冠水した道路を通ってしまったものの、その後も車は普通に走っている。
エンジンもかかる。警告灯も出ていない。ブレーキにも今のところ違和感がない。
この状態なら、
「点検までは必要ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、冠水した道路を走って車体が実際に水中へ浸かったのであれば、普通に動いていても販売店や整備工場で点検を受けることを考えた方がよいでしょう。
判断基準は、今症状が出ているかではありません。
車のどこまで水の影響を受けた可能性があるかです。
「普通に動く」は異常がない証明にはならない
冠水路を抜けた直後にエンジンが止まらなかったからといって、すべての部品に問題がないとは限りません。
トヨタの取扱説明書では、冠水した道路を走行して水中に浸かった場合、販売店で点検する項目として、
ブレーキの効き具合。
エンジンやトランスミッションなどのオイル・フルードの量や状態。
ベアリングやジョイント部などの潤滑状態。
が挙げられています。
つまりメーカー自身も、確認対象を「エンジンが動くか」だけにはしていません。
車が走れていても、水が入り込んだことで別の部分に影響している可能性があるからです。 (トヨタマニュアル)
マツダの取扱説明書でも、冠水した道路を走って水中に浸かった場合には、ブレーキ、オイル類、ベアリングやジョイント部などの点検を受けるよう案内しています。 (マツダ)
普通の水たまりと「冠水道路を走った」は分けて考える
雨の日にタイヤが水たまりを通っただけで、毎回販売店へ点検に行くという意味ではありません。
問題になるのは、道路そのものが水で覆われ、車がその中を走った場合です。
ただし、
「何cmなら普通の水たまり」
「何cmから点検が必要」
という全国共通の数値基準はありません。
国土交通省も、浸水の影響は車両の形状や設計によって異なり、特に車高の低い車では影響を受けやすいとしています。 (国土交通省)
そのため、深さを自己判断して、
「タイヤの半分以下だったから大丈夫」
などと線を引くのは適切ではありません。
道路一面に水があり、水深が分からない状態を走った。
車体下部まで水の中へ入った。
大きな水しぶきを上げながらある程度の距離を走った。
こうした場合は、「冠水路を走った」と考えて点検を検討します。
点検するのはブレーキだけではない
冠水路を走った後で最も気づきやすいのはブレーキです。
水にぬれることで、一時的に効き方が変わる場合があります。
しかし、点検対象はそれだけではありません。
メーカーの取扱説明書では、オイルやフルードへの水の混入、ベアリングやジョイント部の潤滑状態なども確認対象になっています。 (manual.toyota.jp)
つまり、
「ブレーキが普通に効いた」
から、
「車全体に問題はない」
とは判断できません。
目で見えない部分まで水の影響を確認することが、点検する理由です。
エンジンが止まらなかったから吸水していないとも限らない
国土交通省は、冠水道路を走ることで、電気装置の故障やエンジン・モーター停止など、さまざまな不具合が生じる可能性を示しています。
特に水深が車両の床面を超えるような状況では、車内への浸水や電気装置の故障などの危険が高まります。 (国土交通省)
ただし、床面を超えなかったから無条件で安全という意味ではありません。
メーカーの取扱説明書が点検を求めているのは、エンジン停止などの故障が起きた場合だけではなく、「冠水した道路を走行して水中に浸かった場合」です。 (トヨタマニュアル)
ここがこの記事で最も重要な点です。
故障してから点検するのではなく、冠水路を走った事実を点検のきっかけにします。
警告灯が出ていなくても点検を考える
最近の車にはさまざまな警告灯があります。
そのため、
「何も点灯していないから大丈夫」
と思うかもしれません。
しかし、メーカーが冠水後に確認するよう求めているベアリングやジョイント部の潤滑状態、オイルやフルードの状態が、すべて即座に警告灯として表示されるわけではありません。
冠水直後に警告表示がないことと、点検する必要がないことは別です。
実際、トヨタの取扱説明書には「警告灯が点いた場合だけ点検」とは書かれていません。
水中に浸かったこと自体を条件として点検を案内しています。 (トヨタマニュアル)
走行直後にブレーキがおかしいなら、そのまま走り続けない
冠水路を抜けた直後、
ブレーキの効きが明らかに悪い。
車が左右どちらかへ取られる。
異音や異臭がする。
警告灯が点灯した。
エンジンの調子がおかしい。
こうした変化があれば、「点検予約を取って後日行こう」という段階ではありません。
安全な場所に停車して販売店、整備工場、ロードサービスなどへ相談します。
日産系販売店の案内でも、冠水路走行後には安全な場所へ停車してブレーキや異音・異臭を確認し、異常があれば専門家へ相談する流れが示されています。 (ニッサン愛知ディーラー)
車内まで水が入ったなら「普通に動くか試す」はしない
道路の水が車内まで入った場合は、単に「冠水路を通った」という状態より対応を厳しく考えます。
JAFは、車内まで冠水した車では、電装系のショート、エンジン破損、ブレーキ機構の異常などのおそれがあるため、各部を点検するまではエンジンを始動しないよう案内しています。 (JAF(日本自動車連盟))
つまり、水が引いた後に、
「普通に動くか少し試してみよう」
とエンジンをかけるのは避けます。
ロードサービスや販売店、整備工場へ状況を伝え、搬送が必要か確認します。
すでに自宅まで普通に帰ってきた場合も点検不要とは考えない
冠水路を通った後、そのまま何事もなく自宅まで帰れた。
このケースが一番迷いやすいでしょう。
すでに数十分走れていると、
「本当に故障しているなら、とっくに症状が出ているはず」
と思いがちです。
しかし、メーカーの点検項目を見ると、判断はそこではありません。
ブレーキの効きだけでなく、オイルやフルードの状態、潤滑部分まで確認対象になっています。
したがって、冠水した道路を実際に走り、車体が水中へ浸かったのであれば、普通に帰宅できた場合でも販売店や整備工場へ、
「大雨で冠水した道路を走ってしまった」
と伝えて点検について相談するのがよいでしょう。
その際は、
どのくらいの距離を走ったか。
水がどの程度の高さまで来ていたように見えたか。
車内への浸水はあったか。
走行中やその後に異音、異臭、警告灯などがなかったか。
を伝えると、状況を説明しやすくなります。
正確な水深が分からなくても構いません。
「20cmだったと思う」などと無理に数字を推測する必要はありません。
「点検に自走して行くか」は冠水の程度で分ける
ここは一律に「自走して販売店へ行けばよい」とは言えません。
冠水路を通っただけで、その後も正常に走り、車内への浸水もなく、現在も異常がない場合は、まず販売店や整備工場へ状況を伝えて入庫方法を確認します。
一方で、
車内まで水が入った。
エンジンが一度止まった。
警告灯が出ている。
ブレーキやハンドルに違和感がある。
異音・異臭がある。
といった場合は、自己判断で走らせず、ロードサービスなどを利用する方が安全です。
「点検が必要」と「必ず自走して点検へ行く」は別の話です。
冠水後の判断は「今走れるか」ではなく「水に入ったか」
冠水道路を通った後に車が普通に動いていると、何もなかったことにしたくなります。
しかし、メーカーの取扱説明書を見ると、点検する条件は、
「故障したか」
「警告灯が出たか」
ではありません。
冠水した道路を走行し、車が水中に浸かったかです。
普通の水たまりを通っただけなら、冠水車と同じ扱いにする必要はありません。
一方、道路一面が水に覆われた場所を通り、車体が水中に入ったのであれば、症状がなくても点検を考える。
さらに車内まで浸水した場合は、自分で動作確認をせず専門家へ相談する。
「今普通に動くから大丈夫」ではなく、
どの程度、水の影響を受けた可能性があるか
を基準に判断してください。
出典
トヨタ自動車|CROWN 取扱説明書「冠水路走行に関する注意」
トヨタ自動車|CROWN 取扱説明書
マツダ|PREMACY取扱書「冠水した道路を走行しない」
マツダ|PREMACY取扱書
国土交通省|水深が床面を超えたら、もう危険!
国土交通省|水深が床面を超えたら、もう危険!
JAF|車内まで冠水した自動車の扱いと対処方法
JAF|車内まで冠水した自動車の扱いと対処方法