大雨で車が水没し、修理するつもりはない。
水没車の買取業者からは、
「この状態でも買い取れます」
と言われた。
それなら保険会社の確認を待たず、すぐ売ってしまってもよいのでしょうか。
車両保険を使う可能性があるなら、原則として保険会社の確認が終わる前に売却や廃車を確定させない方が安全です。
特に待った方がよいのは、
売買契約を結ぶ。
車を買取業者へ引き渡す。
名義変更する。
解体する。
永久抹消する。
といった、元の状態へ戻せなくなる手続きです。
一方、処分を決めるために「今の状態ならいくらで買い取れるか」と査定を取ることと、実際に車を売ってしまうことは別です。
水没車では、
保険会社の確認と買取査定を並行して進め、処分の確定だけ待つ
という考え方が分かりやすくなります。
車両保険を使う可能性があるなら、最初に保険会社へ連絡する
洪水や高潮などによる水没は、車両保険の補償対象になる場合があります。
そのため、水没後すぐに、
「もう乗らないから売ろう」
と決める前に、自分の契約で今回の水没が補償対象になるか確認します。
確認したいのは、
車両保険が付いているか。
今回の水没原因が補償対象か。
保険会社による車両確認が必要か。
修理見積が必要か。
全損になる可能性があるか。
です。
車両保険を使えるのに、確認前に車を処分してしまえば、後から必要な損害確認ができなくなる可能性があります。
保険会社が確認する前に車の状態を変えない
保険会社は、保険金を支払う前に、
本当に保険事故が起きたのか。
どこまで損傷しているのか。
修理にはいくらかかるのか。
全損なのか分損なのか。
などを確認します。
ソニー損保は、保険会社が確認する前に修理すると、事故や損害の事実関係を確認できなくなり、保険金を支払えない可能性があると案内しています。
あいおいニッセイ同和損保も、事故車の修理へ着手する前に保険会社の承認を得るよう求めています。
水没車を売却・解体する場合は、単なる修理以上に元の損傷状態を確認できなくなる可能性があります。
だから、
車を処分してから保険会社へ連絡するのではなく、処分前に連絡する
と考えてください。
「査定してもらう」と「売る」は分けて考える
水没車の処分では、ここを分けると判断しやすくなります。
買取業者へ、
「今の状態ならいくらですか」
と査定を依頼する。
これは処分方法を決めるための情報集めです。
一方、
売買契約書へ署名する。
所有権移転に必要な書類を渡す。
車両を引き渡す。
解体を依頼する。
のは、売却そのものです。
保険会社の判断を待っている段階なら、査定額だけ確認して、
「保険会社の確認が終わるまで契約と引渡しは待ちます」
と伝える方法があります。
特に複数の買取業者を比較するなら、査定段階で止めておいた方が選択肢を残せます。
先に売買契約すると、あとで保険会社へ渡せなくなることがある
実際に、事故車を保険会社の判断前に売却契約してトラブルになった事例があります。
自走できなくなった車について、入庫先から、
「修理不能だから買い取りましょう」
と言われ、数万円で売買契約した。
その後、保険会社から全損と判断され、
「車両保険金を支払う代わりに事故車を保険会社が引き取る」
という扱いになった。
ところが、すでに買取契約をしていたため、その契約を解除しなければならなくなり、違約金を請求されたというケースです。
このように、
保険会社と買取業者の両方に同じ車を渡さなければならない状態
を作ってしまうことがあります。
水没車が全損になりそうなら、査定額が出ても保険会社の判断前に売買契約まで進めない方が安全です。
全損になると車の所有権が保険会社へ移る契約がある
水没車が全損となった場合は、もう一つ重要な問題があります。
車両保険金を満額受け取る条件として、事故車両の所有権を保険会社が取得することがあります。
例えば、全損車両について保険会社が車を引き取る商品があります。
つまり、
車両保険金100万円。
水没車買取20万円。
だから合計120万円。
と単純に計算できるとは限りません。
全損保険金100万円を受け取ったら、その水没車は保険会社へ引き渡す条件なら、自分で20万円で売却することはできません。
全損と言われたら、
「保険金を受け取った後、この車の所有権は誰に残りますか」
を確認します。
保険会社が車を取得しない契約もある
一方で、
「全損扱いの保険金を受け取ったら、必ず車は保険会社へ渡す」
とも限りません。
特約によっては、保険金を支払っても車両の所有権を取得しないことを明示している商品があります。
また、保険会社と契約者の間で、残存車両を契約者側に残す扱いになることも考えられます。
その場合には、
保険金はいくらになるのか。
水没車は自分で売ってよいのか。
残存車両の価値が保険金計算へ影響するのか。
を確認します。
したがって重要なのは、
「全損」という言葉だけで車の処分権を判断しないこと
です。
保険会社から「分損」と言われても、すぐ修理する必要はない
全損ではなく、
「修理可能なので分損です」
と判断される場合もあります。
分損とは、一般に修理可能で、修理費が車両保険金額より低い状態です。
しかし、
分損=必ず修理しなければならない
という意味ではありません。
水没歴が残る車へ高額な修理費をかけるより、保険金の扱いを確認したうえで現状売却を選びたい場合もあります。
この場合も、
「修理しないで売却する場合、車両保険金はいくらになりますか」
「売却前に必要な確認は終わっていますか」
と保険会社へ聞いてから進めます。
修理するかどうかと、保険金を請求できるかどうかは分けて確認します。
保険会社の現車確認が終われば、すぐ売ってよいとも限らない
保険会社の担当者が車を見た。
写真を提出した。
修理見積も出した。
ここまで終われば、すぐ売ってよいと思うかもしれません。
しかし、
損害確認が終わったこと
と、
車を自由に処分してよいこと
は同じとは限りません。
その後に、
全損か分損か。
支払保険金額はいくらか。
事故車両を誰が取得するか。
追加確認が必要か。
が決まる場合があります。
したがって、処分直前に、
「保険会社側の確認はすべて終わっていますか」
「この車を今日売却しても保険金請求に影響しませんか」
「車は私の判断で処分してよいですか」
まで確認します。
「全損認定前」だけでなく「保険金支払条件の確定前」まで待つ
売却を待つ境目を、
「保険会社が車を見たか」
だけにすると分かりにくくなります。
より実務的には、
自分がこの車を自由に処分してよいことを保険会社へ確認できたか
を境目にします。
例えば、
水没事故の受付だけ済んだ。
まだ修理見積がない。
全損か分損か決まっていない。
保険金額が確定していない。
残存車両を誰が所有するか決まっていない。
という段階なら、まだ売却や解体を確定しない方がよいでしょう。
反対に、
損害確認が終わった。
支払条件も決まった。
保険会社から「車はご自身で処分して構いません」と確認できた。
なら、売却・廃車を具体的に進めやすくなります。
車両保険を使わないと決めた場合は扱いが変わる
一方、
そもそも車両保険に加入していない。
今回の水没は契約上の補償対象外。
車両保険を請求しないことを自分で決めた。
という場合は、保険会社による全損判定を待ってから売却する意味は小さくなります。
ただし、
「車両保険がないと思っていたら実は付いていた」
「洪水は対象外だと思っていたら補償対象だった」
という可能性があります。
そのため、一度契約内容を確認してから処分する方が確実です。
洪水・高潮による水没は、一般的な車両保険では補償対象となる商品があります。
保険を使わない判断は、補償がないことを確認してからでも遅くありません。
地震・津波による水没は同じ扱いとは限らない
「水没」という結果が同じでも、原因によって保険の扱いは変わります。
一般的な車両保険では、
台風。
豪雨。
洪水。
高潮。
などによる水没は補償対象になることがあります。
一方、地震・噴火による津波は通常の車両保険では対象外とし、専用特約で一定額を支払う商品があります。
さらに、その専用特約では保険金を支払っても車両所有権を保険会社が取得しないものもあります。
そのため、
「水没して全損だから保険会社へ車を渡す」
と一括りにしません。
水没原因と、自分の特約を確認します。
ローン中の車は保険会社以外の所有者確認も必要
もう一つ、保険会社の判断とは別に確認したいのが車検証上の所有者です。
ローン購入では、販売会社や信販会社が所有者になっている場合があります。
水没したからといって、使用者の判断だけで自由に売却・廃車できるとは限りません。
査定に出すときには、
「ローンが残っています」
「車検証の所有者が販売店・信販会社です」
と伝えます。
そして、
保険会社。
所有権を持つ会社。
買取業者。
の手続きがどうつながるか確認します。
保険会社の確認が終わっていても、所有権解除ができなければ売却を完了できない場合があります。
廃車は売却よりさらに後戻りしにくい
買取業者との契約なら、条件によってはキャンセルできる場合があります。
しかし解体まで進めると、元の車両状態へ戻すことはできません。
そのため、
「どうせ全損だと思うから」
と保険会社の確認前に解体業者へ渡すのは特に避けたいところです。
保険会社が写真や見積書だけでは損傷を確定できず、現車確認を求めたときに、すでに解体済みでは確認できません。
永久抹消まで完了すれば、その車を再び通常の中古車として売る選択肢も失われます。
売却以上に、
解体・永久抹消は保険会社の処分許可を確認してから
と考えます。
水没車では「保険会社」と「買取業者」を同時に動かす
保険会社の確認が終わるまで、買取業者へ何も聞いてはいけないわけではありません。
むしろ、
保険会社へ事故連絡する。
販売店・整備工場から修理見積を取る。
同時に水没車買取業者から現状査定を取る。
という進め方なら、
保険金。
修理費。
現状売却額。
を早く比較できます。
ただし買取業者には、
「まだ保険会社の確認中なので、査定だけお願いします」
と伝えます。
こうすれば処分方法を決める材料は集めつつ、所有権や保険金を失うリスクを抑えられます。
保険会社へ最後に確認するのはこの一言
水没車を売る前に、
「保険会社の確認は終わっていますか」
だけでは少し曖昧です。
最も分かりやすいのは、
「この車を今、私の判断で売却・廃車しても保険金の支払いに影響しませんか」
と確認することです。
さらに全損なら、
「保険金を受け取った後も車の所有権は私に残りますか」
まで聞きます。
この回答が分かってから、
売却。
廃車買取。
解体。
永久抹消。
のどこまで進めるか決めます。
水没車は「査定を先、処分の確定は後」で考える
水没車には、修理費とは別に買取価値が残ることがあります。
そのため査定自体を後回しにする必要はありません。
問題になるのは、
保険会社の判断前に車を手放してしまうことです。
車両保険を使う可能性があるなら、
保険会社へ事故連絡。
修理見積・損害確認。
並行して買取査定。
全損・分損と保険金額を確認。
残った車を誰が所有するか確認。
自分で処分してよいと確認できてから売買契約・引渡し・解体。
という順番にします。
水没車を早く処分したいときほど、
「査定すること」と「売ってしまうこと」は別
と考えてください。
保険会社の判断前でも価値を調べることはできます。
しかし、売却や廃車を確定するのは、
「この車は自分で処分してよい」と確認できた後
にするのが、保険金と売却価値の両方を失わないための安全な順番です。
出典
ソニー損保|事故車を早く修理したいのですが、保険会社が確認する前に修理してもいいですか
ソニー損保のFAQ
あいおいニッセイ同和損保|事故車を早く修理したいのですが、保険会社が確認する前に修理してもいいですか
あいおいニッセイ同和損保のFAQ
一般社団法人日本自動車購入協会|全損認定前に事故車を売却契約したトラブル事例
JPUCの相談事例
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SOMPOダイレクトのFAQ
三井住友海上|全損車両に対する損害賠償の考え方
三井住友海上の資料
三井住友海上|水害・水没は車両保険で補償される?
三井住友海上の水没補償解説
SBI損保|大雨などで自動車が水没した場合は全損になるのですか?
SBI損保のFAQ