給湯器・エコキュートを高く置く|新築時に設置高さを決める

水害が気になる土地で新築するなら、給湯器やエコキュートを浸水しにくい高さへ置いておく方法があります。

ただし、「想定浸水深が50cmなら50cmの架台に載せる」といった決め方はできません。

給湯器の種類によって、高くする方法と限界が違うからです。

壁掛け型のガス給湯器なら、メーカーの設置条件を満たす範囲で高い位置を選べる場合があります。一方、エコキュートにはヒートポンプユニットだけでなく、大量のお湯をためる重い貯湯ユニットがあります。

新築時に決めるのは「何cm上げるか」ではありません。

先に建設地で対策する水位を決め、その水位より上へ、メーカー指定の施工方法を守って設置できるかを確認します。難しければ、かさ上げ量を増やすのではなく、設置方法そのものを変えます。

給湯器とエコキュートでは「高く置く」の意味が違う

「給湯器を高くする」と「エコキュートを高くする」は、同じ工事ではありません。

ガス給湯器には屋外壁掛形の製品があり、もともと外壁へ取り付ける設置方法があります。そのため、想定する水位より高く、なおかつ点検や交換ができる位置を確保できれば、壁掛けで浸水を避ける方法を検討できます。

エコキュートは事情が違います。

エコキュートは、お湯をためる貯湯ユニットと、お湯を沸かすヒートポンプユニットで構成されています。

ヒートポンプユニットだけなら架台を使って高さを確保できる場合がありますが、貯湯ユニットには数百リットルの水が入ります。現行製品には、満水になると400kgを大きく超えるものがあります。

そのため、室外機と同じ感覚で高い架台へ載せる設備ではありません。

貯湯ユニットを高くするなら、その重量を支えられる基礎、アンカーによる固定、地震時の転倒防止まで含めて設計する必要があります。

設置高さは「想定浸水ライン」と「施工できる高さ」を重ねて決める

まず建設地について、洪水や内水、高潮など、関係する浸水リスクを確認します。

次に、敷地造成後の給湯器予定地で、設計上どこまで水が来ることを想定するのかを住宅会社と確認します。

そこで初めて、機器の置き方を比較します。

条件検討する方向
通常の設置位置でも想定水位より十分上になる水害対策だけを理由に特別なかさ上げをする必要性は低い
少し設置位置を上げれば想定水位を避けられるメーカー指定範囲でのかさ上げや壁掛けを検討
据置型ガス給湯器が想定水位に入る対応する壁掛け型などへ変更できるか確認
エコキュートのヒートポンプユニットが想定水位に入る対応する架台や別位置への移設を検討
エコキュートの貯湯ユニットまで大きく上げなければならない高い架台を先に決めず、別位置・対応機種・上階配置などを検討
必要な高さまで上げると点検や交換が難しくなる設置方法自体を見直す

つまり境界になるのは、「想定水位より高いか」だけではありません。

その高さに、機器を安全に固定でき、将来も修理・交換できるかまで満たせるかです。

エコキュートの貯湯タンクは、高い架台に載せればよいわけではない

エコキュートで特に注意したいのが貯湯ユニットです。

例えば現行の460Lクラスには、満水時の重量が500kgを超える製品があります。

メーカーの据付説明書でも、貯湯ユニットは満水時の質量に耐えられる基礎へ設置し、脚をアンカーボルトで固定することなどが求められています。

上階へ設置できる製品もありますが、どのエコキュートでも自由に2階へ置けるわけではありません。

機種によって設置可能な場所や耐震施工が異なり、2階以上では上部の振れ止め固定など追加施工を求める製品もあります。

このため、

「想定浸水深が1mだから、貯湯タンクを1mの架台に載せる」

という順序では考えません。

まず選ぼうとしている製品の据付条件を確認し、その条件内で必要な浸水対策高さを確保できるかを施工会社に確認します。

大きく持ち上げなければ水位を避けられないのであれば、別の場所へ移す、上階設置に対応する製品を選ぶ、住宅自体の地盤・床を高くするなど、別の対策と比較します。

エコキュートはヒートポンプユニットだけ上げても終わらない

エコキュートの水害対策では、屋外機のように見えるヒートポンプユニットへ目が向きやすくなります。

しかし、給湯システムとして考えるなら、貯湯ユニットも確認が必要です。

ヒートポンプユニットだけ想定水位より上へ上げても、貯湯ユニットの電気部品などが浸水すれば、そのまま使用する前提にはできません。

反対に、貯湯ユニットだけを守っても、ヒートポンプユニットが水に浸かれば、通常どおり沸き上げられるとは限りません。

そのため新築時には、

「ヒートポンプを何cm上げますか」

ではなく、

「この想定水位で、貯湯ユニットとヒートポンプユニットのどこが水に浸かりますか」

と確認したほうが判断しやすくなります。

実際にエコキュートが冠水・浸水した場合、メーカーは乾いて見えてもそのまま通電せず、点検・修理を受けるよう案内しています。

水害後も給湯機能を残したいのであれば、一部の機器だけでなくシステム全体の浸水範囲を見る必要があります。

必要な高さが大きいなら「かさ上げ」以外へ切り替える

想定する水位が高くなるほど、かさ上げだけで対応するのは難しくなります。

そこで、新築時なら設置高さだけでなく、設置方法そのものを比較します。

ガス給湯器なら、選ぶ機種によっては据置型ではなく壁掛け型にする方法があります。

エコキュートなら、敷地内でも高い位置へ配置する、上階設置に対応する製品と建物構造を検討する、といった方法があります。

もう一つは、機器側で浸水の影響を減らす考え方です。

長府製作所には、貯湯ユニット内の主要部品を設置面から1m以上の位置に配置し、床上浸水による機器への影響を軽減するエコキュートがあります。

ただし、これは「水深1mまでなら水没しても使える」という意味ではありません。

あくまで浸水による影響を軽減する設計です。

想定水位が高く、貯湯ユニット全体をその高さより上へ設置することが難しい場合には、このような製品も比較対象になります。

さらに住宅全体で水害対策をするなら、給湯器だけを上げるより、敷地のかさ上げや高基礎などによって設備設置面そのものを高くしたほうが合理的な場合もあります。

高くしすぎて修理できない位置にしない

水害だけを考えると、給湯器は高いほど安全に見えます。

しかし、佐賀県の浸水対策資料では、設備を高い場所へ設置する場合でも、メンテナンスや更新時に作業できる高さにする必要があるとしています。

給湯器もエコキュートも、将来は点検・修理・交換が必要になります。

ガス給湯器を高い外壁へ付ければ、水には浸かりにくくなりますが、通常の作業では届かない場所になれば保守が難しくなります。

エコキュートも同じです。

水位を避けることだけを優先して特殊な高所へ置くのではなく、

「浸水しない」

「地震で倒れない」

「配管・配線を適切に施工できる」

「将来交換できる」

という条件を同時に満たす位置を探します。

その条件が両立しない高さまで水害対策が必要なら、設置高さではなく設置場所や住宅側の対策を変える段階です。

新築時は「何cm上げるか」ではなく4つを施工会社に聞く

給湯設備の機種と位置を決める段階で、まず建設地でどこまでの浸水を対策対象にするのかを共有します。

そのうえで、施工会社には次の内容を確認します。

「この水位だと、予定している給湯器・エコキュートのどこまで水に浸かりますか」

「想定水位より上へ設置する場合、この機種のメーカー指定施工の範囲で対応できますか」

「エコキュートの場合、貯湯ユニットとヒートポンプユニットの両方をどう配置しますか」

「必要な高さまで上げた場合でも、耐震性と将来の点検・交換に問題はありませんか」

これで通常設置で足りるのか、かさ上げで対応するのか、それとも機種や設置位置から変える必要があるのかを分けられます。

まとめ|給湯器の設置高さは「水位を超えれば終わり」ではない

給湯器やエコキュートを水害から守るなら、建設地で想定する水位より高い場所へ置くことが基本になります。

ただし、必要な高さの決め方は機器によって違います。

壁掛け型の給湯器なら、高い位置へ設置できる場合があります。一方、エコキュートの貯湯ユニットは満水時に非常に重く、基礎やアンカー、耐震性まで含めて設置する設備です。

そのため、先に架台の高さを決めるのではありません。

想定水位を決める。

その水位をメーカー指定の方法で避けられるか確認する。

避けられない、または高くすると保守や耐震性に無理が出るなら、設置場所・機種・住宅側の浸水対策へ切り替える。

この順番で決めると、「高くしたつもりだったが別のユニットが浸水する」「高くしすぎて交換できない」といった設計時の見落としを減らせます。

出典

「浸水に備えた住まいづくり」のパンフレットを作成しました|佐賀県

自然災害に備えて 住まいづくりの勘どころ|公益財団法人 建築技術教育普及センター掲載資料

三菱 エコキュート SRT-S377 据付工事説明書|三菱電機

自然冷媒ヒートポンプ給湯機 HE-J46KQES 仕様・詳細情報|Panasonic

減災 × CHOFU製品|長府製作所

エコキュート 水害時の対応|デンソー

ガス給湯器 GQ-C34WSシリーズ|ノーリツ