元田んぼの土地を買って大丈夫?水害と地盤を分けて確認する

土地を探していて、

「この分譲地は昔、田んぼだった」

と聞くと、不安になる人は多いと思います。

地盤が弱いのではないか。

家が沈まないか。

大雨で浸水しないか。

液状化しないか。

ただし、「元田んぼ」という一つの情報だけで、これらをまとめて判断することはできません。

特に分けたいのが、

建物を支える地盤の問題

と、

洪水・内水など水害の問題

です。

地盤調査をして必要な地盤改良を行えば、建物を支えるための対策ができる場合があります。

しかし、それによって土地の標高が周囲より高くなるわけでも、川の氾濫や道路冠水がなくなるわけでもありません。

反対に、洪水ハザードマップで浸水想定が小さい土地でも、その土地の地盤が住宅を支えるのに十分かは地盤調査をしなければ分かりません。

「元田んぼだから買わない」「地盤改良するから大丈夫」の二択ではなく、水害と地盤を別々に確認してから土地を判断します。

元田んぼは「危険」という結論ではなく、調べる理由

田んぼだったという土地履歴は、購入判断の手掛かりになります。

ただし、

元田んぼ
=
軟弱地盤

元田んぼ
=
洪水になる

と一律には判断できません。

田んぼは平坦で水を利用しやすい土地に作られてきましたが、同じ田んぼでも、その下の地層や周囲との高低差、河川との位置関係は土地ごとに違います。

また、田んぼだった場所が現在の宅地になるまでに、

どの程度盛土したのか。

どのように造成したのか。

排水施設がどう整備されたのか。

いつ宅地化されたのか。

も違います。

したがって「昔は田んぼでした」という情報が出たら、そこで購入可否を決めるのではなく、

水害はどうか。

現在の地盤はどうか。

液状化はどうか。

造成後の土地はどうか。

という別々の調査へ進む合図と考えます。

最初に「水害」と「地盤」を別の質問にする

元田んぼについて調べるときは、質問を二つに分けると分かりやすくなります。

一つ目は、

「この土地や周辺は、大雨のとき水が集まりやすい場所か」

です。

これは水害側の確認です。

洪水、内水、高潮、周囲との高低差、排水、昔の地形などを見ます。

もう一つは、

「この土地の現在の地盤で、予定する住宅を支えられるか」

です。

こちらは地盤側の確認です。

地盤調査を行い、地盤の強さや軟弱層などを確認し、予定建物に応じて基礎や地盤補強を検討します。

この二つは関連する場合がありますが、同じ答えではありません。

地盤改良で確認するのは「家を支えられるか」

住宅を建てる場合、地盤に応じた基礎を設計する必要があります。

住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準でも、敷地の状況を確認したうえで原則として地盤調査を行い、その結果から地盤補強の要否や基礎形式を判断する考え方になっています。

地盤が弱い場合でも、

基礎形式を変える。

地盤を改良する。

杭などで支持できる地盤まで荷重を伝える。

といった方法が検討されます。

つまり、元田んぼだから住宅を建てられないという意味ではありません。

実際の地盤調査結果と予定する建物から、必要な基礎・補強方法を判断します。

ここで解決しようとしているのは、主に建物の荷重による沈下や不同沈下などの問題です。

地盤改良しても「水が来るか」は別に残る

ここを混同しないことが、この記事で一番重要です。

例えば元田んぼの土地で地盤調査を行い、

「柱状改良をすれば住宅を建てられます」

という結果になったとします。

これは、予定する住宅を支えるための地盤対策についての判断です。

その土地が、

洪水で何m浸水するのか。

集中豪雨で道路より先に水がたまるのか。

雨水が排水できるのか。

周辺道路が冠水して家から出られなくなるのか。

まで解決したという意味ではありません。

建物の基礎を支える地盤を補強しても、その地域の河川や排水能力、土地全体の標高、周囲の地形そのものは変わりません。

地盤改良の説明を聞いたあとに、改めて水害側を確認します。

水害を見るなら「元田んぼ」より現在の地形を見る

水害側では、昔田んぼだったことそのものより、その田んぼがどのような地形にあったのかを確認します。

地理院地図では土地の成り立ちを、

氾濫平野。

後背湿地。

旧河道。

自然堤防。

三角州。

干拓地。

盛土地。

などの地形分類から確認できます。

例えば後背湿地は、氾濫平野の中でも周囲より低く、自然堤防の背後などに形成された低湿地です。

国土地理院は、わずかな降雨でも浸水しやすく、浸水深・浸水時間が大きくなる傾向があるとしています。

昔から水田として利用されていた場所でも、

自然堤防に近い場所なのか。

後背湿地なのか。

氾濫平野なのか。

旧河道の上なのか。

で意味が違います。

「田んぼだった」という土地利用から、地形まで一段下げて確認します。

同じ元田んぼでも隣の土地と条件が違うことがある

大きな水田地帯が一つの分譲地になっていると、

「この辺りは全部元田んぼだから同じ」

と考えがちです。

しかし、地形にはわずかな高低差があります。

自然堤防の縁から後背湿地へ移る場所。

昔の川筋が一部だけ通っている場所。

造成時の盛土量が区画によって違う場所。

などでは、数十m離れるだけでも条件が変わることがあります。

水害については周辺地域全体を見る一方、最終的には購入候補の区画そのものの標高や地形も確認します。

地盤についても、隣地の地盤調査結果は参考になりますが、自分が建てる区画の地盤そのものを確定する資料ではありません。

「同じ分譲地の隣で改良不要だった」だけで、自分の区画も改良不要とは判断しません。

ハザードマップでは洪水と内水を分けて見る

元田んぼの土地を確認するとき、洪水ハザードマップだけを見て終わらせない方がよい場合があります。

洪水は、主に河川が氾濫した場合の浸水想定です。

一方、内水は、短時間の大雨などで雨水を河川や下水道へ排出できず、地域の低いところに水がたまる現象です。

元田んぼの中でも周囲より低い場所では、

大きな川から水が来るか

だけでなく、

その地域に降った雨がどこへ流れるか

を見る意味があります。

ハザードマップポータルサイトでは洪水・内水などを確認できます。

自治体が内水ハザードマップや過去の浸水実績を公開している場合は、それも確認します。

ハザードマップが白でも「元田んぼだから安心」に反転させない

洪水ハザードマップを確認すると、購入候補地に色が付いていない場合があります。

それは重要な情報ですが、

「浸水想定区域外だから水害は起きない」

という意味ではありません。

洪水浸水想定区域図は一定の条件で作られています。

支川の氾濫、内水、想定を超える降雨など、表示している図によって含まれていない現象があります。

国土交通省も、不動産取引時には浸水想定区域外だから水害リスクがないと誤認させないよう求めています。

そのため元田んぼなら、

洪水ハザード。

内水。

地形分類。

周囲との高低差。

過去の浸水履歴。

を重ねて確認します。

「昔は田んぼだった」の範囲も確認する

元田んぼという情報を聞いたら、

いつまで田んぼだったのか

も見てみます。

国土地理院の過去の航空写真や旧版地図を利用すれば、土地利用の変化を確認できる場合があります。

また「明治期の低湿地データ」では、明治期に河川、湿地、水田などだった区域を現在の地図へ重ねられます。

ここで注意したいのは、

「明治時代に田だったから洪水リスク○点」

と点数化することではありません。

明治期の低湿地データは、特に液状化など地盤災害との関連が深い土地履歴を知る資料です。

過去の水田だった事実を、現在の地形・ハザードとつなげて使います。

元田んぼと液状化は「洪水」とも「支持地盤」とも少し違う

もう一つ分けておきたいのが液状化です。

液状化は大きな地震の際、地下水位が高く緩い砂質地盤などで地盤が液体のような状態になる現象です。

これは大雨による浸水とは別の災害です。

また、

通常時に家を支える地耐力がある

ということと、

大地震時に液状化しない

ということも必ずしも同じではありません。

国土地理院は、旧河道や盛土地・埋立地などを液状化被害を受けやすい代表的な地形として挙げています。

「元田んぼだから液状化する」と決めるのではなく、自治体の液状化ハザードマップ、土地の地形・地質、地下水などを確認します。

液状化について地盤対策を行う場合も、通常の建物支持を目的とした地盤補強と同じ対策内容とは限りません。

土地購入前の地盤調査が難しい場合は周辺資料を「予備調査」に使う

地盤について最も確実なのは、実際の敷地を調査することです。

ただし土地購入前では、

まだ自分の土地ではない。

建物の位置・形状が決まっていない。

売主が調査を認めない。

といった事情で、購入前に建築用の詳細な地盤調査ができない場合があります。

その場合でも、何も確認できないわけではありません。

造成会社・売主に過去の地盤調査資料がないか確認する。

同じ分譲地で過去に行われた地盤調査や地盤改良の状況を確認する。

国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」で周辺のボーリング柱状図を探す。

地形分類を見る。

昔の土地利用を見る。

といった予備調査ができます。

ただし、周辺のボーリングデータは購入候補地そのものの調査結果ではありません。

KuniJiban自身も、調査後の土地改変や圧密などによって現在の地盤と異なる可能性があることを注意事項として示しています。

土地購入前の絞り込みには使い、最終的な住宅基礎の判断は実際の敷地調査へつなぎます。

「地盤改良済み」という言葉だけでは確認が足りない

建売住宅や造成済み分譲地では、

「地盤改良済みなので大丈夫です」

と説明されることがあります。

その場合は、何を行ったのかを確認します。

地盤調査報告書はあるか。

どの位置を調査したのか。

どのような基礎・改良が必要と判定されたのか。

実際にどの工法で施工したのか。

施工記録は残っているか。

を確認します。

さらに水害については別に調べます。

「地盤改良済み」という情報は、

洪水対策済み。

内水対策済み。

液状化対策済み。

を自動的に意味するものではありません。

何のリスクに対して、何を施工したのかを分けて聞きます。

敷地だけ高く盛土されていても道路まで見る

元田んぼの分譲地では、造成によって宅地が周囲の田より高くなっていることがあります。

敷地が高くなっていること自体は、水が敷地へ入りにくくなる方向の材料です。

ただし土地購入前なら、家の敷地だけで確認を終えません。

前面道路はどの高さか。

周囲の住宅地より低くないか。

大雨時に道路へ水がたまらないか。

自宅へ向かう道路に低い場所がないか。

側溝や雨水排水施設はどこへつながっているか。

も見ます。

住宅だけ浸水しなくても、周囲の道路が冠水すれば車の移動や避難に影響します。

「家が濡れるか」だけでなく、「大雨時にその場所で生活を続けられるか」という視点で土地を見ます。

元田んぼを買うか迷ったら「問題を解決できるか」で分ける

例えば、候補地を調べて次のような結果になったとします。

地盤調査
→地盤改良が必要。

洪水・内水
→浸水想定は小さい。

周辺道路
→大きな高低差なし。

この場合は、地盤改良費を含めて購入を検討するという判断ができます。

反対に、

地盤
→補強すれば建築可能。

洪水
→想定浸水深が大きい。

内水
→過去にも周辺道路が浸水。

となれば、

「地盤改良すれば家は建つ」

だけで購入判断を終えるのは早いでしょう。

逆に、

水害リスク
→比較的小さい。

地盤
→購入後でなければ詳しい調査ができず、周辺資料では軟弱層が確認される。

なら、地盤改良費の不確実性を購入価格や資金計画に織り込む必要があります。

「元田んぼかどうか」ではなく、見つかった問題が何で、それをどこまで対策できるのかで考えます。

買う前に最低限分けて確認したい4つ

元田んぼの土地を検討するなら、少なくとも次の4つは混ぜない方が判断しやすくなります。

水害
:洪水・内水・高潮、地形、標高、過去の浸水など。

建物を支える地盤
:地盤調査、支持力、沈下、基礎・地盤補強。

液状化
:地形・地質、地下水、自治体の液状化想定など。

造成
:盛土の状態、高低差、擁壁、排水、造成履歴など。

元田んぼという一つの履歴から、この4方向へ調査を広げます。

一つで問題がなかったから、残りも問題ないとは判断しません。

まとめ

元田んぼだった土地だからといって、それだけで「買ってはいけない土地」とは言えません。

しかし「地盤改良すれば大丈夫」と一つの対策だけで判断するのも適切ではありません。

住宅を支える地盤は地盤調査から確認し、必要なら基礎・地盤補強を検討します。

水害は、洪水・内水ハザード、旧河道や後背湿地などの地形、土地と道路の高さ、過去の浸水などから別に確認します。

さらに液状化と造成履歴も分けて見ます。

「元田んぼ」という情報は購入をやめる結論ではなく、水害・地盤・液状化・造成をそれぞれ確認するスタート地点として使うのがよいでしょう。

出典

国土地理院|治水地形分類図の内容

国土地理院|土地条件図

国土地理院|土地の成り立ち・土地利用

国土地理院|明治期の低湿地データ

国土交通省・国土地理院|ハザードマップポータルサイト

国土交通省|宅地建物取引業法施行規則の改正について(水害リスク情報)

国土交通省|住宅瑕疵担保履行法 Q&A・地盤調査等

国土地盤情報検索サイト KuniJiban|地盤情報の検索

国土地盤情報検索サイト KuniJiban|利用上の留意点