家を嵩上げするなら駐車場も上げる?車だけ水没するのを防ぐ

水害が気になる土地に新築するとき、住宅部分を盛土したり、高基礎にしたりして1階床を高くすることがあります。

そこで見落としたくないのが駐車場です。

例えば、

家の宅盤は道路より50cm高い。

1階床はさらに高い。

ところが駐車場は、車を道路から入れやすくするため道路とほぼ同じ高さ。

という住宅は珍しくありません。

この場合、大雨で道路が冠水しても家の中には水が入らない一方、駐車場には水が入り、車だけが浸水することがあります。

家を水害から守る高さと、車を水害から守る高さは同じではありません。

新築時には、

住宅の宅盤。

1階床。

駐車場。

前面道路。

を別々の高さとして確認します。

家を嵩上げしても駐車場は低いままになることがある

敷地を水害対策で嵩上げすると聞くと、土地全体が一様に高くなるイメージがあります。

実際には、車を道路から入れる必要があります。

例えば宅盤を道路より80cm上げたとして、駐車場まで80cm高くすると、道路から短い距離で80cm上らなければなりません。

土地の奥行きが十分あれば緩やかな勾配を取れる場合もあります。

しかし敷地が狭ければ、

住宅部分 道路+80cm

駐車場 道路+10cm

玄関 道路+100cm

というように、駐車場だけ低くする設計になることがあります。

住宅は高い。

でも車は道路とほぼ同じ高さ。

これが「家は無事でも車だけ水没する」条件です。

まず道路・駐車場・宅盤・床を4本の高さに分ける

新築計画では高さを一つの数字で見ない方が分かりやすくなります。

例えば前面道路を0cmとします。

駐車場 +10cm

住宅宅盤 +50cm

1階床 +100cm

だったとします。

大雨で道路上に30cmの水がたまり、その水位が敷地周辺まで及ぶとします。

住宅の1階床にはまだ十分な高さがあります。

宅盤にも一定の余裕があります。

しかし駐車場は水位より低くなるため、車が浸水する可能性があります。

「家を50cm嵩上げした」という数字だけでは分かりません。

水害対策では、

道路。

駐車場。

建物宅盤。

1階床。

を同じ高さ基準で並べます。

建物が助かっても車が大きな被害対象として残る

住宅では、床が基礎や盛土によって道路より高くなっていることがあります。

そのため浅い浸水なら、建物内部まで水が入らない場合があります。

一方、屋外駐車場の車は地面に近い位置に置かれています。

国土技術政策総合研究所の水害リスク評価でも、建物を嵩上げしたため屋内資産の浸水リスクが低い一方、自家用車や自転車など屋外資産のリスクが相対的に高く残る住宅事例が示されています。

新築時に、

家だけ守ればよい

と考えると、ここが抜けます。

住宅内部。

車。

屋外設備。

を別の財産として考えます。

敷地全体を上げれば車も水から遠ざけやすい

車まで守る方向では、駐車場を含めて敷地全体を嵩上げする方法があります。

建築研究所も、敷地全体の嵩上げについて、住宅内部だけでなく駐車場の自動車など屋外の資産を守れる方法として整理しています。

例えば、

道路±0cm

駐車場+40cm

住宅宅盤+50cm

とすれば、駐車場を道路と同じ高さにした住宅より、道路から入る浅い水に対して高さを確保できます。

新潟市では現在も、浸水被害が発生した、または発生するおそれがある区域の住宅について「駐車場かさ上げ工事助成制度」を設けています。

駐車場そのものを高くすることが、車庫浸水等を軽減する一つの方法として実際に採用されている例です。

ただし駐車場を家と同じ高さにする必要はない

ここで、

「家を50cm上げるなら駐車場も50cm」

と単純にそろえる必要はありません。

駐車場には車の出入りがあるからです。

道路から駐車スペースまでの距離が短ければ、高くするほど勾配が急になります。

車種によっては、

車体下面。

フロントバンパー。

エアロパーツ。

ホイールベース。

などと勾配の関係も出てきます。

また歩行者や自転車の出入りもしにくくなる場合があります。

そこで、

家と駐車場を同じ高さにするか

ではなく、

水害対策として駐車場に必要な高さを確保しながら、道路から無理なく車を入れられる高さにできるか

を設計します。

駐車場を何cm上げれば車が安全、という全国共通値はない

30cm上げる。

50cm上げる。

1m上げる。

どれにも水害対策として高さを増やす意味はあります。

しかし、

駐車場+30cmなら安全。

+50cmなら車は水没しない。

という全国共通基準はありません。

土地によって想定する水位が違うからです。

例えば大雨時の道路冠水が10~20cm程度を想定する土地と、洪水で1m以上の浸水が想定される土地では、必要な対策がまったく違います。

考える順番は、

駐車場を何cm上げる?
↓
ではありません。

どこまで水が上がる可能性がある?
↓
その水面より車をどこまで高い位置へ置ける?

です。

ハザードマップ0.5mなら駐車場50cmで相殺、ではない

洪水ハザードマップで浸水深0.5mと表示されている土地を考えます。

すると、

「駐車場を50cm嵩上げすれば水深0cmになる」

と考えたくなります。

しかし、単純な引き算にはできません。

ハザードマップの浸水深は、その地形・計算条件を前提にした想定です。

自宅だけを50cm嵩上げした場合に、水面自体がそのままの高さになることを保証しているわけではありません。

周囲の地形や水の流れによっても条件は変わります。

ハザードマップは必要な高さを考える材料として使い、実際の計画では道路・敷地・駐車場の測量高さと合わせて設計します。

車種ごとに「何cmまでなら水没しない」と決めない

SUVなら車高が高い。

EVならエンジンがない。

だから多少の水は大丈夫。

という考え方も避けたいところです。

JAFは、一般的に走行可能とされる水深について、乗用車ではドア下端、つまり車の床面が水につからない程度を一つの目安としています。

しかし、これは冠水した道路へ進入してよいという基準ではありません。

実際の冠水路では水深が分からず、流れ、マンホール、側溝など別の危険があります。

JAFの冠水路試験でも、水深30cmで走り切れた車両に車内浸水や部品脱落が起きたケースがあり、水深60cmではBEVにも複数の故障警告が出ています。

駐車場設計でも、

SUVだから低くてもよい。

EVだから浸水に強い。

とは考えず、車そのものを水面より高く置く方を先に考えます。

駐車場を低く残すなら「どこまで水が来るか」を別判定する

敷地条件によって、駐車場を十分高くできないこともあります。

例えば、

建物宅盤+60cm。

駐車場+10cm。

という計画になったとします。

この場合、住宅の水害対策と車の水害対策を分けます。

住宅
→宅盤・床高で守る。

車
→浅い水は駐車場入口で防ぐ。

それを超える雨では事前に別の場所へ移す。

というように対策を組み合わせます。

駐車場を低くしたこと自体が失敗なのではありません。

低くするなら、「車の安全は別の方法で確保する」と最初から認識しておくことが重要です。

駐車場入口に高さを作る方法もある

敷地全体を高くできなくても、道路からの水を駐車場へ入りにくくする方法があります。

例えば入口へ小さなハンプを設けたり、止水板を設置したりする方法です。

国総研の戸建住宅に関する水害リスク評価事例では、建物内部より駐車場の自家用車等のリスクが高く残った住宅について、道路から約10cm高い駐車場入口へ、高さ30cm程度の止水板を設ける対策案が試算されています。

これはその住宅条件での研究上の一例であり、

「駐車場は10cm上げて30cm止水板にすればよい」

という全国基準ではありません。

重要なのは、

駐車場を全部高くする

以外にも、

入口に水防ラインを作る

という考え方があることです。

止水板があっても駐車場に降る雨は残る

駐車場入口を止水板で閉じれば、道路から来る水は減らせる可能性があります。

しかし上から降る雨は止まりません。

カーポートがあっても、横から吹き込む雨や周辺から流れてくる水があります。

そのため止水板で囲む場合には、

敷地内へ降った雨をどこへ流すのか

も必要です。

駐車場を水から守ろうとして周囲を高くした結果、内部に降った雨の出口がなくなれば、水がたまります。

止水と排水はセットで考えます。

駐車場を上げたら雨水を隣地へ流さない

駐車場を30cm、50cmと高くすると、周囲との高低差も変わります。

例えばこれまで隣地とほぼ同じ高さだった駐車場を高くし、コンクリート面を隣地方向へ傾ければ、雨水が隣地側へ流れる可能性があります。

建築基準法19条では、建築物の敷地について雨水・汚水を排出・処理するための適当な施設を設けることを求めています。

新築時には、

高くした駐車場
↓
集水ます・側溝
↓
認められた排水先

という流れまで作ります。

「水害対策で高くする」と「自分の雨水をどこへ流すか」は別問題ではありません。

駐車場を高くすると玄関アプローチとの関係も変わる

駐車場だけを単独で考えないことも重要です。

例えば、

道路±0cm。

駐車場+40cm。

玄関+90cm。

なら、車から玄関まで50cm程度の高低差が残ります。

一方、

駐車場±0cm。

玄関+90cm。

なら90cm上る必要があります。

駐車場をある程度上げることは、水害だけでなく玄関への日常動線を短くできる場合があります。

反対に、駐車場を高くしすぎれば道路との乗入れが急になります。

道路
→駐車場
→玄関

を一枚の断面図で決めます。

車2台なら2台とも同じ高さにあるとは限らない

新築の外構では、

1台目は建物横。

2台目は道路側。

来客用はさらに低い場所。

というように駐車位置が異なることがあります。

水害時には、各スペースの高さが違えばリスクも違います。

例えば、

住宅横の駐車場+40cm。

道路沿いの2台目±0cm。

なら、同じ敷地でも2台目が先に浸水します。

「駐車場の高さ」は代表点を一つ見るのではなく、実際に車を停めるタイヤ位置の高さを見ます。

家族で複数台所有する地域では、これは特に重要です。

カーポートを付けても洪水の水位は下がらない

カーポートは日常の雨や日差しを防ぐ設備として便利です。

しかし河川洪水や道路冠水で横から入ってくる水に対して、屋根が駐車場の水位を下げるわけではありません。

「屋根付きだから車は水害にも強い」ではありません。

水害を見る場合は、

屋根

ではなく、

駐車場床面の高さ。

道路からの水の入口。

排水。

止水設備。

を確認します。

カーポートと駐車場の浸水対策は分けて考えます。

車を高い位置へ移動する計画も住宅設計の一部にする

敷地条件から、駐車場を想定浸水水位より高くできないこともあります。

その場合は事前退避を考えます。

例えば、

近くの高台。

立体駐車場。

親族宅。

別の高い場所。

などです。

ただし、大雨になってから移動先を探すのでは遅い場合があります。

JAFは、水位が上がってから車で避難することは危険であり、冠水路には進入せず迂回するよう呼びかけています。

したがって、

道路が冠水したら車を動かす

ではなく、

道路が安全なうちに動かす

必要があります。

駐車場を低くするなら、退避場所と判断時点まで決めておきます。

車を守るために危険な道路へ出るのは逆効果

車は高価な財産です。

水没させたくないというのは当然です。

ただ、大雨時に道路がすでに冠水しているのに、

「車が心配だから移動しよう」

と運転を始めるのは危険です。

JAFは冠水路について、見た目では水深を判断できず、危険に気付いた時には車が動けなくなる場合があると注意しています。

住宅設計時の対策は、

車を最後まで守るために危険を冒す

ためではありません。

余裕のある段階で移動できなければ、人の安全を優先します。

車両保険は最後の層として確認する

物理的な水害対策をしても、想定を超える浸水はあり得ます。

そこで保険も確認します。

日本損害保険協会によれば、任意自動車保険で車両保険を付けている場合、契約内容によりますが、台風・洪水・高潮などによる車両損害が補償対象になるものがあります。

一方、地震・噴火・それらによる津波は一般の車両保険では扱いが異なります。

したがって、

駐車場を高くする。

止水する。

早めに移動する。

車両保険を確認する。

という複数の層を持っておく方が現実的です。

保険があるから低い駐車場のままでよいという話ではなく、残ったリスクを補う位置付けです。

駐車場まで高くした方がよい土地

駐車場の嵩上げを特に検討しやすいのは、

浅い道路冠水・内水が想定される。

前面道路から敷地へ水が入りやすい。

敷地に十分な奥行きがあり、車の乗入れ勾配を確保できる。

家だけでなく車も守りたい。

車を安全に退避できる場所が近くにない。

という土地です。

この場合は住宅部分だけを高くせず、駐車場までどこまで上げられるか検討する意味があります。

あえて駐車場を低くしてもよい土地・計画もある

反対に、

道路との距離が短く、駐車場を大きく上げると車の出入りが難しい。

駐車場以外の宅盤・建物は十分高い。

深い洪水では駐車場を多少上げても車を守り切れない。

安全な車の退避先を確保できる。

という場合は、住宅部分を優先して高くし、駐車場を低く残す判断もあり得ます。

その場合は、

駐車場は浸水する可能性がある

という前提で設計します。

排水。

止水。

車の退避。

保険。

を組み合わせます。

「駐車場が低い=設計ミス」ではありません。

そのリスクを認識して選んだかどうかが違います。

深い浸水想定なら駐車場50cmの嵩上げだけで解決しない

想定浸水深が2m、3mといった土地なら、駐車場を30cmや50cm上げても車を水面より上へ逃がせない可能性があります。

この場合、

あと何cm盛るか

だけを考えても限界があります。

高い位置に車庫を作れるか。

ピロティ等で駐車位置自体を上げられるか。

大雨前に安全な場所へ移動できるか。

そもそも別の土地を選ぶか。

まで選択肢を広げます。

浅い内水への対策と、深い河川洪水への対策を同じにしません。

家と車で「守る水位」を別に決めてもよい

例えば、新築時の設計目標を、

住宅
→想定する1mの水位でも床上浸水させない。

車
→浅い30cm程度の道路冠水までは敷地で守る。

それを超える予報なら事前退避する。

というように分ける考え方もあります。

すべての財産を一つの高さで完全に守ろうとすると、造成費や外構条件が大きくなる場合があります。

住宅は動かせません。

車は災害前なら移動できます。

その違いを利用できます。

だから、家と駐車場を必ず同じ高さにする必要はありません。

ただし「駐車場を低くした分を何で補うか」まで決めます。

外構計画の最後に駐車場高を決めない

新築では、先に住宅本体を決めてから、

「残った場所に駐車場を作る」

ことがあります。

水害リスクがある土地では逆に、高さを住宅設計と同時に決めた方がよいでしょう。

前面道路。

駐車場。

住宅宅盤。

玄関。

1階床。

を同じ断面図に入れます。

さらに、

道路冠水の想定。

洪水・内水の想定水位。

を重ねます。

その時点で、

家は守れる。

でも車が低い。

と分かれば、まだ設計変更できます。

建物が完成してから駐車場だけ50cm上げようとしても、道路・玄関・門・排水との高さ関係がすでに決まっています。

新築前に住宅会社へ聞くなら「駐車場は何cm?」だけでは足りない

住宅会社・外構会社には、

前面道路を0としたとき、駐車位置は何cmですか。

住宅の宅盤は何cmですか。

1階床は何cmですか。

大雨時に道路から駐車場へ水が入る形ですか。

駐車場内の水はどこへ排水しますか。

入口を高くする余地はありますか。

止水板を設ける余地はありますか。

と確認します。

特に重要なのは、

「道路冠水30cmを想定したとき、この断面図では家と車のどこまで水が来ますか」

のように水位を重ねてもらうことです。

「水害対策で家を高くしています」という説明から、車まで含めた具体的な設計へ進めます。

まとめ

家を嵩上げするなら、駐車場も必ず同じ高さまで上げなければならないわけではありません。

しかし、住宅だけを高くして駐車場を道路と同じ高さに残せば、

家は床上浸水を免れた。

庭も大きな被害はない。

でも車だけ水没した。

ということは起こり得ます。

だから新築では、

道路。

駐車場。

住宅宅盤。

1階床。

を別々の高さとして確認します。

車まで敷地内で守りたいなら、道路からの乗入れが成立する範囲で駐車場も高くする意味があります。

十分に上げられない場合は、

入口で水を止める。

適切に排水する。

大雨前に車を高い場所へ移す。

車両保険を確認する。

といった方法を組み合わせます。

重要なのは、

「家を何cm嵩上げするか」

だけではありません。

「車を置く場所は、その水面よりどこにあるのか」

まで同じ断面図に入れることです。

家の水防ラインと車の水防ラインを別々に決めておけば、住宅だけを高くした結果、最も高価な屋外資産である車だけが低い場所に残る設計を避けやすくなります。

出典

国土技術政策総合研究所|水害リスクを踏まえた建築・土地利用と浸水対策の検討資料

建築研究所|都市における建築物の水害リスクと対策に関する研究

住宅生産団体連合会|住宅における浸水対策の設計の手引き

新潟市|駐車場かさ上げ工事助成制度

e-Gov法令検索|建築基準法 第19条「敷地の衛生及び安全」

JAF|自動車が冠水路や高潮で浸水してしまったら?

JAF|冠水路走行テスト(BEV・HV・ガソリン車)

日本損害保険協会|風水雪災等による損害を補償する損害保険