蓄電池・太陽光パワコンを高く置く|想定浸水深から決める水没対策

水害時の停電に備えて蓄電池や太陽光発電を導入するなら、設備そのものが水没しない配置も考えておく必要があります。

対策として「蓄電池やパワコンを高く置く」のは有効ですが、基礎を50cm上げればよい、1mなら安全、と一律の高さで決めるものではありません。

国土交通省の設計ガイドは、屋外蓄電池についてコンクリート基礎でかさ上げし、地面から高い位置にすることを示しています。経済産業省も、浸水想定区域に太陽光発電設備がある場合、パワコンや集電箱を想定浸水深より高い位置へ移すことを検討するよう示しています。

問題は、その「高い位置」を自宅ではどう決めるかです。

必要な高さは「想定浸水深」だけでは決められない

最初に確認するのは、自宅でどの程度の浸水が想定されているかです。

国のハザードマップポータルでは洪水などの浸水リスクを確認できます。ただし、表示される浸水深は6または8段階の区分であり、地盤高や解析にも誤差が含まれます。隣接地点でも表示に大きな差が出る場合があるため、地図の数字をそのまま施工寸法に置き換えるものではありません。 (ハザードマップポータル)

そのうえで、設置予定機種の施工説明書を確認します。

見るべきなのは「想定浸水深より高いか」だけではなく、その機種がそもそも浸水のおそれがある場所へ設置できるのか、どの基礎・架台・壁面取付けが認められているのか、点検や操作に必要な高さやスペースを確保できるのかです。

つまり、

「想定浸水深 → 必要な設置高さ」

だけではなく、

「想定浸水深 → 必要な高さ → その高さでメーカー施工条件を満たせるか」

まで確認して初めて、かさ上げで対応できるか判断できます。

同じ「500mm」でも意味が違う

設置高さを考えるうえで特に注意したいのが、施工説明書に書かれた数字の意味です。

Panasonicの特定の住宅用太陽光パワコンでは、床面・地面とパワコン底面との距離を500mm以上確保するよう指定されています。ところが同じ説明書では、「冠水のおそれのある場所、水はけの悪い場所」への設置を禁止しています。

したがって、この500mmを見て「50cmの浸水まで耐えられる」と判断することはできません。

一方、シャープの蓄電池JH-WB2021では、蓄電池底面の構造によって、地上高500mmまでの水位でも内部に水が入りにくくなり、故障リスクを低減するとメーカーが説明しています。こちらは浸水への配慮として示された500mmです。 (シャープ)

ただし、この製品についても水の侵入を保証しているわけではありません。

同じ「500mm」という数字でも、一方は施工時に必要な離隔距離、もう一方は浸水を考慮した製品特性です。

ネットで見つけた「○cm」という数字を、自宅の別メーカー・別機種へそのまま当てはめてはいけない理由がここにあります。

かさ上げで対応できる家と、場所を変えた方がよい家

判断の境界は比較的はっきりしています。

想定される浸水に対して、メーカーが認める基礎・架台・壁面設置などを使い、施工条件を守ったまま必要な高さを確保できるのであれば、かさ上げや高所設置を検討できます。

実際、国交省は屋外蓄電池のコンクリート基礎によるかさ上げを示し、XSOLも浸水リスクのある地域では、蓄電池の基礎を浸水しない高さまで上げるか、屋内設置を検討するよう案内しています。

反対に、必要な高さまで上げると施工説明書の条件を満たせない場合は、無理に台を高くする話ではありません。

たとえば、Panasonicの前記PCSでは、点検・メンテナンスができない場所だけでなく、足場やはしごなどが必要になる場所も設置不可としています。水没を避けるために高くし過ぎ、日常の操作や保守ができなくなれば別の問題が生じます。

さらに、ニチコンのESS-H2L1シリーズのように、「浸水の可能性があるところ」自体を設置不可としている製品もあります。こうした機種では、自己判断で高い架台へ載せれば設置条件をクリアしたことになるとは限りません。 (ニチコン)

この場合は、屋内設置できる機種、より高い壁面へ設置できる機種、別の設置場所などへ切り替えて考える方が合理的です。

蓄電池本体だけ高くして終わらせない

停電対策として考えるなら、蓄電池本体だけを見ないことも重要です。

家庭用蓄電システムは、蓄電池本体だけでなく、パワコンやコンバータ、分電盤など複数の機器で構成される場合があります。どの機器をどこへ置くかは製品ごとに異なります。 (JEMA 一般社団法人 日本電機工業会)

経済産業省も太陽光発電設備の浸水対策として、パワコンだけでなく集電箱などについても想定浸水深より高い位置への移設を検討するよう求めています。 (経済産業省)

蓄電池だけ高い基礎に載せ、パワコンが低い位置に残っているのであれば、「停電時に使う設備を水没から守る」という目的から設備全体をもう一度確認する必要があります。

蓄電池とパワコンは同じ高さにする必要はありません。重要なのは、それぞれについて浸水リスクとメーカーの設置条件を確認することです。

ハザードマップの色を見て、そのまま基礎高を決めない

自宅の確認では、まず国の重ねるハザードマップと自治体の水害ハザードマップを確認します。

洪水だけを見るのではなく、その地域で公開されている内水、高潮、津波など、自宅に関係する浸水要因も確認しておいた方がよいでしょう。

ただし、ハザードマップポータル自身も、浸水深には地盤高や解析上の誤差があり、より詳細な数値については河川管理者への確認や浸水ナビの利用を案内しています。 (ハザードマップポータル)

そのため、たとえば地図が「0.5~3m」の区分だから「3mの架台を作る」という決め方をするものではありません。

ハザードマップは「この場所では水没対策を設計段階から検討すべきか」を判定する入口として使い、その先の設備高さは敷地条件とメーカー施工条件を合わせて施工店に設計してもらいます。

「とりあえず高い架台を作る」は避ける

既存住宅で後から水没対策をする場合も、市販の台や独自架台へ載せればよいとは限りません。

蓄電池は重量が大きく、国交省のガイドでも設置スペースやメンテナンススペース、屋内の場合は床の耐荷重などを確認するよう示されています。屋外のかさ上げでも、固定方法や耐震性を無視することはできません。 (国土交通省)

パワコンも同様です。

JEMAはPCSの設置条件がメーカーによって異なるとして、各メーカーの施工説明書などを確認するよう案内しています。高い位置へ移したい場合も、メーカーが認める壁面取付け・架台・平地置台などの範囲で検討するのが基本です。 (JEMA 一般社団法人 日本電機工業会)

浸水対策だけを優先して、放熱、操作、点検、固定、配線といった別の施工条件を崩さないことが重要です。

自宅では「高さ」ではなく、この図面を出してもらう

施工店へ「水害が心配なので高くしてください」とだけ伝えると、何を基準に高さを決めたのか分からなくなります。

契約前または設置場所を決める段階で、蓄電池とパワコンを別々に、地盤面・床面から機器までの高さが分かる寸法入りの配置を確認した方が判断しやすくなります。

施工店には、次のように伝えれば十分です。

この住所の洪水・内水などの浸水リスクを踏まえて、蓄電池本体とパワーコンディショナそれぞれについて、メーカー施工説明書上の設置可否と、地盤面・床面からの設置高さが分かる図面を出してください。想定される浸水に対して現在の設置方法では高さを確保できない場合は、屋内設置、壁面設置、別機種、別の設置場所も含めて代替案を示してください。

ここまで確認すれば、「何となく高くしてあるから安心」という状態を避けられます。

すでに浸水した設備は、高さの確認より先に触らない

水害が発生し、蓄電池やパワコンまで水が来た場合は別です。

川越市は、水没・浸水した蓄電システムについて、感電、有害ガス、発熱、発煙、発火などのおそれがあるとして、近づいたり触れたりせず、販売店、施工店またはメーカーへ連絡するよう注意喚起しています。水が引いた後も、自己判断で再使用しないよう求めています。 (川越市公式サイト)

太陽光発電設備についても、経済産業省は浸水した設備へむやみに近づかないよう注意を促しています。太陽光パネルは光が当たれば発電することがあるためです。 (経済産業省)

NITEが特定の住宅用蓄電池システムで行った水没試験では、発火などの二次災害を起こさず安全に停止した例があります。しかし、これは特定製品・試験条件での結果であり、「家庭用蓄電池は水没しても安全」という意味ではありません。 (NITE)

水害対策は、水が来てから設備を動かすことではなく、水が来る前に設置位置を決めておく方が重要です。

蓄電池・パワコンの水没対策は「何cm」ではなく「その機種で逃がせるか」で決める

屋外蓄電池をコンクリート基礎で高くしたり、パワコンを高い壁面へ設置したりすることは、水没リスクを下げる方法の一つです。

ただし、必要な高さを「50cm」「1m」など一律に決めることはできません。

先に自宅の浸水リスクを確認し、その高さを採用予定機種の施工条件の中で回避できるかを確認します。

回避できるならメーカー指定の基礎や架台などで高くする。回避できない、またはその場所自体が設置不可なら、さらに高い台を作るのではなく、屋内・壁面・別の場所・別機種へ切り替える。

ここが、蓄電池と太陽光パワコンの水没対策を考えるときの判断線です。

出典

国土交通省編集協力「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」

経済産業省「浸水した太陽電池発電設備による感電事故防止について」

ハザードマップポータルサイト「よくある質問」

Panasonic「住宅用太陽光発電システム パワーコンディショナ施工説明書」

シャープ「蓄電池システム JH-WB2021」

JEMA「住宅用太陽光発電システム-パワーコンディショナ設置場所のご注意-」

川越市「蓄電池の水害時の感電・有害ガスの発生等にご注意ください」

NITE「大型蓄電池が水没した際の製品状態を検証するための試験」