気に入った土地について調べていたら、
「この辺りは昔、干拓された土地です」
「もともとは海を埋め立てた場所です」
と分かることがあります。
すると、
水害が多いのではないか。
高潮が来たら危ないのではないか。
地盤も弱いのではないか。
と不安になります。
ただし、干拓地・埋立地という土地の成り立ちだけで、「買ってはいけない土地」と決めることはできません。
同じ干拓地でも、土地の高さ、堤防、排水施設、現在の高潮浸水想定は場所によって違います。
埋立地も、十分な高さまで造成された土地と低い埋立地では、水害リスクを同じようには判断できません。
土地購入前に確認したいのは、
干拓地か埋立地か
だけではなく、
今、その土地がどの高さにあり、どこから水が入り、入った水がどこへ抜けるのか
です。
干拓地と埋立地は土地の作り方が違う
まず、干拓地と埋立地を分けます。
干拓地は、海・湖・干潟などを堤防で囲み、その内側の水を排出して陸地にした土地です。
一方、埋立地は、海や湖などの水面へ土砂を入れて陸地を作った土地です。
似ているようですが、土地の作り方が違います。
干拓地は水を抜いて陸地化するため、一般に海面や湖面より低い土地になることがあります。
埋立地は土を入れて陸地を作るため、干拓地より高く造成されていることがあります。
ここから、
「埋立地なら安全」
と結論を出すのは早いです。
埋立地でも高さが十分でなければ、高潮や高波による浸水に注意が必要です。
まず土地の名称ではなく、現在の高さを確認します。
干拓地で特に確認したいのは「低さ」と「水の出口」
干拓地で重要なのは、もともと水面だったという履歴だけではありません。
堤防で囲まれた内側にあり、周囲の海・川などより低い土地の場合、自然に水を外へ流しにくいことがあります。
大雨が降ったとき。
川の水位が上がったとき。
高潮で海面が上がったとき。
外側の水位が高ければ、内側の水を自然排水できない場合があります。
そこで排水機場などによって水を外へ排出している地域があります。
土地購入前なら、
「堤防があるから大丈夫」
だけで終わらず、
土地の標高。
堤防との位置関係。
雨水の排水先。
排水機場などの施設。
浸水した場合の継続時間。
まで確認したいところです。
干拓地では「水が入るか」と同じくらい、「入った水がどれだけ残るか」も重要になります。
高潮は「海から何km離れているか」だけでは判断しない
高潮というと、海岸沿いだけの災害と思うかもしれません。
高潮は、台風などによる気圧低下や強風によって海面が上昇する現象です。
その影響は海岸だけに限りません。
高潮による高い水位が河川へ影響し、河川を通じて内陸側へ浸水する場合もあります。
そのため、
「海から2km離れているから大丈夫」
「家から海が見えないから高潮は関係ない」
という距離だけでは判断できません。
土地購入前には、自治体や都道府県が公表している高潮ハザードマップ・高潮浸水想定区域図で候補地そのものを確認します。
洪水ハザードマップと高潮ハザードマップは別に見る
沿岸低地の土地では、洪水と高潮を一つにしないことも重要です。
洪水は、主として河川の水が氾濫するリスクです。
高潮は、台風等によって海面が上昇し、海岸や河川から水が入るリスクです。
さらに、大雨を排水できずに起きる内水氾濫もあります。
同じ土地でも、
洪水
→想定あり
高潮
→想定あり
内水
→想定あり
ということもあれば、一部だけ該当することもあります。
「洪水ハザードマップでは白かった」
というだけで沿岸低地の水害確認を終えず、高潮・内水まで別々に確認します。
干拓地では浸水深だけでなく「浸水継続時間」を見る
ハザードマップでは、まず浸水深に目が行きます。
0.5m未満なのか。
1mなのか。
3mなのか。
もちろん重要です。
しかし、低い土地ではもう一つ見たい情報があります。
浸水継続時間です。
高潮や洪水の浸水想定では、0.5m以上の浸水がどの程度続くかを示した図が公表されている地域があります。
数時間で水が引く想定なのか。
1日以上続くのか。
数日間残る可能性があるのか。
では、生活への影響が大きく違います。
床を高くすることで建物への浸水を抑えられても、周辺道路が何日も冠水すれば、車で出入りできなくなる可能性があります。
土地購入時には、
「家の床まで水が来るか」
だけでなく、
「浸水したとき、その場所で生活を続けられるか」
まで考えます。
堤防がある土地では「守られている」と「リスクがない」を分ける
干拓地や海岸低地では、堤防・防潮堤などによって地域が守られていることがあります。
これは重要な防災施設です。
ただし、高潮浸水想定区域図は、想定最大規模の高潮に対し、堤防等が決壊する条件を含めて作成されるものがあります。
つまりハザードマップの大きな浸水想定は、
「普段からこの水深になる」
という予測ではありません。
一方で、
「堤防があるので浸水想定を見る必要がない」
という意味でもありません。
土地購入では、
現在どのような防潮・河川施設があるのか
と、
それらを超える、越流する、決壊するなどの場合に何が起こる想定なのか
を分けて見ます。
ハザードマップの前提条件まで確認すると、色だけを見るより意味が分かりやすくなります。
埋立地なら高潮を気にしなくてよいわけではない
埋立地は、一般に水面へ土を入れて陸地を作ります。
そのため、水を抜いて造成する干拓地より高く作られている土地があります。
しかし、
埋立地
=
高潮に強い
という決まりではありません。
購入候補地の高さが十分か。
海岸・河口・湾奥のどこに位置するのか。
周辺の防潮施設はどうなっているのか。
現在の高潮浸水想定に入っているか。
を確認します。
同じ「埋立地」という分類でも、造成された年代や高さ、場所はそれぞれ違います。
土地の成り立ちを知ったあと、現在の土地条件へ進みます。
干拓地と埋立地を「どちらが安全か」で比較しすぎない
インターネットで調べると、
「埋立地は干拓地より高いため安全」
という説明を見ることがあります。
土地の一般的な成り立ちを説明するうえでは、一つの違いです。
しかし、実際の住宅購入をその順位だけで決めるのは適切ではありません。
例えば、
海面より低い干拓地だが、防潮・排水施設が整備されている土地。
海面より高い埋立地だが、高潮浸水想定区域に入っている土地。
では、土地名称だけから一方を安全とは決められません。
さらに埋立地では液状化という別の問題があります。
「干拓地か埋立地か」は最初の分類として使い、その後は候補地ごとのハザード情報へ進みます。
液状化は高潮とは別に確認する
干拓地・埋立地を調べると、液状化という言葉も出てきます。
液状化は、大地震の際、地下水位が高く緩い砂質地盤などが液体のような状態になる現象です。
高潮とは別の災害です。
高潮浸水想定が小さいから液状化もしにくい。
液状化対策をしたから高潮も大丈夫。
という関係ではありません。
国土地理院は、盛土地・埋立地を液状化被害を受けやすい代表的な地形に挙げています。
地震本部も、埋立地・干拓地・旧河道などを液状化が発生しやすい場所の例としています。
土地購入前なら、
水害
→洪水・内水・高潮
地震
→液状化
を別々に確認します。
埋立地は「何を埋めたか」「いつ造成したか」も地盤側では確認する
埋立地の地盤は、すべて同じではありません。
埋め立てに使用された材料。
造成方法。
造成された年代。
地下水位。
地盤改良の有無。
などによって条件が変わります。
国土交通省も、同じ埋立地であっても、埋立材料や標高、地下水位などによって液状化の発生傾向が異なることを示しています。
そのため、
「この地域は埋立地なので全部同じ地盤」
とは考えません。
住宅を建てる場合には、ハザードマップによる地域レベルの確認と、実際の敷地の地盤調査を分けて行います。
現在の標高は周囲との高低差まで見る
高潮・内水を考えるとき、標高○mという数字だけを見るより、周囲との位置関係も重要です。
例えば同じ標高2mでも、
周囲が標高4mで自分の土地だけ低い。
周囲もほぼ2mで平坦。
前面道路より敷地が50cm高い。
前面道路より敷地が低い。
では、大雨時の水の動きが違います。
地理院地図では標高を確認できます。
現地では、
道路から土地へ上がるのか、下がるのか。
隣地から水が流れ込む形ではないか。
側溝はどこへ流れるのか。
近くに排水路・河川があるか。
も確認します。
「海抜○m」という一つの数字で購入可否を決めない方がよいでしょう。
ハザードマップが白でも地形分類を確認する意味がある
高潮ハザードマップや洪水ハザードマップで候補地に色が付いていない場合、それは購入判断にとって重要な情報です。
ただし、それだけで過去の土地の成り立ちまで消えるわけではありません。
国土地理院の地形分類では、現在の市街地でも、
干拓地。
盛土地・埋立地。
旧河道。
後背低地。
海岸平野・三角州。
などを確認できる場合があります。
ハザードマップと地形分類は役割が違います。
ハザードマップで現在想定されている災害を見る。
地形分類で、その土地がどのようにできたかを見る。
両方を重ねて、
「なぜここには色が付いているのか」
「なぜ干拓地なのに現在の浸水想定は小さいのか」
まで考えると、土地を理解しやすくなります。
海岸から離れていても川沿いなら高潮を確認する
高潮による海面の上昇は、河川にも影響します。
海岸から離れた土地でも、高潮の影響を受ける河川沿いでは浸水想定区域に入ることがあります。
そのため沿岸部の土地では、
海との距離
だけでなく、
近くの川がどこへ流れているか
も確認します。
特に低平な土地では、川を通じて高潮の水位上昇の影響を受ける可能性があります。
地図上で海が遠く見えることを理由に、高潮ハザードマップを確認対象から外さない方がよいでしょう。
「建物を高くする」で解決できる範囲を分ける
浸水リスクがある土地では、
基礎を高くする。
盛土する。
1階の床を高くする。
電気設備を高い位置にする。
といった住宅側の対策が考えられます。
ただし、これらもすべてを解決する対策ではありません。
建物への浸水を減らせても、
敷地内の車。
前面道路。
周辺道路。
下水・電気などのインフラ。
まで同時に守れるとは限りません。
特に干拓地など広い低地では、一軒だけ土地を高くしても、周辺地域全体の浸水状況は変わりません。
住宅対策を検討するときも、
家に水を入れない対策
と、
地域が浸水したときの生活への影響
を分けます。
購入価格が安い理由を「干拓地だから」で終わらせない
沿岸低地の物件を探すと、同じ市内の高台より土地価格が低い場合があります。
そこで、
「干拓地だから安い」
と単純に考えるのではなく、購入後にかかる可能性がある費用まで確認します。
地盤改良。
基礎や床のかさ上げ。
外構の排水対策。
止水板などの浸水対策。
火災保険の水災補償。
液状化への対応。
こうした費用やリスクを含めても、立地・広さ・価格に魅力があるのかを判断します。
安い土地を避けるための調査ではありません。
購入価格だけでは分からない条件を、契約前に見えるようにするための調査です。
購入前は「干拓地・埋立地」を4つに分けて確認する
干拓地・埋立地と分かったら、一つの危険度にまとめず、次の4方向へ分けます。
水害
:洪水・内水・高潮・津波の浸水想定。
土地の高さ
:標高、道路・周辺宅地との高低差、堤防との関係。
水の逃げ方
:排水路、排水機場、浸水継続時間など。
地盤
:地盤調査、液状化、造成履歴、埋立材料など。
例えば、
高潮浸水深は小さい
↓
でも液状化リスクは高い
という土地もあります。
反対に、
地盤改良で建物を支えられる
↓
でも高潮時には周辺道路が長時間浸水する
ということも考えられます。
一つの対策ができたから、残りのリスクも解消したとは判断しません。
まとめ
干拓地・埋立地だからという理由だけで、住宅用地として購入してはいけないとは言えません。
ただし両者を同じ土地として考えるのも適切ではありません。
干拓地は、水面を堤防で区切り水を抜いてできた土地で、一般に低いため、洪水・内水・高潮に加えて水が長く残る可能性まで確認する意味があります。
埋立地は水面へ土を入れて造成した土地ですが、高さが十分でなければ高潮・浸水のリスクがあり、液状化についても別に確認します。
土地購入前には「干拓地か埋立地か」で結論を出すのではなく、現在の標高、高潮・洪水・内水の浸水想定、浸水継続時間、排水、液状化を候補地ごとに確認します。
土地の成り立ちは購入をやめる理由ではなく、「この土地では何を詳しく調べるべきか」を知る入口として使うのがよいでしょう。