盛土と高基礎はどちらを選ぶ?水害リスクのある土地で比較する

水害リスクのある土地に新築するとき、

「土地を盛土して高くした方がいいのか」

「家だけ高基礎にした方が安く済むのか」

と迷うことがあります。

どちらも、住宅の床を水面から遠ざける方法です。

ただし、守れる範囲が違います。

盛土は、土を入れて宅地そのものを高くします。

高基礎は、宅地の高さを大きく変えず、建物の基礎を通常より高くして1階床を上げます。

そのため、水害対策として考えるなら、

盛土と高基礎のどちらが優秀か

ではなく、

家の床だけを守りたいのか。

駐車場や車も守りたいのか。

敷地へ水そのものを入れにくくしたいのか。

を先に決める必要があります。

盛土と高基礎は「高さを作る場所」が違う

例えば道路面を基準に考えます。

現在の土地が道路とほぼ同じ高さだったとします。

50cm盛土すれば、建物だけでなく宅地そのものが道路より50cm高くなります。

一方、土地はそのままで基礎を50cm高くしても、1階床は高くなりますが、庭や駐車場は元の高さのままです。

つまり、

盛土
→水に対して土地を逃がす

高基礎
→水に対して建物を逃がす

という違いがあります。

国土交通省も、盛土による宅地のかさ上げと、建築構造を工夫する方法を、浸水被害を軽減する別々の方策として扱っています。

家の中を守ることが中心なら高基礎でも対応できる場合がある

例えば候補地について、

道路冠水は浅い。

敷地自体の排水には大きな問題がない。

車や庭が一時的に水につくことは一定程度許容する。

しかし1階の床上浸水はできるだけ避けたい。

という条件なら、高基礎は検討しやすい方法です。

土地全体へ大量の土を入れなくても、1階床を想定する水位より高い位置へ持っていける可能性があります。

住宅生産団体連合会の「住宅における浸水対策の設計の手引き」でも、盛土と高基礎は住宅の浸水対策案として扱われています。さらに設備の高所配置、開口部への止水板などを組み合わせる設計例が示されています。(住宅生産団体連合会)

つまり、高基礎だけですべてを解決するのではなく、

床を上げる。

給湯器等を上げる。

分電盤等を高くする。

玄関・掃き出し窓などの水の入口を守る。

という建物側の対策を組み合わせます。

車や駐車場まで守りたいなら盛土の意味が大きくなる

高基礎で1階床を1m近く高くしても、駐車場が道路と同じ高さなら車は高くなりません。

例えば大雨で道路と駐車場へ40cmの水が来た場合、

住宅の1階床
→無事

車
→浸水する可能性

庭・物置
→浸水

となることがあります。

一方、敷地全体を50cm盛土できれば、駐車場も同じ高さを確保できる計画にできる可能性があります。

したがって、

住宅内部だけではなく車も守りたい。

屋外の蓄電池や給湯設備も守りたい。

庭や物置への浸水も減らしたい。

という場合には、盛土側のメリットが大きくなります。

ただし盛土しても駐車場を下げれば効果は消える

ここは新築で注意したいところです。

例えば敷地を道路より80cm盛土したとします。

しかし道路から車を入れるため、

建物部分 道路+80cm

駐車場 道路+10cm

という外構にする場合があります。

すると、住宅部分には80cmの高さがありますが、車には10cmしかありません。

つまり、

「80cm盛土した家」

だから敷地全体が80cm守られているわけではありません。

盛土と高基礎を比較するときも、宅盤の代表的な高さではなく、実際の一番低い水の入口を確認します。

高基礎では敷地の排水問題は残る

これが盛土と高基礎を分ける重要なポイントです。

例えば候補地が、

道路より30cm低い。

隣地よりも低い。

雨水を自然勾配で前面側溝へ流しにくい。

という土地だったとします。

高基礎にして1階床を1m上げれば、家の中への浸水は避けやすくなります。

しかし土地そのものは低いままです。

そのため、

庭へ雨がたまる。

駐車場へ水がたまる。

道路から敷地へ水が入る。

敷地内の雨水を自然排水できない。

という問題は残る可能性があります。

建築基準法19条も、敷地内の雨水・汚水を排出・処理するための施設を設けることを求めています。出水のおそれの多い土地では、盛土・地盤改良その他必要な措置を講じることも規定されています。(e-Gov 法令検索)

高基礎は床高を確保する方法であって、低い敷地の排水能力そのものを改善する方法ではありません。

道路より土地が低いなら盛土を先に検討する理由がある

例えば現在の宅地が前面道路より50cm低いとします。

この状態で高基礎だけを採用すると、

道路
↓50cm
敷地
↑高基礎
1階床

という構成になります。

建物は高くできます。

しかし道路に水がたまれば、その水は低い敷地側へ入りやすいままです。

そこで、

まず盛土して宅地を道路付近まで上げる。

そのうえで必要な床高を高基礎で確保する。

という組み合わせも考えられます。

盛土か高基礎かを二択にする必要はありません。

「盛土+高基礎」の方が合理的な土地もある

例えば1mの高さを確保したい場合、

土地全体を1m盛土する。

基礎だけ1m高くする。

だけが選択肢ではありません。

例えば、

盛土40cm
+
高基礎60cm相当

のように高さを分担する方法も考えられます。

実際の高さや構造は建築士・住宅会社による設計が必要ですが、水害対策の考え方としては、

敷地側でどこまで上げるか。

建物側でどこまで上げるか。

を分けられます。

住宅生産団体連合会の設計例でも、盛土と高基礎を組み合わせたケースが扱われています。(住宅生産団体連合会)

二者択一より、目標とする水防ラインを最も無理なく作れる組み合わせを考える方が現実的です。

盛土が大きくなると擁壁・隣地との関係が出てくる

盛土は敷地全体を守りやすくなる一方、大きく上げるほど土地側の工事が増えます。

例えば隣地と同じ高さだった土地を1m上げれば、新たな高低差ができます。

すると、

盛った土をどう保持するか。

擁壁・土留めが必要か。

雨水を隣地へ流さないか。

道路から車をどう乗り入れるか。

盛土後の地盤をどう安定させるか。

といった確認が必要になります。

擁壁について国交省も、亀裂、変形、水抜きなどの状態によって宅地地盤へ影響するため、健全度を確認するためのマニュアルを設けています。(国土交通省)

「土を1m入れるだけ」とは考えない方がよいでしょう。

盛土規制法は高さだけで判断しない

盛土量が大きくなる場合には、盛土規制法も確認します。

愛知県では2025年5月9日から、政令指定都市・中核市を除く地域で盛土規制法に基づく規制区域を指定し、運用しています。岡崎市などの中核市は市が所管します。(愛知県公式サイト)

宅地造成等工事規制区域では、例えば盛土によって高さ1mを超える崖を生じる場合や、崖を生じなくても盛土高さが2mを超える場合、一定面積を超える造成などが許可対象になります。したがって「50cmなら不要」「1mなら必ず許可」のように高さだけで判定するものではありません。(愛知県公式サイト)

水害対策として盛土を大きく変更する場合は、造成計画が具体化した段階で確認します。

高基礎なら盛土規制の問題がなくなる、とは限らない

高基礎は大量の盛土を避けやすい方法ですが、それでも土地を全く造成しないとは限りません。

駐車場。

玄関アプローチ。

建物周囲。

道路との接続。

などを整えるため、部分的な盛土・切土が必要になる場合があります。

また建物そのものの高さが上がれば、敷地条件によっては斜線制限など建築物高さに関する確認が必要になる場合もあります。

住宅生産団体連合会の設計例でも、高基礎化によって高度斜線との関係が生じ、建物配置を変更したケースが示されています。(住宅生産団体連合会)

「高基礎なら法規制を考えなくてよい」という選択ではありません。

高基礎と深基礎は同じ意味ではない

検索すると、「高基礎(深基礎)」と同じ意味のように説明している記事があります。

しかし一般には区別して使われます。

高基礎は、通常より地盤面から上に見える基礎部分を高くし、床を上げる考え方です。

深基礎は、高低差のある敷地などで基礎を通常より地中深くまで設ける方法を指します。

今回、水害対策として比較しているのは基本的に「盛土」と「高基礎」です。近年の住宅会社の記事でも両者を別の構造として説明しています。(横浜市・川崎市で注文住宅なら大栄建設|心も、体も、澄み渡る)

土地の高低差によって深基礎も必要になる場合はありますが、単純に「高基礎=深基礎」と読み替えない方がよいでしょう。

高基礎でも基礎まで水が来れば対策は必要

高基礎にして1階床を水面より高くしても、基礎部分まで水が来る可能性はあります。

その場合、

基礎換気部分。

配管等の貫通部。

基礎の打継ぎ部分。

玄関。

掃き出し窓。

などが水の侵入口にならないかを確認します。

住宅生産団体連合会の浸水対策手引きでも、高基礎とともに換気口対策、開口部の止水、設備の高所設置などを組み合わせています。(住宅生産団体連合会)

「床が高ければ家全体が防水される」という意味ではありません。

深い洪水想定では盛土と高基礎の二択自体を見直す

例えば想定浸水深が0.5m未満程度の土地なら、

盛土。

高基礎。

止水。

設備高所化。

などで被害を小さくできる可能性があります。

一方、2m・3mといった深い浸水が想定される土地ではどうでしょうか。

宅盤を50cm盛っても、高基礎を50cm追加しても、それだけで住宅全体を水から守ることはできません。

国総研も、洪水・津波・土砂災害などでは、戸建て住宅側の対策だけで生命・財産を確保することが困難な場合があると注意しています。(国土交通省国土技術政策総合研究所)

この場合は、

そもそも別の土地を選ぶ。

2階以上に安全な避難空間を設ける。

重要設備を高所へ配置する。

水災補償を確認する。

避難経路を確保する。

といった別の判断まで必要になります。

盛土対高基礎という比較だけで終わらせません。

比較するなら「床上浸水」だけでなく5つに分ける

盛土と高基礎は、守れる対象を分けると違いが見えます。

守りたいもの・条件盛土高基礎
1階床高くできる高くできる
駐車場・車敷地全体を上げれば守りやすい原則として高さは変わらない
庭・物置高くできる原則として高さは変わらない
道路から敷地への流入宅盤を上げれば抑えやすい敷地への流入自体は残る
低い敷地の自然排水高さを調整できる原則として敷地高は変わらない
必要な土量多くなりやすい抑えやすい
擁壁・土留め高低差次第で必要盛土より抑えられる場合がある
玄関までの段差生じる生じる
建物高さへの影響建物全体が高くなる床・建物が高くなる
盛土規制法規模・形状によって確認造成を伴えば確認

水害だけを見るなら、

敷地全体を高くできる盛土の方が守れる範囲は広い

といえます。

しかし、その分、土地造成への影響も大きくなります。

高基礎は守る範囲を建物へ絞る代わりに、造成量を抑えられる可能性があります。

「車を守るか」で結論が変わりやすい

例えば浅い内水が想定される土地で、

1階床さえ無事ならよい

なら高基礎の合理性があります。

しかし郊外で車が生活必需品なら話が変わります。

家は高基礎で床上浸水を免れた。

しかし駐車場は50cm冠水し、2台とも水没した。

では、生活への損失は小さくありません。

水害前ラボで土地購入を考えるなら、

建物。

車。

屋外設備。

避難・生活道路。

を別々に考える必要があります。

「高基礎にすれば家は大丈夫」だけで判断しない方がよいでしょう。

盛土を選びやすい土地・高基礎を選びやすい土地

盛土を検討する意味が大きいのは、

道路より敷地そのものが低い。

敷地の排水勾配を改善したい。

庭や駐車場もできるだけ高くしたい。

浅い道路冠水から敷地全体を遠ざけたい。

という土地です。

一方、高基礎を検討しやすいのは、

現在の宅盤・排水条件には大きな問題がない。

住宅の床上浸水を中心に防ぎたい。

敷地全体を盛ると擁壁や土量が大きくなる。

駐車場等の一時浸水は別対策で考えられる。

という土地です。

ただしこれは一般的な方向性です。

実際には、地盤・敷地面積・道路・隣地・高さ制限・想定浸水水位を踏まえた設計が必要です。

購入前なら「盛土案」と「高基礎案」を同じ断面図で比べる

土地購入前に住宅会社へ相談できるなら、

「盛土と高基礎、どちらが安いですか」

だけではなく、2案を同じ断面図にしてもらうと分かりやすくなります。

例えば、

前面道路。

現在地盤。

造成後地盤。

駐車場。

基礎。

1階床。

給湯器などの設備。

を同じ高さの基準で表示します。

さらに想定する内水・洪水の水位を重ねます。

すると、

盛土50cm案なら車まで高くできる。

高基礎50cm案なら住宅床は同程度まで上げられるが駐車場は低い。

盛土+高基礎案なら造成量を減らしながら床高を確保できる。

といった違いを実際の土地で比較できます。

金額もその断面に対応した見積りで比べます。

まとめ

盛土と高基礎は、どちらも水害リスクのある土地で住宅の床を高くする方法です。

ただし、守れる範囲が違います。

盛土は宅地そのものを高くするため、建物だけでなく駐車場・庭なども水面から遠ざけやすく、道路からの雨水流入や敷地の排水条件を改善できる場合があります。

高基礎は土地を大きく変えずに1階床を高くできる一方、庭・駐車場・敷地内への浸水や低い土地の排水問題は残ります。

そのため、

盛土と高基礎のどちらが水害に強いか

ではなく、

何を浸水させたくないか

から選びます。

建物だけなら高基礎。

車・庭も含めるなら盛土を検討。

土地造成量を抑えながら床高も確保したいなら、盛土と高基礎の併用。

というように、想定水位と守る対象から高さを配分するのが考えやすい方法です。

深い洪水が想定される土地では、どちらか一つの工法だけで安全にできるとは考えず、立地そのものや避難・設備配置まで含めて判断します。

出典

国土交通省|宅地のかさ上げ、ピロティ建築等

国土交通省|宅地嵩上げについて

一般社団法人住宅生産団体連合会|住宅における浸水対策の設計の手引き

一般社団法人住宅生産団体連合会|住宅における浸水対策の設計の手引き作成について

e-Gov法令検索|建築基準法 第19条「敷地の衛生及び安全」

国土技術政策総合研究所|住宅と災害に関するよくある質問

愛知県|愛知県における規制区域(盛土規制法)

愛知県|盛土規制法における許可申請等の手続