車両保険なしで車が水没した|修理・売却・廃車のどれを選ぶ?

大雨で車が水没した。

ところが自動車保険を確認すると、車両保険を付けていなかった。

この場合、最も困るのが、

「自費で直すのか」

「水没したまま売るのか」

「もう廃車にするのか」

という判断です。

車両保険がなければ、洪水で壊れた自分の車の修理代を車両保険から受け取ることはできません。自賠責保険も自分の車の修理代を補償する保険ではありません。 (損保ジャパン)

だからこそ、水没車では最初から修理を決めないことが重要です。

修理見積、水没したままの買取査定、廃車した場合に残る金額。

この3つをそろえてから決めます。

まずエンジンをかけず、修理できる状態か確認してもらう

修理・売却・廃車を考える前に、車の状態を確認する必要があります。

ただし、自分でエンジンをかけて確認してはいけません。

水に浸かった車は、外観上問題がなくても電気系統のショートや火災が起きる可能性があります。

国土交通省と国民生活センターはいずれも、水が引いた後でも自分で始動せず、販売店や整備工場へ相談するよう案内しています。 (国土交通省)

まず専門家に状態を見てもらい、

「修理可能なのか」

「どこまで交換が必要なのか」

「修理総額はいくらなのか」

を出してもらいます。

この修理見積が、3つの選択肢を比べる基準になります。

車両保険がなくてもレッカー代まで自費とは限らない

車両保険がないと、

「販売店へ運ぶレッカー代も全部自分で払う」

と思うかもしれません。

しかし、車両保険とロードサービスは別です。

自動車保険の商品によっては、車両保険に加入していなくてもロードサービスが付いています。

そのため自費でレッカーを手配する前に、加入中の自動車保険、JAF、販売店のロードサービスを確認します。

車両保険なしというのは、主に水没した自分の車の損害を補償する車両保険金が出ないということです。

搬送費まで必ず自己負担になるという意味ではありません。

修理するかどうかは「修理できるか」ではなく「自費で直す価値があるか」

例えば販売店から、

「修理すれば乗れます」

と言われたとします。

それだけでは修理を選ぶ理由にはなりません。

車両保険がなければ、その修理代は基本的に自分で用意することになります。

そこで考えたいのが、

その金額を払って、何年その車に乗るつもりなのか

です。

比較的新しい車で、修理後も長期間乗る予定なら、高額な修理でも選択肢になる場合があります。

一方、もともと数年以内に買い替える予定だった車へ大きな修理費を入れるなら、話は変わります。

水没歴は、修理が終わっても車の経歴から消えるわけではありません。

中古車査定でも冠水歴は商品価値を大きく下げる要素として扱われています。 (日本人工知能学会)

つまり修理費100万円をかけたからといって、

「水没前と同じ価値の車が100万円で戻ってくる」

とは限らないということです。

近いうちに売るつもりなら修理後の査定低下まで考える

修理するか迷ったら、今後の所有期間を考えます。

あと5年、10年と乗り続けるつもりなら、将来の売却価格より「今の車を直して使える期間」の方が重要になります。

しかし、1~2年で売る予定なら、水没歴による査定低下を無視できません。

日本自動車査定協会の基準では、冠水車についてフロアまでの浸水で50%、クッション上部以上で70%という特別減点の目安が設けられています。

これは実際の買取価格が必ず50%・70%下がるという意味ではありません。

ただし、水没歴が中古車として大きなマイナス評価になることは分かります。

近いうちに買い替える予定なのに、高額な修理代を払ってから値下がりした車を売るなら、

「最初から水没したまま手放した方が損失が小さかった」

ということもあります。

修理する前に「水没したままの査定額」を取る

そこで、修理を依頼する前にやっておきたいのが現状査定です。

一般の中古車買取店だけでなく、水没車・事故車・不動車を扱う業者にも、

「このままならいくらで買い取れるか」

を確認します。

水没車だからといって、必ず価値が0円になるわけではありません。

走行できない状態でも、

使える部品。

エンジンや駆動部品。

金属資源。

海外向け需要。

などによって買取価格が付くことがあります。SERPでも、水没車の現状買取を扱う事業者が多数確認できました。 (オリコン顧客満足度ランキング)

ここで重要なのは、修理してから査定するのではないことです。

修理前の査定額を先に知ります。

そうすれば、

修理する。

現状で売る。

の2つを金額で比較できます。

修理費をかけても査定額が同じだけ上がるとは限らない

例えば水没したままなら30万円で売れる車があるとします。

修理費は80万円。

修理後なら100万円で売れると仮定します。

この場合、

80万円をかけて70万円査定を上げることになります。

売却するためだけに修理するなら、差額だけを見ると割に合いません。

一方で、80万円かけて修理したあと5年以上乗るのであれば、単純な売却額だけでは判断できません。

つまり、

修理して乗る

のと、

修理してから売る

は分けて考えます。

水没車では、売却価格を上げるためだけに高額な修理を先に行うのは慎重に判断した方がよいでしょう。

売却と廃車は同じではない

「もう修理しない」と決めても、

売却。

廃車。

の2つがあります。

売却は、車両そのものを買い取ってもらう方法です。

水没車を扱える業者なら、中古車として再利用するだけでなく、部品や資源として価値を付ける場合があります。

一方、廃車は車を解体し、永久抹消登録などを行って車としての登録を終わらせる方法です。

実際には「廃車買取」のように、

車を業者へ売却する。

その業者が解体する。

永久抹消手続まで代行する。

という両方を組み合わせたサービスもあります。

ですから名称ではなく、

最終的に自分の手元へいくら残るか

で比較します。

「0円査定だったから廃車」にする前に別の査定も取る

一般的な中古車店で、

「水没車なので0円です」

「処分費が必要です」

と言われることがあります。

しかし、その時点で廃車を決める必要はありません。

中古車として販売できない車でも、部品・資源としての価値が残っている場合があります。

そのため、

通常の買取店。

事故車・水没車を扱う業者。

廃車・解体を扱う業者。

で条件が変わることがあります。

比べるときは表示された「買取価格」だけではなく、

レッカー代。

手続代行費。

解体費。

その他の手数料。

を差し引いた最終受取額を確認します。

5万円で買う業者でも引取費が3万円なら手取り2万円です。

3万円買取でも引取・手続が無料なら、後者の方が手元に残ることがあります。

売却するなら水没した事実を査定時に伝える

水没歴は査定に大きく影響します。

自動車公正取引協議会では、冠水車を「室内フロア以上に浸水したもの、またはその痕跡によって商品価値の下落が見込まれるもの」とする査定基準を紹介しています。

また、中古車販売時には冠水車であることを隠す表示を問題としています。

したがって査定を依頼するときは、

いつ水没したか。

どこまで水が来たか。

車内へ水が入ったか。

始動したか。

淡水か海水か。

分かる範囲で正確に伝えます。

水没の事実を隠して高く査定してもらうのではなく、水没車として条件を比較します。

売却額が付かないなら廃車を比較する

複数の査定を取っても、

買取額が付かない。

引取費用を差し引くとマイナスになる。

修理する予定もない。

のであれば、解体・永久抹消を検討します。

永久抹消登録は、自動車をリサイクル事業者へ引き渡して適正に解体した場合に行う手続です。

登録車については、永久抹消登録を行うことで自動車税の未経過分が月割で還付される仕組みがあります。

また、適正に解体し、車検の残存期間が1か月以上ある場合には、永久抹消登録等と同時に申請することで自動車重量税の未経過分について還付を受けられる制度があります。 (東京税務署)

したがって廃車側も、

「買取0円」

だけでは計算できません。

税金の還付や業者から受け取れる解体車の価値まで含めます。

売却と廃車では税金の扱いも違う

登録車の場合、単純な名義変更による売却では、その年度の自動車税が自動的に月割還付されるわけではありません。

一方、抹消登録を行えば、抹消した月の翌月以降分が月割で還付されます。 (愛知県公式サイト)

また、自動車重量税の廃車還付は、車を単純に売却しただけでは受けられず、適正に解体して永久抹消登録・解体届出と同時に還付申請することが条件です。 (国税庁)

そのため売却先から提示された金額を見るときは、

「自動車税相当額は買取価格に含まれていますか」

「この車は名義変更ですか、永久抹消ですか」

「重量税還付がある場合は誰が受け取りますか」

まで確認しておくと、比較しやすくなります。

修理・売却・廃車は3つの数字で比べる

車両保険がない水没車では、次の3つを実際に出してもらうと判断しやすくなります。

修理を選ぶなら、販売店・整備工場から「修理総額」。

売却を選ぶなら、水没した現在の状態での「最終買取額」。

廃車を選ぶなら、「解体車の買取額+受け取れる還付-引取・手続費用」です。

例えば、

修理総額70万円。

現状売却25万円。

廃車した場合の最終手取り8万円。

だったとします。

この場合、修理するということは、

「25万円で手放せる車に、さらに70万円を自己資金で投入して乗り続ける」

選択とも考えられます。

それでも今の車を長く使いたいなら修理には意味があります。

反対に、もともと買い替え時期が近かったなら、25万円で売って次の車の資金に回す方が合理的かもしれません。

重要なのは、

「70万円なら高い」

「25万円なら安い」

と数字を単独で見ないことです。

修理を選びやすいのは「今の車を長く使う」場合

車両保険なしでも、修理が間違いというわけではありません。

比較的新しい車である。

修理範囲が限定的である。

整備工場が修理後の安全性を確認できる。

今後長期間乗り続ける予定である。

同等の車を買い直すより修理した方が負担が小さい。

こうした条件なら修理を選ぶ意味があります。

反対に、

高額な電装系交換が必要。

今後さらに不具合が出る可能性を否定できない。

近いうちに売却予定。

修理費に近い金額で別の車を用意できる。

という状況なら、売却・廃車側も強く比較した方がよいでしょう。

売却を選びやすいのは「価値は残っているが自費修理は重い」場合

現状でも買取価格が付き、一方で修理見積が高い。

この場合は売却が有力になります。

特に車両保険がないと、修理費を補填する保険金がありません。

例えば100万円の修理費を自腹で払い、その後も冠水歴のある車として査定されるのであれば、

「その100万円を次の車へ使う」

という選択肢も比較する価値があります。

水没車を扱う業者から現状査定を取れば、

「壊れた車を捨てる」

ではなく、

「残っている価値を次の車へ移す」

という判断ができます。

廃車を選びやすいのは「修理も売却も数字が合わない」場合

廃車を選ぶのは、

水没したから。

エンジンがかからないから。

だけではありません。

修理するには費用が大きすぎる。

現状買取でもほとんど値が付かない。

今後使用する予定もない。

解体・抹消した方が還付を含めた最終手取りが有利。

というところまで確認してからです。

つまり廃車は、

「動かない車の行き先」ではなく、修理と売却を比較した後の第三の選択肢

と考えた方が損をしにくくなります。

車両保険なしなら「直すか捨てるか」の二択にしない

車両保険がない状態で車が水没すると、

「全額自腹で修理するしかない」

「払えないから廃車にするしかない」

という二択になりがちです。

しかし、その間に「水没した状態のまま売る」という選択肢があります。

だから順番は、

まず始動しない。

専門家から修理見積を取る。

同時に水没した状態の査定を取る。

修理と現状売却を比較する。

売却条件が悪ければ廃車時の手取りまで確認する。

です。

車両保険がない場合ほど、

修理見積だけを見て決めないこと

が重要です。

修理総額。

水没車の現状査定。

廃車時に最終的に残る金額。

この3つをそろえれば、

「修理できるか」ではなく、

「自分のお金をどこに使うのが一番合理的か」

で判断できます。

出典

国土交通省|浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ
国土交通省の資料を開く

国民生活センター|車が水没した。水が引けば通常通り使用できるのか
国民生活センターの資料を開く

日本損害保険協会|自動車保険
日本損害保険協会の資料を開く

自動車公正取引協議会|「冠水車」に関するトラブルが増加しています
自動車公正取引協議会の資料を開く

日本自動車査定協会|中古自動車査定基準及び細則
日本自動車査定協会の資料を開く

国税庁|使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度
国税庁の資料を開く

国土交通省|永久抹消登録、解体届出
国土交通省の資料を開く