水害が気になる土地で家を建てるなら、分電盤を通常より高い位置に付ける方法があります。
ただし、「床から何cmにすればよいか」という一律の高さを先に決めるのではありません。建設地でどこまで水が上がる想定なのかを確認し、その高さを分電盤が超えられるかを見ます。
さらに、分電盤だけ水から守っても、1階のコンセントが浸水して漏電ブレーカーが作動すれば、家全体で電気が使えなくなる場合があります。
新築時に考えたいのは、分電盤の取付高さだけではなく、「想定浸水深を超える場所に電気の中枢を置き、1階が浸水しても浸水していない階の電気を使えるようにできるか」です。佐賀県も、浸水による機器故障を防ぐ方法として、設備機器を浸水想定より高い位置に置くことや、1階と2階で回路を分ける方法を示しています。
分電盤の高さを決める前に建設地の想定浸水深を見る
最初に確認したいのは、分電盤の一般的な取付高さではなく、家を建てる場所の浸水リスクです。
国土地理院のハザードマップポータルサイトでは、洪水、内水、高潮などの浸水リスクを確認できます。佐賀県も、新築や改修で浸水対策を考える前に、自宅や建設地の浸水想定深さを確認するよう案内しています。
ただし、ハザードマップの色を見て、そのまま「分電盤を床からこの高さに付ければよい」と決めるのは早すぎます。
重ねるハザードマップの洪水浸水深はランクで表示されており、例えば0.5mから3.0mという幅を持つ区分もあります。具体的な浸水深を確認したい場合、国土地理院は浸水ナビや河川管理者への確認を案内しています。
新築時は、まず建設地について洪水・内水・高潮など該当する浸水リスクを確認し、そのうえで住宅会社や設計者に、
「この土地では、どの高さまでの浸水を想定して設備配置を決めますか」
と確認します。
「分電盤は高いところに付けてください」と伝えるより、設計の基準となる水位を先に共有したほうが話が具体的になります。
1階の壁を高くするか、2階へ移すかは想定浸水深で変わる
浸水想定ラインが分電盤の設置可能な高さより十分低いなら、1階の壁面で位置を上げる方法を検討できます。
一方、想定する水位が高く、1階で水に浸からない位置へ上げようとすると操作しにくくなるなら、単純にさらに高くするのではなく、2階へ配置する方法も候補になります。
分電盤は、異常時や停電時にブレーカーを操作する設備です。災害対策だけを優先して手の届かない場所へ設置すると、日常の点検や非常時の操作がしにくくなります。住宅設備メーカーも、住宅用分電盤は手の届きやすい場所への設置を案内しています。
浸水想定区域での住宅対策をまとめた建築関係の資料では、電気メーターや分電盤を2階に設け、1階と2階の電気回路を分ける方法も示されています。
したがって、判断は次のように分かれます。
| 条件 | 検討する方向 |
|---|---|
| 想定浸水ラインより十分高い位置を1階で確保でき、操作にも支障がない | 1階で分電盤を高くする |
| 浸水を避けようとすると操作しにくい高さになる | 2階への配置を検討する |
| 1階浸水後も2階で生活を続けたい | 2階配置に加え、階ごとの回路分けも検討する |
| ハザードマップの浸水深に幅があり判断できない | 詳細な浸水情報を確認してから高さを決める |
「高ければ高いほどよい」ではなく、浸水を避ける高さと、普段・非常時に操作できる高さの両方を満たせるかが分かれ目です。
分電盤だけ高くしても家の電気を残せるとは限らない
ここが新築時に見落としやすいところです。
分電盤そのものが水に浸からなくても、低い位置にあるコンセントなどが浸水すると、漏電ブレーカーが作動することがあります。
佐賀県の住宅向け資料でも、コンセントが水に浸かると漏電ブレーカーが作動し、家全体の電気が使えなくなることがあるため、照明と機器で回路を分ける、または1階と2階で回路を分ける方法を示しています。
つまり、
「分電盤を2階にしたから、1階が浸水しても電気は使える」
とは限りません。
1階の回路で漏電が起きたとき、浸水していない2階まで止まる構成なのか、1階だけ切り離して2階を使える構成なのかで結果が変わります。
浸水後も2階で照明やコンセントを使いたいなら、分電盤の位置を決める打合せで回路構成まで確認しておきます。
想定浸水深が高い家ほど「高さ」より電気系統全体を見る
想定浸水深が低ければ、分電盤やコンセント、屋外設備の位置を少し上げることで水没を避けられる場合があります。
ところが1階のかなり高い位置まで浸水が想定される土地では、分電盤だけを数十cm上げても対策にならないことがあります。
この場合は、
分電盤を2階へ移せるか。
スマートメーターや引込線の位置も水没しにくくできるか。
1階と2階の回路を分けられるか。
1階のコンセントをどこまで高くできるか。
給湯器、蓄電池、パワーコンディショナーなど、電気に依存するほかの設備はどうするか。
という順で考えたほうが、浸水後の生活再開につながります。
浸水想定区域を対象とした住宅づくりの資料でも、分電盤だけでなくスマートメーター、蓄電池、室外機などを含め、電気関連設備を浸水しにくい位置へ配置する考え方が示されています。
分電盤だけ無事でも、家を動かすために必要な設備が水没していれば、すぐに元の生活へ戻れるとは限りません。
ハザードマップの数字を「絶対にここまでしか来ない水位」と考えない
もう一つ注意したいのが、想定浸水深の扱いです。
ハザードマップは、一定の条件を置いて計算された浸水想定を示すものです。洪水の「想定最大規模」は、その地域で想定し得る最大規模の降雨を前提とした情報ですが、実際の災害で水が必ずその高さで止まることを保証するものではありません。
佐賀県も、ハザードマップだけでなく、近隣で過去にどこまで浸水したかを聞いたり、浸水実績を示す標識や石碑を確認したりする方法を紹介しています。
そのため新築時には、
ハザードマップの浸水想定深さ。
自治体が公表する過去の浸水実績。
土地や道路との高低差。
計画する1階床の高さ。
を住宅会社と一緒に確認し、どの水位を設備配置の基準にするのか決めるほうが現実的です。
「ハザードマップが0.5mだから、0.6mより上なら大丈夫」といった決め方はしません。
新築の打合せでは「分電盤の高さ」ではなく3つを確認する
間取りが固まる前後で、電気設備の打合せをするときに確認したいのは次の3点です。
一つ目は、建設地で設計上どこまでの浸水を想定しているか。
二つ目は、その水位より上に分電盤を置けるか。1階では操作しにくくなるなら、2階へ移せるか。
三つ目は、1階が浸水した場合でも、浸水していない2階の回路だけを使えるようにできるかです。
ここまで確認すれば、
「分電盤を少し高めに付けておきました」
だけで終わらず、浸水後にどの設備を残したいのかまで設計に反映できます。
電気設備は完成後でも変更できるものがありますが、分電盤の場所や回路構成は、新築時に決めておいたほうが配線計画と一緒に検討できます。
まとめ|分電盤の高さは「何cm」ではなく想定浸水ラインから決める
水害対策で分電盤を高い位置に付けるなら、一般的な取付高さから何cm上げるかを先に決めるのではありません。
建設地の想定浸水深を確認し、その水位より上で、なおかつ非常時にも操作できる場所を探します。
1階でその条件を満たせるなら高い位置への設置を検討し、難しければ2階への配置も候補になります。
さらに、1階が浸水したあとも2階の電気を残したいなら、分電盤の位置だけでなく1階・2階の回路をどう分けるかまで新築時に決めておく必要があります。
確認する順番は、「分電盤を高くする」ではなく、「想定浸水深を確認する→守りたい電気設備を決める→分電盤の位置と回路構成を決める」です。