家を買うときに火災保険を見積もると、「建物」と「家財」が分かれていることに気づきます。
水害が心配なら建物には水災補償を付けるとしても、家財まで必要なのでしょうか。
結論からいうと、建物だけ水災補償を付けても、家具・家電・衣類などの家財は原則として補償されません。
ただし、だからすべての家庭が家財にも同じ金額の補償を付けるべき、という話でもありません。
判断したいのは、
「この土地で浸水したとき、水につかる場所にいくら分の家財を置くことになるか。その買い直し費用を自分で負担できるか」
です。
住宅購入前なら、土地の浸水リスクだけでなく、間取りと家財の置き場所まで一緒に考えると判断しやすくなります。
建物の火災保険に入っても家財は自動では補償されない
火災保険では、「建物」と「家財」は別の保険対象です。
日本損害保険協会も、建物と家財についてそれぞれ保険金額を設定して契約する仕組みを説明しています。 (損害保険ガイド)
建物とは住宅そのものです。
一方、家財には一般に家具、家電製品、衣類などの生活用動産が含まれます。 (MSインス FAQ)
例えば洪水で床上浸水し、
床や壁を張り替える
冷蔵庫が壊れる
ソファが使えなくなる
衣類が泥水につかる
という被害が同時に起きたとします。
建物だけを保険対象にしていれば、床や壁など建物側の損害は契約条件に応じて補償されても、冷蔵庫やソファなどの家財は建物の保険からは補償されません。
「家全体が水につかったから全部建物保険で出る」という仕組みではありません。
建物と家財では水災の損害割合も別に見る
ここは家財水災を考えるうえで特に重要です。
一般的な水災補償では、
再調達価額の30%以上の損害
または、
床上浸水・地盤面より45cmを超える浸水
などが支払条件になっている商品があります。
そして30%という損害割合は、建物と家財を合算して判定するものではありません。
AIG損保では、「建物または家財にそれぞれの再調達価額の30%以上」と明記されています。 (AIG損保 公式サイト)
例えば、
建物の損害は10%
家財の損害は40%
ということもあり得ます。
この場合、「建物が30%に達していないから水災は全部出ない」とは限りません。
家財を保険対象としていれば、家財側の条件で水災として判定される可能性があります。
逆に家財を契約していなければ、家財に40%の損害が出ても、その家財損害を建物保険へ持っていくことはできません。
床上浸水すると家財の被害額が大きくなりやすい
家財の水災を考えるなら、自宅の1階を思い浮かべると分かりやすくなります。
リビングやキッチンには、
冷蔵庫
テレビ
ソファ
ダイニング家具
衣類
パソコン
趣味用品
などが置かれることがあります。
三井住友海上も、家具・家電・衣類などを家財の例として挙げています。 (MS Ins)
水が引いても、泥水につかった家具や家電をそのまま使えるとは限りません。
建物なら壁紙や床材の一部を修理する被害でも、低い位置に置かれた家財がまとめて買い替えになることがあります。
そのため、「家が3,000万円だから建物が重要、家財はおまけ」と金額だけで考えるのではなく、浸水時に実際に失う生活用品の再購入額を別に見る必要があります。
家財水災を付けるかは「家財総額」だけでは決めない
一方、自宅にある家財すべてが同じ水害リスクにさらされているわけでもありません。
例えば2階建て住宅で、寝室、衣類、パソコンなど多くの家財を2階に置く予定なら、浅い浸水で被害を受ける家財は家全体の一部になる可能性があります。
反対に平屋や、生活の中心がすべて1階にある住宅なら、同じ浸水深でも水につかる家財が多くなる可能性があります。
そこで住宅購入前には、
「家財はいくら持っているか」
だけでなく、
「そのうち浸水する高さに置くものはいくらか」
まで考えます。
水害リスクと間取りを組み合わせると、家財水災の必要性を自分の住宅に合わせて判断できます。
高い場所に家財を置けても土砂災害は別に考える
家財を2階へ置けば、水災補償は不要になるとは限りません。
火災保険の「水災」には、商品によって洪水だけでなく高潮、内水氾濫、土砂崩れなども含まれます。 (MS Ins)
洪水なら1階の浸水深が重要になりますが、土砂崩れで建物自体が損壊すれば、2階の家財まで被害を受ける可能性があります。
したがって、
洪水・内水が主なリスクなのか
土砂災害もある土地なのか
によって、「高い場所に置けば自己防衛できる家財」の範囲も変わります。
家財水災を判断する前に、購入予定地の洪水・内水・高潮・土砂災害を確認しておく必要があります。
住宅ローンで火災保険に入っても家財まで入ったことにはならない
住宅購入時には、住宅ローン手続きの中で火災保険への加入を求められる場合があります。
例えばフラット35では、返済終了まで借入対象となる住宅について火災保険に加入し、建物の火災による損害を補償対象とすることが利用条件になっています。 (フラット35)
ここで注意したいのは、
「住宅ローンのための火災保険に入った」
=
「自分の家財まで必要な補償がすべて付いた」
ではないことです。
金融機関から求められる条件を満たしているかと、自分たちの家具・家電をどこまで保険で守るかは別に確認します。
住宅購入時は建物の契約に意識が向きやすいため、家財が保険対象に入っているかを保険証券や見積書で確認します。
家財を付ける判断は「買い直せるか」で考える
家財水災を付けるか迷ったら、一度保険を離れて考えてみます。
もし入居翌年に床上浸水したとして、
冷蔵庫
テレビ
家具
衣類
寝具
パソコンなど
を一度に買い直すことになったら、その費用を預貯金から出せるでしょうか。
出せるとしても、住宅ローン、住宅修理費、仮住まいなどと同時に負担して問題ないでしょうか。
家財保険の保険金額は、一般に家財の再調達価額を基準に設定します。日本損害保険協会も、現在同等のものを再購入するために必要な金額を基準とする「再調達価額」を説明しています。 (損害保険ガイド)
「古いテレビだから価値はほとんどない」と中古価格だけで考えるのではなく、災害後に同等品を生活のために買い直す金額で考えるのがポイントです。
建物だけでもよいと考えやすいケース
家財水災を付けない選択にも合理性はあります。
例えば購入予定地について、
洪水・内水・高潮・土砂災害のリスクが低い
浸水想定があっても建物の床を十分高くできる
浸水する可能性のある階に高額な家財をあまり置かない
家財が損害を受けても自己資金で再購入できる
という条件が重なるなら、建物だけ水災補償を残し、家財については自己負担する考え方もできます。
重要なのは、「家財はいらないだろう」と感覚で外すのではなく、家財側の損失を自分で引き受けると決めて外すことです。
家財まで水災補償を比較したいケース
反対に、
洪水・内水の浸水想定区域にある
1階への浸水が想定される
生活の中心が1階にある
大型家電・家具を1階に多く置く
小さな子どもがいて家財量が多い
住宅購入直後で手元資金に余裕が少ない
土砂災害のリスクも残る
といった場合は、家財まで水災補償を付けた見積もりを比較する意味が大きくなります。
建物の補修費と家財の再購入費が同時に発生することを想定するためです。
家財の水災だけ保険料を比較する
最終的には、見積もりを2つ作るのが分かりやすい方法です。
同じ保険会社、同じ建物補償条件で、
建物+水災、家財なし
と、
建物+水災、家財+水災
を比較します。
家財を加えることで増える保険料が分かれば、
その保険料
対
浸水時に自己負担する家財再購入費
を比較できます。
なお、保険会社・商品によって補償の組み方は異なります。
例えばSBI損保では水災補償を建物と家財それぞれに設定できると説明しています。一方、商品によって選べる組み合わせには違いがあるため、実際には契約予定商品の見積もりで確認します。 (SBISONPO)
水災等地が高いから家財保険料も同じ倍率で高くなるとは限らない
土地購入前に水災等地を調べている場合にも、一つ注意があります。
水災等地は火災保険の地域別水災リスクを示す情報ですが、建物と家財で料率の扱いが同じとは限りません。
例えば損保ジャパンは、水災等地によって建物の水災保険料が異なる一方、家財の水災保険料については水災等地の影響を受けないと説明しています。 (Sompo Japan)
これはあくまで同社の商品上の扱いで、全保険会社共通とは限りません。
したがって、
「5等地だから家財水災もかなり高いだろう」
と推測せず、実際に家財あり・なしの見積差を取ります。
家を買う前なら土地・間取り・家財・保険を一緒に見る
家財の水災補償は、入居後に家具をそろえてから考えるより、住宅購入前から検討できます。
まず購入予定地の洪水・内水・高潮・土砂災害を確認します。
次に、想定される浸水深と1階床面の高さを見ます。
そのうえで間取りを見ながら、
冷蔵庫はどこか
リビング家具はどこか
衣類や寝具は何階か
パソコンや仕事道具はどこか
を考えます。
最後に、その階にある家財がまとめて失われても自己資金で生活を再建できるかを考えます。
この順番なら、
「建物は3,000万円だから建物保険が重要」
という住宅価格だけの判断から、
「この土地で水害が起きたとき、自分たちは何を同時に失うのか」
という生活再建の判断へ変えられます。
建物だけか家財も付けるかは「同時損失」で決める
建物だけに水災補償を付ける選択はできます。
ただし、建物が補償されれば家財まで一緒に補償されるわけではありません。
建物と家財は別の保険対象で、水災による30%以上の損害もそれぞれについて判定されます。
そのため家財水災を付けるかどうかは、
土地の水害リスク
想定浸水深
家財を置く階
浸水する高さにある家財の再購入額
住宅修理と家財買替えが同時に発生したときの自己資金
まで確認して決めます。
「家財は建物より安いから外す」のではありません。
水害が起きたときに建物の修理と同時に失う生活用品を、自分のお金でまとめて買い直せるか。
そこが、建物だけにするか家財まで水災補償を付けるかの境界です。