新築時の水害対策として、1階のコンセントを高い位置に付ける方法があります。
ただし、「水害が心配だから全部のコンセントを床から1mにする」と先に高さを決める必要はありません。
最初に確認したいのは、建設地で想定される水位が、完成した家の1階床から見てどこまで来るのかです。
ここで注意したいのが、ハザードマップに表示される浸水深と、住宅内で使うコンセントの高さは、同じ位置を基準にした数字ではないことです。
想定浸水深を確認したら、住宅会社に「この数字だと、完成後の1階床から何cmまで水が来る想定になりますか」と聞き、その位置より下にあるコンセントをどうするか考えます。
すべてを同じ高さへ上げるのではなく、浸水する可能性がある場所と、浸水後も使いたい場所を分けて計画するのがポイントです。
ハザードマップの「0.5m」を床から50cmと考えない
水害対策でコンセントの高さを考えるとき、一番先に整理したい部分です。
洪水浸水想定区域図などで示される浸水深は、基本的に地面から水面までの深さです。
一方、住宅のコンセントについて「床から30cm」などと言う場合は、完成した室内の床面から測ります。
このため、ハザードマップで「0.5m」と表示されている場所だからといって、コンセントを室内床から50cmより上へ付ければよい、と単純には決められません。
住宅の1階床は地面より高い位置にあります。敷地を盛土したり基礎を高くしたりすれば、その関係も変わります。
反対に、道路より敷地が低い、玄関や掃き出し窓から水が入りやすいといった条件があれば、地図上の数字だけでは住宅内の水位を判断しにくくなります。
新築時には、ハザードマップの数字を自分でコンセント高さへ置き換えるのではなく、設計者に完成地盤面と1階床面の高さを踏まえて、室内ではどこまで浸水する想定なのかを確認します。
ここが決まって初めて、「どのコンセントを高くするか」を考えられます。
全部のコンセントを高くする必要があるとは限らない
佐賀県は、通常のコンセントは床から30cm程度の高さに設置されているとし、浸水想定がそれより高い場合には、漏電や内部への泥の侵入によって交換が必要になる場合があるとしています。
だからといって、1階のコンセントをすべて同じ高さへ移せばよいわけではありません。
コンセントにはそれぞれ用途があります。
例えば、机やカウンターの上で使うコンセントは、もともと高い位置へ配置できます。一方、床付近で使う家電や家具の裏に配置するコンセントは、高くするとコードの長さや家具配置との関係で使いにくくなることがあります。
一般的な配線計画でも、コンセントは一律の高さではなく、使用する機器や抜き差しの頻度に合わせて位置を決めます。
水害対策でも考え方は同じです。
まず「想定する水位より下になるコンセント」を洗い出し、その中で高くしても支障がないもの、高くすると使いにくくなるものを分けます。
水害対策だけを理由に生活時の使い勝手を無視するのではなく、浸水リスクと使用する家電の両方から位置を決めます。
高くする優先度は「浸水後も残したい電源」で変わる
すべてのコンセントを同じように扱わなくても、浸水後に何を使いたいかを決めると優先順位を付けやすくなります。
例えば1階が浸水したあと、2階で生活を続ける想定なら、2階の照明やスマートフォンの充電、エアコンなどの電源を残せることのほうが重要です。
1階についても、想定水位より上で使用できるコンセントを何か所か確保する考え方があります。
ただし、コンセントだけが水に浸からなければ電気を使えるとは限りません。
1階の別のコンセントが浸水して漏電ブレーカーが作動すれば、回路構成によっては2階を含めて停電することがあります。
そのため、新築時の水害対策を「コンセントの高さ」だけで終わらせず、分電盤を浸水しにくい場所へ置くことや、1階と2階の回路を分けることも一緒に検討します。
コンセントを高くする目的は、家中の電気設備を無傷にすることではありません。
浸水する設備を減らし、被災後に残したい電気を残しやすくすることです。
0.5m未満の浸水想定でも、高くする意味がないとは限らない
「ハザードマップでは0.5m未満だから、コンセント対策はいらない」とも言い切れません。
国土交通省のハザードマップでは0.5m未満、0.5m~3mなどの区分で表示されることがありますが、その区分の中で自宅地点が実際に何cmと計算されているかは地図の表示だけでは分からない場合があります。
また、洪水浸水想定区域図は一定の条件で行ったシミュレーションです。対象外の河川からの氾濫、想定を超える降雨、内水氾濫などによって、地図上の想定と異なる浸水が起きることもあります。
逆に、浸水想定が0.5m以上だからといって、室内床から必ず0.5m浸水するわけでもありません。
ここでも必要なのは、「0.5m」という区分だけでコンセント高さを決めることではなく、完成後の敷地高さと1階床高さを含めて、住宅内の想定水位へ置き換えることです。
自治体や国が公開している詳細な浸水想定、過去の浸水実績、土地と道路の高低差なども確認して、設計上どこまでを対策対象にするか決めます。
屋外コンセントも忘れずに確認する
水害対策で室内のコンセントだけ高くしても、1階外壁の低い位置に屋外コンセントが残っていることがあります。
浸水想定区域の住宅についてまとめた建築関係の資料では、1階のコンセントを室内・屋外ともに浸水想定深さを参考にして高めの位置へ設置する考え方が示されています。
屋外コンセントは、庭の電気製品、掃除、高圧洗浄機、電動工具、電気自動車関連設備など、住宅によって用途が違います。
そのため、単純に高くするだけではなく、何をつなぐ予定なのか、その機器のコードが届くのかまで確認します。
特に新築では、外構工事と住宅本体工事が別になることがあります。
住宅内の電気打合せでは水害対策を伝えたのに、外構側のコンセントだけ通常位置になっていた、ということがないよう、屋外も同じ想定水位で確認します。
コンセントが水に浸かったら、乾いただけで再使用できるとは限らない
高い位置へ設置する意味は、浸水中の漏電を避けることだけではありません。
佐賀県は、コンセント内部に泥などがたまると、乾燥したあとでも交換が必要になる場合があるとしています。
水害時の水はきれいな水とは限りません。泥やさまざまな異物を含んだ水がコンセント内部へ入る可能性があります。
そのため、浸水したコンセントを「もう乾いたから大丈夫」と自己判断で再使用する前提にはしません。
水害後に電気設備が浸水した場合は、浸水した範囲を把握し、安全を確認してから復旧する必要があります。
新築時にコンセント位置を上げておけば、水に浸かるコンセントそのものを減らせるため、漏電対策だけでなく、交換や復旧が必要になる範囲を小さくできる可能性があります。
新築時は壁に「想定水位」を引いてからコンセントを決める
コンセント計画の打合せでは、部屋ごとのコンセント位置を決める前に、水害対策の基準となる高さを設計者と共有しておくと整理しやすくなります。
まず、建設地の洪水・内水などの浸水想定を確認します。
次に、その数字と計画している地盤・基礎・1階床の高さを照らし合わせ、「室内の壁ではどこまで水が来る想定にするのか」を決めます。
そのラインより下に予定されているコンセントを確認し、高くできるものは上へ移します。
高くすると家電が使いにくくなる場所については、別の位置に追加する、使用する設備自体の位置を見直すなど、電気工事業者と調整します。
そして、1階が浸水した場合にも2階で電気を使いたいなら、コンセント配置だけでなく、分電盤の位置と階別の回路構成まで続けて確認します。
新築時に聞くなら、
「コンセントを全部高くできますか」
ではなく、
「この土地の想定浸水深を1階床からの高さにすると、どこまでになりますか。そのラインより下になるコンセントを一緒に確認できますか」
と伝えるほうが、対策する範囲を決めやすくなります。
まとめ|コンセントは一律に高くせず、室内の想定水位から決める
新築時の水害対策としてコンセントを高くするなら、最初に「床から何cm」と決めるのではありません。
建設地の想定浸水深を確認し、計画する地盤面と1階床面の高さを踏まえて、住宅内ではどの高さまで水が来る想定なのかを決めます。
その水位より下になるコンセントのうち、高くしても使い勝手に支障がないものは高い位置へ移し、必要に応じて屋外コンセントも確認します。
さらに浸水後も電気を使える家にしたいなら、コンセントだけでなく分電盤の位置や1階・2階の回路分けまで一緒に考えます。
水害対策として必要なのは、すべてのコンセントを高くすることではなく、「どこまで水が来る想定か」を先に決め、その下にある電気設備を一つずつ見直すことです。
出典
「浸水に備えた住まいづくり」のパンフレットを作成しました|佐賀県
想定される最大浸水深(洪水、雨水出水、高潮、津波)|国土交通省
洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ|国土交通省
自然災害に備えて 住まいづくりの勘どころ|一般財団法人建築行政情報センター
建築物における電気設備の浸水対策|経済産業省
早めに始めよう、配線計画のすすめ「#配テク」|Panasonic