードマップも白
という土地です。
それでも「水害リスクなし」とは確定できません。
国土交通省は、不動産取引時の水害ハザードマップ説明についても、「対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮する」としています。 (国土交通省)
そのため候補地では、
前面道路より敷地が低くないか
周囲から水が集まる地形でないか
過去に道路冠水や浸水がなかったか
内水ハザードマップに該当しないか
まで確認してから判断します。
水災等地もハザードマップも、単独で「安全証明書」になる情報ではありません。
逆に5等地だから土地を諦める必要もない
5等地は相対的に水災リスクの高いグループですが、市区町村全体を一つの区分としている以上、
「5等地=その土地が浸水する」
とも言えません。
5等地の市内でも、候補地が高い場所にあり、洪水・内水・土砂災害等の個別リスクが低い場合があります。
その場合は、
なぜ市全体が5等地なのか
ではなく、
購入する土地そのものにどのリスクが残るか
を確認する方が重要です。
反対に1等地でも、候補地だけが低地なら注意が必要です。
土地購入での使い方は、「等地の数字が大きいから買わない、小さいから買う」ではありません。
水災等地と候補地個別のリスクが一致しているかを見ることです。
重要事項説明を受けるまで待つ必要はない
現在の不動産取引では、水防法に基づいて作成された洪水・雨水出水・高潮ハザードマップについて、宅地建物取引業者が対象物件のおおむねの位置を示して説明することが重要事項説明の対象になっています。 (国土交通省)
しかし土地選びなら、契約直前の重要事項説明まで待つ必要はありません。
購入候補に入った時点で自分でも確認できます。
むしろ、
土地Aは2等地・想定浸水なし
土地Bは4等地・想定浸水0.5〜3m
などの違いが早い段階で分かれば、土地価格だけでなく、
盛土や高基礎が必要になるか
給湯器や室外機を高くするか
駐車場の浸水対策が必要か
水災補償を厚くするか
といった建築費・保険費まで含めて比較できます。
土地だけでは実際の火災保険料までは分からない
水災等地が分かれば、火災保険料そのものも計算できそうに見えます。
しかし、まだ建物が決まっていない土地購入段階では、正確な保険料までは分かりません。
火災保険料には所在地のほか、
建物構造
築年数
建物保険金額
補償範囲
免責金額
なども影響します。 (MS Ins)
新築予定なら、建物プランがおおむね決まった段階で見積もりを取る方が現実的です。
複数の土地を保険料まで比較したいなら、同じ構造、同じ建物保険金額、同じ補償内容という条件で住所だけを変えて見積もります。
そうすれば、所在地による差を比較しやすくなります。
土地購入前なら「等地→土地→保険料」の順で見る
水災等地は、土地購入前にも使える情報です。
ただし、見る順番があります。
最初に水災等地を調べ、地域全体の相対的な水災リスクを確認します。
次に購入予定住所をハザードマップで確認し、洪水・内水・高潮・土砂災害を土地単位まで下げます。
さらに市町村の浸水実績や土地の高低差を確認します。
その土地を購入候補として残すなら、予定している建物条件を使って火災保険を見積もります。
つまり、
水災等地
↓
購入予定地のハザードマップ
↓
地形・浸水実績
↓
建物条件
↓
実際の火災保険見積もり
という順番です。
水災等地が登場したことで、水害リスクは「災害に遭う可能性」だけでなく、住宅を所有し続ける間の保険コストにも反映されるようになりました。
しかし、1〜5という数字だけで土地を選ぶ指標ではありません。
土地購入前に使うなら、地域を大きく比較する入口として水災等地を見て、最後は候補地そのものの水害リスクと実際の保険料まで確認する。
そこまで進めて初めて、土地価格では見えない水害リスクと将来コストを比較できます。
出典
損害保険料率算出機構|住宅向け火災保険参考純率の水災料率を細分化します